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第44話 閑話 レオンの過去 剣の頂

私達はアポーの街を出た後、カヌレ王国王都を目指し、行軍を進めた。

はずだったのだが……

カヌレ王国軍の最初の行軍の影響で、途中の村や小さな町は荒廃していた。

人々は食料に困窮し、山賊や野盗が跋扈している、そんな状況に、人々は明日をも知れぬ生活をしていた。

なので、私達は山賊や野盗を討伐し、土魔法で荒れた土地を開墾し、糧食を分け与え、皆を助けていった。


一方で、野生動物を狩り、コボルト等を壊滅させて魔石を稼ぎ、鉱脈を探して鉄を掘り当て武器にしたり……

そんな事をしていたら、かなりの時間が経ってしまった。

ついでに、途中にあった大きな街も攻略していたのも時間のロスになった。

ただまぁ、途中の村や町の噂を聞いて、いくつかの街は降伏し、無血開城となったのだけど……

無論、徹底抗戦の街もあり、住民を犠牲にしたゲリラ戦術には、かなり苦労をさせられた。

他にも、降伏したが貴族による腐敗が酷い街もあり、一つ一つを解決していると、どうしても時間がかかってしまったのだった。


そして、その間にカヌレ王国軍は、カヌレ王国に忠実な者だけを集めていた。

国内の精鋭部隊を選りすぐり、最終的に集まったのは、その数20000人。

この軍勢を、ファンデル ワールス将軍率いるビザールレギオンが中心となって進軍し、イーストグラスと呼ばれる草原に布陣した。

イーストグラスは、カヌレ王国王都から早馬で8日程の距離があり、ここを抜ければ王都まではかなり近い。

それ故に、絶対こちらを阻止するつもりなのだろう。


対するこちらの勢力は5000。

しかも、途中で糧食をほとんど使い果たし、残りは3日分のみ。

つまり、短期間で数倍の敵を倒し、糧食を奪う必要がある。


斥候の報告では、カヌレ王国軍はイーストグラスから陣を動かす様子はなさそうだ。

2度目の大戦……

今回もこちらから出向くとしよう。

私は、ゲイツ騎士長のみを従え、敵陣に赴く。


ん……

この辺りは土魔法の阻害結界が張られているな。

なるほど、こちらの手の内をちゃんと調べ、対策しているようだ。

相手はかなり慎重で、手堅い性格なんだろうなぁ……

これは、楽しめそうだ。

まぁ、そんな事をゲイツさんに言ったら、帰るって言われそうだけど。


それに、敵軍の兵士達は一糸乱れぬ隊列、整えられた兵装、鍛えられた筋肉、どの兵も精鋭だと言う事が見ただけでわかる。

更に、中央に布陣する、紫の鎧を着た一団。

多分あれがこの軍の主力、ビザールレギオンだろう。

私は、その一団に向かってゆっくり馬を進め、声を張り上げて口上を述べる。


「私は、グラッセ王国の第二王子、レオン グラッセ。

グラッセ王国軍の将軍だ!

カヌレ王国軍の侵略に対し戦いを始めたが、これ以上の禍根を無くすため貴軍を討伐させてもらう。」


すると、中央の軍勢が2つに割れ、1人の男が出てきた。

身長は私と同じ位の老人。

バルサ将軍に比べれば、一見小さく見える。

だが、その筋肉は必要な部分に絞って、かなり鍛え込まれている。

多分、私と同じスタイルなんだろう。


そして、その老人は私の前に来て口上を述べる。

「ワシの名はファンデル ワールスなり!

カヌレ王国軍の将軍だ。

我が弟子、バルサを倒した奴を見に来たが……

お主、若いのにかなりの使い手、だな?

確かに、バルサでは荷が重いな。


ワシとしてはグラッセ王国に恨みはない。

それに、戦場での生死は常なる事だからな。

まぁ弟子の復讐をしにきたわけではない事だけは言っておく。

たが、我が国カヌレ王国を守るため、我が主の命なれば全力で貴君を叩き潰す!

こちらには一切の油断も躊躇もないぞ、かかってくるがいい」


ファンデル将軍の言葉に反応し、ゲイツ騎士長が前に出ようとする。

「ここは私が、レオン将軍はお下がりください」


「ゲイツさん、悪いけど……

貴方じゃ3秒も保たない。

実力差を弁えなさい。


貴方は予定通り、下がって皆に守りを固める様伝えなさい。

いいですね?」

そう私が笑顔で言うと、ゲイツ騎士長は蒼白になり、「か、かしこまりました!」

と、言ってすぐに踵を返し、下がっていった。


「部下が失礼致しました。

それでは、遠慮なくこちらから行かせて頂きますね。


いざ、勝負!」


私は剣を抜き払い、馬を走らせファンデル将軍に突っ込んで行く。

ファンデル将軍も呼応し、その腰から剣を抜き払う。

漆黒の刀身

多分、普通の剣ではない。

魔剣の類だろうか?

