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第37話 狼少年

冬が来て、雪が積もり始めたある日の夜、僕は夢を見た。

無数の獣型の魔物が、村を襲う。

斬っても、斬っても、斬ってもキリがない。

そして、辺りを見渡すと、無数の魔物の死骸と、近しい人達の遺体。

それらが入り混じる、肉の塊を掻き分け、僕は進む。

そして……

何か大事な所で、目が覚める。


翌朝、父さんに聞いてみると、感知系能力者は予知夢を見る事があると教えてくれた。

そして、念のためと、村長さんに頼み、探索隊を組んでもらう。

僕とジャルも冒険者として参加し、村の近くの森に異変が無いかを確かめた。

だが、特に何もなく、ただの気のせいという事になった。

もちろん、これだけ雪が積もっている中をそんなに遠くへは行けない。

ひょっとしたら奥の方かも?

と、提案したが、遭難の危険の方が高いと却下された。


僕はジャルにも賛同を得ようとしたんだけど……

用事があるから、と何処かに行ってしまった。

アナ達のいる家とは違う方向に。


仕方がないので、僕も出来る範囲で探索をする。

しかし、何も見つからなかった。


そして、それから3日後に同じ夢を見た。

僕はまた父さんに話すと、村の人は無理かもだけど、父さんは探索に付き合ってくれると言ってくれた。

村の人々は前回より少ないけど数人来てくれた。


でも……

何も見つからなかった。

更に、その夢は2日おきに続いた。

僕は焦って探索を続けるが、成果は一向に出ない。

探せど探せど、魔物の痕跡は見つからない。

そのため、村の人はあきれ返り、ジャルですら探索に付き合ってくれなくなった。

それでも、父さんだけは付き合って探索してくれた。

まぁついでに狩をしてたけどね。

そう言えば、ジャルはなんか最近いつも忙しそうだ。

アナもジャルの帰りが遅いとこぼしていたし……


更に、毎日毎日同じ夢を見る様になり、僕は睡眠不足になっていった。

探索は1人でも続けている。

だが、今年は雪が多く、寒さに震えながらの探索は、思った様には進まない。

せめて何かの気配だけでも感じれば……


そして、その日の夜はいつもと違っていた。

大量の魔石の気配に目が醒める!

僕は、急いで準備し、父さんと母さんを起こす。


「今度は夢じゃない!

僕ができるだけ倒すから、父さんと母さんはこの家を守って」


そう言うと、父さんと母さんは頷き、準備を始める。

そして、僕は家を飛び出して森へと向かった。

ウイングブーツの性能をフル活用しながら、森の雪道を平地の様に駆け抜ける。

月は夜の真上だったから、少し明るかったのも幸いしていた。

そして、森の中腹まで来ると、そこには無数の魔物、ガルフがいた。


ガルフ、中型犬くらいの狼型の魔物で、1匹あたりの強さはゴブリン以下だ。

ただし、かなり連携のとれた集団行動ができるため、ガルフの集団はゴブリンよりも強いと言われている。

しかも、繁殖期には爆発的に増えるため、その集団が100を超える事も珍しくはない。

実際、今ここにいるガルフ達もかなりの集団だ。

ちなみに、ガルフは女性や子供等、弱い存在を狙って襲う習性がある。

つまり、僕は狙われやすいらしい!


ガルフはすぐに僕を取り囲み、常時3匹位が突撃、離脱のヒットアンドアウェイ戦法で襲ってくる。

僕は、なんとか避けながら斬り返すが、同時に斬れるのは2匹くらいだし、斬り込みも浅い。

暫く戦って、倒したのは4匹しかいない。

しかも、休みなくくる攻撃に体力は削られていく。


ヤバイな……

仕方がないので、僕は咄嗟に煙玉を連続して3個使い、大量の煙を出す。

そして、バンダナを目の上から装着して、こちらからガルフに討って出る!

それからは、無我夢中で斬って、斬って、斬りまくる。

10匹位殺した所で、数えるのは止めた。

そして、気づけば僕の周りはガルフの死骸であふれており、さながら血肉の池の様になっていた。

ガルフは森の奥にまだ大量にいる。

それに、村にも何個かの集団が行ってしまっている!


