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第39話 白と黒

僕がガルフの群れに突入すると、ガルフ達は嬉々として、汚らしい涎を撒き散らしながら僕に飛びかかってきた。

僕は、そいつらへと怒りをぶつけながら、斬り裂いていく。

結論から言うと、パワーグローブと指輪の効果のおかげで、僕の戦闘能力は段違いに向上した。

そのため、実質はワンサイドゲーム、ほぼ無双状態だった。


パワーグローブにより握力が僅かに向上しただけで、以前より深く斬り込めるようになった。

以前なら皮を斬る時の抵抗が邪魔をしていたために、斬り切れない事もあったが、今なら肉も、骨も斬り裂ける。


また、戦闘中の思考がクリアになり、敵の弱点を最適ルートで綺麗に描き斬る事ができる。

複数相手でも、迷う事なく、斬り刻める。


最初は若い、雄のガルフが40匹位連続で襲いかかってきたが、単調な攻撃だったため、まるでただ手を振っているだけの様に戦う事でアッサリと死んでいった。


次に襲ってきたのは壮年の雄のガルフ30匹だった。

コイツらは連携が取れており、常に僕の死角を狙ってくる。

時には波状攻撃を仕掛けたり、左右にステップをズラし、翻弄しようとする。

だけどさ……

「遅いんだよ!!!」

さっきの若いガルフが連携を取っていれば、僕も多少は苦戦しただろうけどな。

力はあるみたいだが、当たらなければなんて事はない。

ただただ圧倒的な速度で斬り裂いていく。


とは言え、流石に疲れが出てきたところで、次は老齢のガルフが襲ってきた。

コイツらは……

遅いし弱いが、隠れるのが上手い。

普通のハンターなら、翻弄され、殺されていたかもしれない。

だけどさ……

僕は魔石を感知できるんだぜ?


隠れたって丸わかりだし、むしろ1匹ずつだから楽に殺せる。

おかげでちょっと休憩ができたくらいだ。


そして、そこから少し進んだ所にいた次の集団は雌ばかりだった。

ガルフは女系の集団で、雌の方が一回り大きいと言われている。

確かに、先程の雄より大きくて、動きも機敏だ。

一説によると、雄は狩で獲物を食べても、雌に蹴られ吐き出させられるらしい。

そのため、雄は常に飢えており、小さいが獰猛な個体となる。

一方で、雌は大きく、強くなり、沢山の子供を産む。

こうして、群れを大きくし、繁殖域を増やす習性があるらしいのだ。


つまり、コイツらはさっきの奴らより、基礎能力が高い。

しかも、動きが統率されており、さっきの壮年のガルフ並にパターンのある撹乱を仕掛けてくる。


流石に、この動きと素早さには僕も手こずらされる。

焦らず、丁寧に、1匹、また1匹と、避けては斬りつける。

すると、痺れを切らしたのか、10匹位で同時に襲いかかってきた。


常に連続した攻撃に、僕は辛うじて身を守るので精一杯になってしまう。

しかも、雌ガルフは時々入れ替えをしている。

これで、常に無傷の元気なガルフが前後左右の全方位から飛び掛かってくる事になる。

これが女の連帯感なのか?

全く困るな……

まぁ、魔石の感知でくる方向は読めるから、何とか今のところかすり傷以外はつけられていない。


だが、こちらの体力が削られ続ければ、そのうちヤバイ事になる。

ならば、短期決戦でキメるしかない!

僕はガルフの攻撃を避けながら、神経を研ぎ澄ませていく。

思考をクリアにし、1秒先の動きを予想し、最も効率的な動きでガルフを2匹同時に斬り裂く!

これを連続して行えば、10匹だろうと一瞬で斬り伏せる。


流石に無傷のはずの10匹が、一瞬で死んだので焦ったのか、数匹が勝手に襲いかかってきた。

まぁ、そんなのただのカモだけどね。

次々と斬り伏せ、死骸にしていく。


すると、雌ガルフの群れが2つに分かれ、真ん中から傷跡だらけの雌ガルフが出てきた。

多分コイツがボスなんだろう。

ボスガルフは、1吠えすると、単騎で襲いかかってきた。


確かにコイツは戦闘慣れしている。

今までのどんなガルフよりも、大きく、強い。

だけど……

ボスゴブリン程ではない。

浅い傷でも、血抜き君なら確実にダメージを与えられし、今の僕なら充分に動きを把握できる。

僕はガルフの攻撃を避け、右脚の付け根に血抜き君を突き刺す!

