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第43話 閑話 レオンの過去 街の攻略

カヌレ王国軍の残党を倒していくと、右舷側でカヌレ王国軍を裏切った一団がこちらに向かってくる。

皆一様にボロボロの防具をつけ、武器も棍棒や鍬などを装備している。

農奴か?


「我々は貴方達の敵ではありません!

私は元フロマージュ国の王子、ベリー フロマージュと申します。

まぁ今ではカヌレ王国軍の奴隷兵士に身をやつしていますが……

貴方達はグラッセ王国の方でしょうか?

もし良かったら、我らもカヌレ王国への抵抗軍に加えさせてくださらないか?」


先頭の男が名乗り、仲間になりたいと言ってきた。

この男……

バルサ程ではないがまあまあ強い。

ちなみに、敵ではなさそうなので、土人形には攻撃しないようにさせていたのだけどね。


「うーん、とりあえずウチの騎士団は600人くらいしかいないよ?

そっちの方が人数多いけどいいの?」


「いやいや、先程の魔法やゴーレム軍団を見せて頂きましたが、とても我らでは敵うものではありません。

盾代わりにして頂いても構いません。

憎っくきカヌレ王国を倒すのを手伝わせてください!」


「というか、私の仕事は時間稼ぎ?

らしいんだけど、このまま進軍しても良いのかなぁ。

あっ、ゲイツ騎士長、丁度良いとこに来た。

なんか、この人達が付いてきたいらしいんだけど、勝手に仲間にして良いの?

あと、カヌレ王国軍は撤退してるけど、追った方が良さげ?」


「将軍、とりあえずグラッセ王国側に来た残党は殲滅しました。

恐らく生き残りは、アポーの街に逃げ込んだかと。

普通でしたら、ここで撤退するベきですが、敵の残した糧食や支援物資も沢山ありますし、この方達が加われば街攻めも可能かと。

正直な所、現在の状況は想定外で、私達が生きていられるのは全て将軍のおかげです。

一度は捨てた命ですから、将軍の命令でしたら我ら騎士団付き従う所存です!」


「んー、それじゃ、今日はとりあえず休憩しましょう。

ちょっち私も疲れたし。

敵の糧食をみんなで分け合いましょう。

んで、明日はアポーの街に攻め込むって事でどう?」


「了解しました!」


とりあえず、私は土人形に命じ、カヌレ王国軍の死骸から兵装を奪って、ベリー達に渡した。

また、全員に充分な食事と、酒を振る舞い、ゆっくり休ませる。

ちなみに、ベリー達奴隷兵士は約3000人。

皆、充分な食事も与えられず、劣悪な環境に置かれていた事もあり、解放した私達に心から感謝し、涙し、忠誠を誓った。

この一団が、後にこの大陸最強と謳われるレオンハーツの中核となるのだが……


その頃、アポーの街では、生き残りのカヌレ王国軍7500人が、一気に逃げ込んできて街を占拠した。

アポーの街は100年程前はグラッセ王国の領土だったが、カヌレ王国の騙し討ちにあい、占領された外壁に守られた小さな街である。

人口は約3000人。

そんな街に、敗残兵7500人が雪崩れ込んで来れば、どうなるのか?