僕は迷う暇もなく村へと戻る。

しかし、途中で会敵し、足止めを喰らう。

1匹1匹は弱いが、相手は比較的素早く、四足歩行だから背が低く斬りにくい。

飛び掛かってくるタイミングの方が斬りやすい。

そうこうしていると時間が経ち、多分10匹位の集団を2つ位先行させてしまった。

多分、村に着いてしまったと思う……


父さんと母さんならアレくらい大丈夫だとは思うけど。

それに、ジャルがいればアナも大丈夫なはず……

だが、他の村人は、危ないだろう。


はやる気持ちを抑えきれず、全力で村へと向かう。

そして、着いたその先で見たのは阿鼻叫喚の地獄絵図だった。

ガルフ達は満腹なのか、若干さっきより動きが鈍い。

つまり……

「村人を喰ったって事か!!」

僕が怒りの雄叫びを上げると、ガルフ達は弱い子供がいると思ったのか、僕の方に寄ってきて襲い掛かってくる。


僕はそれを、怒りをぶつけながら斬り刻んでいく。

だが、後先考えずに斬りまくっていたため、息が上がってしまう。

その為、最後の1匹を倒したところでその場でへたり込んでしまった。

幸い、僕の討ちもらした弱りかけのガルフは村人が倒したみたいだし。

ちょっと休憩して、家に戻ると家族は全員無事だった。

「父さん達なら問題ない相手だったんじゃない?」


「いや、ガルフは大人をあまり襲わないから、5匹倒したら逃げられた。

ブルーはどうだったんだ?」


「僕は逆に狙われやすかったから、結構倒したよ。

魔石を回収する暇はなかったけどね。

それより、ジャルとアナは大丈夫かな?」


「すまない、こちらで手一杯でな。

ジャルとアナの家はブルーが見てきてくれないか?」


「わかったよ父さん」

そう返事して、僕はジャルとアナの家に向かう。


ジャルとアナの家……

一見何事もなさそうだが、何か、そう言葉にできない何かが違う。

僕は、一瞬近寄るのを躊躇ってしまったが、意を決してドアを叩く。


返事はない。

というかドアが開いている。

普段ならよくある事だが、この事態ではおかしい。

そして、中に入ると血の匂いが充満している。


中には……

抵抗する間もなく、喉と腹を喰い殺されたアナがベッドに横たわっていた。

そして、足元には……

赤子の手首……


僕は何も考えられず、アナの家を飛び出る。

そして、胃から込み上げるものを抑えきれず、吐いてしまう。

何で?何で?あんなに強いアナが何故?

ジャルは?

何でジャルがいない?

そんな事を考えながら茫然としていると、ジャルが帰ってきた。


お酒を飲んでいるのか上気しており、顔が赤い。

しかも、着衣が若干乱れて、首筋に赤い跡が沢山ついている。


「よー、ブルーじゃん。

こんな夜中にアナに用事?

何かあったのかい?」


「よーじゃないよ!

今まで何処に行っていたんだよ!」

僕は焦りながら言い返す。


「何処って……

僕が何処に行こうと勝手だろ?

仕事、仕事だよ、忙しいんだから寝かせてくれ」


「こんな大変な時に何言ってるんだ!

それに、今は家に入らない方が良い。

まずは、落ち着いてよ」

ここまで言うと、流石にジャルも異変に気付く。


「ピーチとアナに何があった?

というか、そう言えば村が騒がしかった様だったが何かあったのか?」


「村がガルフの集団に襲われたんだよ!

多分何人か死んだ。

怪我人も多いだろうから明日は大変だと思う」


「何?!

ピーチとアナは無事なのか?

退け!

すぐに魔法で治す」

そう言って、ジャルは僕を突き飛ばして中に入っていった。


そして……

「何で、何で治らないんだ!」

と言う怒号が何度か聞こえ、その後で嗚咽が流れる。

更に暫くすると、ガサゴソと何かを探している音がし、全身武装したジャルが出てきた。


ジャルは、僕の問いかけにも反応しないで、「僕がいなかったから、カタリーナの所であんな事をしていたから、神様の罰か?罰なら僕を殺せよな、クソ神め!」とかの独り言を言いながらフラフラと森に入って行ってしまった。

僕には……

止めれなかった。






仲間を失い、失意の少年に対し、更に行き場のない怒りが襲いかかる。

本当は誰が悪いとかいう問題ではない。

だけど、誰かにぶつけるしか、できない。


少年はその怒りを、敵にぶつける事を決意する。

例え、その先に終わりが待っていようとも……


次回 第38話 責任

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