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第36話 血魂式

夏が終わり、秋が来た。

あれから僕は農作業と時々動物狩り、つまりハンターになる前と同じ生活に戻った。

何事も無い穏やかな日々……

あの血に塗れていた時の感情を忘れ、日々に感謝し、一生懸命に働いた。


そして、今日はジャルとアナの血魂式だ。

村の英雄、聖者の血魂式と言う事で、春節祭同様に村全体で行う事になった。

村の広場にみんなで料理を持ち寄り、お酒を沢山準備してジャルとアナの血魂式を祝う。


僕も、大きなイノシシを2匹狩ってきて、父さんに丸焼きにして貰った。

母さんも大きなケーキを作っていたし、いつもより豪華な血魂式になりそうだ。

あと、マルコさんも僕達スカイハイがゴブリンを沢山狩ったおかげで、かなりの利益が出たらしく、お酒を沢山提供してくれた。


準備が終わると、全身真っ白なスーツをきたジャルと、白いドレスを着たアナが村長に連れられ現れる。

「綺麗だ……」

僕は思わず呟いてしまう。

すぐに我に返って周りを見渡すが、誰も僕の事を気にしていなかった。

ふぅ、良かった。


最初に村長の話が始まり……

いつも通り長いので途中は割愛するけど。

「と、言う事で、聖魔法を使い、村民の怪我や病気を治す聖者のジャル様と、弓を使わせれば天下一品、金級冒険者をも打ち倒す程の英雄のアナ様が、本日この晴れてとても素晴らしい日に結婚されます。

そして、これからはこのアラバ村に永住して頂ける事になりました。

ですので、この喜ばしい日を祝って、乾杯!」


村長の乾杯の音頭で、皆が飲んだり、食事を始める。

ジャルとアナの周りには、常に人集りができている。

うーん、ちょっと近づけないな……

仕方がないので、僕は豪華な食事をゆっくり食べていた。

暫くすると、ジャルがこちらにやってきた。


「おめでとう、ジャル。

その白いスーツ、とても似合っているよ」


「ありがとうブルー。

本当に色々と……

ここまでこれたのも、ブルーのおかげだよ。

心から感謝してる。

ただ、スカイハイの活動ができない事は申し訳ないと思ってる。

こんな色々してくれたのに、すまない」


「うーん、活動も何も……

ゴブリンがいなくなったから、何にもできないんだよね。

あんまり遠出すると、母さんに怒られるしさ。

現在失業中だから、あんまり気にしなくても良いよ?

それよりも、2人はこれからが大変なんだから、頑張ってね!」


「やっぱ、ブルーは凄いなぁ。

わかったよ、まだまだわからない事だらけだけど、頑張ってみるよ」


そう言ってジャルはアナの元に戻っていった。

因みにアナは母さん達に囲まれ、結婚のイロハとか子育てのレクチャーを受けている様だ。


更に暫くして、村長さんがパンパンと手を打つと、皆が静まる。

「皆さん静粛に!

それでは、今回の主役である、ジャル様とアナ様からお言葉を頂戴したいと思います」

まずはジャルから話し始める。

「皆さん、今日は僕達2人の為に、盛大な式を挙げて頂き誠にありがとうございます。

思えば、僕達2人がこの村に来た時は、只の孤児でしかありませんでした。

しかも、その時は別の村の冒険者見習いの当て馬で、その人達に虐められる日々でした……

アナと2人で何度か死のうとした事もありました。

でも、それを同じ冒険者見習いのブルーが救ってくれた。

戦い方を教えて、生き方まで教わった。

当時9歳の子供にですよ?


正直な事を言えば、最初は恥ずかしかった。

でも、とても嬉しかった事は忘れません!

