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第5話 春節祭そして……

あれから、冬の間は何事もなく、無事に過ぎていった。

そういえば、いつしか血抜きが上手いという事で、狩は専ら僕に任せてもらえる事になったから少しは成長できたかな……

ちなみに、あの胸のザワザワはあれから起きていない。

いや、厳密にはザワザワではないが、魔石を使った魔道具を見かけると、なんとなくわかる様になってきた。

一度、父さんに聞いてみたら、冒険者をやっていると、時々魔石を感じる人が出てくるらしい。

なんだ、オリジナルスキルじゃないんだとガッカリしてしまう。

しかも、魔石感知よりも魔法使いの方がレアらしいし……

という事で、ありふれた能力ではあるらしいが、それでも無いよりは良く、索敵に役立つと褒められた。

まぁだから良しとしよう。


そして、雪が止んで春が来る。

僕らの村では、雪が止んで10日後に春節祭が行われる。

ちなみに、この地方では正確な日付がわからないので、春節祭をみんなの誕生日にして盛大に祝う事にしている。

村の広場に集まって、大人達は酒を飲み、みんなで持ち寄った料理を分かち合う。

僕もこの日のために、ウサギを10匹ほど狩った。

すごいだろって、父さんに見せようとしたら、父さんは猪を一頭狩ってきた。

残念だけど、まだまだ父さんには勝てないなって思った。

という事で、我が家の料理は猪鍋と、ウサギ焼きにする事になり、母さんとアルフ兄さんは料理の準備で大忙しになる。

ちなみに、意外にアルフ兄さんは料理も上手い。

というか、後継でなければ、実は料理人になりたかったらしいし‥

まぁでもアルフ兄さんの料理楽しみだな〜


そうそう、僕も春節祭で9歳になる。

この国のシステムでは9歳になると冒険者養成所に通う事ができる。

しかも、この小さな村には珍しく、冒険者養成所がある。

なんでも、冒険者を引退した人がこの村に住んでいて、冒険者ギルドの支援で養成所を開いているらしい。

まぁ、それだけ魔物が出やすいから、という意味もあるみたいだけど‥


そして、春節祭までは慌しい準備の日々が続き、ついにその日がやってきた。

まずは、朝からみんなで料理やテーブル、飾り付けを準備する。

特に誰が何処とは決まっていないので、大人は大人で適当に割り振って準備を進め、子供はできる範囲の手伝いをする。

僕はラーナと一緒に、近所のエルミやボッツらと飾り付けを手伝う。

ちなみに、エルミやボッツは比較的歳が近く、時々一緒に遊ぶ友達だが、二人は将来家を継ぐ予定なので、冒険者にはならない。

本当は一緒に誘えたら良いんだけど‥


いやまぁ、多分無理か。

なんとなくだけど、はぐれゴブリンでも即刻死にそうな気がする。

少なくとも、戦士向きでは無い。


準備がほとんど終わり、太陽が真上に来ると村長さんが式辞を述べ始める。

「本日はお日柄も良く、こんな素晴らしい晴れた日に皆さんと無事にこうして春節祭を迎えられた事をとても喜ばしく思います。

今年はなんと、開村699年目の春節祭に成りまして、来年の700年目記念まであと一年になってまいりました。

最初は、一人の若者が土地を求め、偶々やってきたこの場所に、家を建て、畑を耕しただけだったのですが、野菜の育ちも良く、近隣の町から人が集まってできたのが、今のこのアラバ村の始まりになったと言われています。

そして、無事に最初の100年目の春節祭を迎えた翌年に……」


いつも通り、話が長いので要約すると、

101年目に、大寒波が襲い、未曾有の飢饉になる。

102年目に、飢饉は脱したが、近隣のゴブリンが増える。

167年目に、ゴブリンが異常増殖し、村が半壊する程に襲われる。

169年目に、隣町の自警団と協力して、ゴブリンの巣を潰す事に成功する。

255年目に、ランドグリズリーが現れ、村人20人が喰われる。

同年、冒険者15人で退治するも、冒険者の犠牲者は4人も出てしまった。

312年目に、地虫が大量発生し、作物の大半が食い尽くされる。

この時、地虫料理が開発され、現在でも村の特産品になっている。

422年目に、謎の奇病で村の少年3人が全身から血を吹き出し、死亡する。

ちなみに、未だ謎の病気だが、その3人以外は被害者が出ていない。

599年目に、ホリデーという若者が、村人10人を刺殺し、村の集会所に火を点けて自殺したらしい。

そして、636年目に、はぐれゴブリンが一家を喰い殺す事件があったりと、色々な苦難を乗り越えて今の村があるから忘れないようにしましょう、というのが要約で、実際に3時間近く話しているため途中からはほとんど誰も聞いてない。

毎回同じだしね。


式辞が終わると、みんな本格的に飲み食いを始める。

そして……

しばらくすると、父さんが1人のおじさんを連れてきた。


「ブルー、この人は元冒険者で、今は養成所の講師をしているヤーフルさんだ。

来月からお世話になるから挨拶しておきなさい」


「ブルーです、よろしくお願いします!」

僕は元気よく挨拶すると……


「なぁ、まだこいつ子供じゃないか?

本当にいいのか?

すぐに死ぬぞ?」

と、ヤーフルさんは聞いてきた。


「大丈夫、確かにまだ9歳だが、こいつはナカナカ筋がいいし、しかも本人の希望だからな……

まぁ、無理そうなら辞めさせてもいいが、とりあえず試験が終わるまでは面倒を見てやってくれ」


「まぁ、あんたがそう言うなら仕方ないが……

俺の指導は厳しいからな、止めるなら今のうちだぞ?」

と、ヤーフルさんが聞いてきたので、


「大丈夫です!やれます」

と、答えると、

「じゃあ頑張れよ」

と、ヤーフルさんは言ってくれた。



最後に「チッ、ガキが」って小声で言っていたようにも聞こえだが、気のせいだろう。

こうして、僕のハンターとしての物語が今始まる、僕はそんな期待に胸を膨らませていた。




少年は、憧れの冒険者の養成所に通い始めた。

無事、ハンターになる事が出来るのだろうか?

次回 第6話 養成所

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