だが、魔剣なら精神か肉体に多大な影響を及ぼす。

ファンデル将軍は見た感じ、異常や異形を感じない。

魔法のかけられた剣、魔法剣と言ったところか。


とりあえず、最速の一撃で斬り込む。

だがしかし、アッサリと受け流され、代わりに一撃を喰らう。

と言ってもマントが切れただけだが。

それから、馬を反転させ、何度か打ち合うも互いに斬撃を当てる事が出来ない。


「くははははっ!

ここまでの強者に出会ったのは久しぶりじゃ。

小童、お前かなりやりおるな?

ワシにここまで打ち合わせるなんて、先代の王以来じゃ、血が騒ぐのう」


「私も貴方位に強い人間にあったのは、初めてですよ。

できれば、貴方の全盛期に戦って見たかったですね。

それはともかく、その黒い剣、中々の業物ですね。

見て下さいよ、私の剣、これでもかなり精錬した鋼の剣がこんなにボロボロですよ?」


「これか?

これはな、隕石と言う空から降って来た石を、300年かけて魔導師が精錬したと言われる魔法の剣じゃよ。

まぁ本物の魔剣には劣るがな、かなりの強度と斬れ味を持っているからの。

ワシも先代の王から賜った時は涙を流して感動した一品じゃよ。

とは言え、実戦でこの剣を受け止められたのはお前で2人目だ、誇っていいぞ、小童よ。

だがなぁ、その剣ではもう戦えまい。

後は戦で雌雄を決してもいいぞ?」


「いえいえ、心配には及びませんよ。

こうして魔法で直せば、すぐに戻りますから」

そう言って、私は刀身を1撫でして、魔法で剣を直す。


「そうでなくてはつまらないしな。

ならば、ワシもここからは本気を出させて貰おう。

行くぞ!」

そう言って、ファンデル将軍は馬を降り、魔法の呪文を唱え始める。

身体強化魔法

ただし、常時詠唱が必要なタイプの様だ。

詠唱が止まれば効果は切れる。

代わりに魔力の消費は最低限で、緩急をつければ多少長い時間でも使用できる。


ならばと、こちらも馬を降りて、身体強化魔法を使う。

と言っても、無詠唱で持続効果型だ。

緩急はつかないので、沢山の魔力を使うが、常時詠唱する必要はない。

まぁ私の魔力なら通常は1週間は保つから、当面の問題はないが。

それと、剣にも自動回復を付与する。

これで打ち合いもできるだろう。


そして、互いに身体強化した状態で何度も打ち合う。

1を数える間に3合打ち合うペースで、互いに攻防を繰り返す。

力とスピードはほぼ互角。

後は技だが、高速戦闘ではフェイントをかけても意味はなく、ただただ一手でも多く、相手の隙を見つけ、打ち込むしかない。

斬り込んでは返し、受けては斬り返す、この繰り返しを暫く続ける。


しかし、この爺さん本当に強いな。

身体強化の魔法も完全に制御しながら、戦闘をこなしている。

構えや斬撃に隙は無く、正に剣の頂きに相応しい、そんな実力の持ち主だ。

惜しい……

できればこんな所で殺したくはないが、仕方ない。


私は一旦間合いを取って、ファンデル将軍に話しかける。

「こんな楽しい戦いは初めてですよ。

貴方と会えて良かった。


でも、そろそろ時間だし、私も本気でいきますよ?」

そう言って、私は剣を鞘に納める。


「実は私、剣が苦手なんですよね。

って事で、こっちでいきますねー」

私は脇を締め、拳を握り、正中に構える。

拳闘のスタイル、そう私の得意な闘い方は殴り合いの方なのだ。


ファンデル将軍は、私が剣を納めるのに若干驚きつつも、詠唱を続け、警戒している。


暫く互いの目を見つめ合った後、ファンデル将軍が間合いを詰め、最強、最速の一撃を上段からの袈裟斬りで放ってきた。

私はそれをギリギリで見極め、両手で剣に掌打を当て挟み込む。

真剣白刃取り……

しかも、もちろん只の掌打ではない。

魔力で振動を与え、ファンデル将軍の魔力波長を相殺し、剣を持つ手の身体強化をキャンセルさせつつ、掌にもダメージを与える。

そこから、強引に剣を引き抜きつつ、右脚で渾身の蹴りを放つ!


その蹴りはファンデル将軍の頭にクリーンヒットし、脳漿をブチまけ爆散させる。

そして、身体強化魔法の制御を失ったファンデル将軍の体も、爆散する。

こうして、剣の頂と言われたファンデル将軍を、私は倒した。




ただ強い者が将軍ではない。

兵を率いる者、例え自らが死したとしても……

ファンデル将軍の策略がレオン達に襲いかかる。

そして、イーストグラスの戦いに幕が降りる。


次回 第45話 閑話 レオンの過去 将軍の器

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