第48時 閑話 レオンの過去 戦後処理
私が目覚めたのは、あのネビュロスとの戦いの2日後だった。
目覚めると、知らない天井。
それよりも、勝てなかった……
いや、相手が万全なら確実に負け、死んでいた。
圧倒的な力を見せつけられ、私は自分の至らなさを痛感してしまう。
世の中には上がいる。
さて、そんな感傷はおいといて、現状を把握しよう。
私は鎧を脱がされ、寝ている。
まぁ、身の回りの世話は土人形がやってくれたみたいだが……
うん、綺麗なベッドが土まみれだ。
大丈夫だよな?
私が女であると言う秘密がバレていないか、ちょっと心配になる。
いくら胸が小さくても脱がされればわかるし……
私が目覚めると、ゲイツさんとベリーさんがすぐにやって来た。
「おはよう、ゲイツさん、ベリーさん。
とりあえず、起きたばっかりでよくわからないんだけど、状況の説明を頼める?」
「お身体は大丈夫ですか?
将軍は敵の死霊兵を倒した後、気絶されてしまい……
ただ、土精霊様達に守られていましたので誰も手出しができない状態でして……
私達も状況はあまり把握できておらず申し訳ございません。
何分、ほとんど一瞬の出来事でしたし」
ゲイツさんの返事から、土人形がちゃんとやってくれた事がわかった。
この2人を始末しなくて済んだ事に、ちょっと安堵する。
次いで、ベリーさんがその後の状況を説明してくれる。
「レオン将軍が倒れられた後、敵の将軍であるエリーゼ カヌレも気絶していたので、これを拘束しました。
ちなみに、エリーゼは暗黒魔法の使い手である可能性が非常に高い事から、手脚の指を切り落とし、舌と背中に魔封じの刻印を刺青で入れ、生かしたまま更に厳重に封印しております。
また、王宮にはただ1人、カヌレ王ドゥーエが結界に守られ、生き残っていました。
ただ、精気を抜かれたのか正気はなく、あーとかうーとか、譫言を呟くばかりでしたので、これを拘束し、地下牢につないでいます。
それと、王都ガストラの民なのですが……
貧民も平民も貴族も兵士も、全て関係なく皆灰となって死んでおりました。
というか、生き物は全くおらず、ネズミやゴキブリ、雑草すらも灰になっていました。
幸い、瘴気は抜けていましたから入るのに問題はありませんでしたけど……
とにかく、この2人は処罰を決める必要があります。
いかが致しましょうか?」
生き残りはエリーゼとドゥーエのみ……
逆に言うと、数万人単位で犠牲が出ているのに、ネビュロスを顕現させるのは数秒って事か。
2日ならまだまだグラッセ王国には伝令が伝わっていないだろう。
私もまだ本調子じゃないしな……
「とりあえず、ドゥーエとエリーゼはグラッセ王国に移送し、そこで処罰を決めてもらって下さい。
どうせガストラに民はいないわけだし、暗黒魔法使いが討たれた事を公式に残した方がいいでしょう。
そうですね、300人くらいで護送し、必ずグラッセ王国に届けて下さいね。
それと、カヌレ王国の国庫を開放し、近隣の町や村の復興に当てて下さい。
あっ、魔導具については、私が使えそうな物を取っておきたいので、分けて貰うようにお願いします。
後は、町民の遺品は整理して、保管しておいて下さい。
特に、盗賊の類が寄ってくるかもしれません。
警備を固め、荒らされないように注意して下さいね。
それと、カヌレ王国の公式記録をまとめておいて下さい。
特にここ最近の状況については詳しくお願いします。
近隣の町や村の配置図や租税の状況、人員の分布なんかもあればお願いします。
とりあえずは、そんな所ですね。
申し訳ないですが、今日一日はゆっくりさせてもらいますね」
「了解しました!
こちらの事は気にせず、ゆっくり休んでください。
それでは任務に戻ります」
そう言ってベリーさんは部屋を出て行く。
「レオン様、ここの所連戦でしたし、もう少しゆっくり休まれてはいかがですか?」
ゲイツさんは心配そうに聞いてくる。
「いや、まぁそんなにダメージは残ってないし……
でも、心配してくれてありがとう。
そうそう、アポーの街のハワードさんは解放するように伝えてくれるかな?
と言っても、ハワードさん達の家族は全員王都にいたんだっけ?