ボスガルフは……バランスを崩し、横転する。

その隙を逃さず、馬乗りになって四肢の付け根に血抜き君を突き刺して行動不能にする。


それを見た他のガルフは、一斉に襲いかかってくるのだが、統率されていなければただの烏合の集。

そんなに時間がかからず、全て斬り伏せる事ができた。

ちなみに、ボスガルフはまだ死んでいない。

ワザと生かしてある。


そして、次の集団に向かうと、そこは子供のガルフや、妊娠した身重のガルフが集まっていた。

護衛のガルフは数匹しかいない。

しかも、こちらを襲って来ずに、ギャンギャン吠えながら守りに徹している。

それならば……


ボスガルフの腕を、奴らの前で斬り落とす。

そして、それをガルフ達の前に投げてやる。

怒りで数匹がこちらに飛びかかってきた。

こうなると、防衛ラインはガタガタになり、僕は余裕を持ってガルフ達を殺していく。


そして、残ったのは、小さな乳飲み子ガルフと身重のガルフのみ。

乳飲み子ガルフを庇う母ガルフを殺し、子ガルフは適度に痛めつける。

身重のガルフは逃げようとするが、動きが遅いのですぐに捕まえ、腹を執拗に蹴って堕胎させる。


その風景に、ボスガルフは涙を流し、許しを請う様に鳴き出した。

だが、アラバ村の人達だって同じだ。

許しを請うたら助けるのか?

粗方殺すか、戦闘不能にした後、僕はボスガルフの前に焚き火を作り、子ガルフを生きたまま火に入れていく。

これはエルミの怨みの分

これはボッツの怨みの分

これは幼いピーチの無念の分

そして、これはピーチを守れなかったアナの無念の分

ジャルの怨みの分

……


死んだ村人達の事を思い浮かべながら、僕は子ガルフを殺していく。

時には滅多刺しにし、時には生きたまま皮を剥ぎ、目を抉り、舌を切り、尻尾を縦に裂いたり、執拗に殴打して殺したり。

とにかく、思い付く限りの処刑で、殺していった。

そして、最後の1匹が死んだ時、丁度ボスガルフも息を引き取った。


ふと見渡すと、白い雪の平地が、ガルフの死骸で赤黒く染まっている。

白と黒のコントラストが、僕の胸を締めつける。

まるで僕の心の様じゃないか……

人は雪の様に白い正義や愛といった綺麗な心と、ドス黒い欲望や憎しみといった穢れた心を誰しもが持っている。

そんな事を語りかけている様で、僕は思わず涙を流してしまった。


そして、村に戻ろうと思った瞬間……

巨大な魔石の気配を感じた!

少し離れているが、マザーやボスゴブリンよりも遥かに大きく、威圧感が高い。

こんな気配……

何故気づかなかったのだろう?

それだけガルフへの復讐で周りに意識がいっていなかったという事なんだろうか?


僕は恐る恐る、その魔石の気配に向かって近づいていく。

草原を突っ切り、森を抜け、ゴブリンの住処の洞窟のある草原にたどり着く。

そこにいたのは……

白と黒の模様の巨大な獣

愛くるしい顔つきと、丸っこい身体つきに反して、鋭い牙と爪を持つ。

アイルロポダだ!

別名白黒熊

普段は魔笹と言う魔力を豊富に含んだ植物しか食べないが、本質的には雑食性で、魔笹がなくなると手当たり次第に食べ物を探し出す。

C級中位のモンスタークラスの魔物だ!


※分類として、S A B C D E F Gと別れており、ゴブリン単体でFクラス、ガルフ単体でGクラス、ボスゴブリンとマザーとガルフ集団がEクラス位の感じとしています。

Dクラス以上はモンスターの魔物として分類しており、モンスターを倒したハンターのみモンスターハンターを名乗れます。


初めてのモンスターに、僕は奥歯がガタガタ震えるのを感じる。

こんなのが村に来たら……

近隣の討伐隊くらいでは歯が立たない。

村、いや下手すれば街まで被害が出るかもしれない。


でも、いや待てよ?

ひょっとして……

ガルフはアイルロポダから逃げてこちらに来たのかもしれない!

つまり、真の仇はコイツと言う事になる。

ならば、僕は死んでも戦わなければならない。

死んでいった仲間達や村の人達のためにも!

僕はそう決意して、アイルロポダに向かっていった。


圧倒的な力の前に少年はなす術もなく、深い傷を負う。

そして……


次回 第40話 死を呼ぶもの

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