門は固く閉ざされ、男達は兵役として強制的に徴兵され、拒めば処刑される。

食料は全て奪われ、若い女は誘拐され兵士の慰み者にされる。

街の備蓄なんて、少しずつ分け合っても一カ月くらいしかない。

しかし、将を失ったならず者達にそんな分配はできない。

だから、殺して奪う、ただそれだけの事だ。


援軍は……

今回のグラッセ王国攻めは、かなり本気で、短期決戦のための主力が集められていた。

つまり、負けるはずがない戦いになるはずだったのだが、蓋を開けてみると完全な敗北、援軍など用意もされてないし、来るはずもない。

しかも、将軍を見殺しにして逃げた、となればカヌレ王国での処刑は確実、だから皆自暴自棄になっている。

街はさながら阿鼻叫喚の地獄の様な混乱状態だった。


翌朝、私達は兵装を整え、アポーの街へと向かう。

途中の道には土人形に殺された死体が無数に転がっており、それを掻き分けながら進んでいく。

ちなみに、土人形は既に土に還っているので、ベリー達に任せている。

彼らは文句の一言も言わず、一生懸命に従っている。

これなら、信用できそうだな、私はそう思った。


そして、アポーの街に着くと、当然の様に門は閉ざされ、壁上には弓兵が構えていた。

容易に近づく事はできない。


「レオン様、我らフロマージュ隊が先行して、正面から突撃して梯子をかけます!

その間に、レオン様達が魔法で城壁を攻略して頂けないでしょうか?」

ベリーが作戦を上申してくる。


「うーん、それだと犠牲が痛すぎるしね〜

それより、1人だけ決死隊を出せるかな?」


「ならば私が、私はキウイと申します。

ベリー様の執事をしておりましたがこの歳です。

いつ死んでも本望ですじゃ」


「わかった、キウイさんの犠牲は無駄にしないから。

皆も無駄に死ぬ事は私が許さない!

それと、これから街を陥すが、次の事は必ず守るように。

一つ、無抵抗の町民は殺さない事

一つ、降伏した兵士は捕縛する事

特に徴用された町民は出来るだけ殺すな。

一つ、街の備蓄、金品には手を出さない事

これらを守れない者達は私が処刑する!

わかったな!」

私がそう言うと、皆一様に頷いた。


「ならば行くぞ!

キウイさん、今から身体強化の魔法をかけるので、町壁を駆け上り、裏側に回って門を開けて下さい。

ただし、100を数えるくらいしか保たないから注意して下さいね。

じゃ、いきますよ!」

そう言って、私はキウイさんが死なないギリギリまで、身体強化の魔法をかける。

すると、ヨボヨボだったキウイさんの身体が何倍にも膨れ上がり、まるで別人の様になった。

そして、私が魔法をかけ終わると、全速力で駆けていき、町壁を駆け上り、そして門前の数人を殴り殺して、門を開けた。

あまりにもの速さに、壁上の弓兵は弓を射る事すら出来ず、誰1人としてキウイさんを止める事は出来なかった。

そして、門を開け、暫く戦っていたキウイさんは……

突然全身から血を流し、肉が弾け飛んで、倒れた。


私も文献で読んだだけだったが、身体強化魔法は自分以外にかけると、暫くは効果があるが、時間が経つと全身の筋力が耐えられなくなり、死亡すると言われている。

なので、禁忌とされているのだが、まぁ実際にやってみてよく分かった。

次からは止めておこう。


それはともかく、私は皆に号令をかける。

「キウイさんの犠牲を無駄にするな!