って事はあの死霊術でみんな……
あまり、ショックにならないように伝えてね。
仕方ないとは言え、私達が来なけれは無事だったかもしれないし」
「実は最近の処刑記録を見た所、ハワードの部隊の縁者は裏切りの罪で処刑されたようでして……
そして、密告したバリゾーと言う者は、ガストラの西の町を領地として下賜されたようです」
「なら、ハワードさん達をこちらに呼び寄せ、仇討ちするかを確認しましょうか。
その伝令も併せてお願いしますね」
「了解です!」
そう言うと、ゲイツさんは下がっていった。
私は、とりあえず水魔法でシャワーを浴び、風呂に入って着替え、ベッドメイキングをし直して、再び寝る事にした。
しかし、この一ヵ月後に、私は致命的なミスをした事を思い知らされる。
何故なら……
まず、カヌレ王国国王のドゥーエの処刑は、予定通り滞りなく行われた。
だが、エリーゼは処刑前に民衆の前に晒されていた。
それを、私の兄のラピドが見て……
助けてしまった。
一目惚れ、だったらしい。
そして、公式的には主犯格をドゥーエにし、エリーゼは騙されていた、そう言う事にしてしまった。
そして、自らの妃として迎えた後で、父上を退位させ王位を継いでしまう。
どうも私の活躍を危惧した佞臣が、兄を唆し、私がいない内に後継を急がせたらしい。
しかも、両者が結婚した事で、グラッセ王国とカヌレ王国を併合すると宣言し、最終的にグラッセ帝国を勝手に作ってしまった。
まぁ、正直なところ私は王位なんてどうでもいいんだけど、暗黒魔法使いで、首謀者のエリーゼが生き残ってしまった。
しかも、王妃として。
確かに、手足の指を切り落とし、刻印で魔法を封じているが……
暗黒魔法の知識や記憶が消えたわけではない。
まぁ、自分で使えないと、自分も暗黒魔法に巻き込まれる可能性があるから、使わないとは思うが……
ちなみに、私は近隣の町や村を復興しつつ、カヌレ王国の国庫の金銀を使いガストラに人を集め、都市の再整備事業を行なっていった。
また、ハワードさんには兵を与え、バリゾーの住む町への仇討ちをさせてあげた。
まぁでも、実際はバリゾーの統治が極めて酷く、住民や一部の兵が蜂起し、ほとんど無血でバリゾーを捕まえたらしいけど。
そして、噂は近隣諸国にまで広がり、いくつかの国が服従を誓いに使者を送ってきた。
ちなみに1番最初に服従を誓いに来たのが、新生カヌレ公国のザイナホン カヌレ公で、カヌレ王国の生き残りで、あのファンデル将軍の弟子らしいのだが……
かなりの人格者であり、ドゥーエの子、エリーゼの弟とは思えない。
平和のためにと、また自分の親と姉のした事への償いとして、復興の為の人材や、資材、食料を提供してくれた。
一方、裕福な国からの援助は受け取るが、従属国には民への租税を安く定めさせ、代わりにグラッセ帝国への上納金を免除した。
そのため、グラッセ帝国は領地が劇的に増えても収入はほとんど増えず、この大陸の歴史上、最も貧乏な帝国となった。
実際、何にも変わらない田舎王国のままだし。
しかし、その事もその後の事態に大きな影響を与える。
また、全ての国が私達に好意的、と言う訳ではなかった。
特に、北のベイクド候はカヌレ王国の正当な後継者と称して、ガストラに侵攻して来た。
せっかく復興が始まったと言うのに……
しかも、まだほとんど廃墟なので、勝ったところで得るものは少ない。
なんの意味があるかわからない戦いだ。
そして、多分狙ってだが、私がいないタイミングで攻めて来た。
敵の数は3000人
こちらは、1500人だが、私が鍛えに鍛えられた部下達だ。
しかも、城壁を使い守りに入れば負けるはずがない。
最初に弓隊が無数の矢を敵に射て陣を崩し、ベリーさんとハワードさんが中心になって騎馬隊で突撃する。
混戦となり、ベイクド候の兵たちは混乱し、指揮系統が乱れる。
そしてロンベルト、実は最初から参加していたグラッセ王国騎士団の1人、いや最初はただの従者だった。
だが、私の地獄の修行に積極的に参加し、最後まで残った者の1人だ。
そして、最近では武将として頭角を現してきた。
そのロンベルトがベイクド候を討った。
この戦い以降、いつのまにか増えてきた私の部下達は、レオンハートと呼ばれる様になり、この大陸の最強の兵士と称された。
また、特に私に近い10人は十血と言われ、悪からは恐れられ、善良な民衆からは尊敬された。
一血 絶忠 ゲイツ騎士団長
二血 絶斬 閃光斬のベリー
三血 絶防 護りのハワード
四血 絶技 八双撃のロンベルト
五血 絶射 乱れ撃ちのマリード
六血 絶炎 大火のアラーキー
七血 絶略 稀代の戦略家メルキド
八血 絶警 索敵のミリアリア
九血 絶壊 破壊のランドル
十血 絶噛 人面犬ビリー
うん、最後のは本当に犬なんだけど、人の顔をし、人語を話す、巨大な犬。
その実力は、単純な戦闘だけなら随一だ。
こうして、私は着々と仲間を増やし、国土は勝手に増え、実際に皇帝である兄よりも強大な権力を持ち、税を勝手に安くする。
そんな状況を、あの女が許すはずもなかった。
兄ラピドと結婚し、1年が経つとエリーゼの子供が産まれた。
第1皇子バリスタが誕生、国中がお祝いムードに染まる中、その日から私の命を狙う刺客が差し向けられるのだった。
狂気の村
その名はサノバビッチ
殺人鬼、強姦魔、狂魔術者、白痴、食人鬼、死体愛好家……
あらゆる社会のはみ出し者が集まる村である。
僕は、そこで産まれた……らしい。
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