それからも、一緒に冒険者になって、僕らのパーティー、スカイハイを結成して、ゴブリンを倒して、とブルーがリーダーじゃなければここまで来れなかったと思います。

だから、ブルーには言葉に尽くせないほどの感謝をしています。


それに、いつも戦闘訓練に付き合ってくれたバルドさん、魔法を教えてくれた師匠のスカーレットさん、この2人は僕達がミルさんを殺してしまったにもかかわらず、僕達を許し、また家族同然に扱ってくれました。

僕達に親はいないし、育ての親も死んでいます。

でも、この村にはもう一つの家族ができた事に、心から感謝しています。

いつもおススメ品を出してくれるマルコさん、集会所にいた時に時々お菓子をくれたレニーさん、それに時々相談に乗ってくれる村長さん、他にもこの村の人達には色々とお世話になりました。


これからは、僕達はこの村に永住して、更に新しい家族として一緒に暮らしていきたいと思います。

ですので、僕達2人と新しく産まれる僕達の子供の事をこれからもよろしくお願いします」


「私もジャルと同じ気持ちです。

よろしくお願いします」

ジャルに次いでアナも短めだが僕達への礼を述べる。

いつしか皆が涙を流し、万感の拍手に包まれる。


「それでは、誓いの証しとして、魔石の授与をお願いします」

一拍置いて、村長さんが司会を進める。

そう、この地域では結婚の時に男性から女性に魔石を送る。

魔石があれば、何かあっても当分生活ができる。

そんな理由だった気がする。

だから、今日この日、この為に僕はマザーを狩ったのだ。

魔石は事前にジャルに渡してある。


そして、ジャルが魔石を取り出し、アナへと受け渡す。

アナは大きな魔石に驚いた顔をし涙を流している。

僕はその表情を見れただけで満足だった。


「こうして若い2人が永遠の愛を誓いました。

皆さんもう一度拍手を!」

村長さんがそう言った瞬間、そこに予期せぬ珍客が現れる。


ボロボロの服を纏い、片脚を引きずりながら、それはジャルとアナの前にやってくる。

そして……

「祟りじゃ!

この村には祟りが訪れるぞ!

その禍々しい魔石、この村は滅ぶぞ!

今すぐ皆村から出て行くのじゃ!」

村外れに住んでいる、オリーン婆さんだ。


なんでも、かってオリーン婆さんが住んでいた村では、若者が8匹のゴブリンを殺し、村外れに首を晒したが、その後から村の人々が急に倒れ、次々と死んでいったらしい。

そして、ゴブリンを殺した若者は、気が狂い、村人を次々と刺し殺していった。

そして、その村はほとんど滅んだのだが、オリーン婆さんはその村の生き残りらしい。

ちなみに、死んだゴブリンの首は、村人の生き残りが丁重に葬い、その村には今でも墓があるため八鬼墓村と言われているらしいのだが……


それはともかく、せっかくの感動のシーンは水を差され、呆気に取られた僕達を尻目にオリーン婆さんは去っていった。

そして、気を取り直した後でフラワーシャワーを行い、アナは退席する。

流石にあまり長い時間は体調に良くないかららしい。


その後は……

ジャルは村の若い女性に囲まれていた。

この地域では、重婚や愛人、妾が普通に認められているかららしいんだけど……

よくわからないが、アナがいなくなった途端にジャルに群がるのはどうかと思う。


ただ、中にはジャルの魔法で命を救われた者もいるらしく、ジャルのファンクラブさえできているらしい。

なんか、アルフ兄さんの彼女もファンクラブに入ったらしく、会うと毎日ジャルの話を聞かされるらしい。

ご愁傷様……


そんな感じで式は無事?に終わり、ジャルとアナはこの村の正式な一員となった。


そして、冬が来て、珠のような可愛い女の子、ピーチが産まれた。

僕はピーチを幸せそうに抱くアナを見て、3人がずっと幸せである事を祈るのだった。

少年は夢を見た。

沢山の魔物に襲われる夢だ。

しかし、何も現れない。

繰り返し注意をするも、一向に現れない魔物

いつしか少年は……


次回 第37話 狼少年

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