全員、突撃!」

キウイさんの犠牲に応えるため、フロマージュ隊が門に目掛けて突進する。

降り注ぐ弓矢の中を盾を掲げ、一気に進んでいく。


敵軍は必死に門を閉めようとしているが、フロマージュ隊の怒涛の進撃に追いつけず、あっさりと突破される。

まぁ私が魔法で固定しているんだけどね〜


ちなみに、今回私はあまり戦闘に参加していない。

たまには将軍っぽい事をしてみようかな、と言う気まぐれと、フロマージュ隊に功績を挙げて貰おう、と言う配慮からだ。

この戦いに成功すれば、グラッセ騎士団との結束も固まり、今後の戦いに有利になる。

まぁ、街にいるカヌレ王国軍に強者がいないのもあるんだけど。


早朝の奇襲で、前日の敗戦の疲れかカヌレ王国軍の大半は寝ていた。

しかも、速攻で門が破られるとは思ってなかったのだろう。

武装を解除し、寝ているカヌレ王国軍の兵士は、ほとんど抵抗する間もなく、フロマージュ隊に殺されていった。


戦いは比較的短期で終わり、最終的にフロマージュ隊の死者は5人、皆私の言いつけを守り、掠奪などは行っていない。

対するカヌレ王国軍の死者は7000人以上。

住民の死者は……大半が突撃前だが800人程。

それと、カヌレ王国軍の捕虜が254人。


捕虜に関しては、1人ずつ壇上に上げ、住民の判断で処刑していく。

金品を掠奪した将校、強姦魔の槍使い、少女ばかり狙う殺人鬼……

住民達の「殺せ!」と言う怒号の中、1人ずつ断頭されていった。


その結果、生き残りが決まったのは、ハワードとその部下30人のみ。

ハワード達の部隊は住民をいち早く避難させ、食糧庫を守り、配給した。

決して街の人に手を出さず、他のカヌレ王国軍に規律を守る様に説得していた。

その姿を見ていた住民が、ハワード達の助命を嘆願してきたのだ。


「ハワード、貴方達の命を助けて欲しいと住民から訴えが出ています。

私としては、敵対しないなら解放しても良いと思っていますが、どうしますか?」

私はハワードに問いただす。


「私として、カヌレ王国の録を食む一族の出身です。

例えこの身が捕虜になろうと、カヌレ王国に仇なす者に与する訳にはいきません。

だから、解放しても必ず貴方達と敵対するでしょう。

なので、貴方の提案には頷けません」


「その潔さ、殺すには惜しいですね。

ならば、捕虜として、この戦争が終わるまでこの街に居てもらいます。

住民の方達も、いいですね?」


こうして、ハワード達の部隊はアポーの街で軟禁される事になった。

また、住民達にはカヌレ王国軍の残した兵糧の大半を渡し、フロマージュ隊の負傷者を含め100人を治安維持部隊として街に残し、私達は次の街を目指すのだった。


私達がアポーの街を攻略してから数日後、バリゾーと言う男がカヌレ王国の王都に到着する。

バリゾーはカヌレ王国軍の斥候で、最初の戦いで敗戦濃厚となった瞬間に逃げ、一目散に駆け王都を目指した。

そして……

「バリゾーよ、つまりマリオットはグラッセの卑怯な手にかかり戦死した、そう言う事なのだな?」

バリゾーはカヌレ王国の国王リッチモンドに報告する。


「はい、マリオット様は口上を述べた後で魔法の罠の不意打ちを喰らい、戦死。

その後、元フロマージュ王国の奴隷兵士が反乱し、隊は大混乱に。

副将のバルサ様ですら、罠にかかり戦死したとの噂です。

恐らくですが、ハワード達の部隊がグラッセ側と通じていたのではないかと推測します」

このバリゾーと言う男、以前にハワードと何度か揉めており、恨みを持っていた。

そのため、敗戦の責任をハワード達の部隊に全て擦りつけたのだった。


「まさか、ハワードは確か……

我が国に古くから仕えるグロッグ家の者だったはず。

しかし、あの一族は凋落したとは言え、忠に厚く、裏切るはずが……

だが、ハワードが裏切ったならば、グラッセ程度の国にやられたとしても不思議ではない。

許せん!

グロッグ家は本日限りで取り潰し、一族郎党を皆殺しにせよ!」


こうして、国王の命により、ハワードの家族、親戚一同は全て拷問を受け、指や舌を切られ、全身の生皮を剥がれた上に、斬首される。

その中には、幼い子供まで含まれていた……


そして、国王は至急国軍を招集し、討伐隊を編成する。

カヌレ王国軍最強と謳われる、ファンデル ワールスを将軍として。

こうして、後にイーストグラスの戦いとして語られる決戦の火蓋が切られるのだった。


レオンは次々と街を陥とし、降伏させ、進軍していく。

そして、イーストグラスに辿り着き、カヌレ王国軍最強の男との戦いが始まるのだった。


第44話 閑話 レオンの過去 剣の頂

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