第30話 親
成り行きとは言え、僕達は父さんと母さんと戦う事になってしまった。
でも、やるからには勝ちたい、僕はそう思っている。
「と言う事で、作戦会議をしよう。
今回の攻略のポイントは母さんの魔法と、父さんのパワーだと思うんだけど、正直父さんに1対1で挑むのは自殺行為だから、まずは母さんの魔法を無効化するしかないと思う。
だから、みんなで魔法の無効化について考えてみない?」
僕が提案すると、アナが質問してきた。
「ブルーのお母さんの魔法って、炎だけかな?」
「いや、師匠は炎が得意なだけで、氷や風の魔法も使えるよ。
かなり苦手だけど、聖魔法も使えるから僕に教えてくれる事が出来たんだし。
魔法の天才、かつてそう言われていたのは伊達じゃないよ?」
「普段は母さん、火をつけるのにしか魔法を使わないからなぁ……
ただ、大きな魔法を使うと貧血になるって言ってた気がする。
だから、多分最初に大きい魔法を撃ってきて、その後で父さんが蹂躙する、みたいな感じで来ると思う。
だから、初撃を凌いで、母さんを戦闘不能にしてから、父さんを3人で倒す、それしかないと思う」
「確かにそうなんだけど……
その魔法の対策が一番難しいのよね。
ジャルの魔法だけでは足らないと思うよ?」
「うん、僕の魔法だと3人とも動けなくなるから、多分師匠の魔法を受けている間にブルーのお父さんにやられる。
だから、先行して師匠の下に誰か行かなければならない。
だけど、それができるのはブルーだけだと思う。
なので、ある程度僕が盾になって、ブルーに魔法を避けて進んでもらうしかないだろうね……
今回は、あまりブルーに危険な目に遭って欲しくはないんだけど」
「いや、それだとアナの守りが弱くなるからダメだよ。
僕が1人で魔法を避けて進む。
アナとジャルがそれをサポートする、その方針でいくよ?
あと、魔法対策なんだけど……」
こうして、僕達は短い時間なりに準備を進め、決闘の当日がきた。
僕達は皆で昼食を食べ、一緒に草原に向かう。
審判はアルフ兄さんが務め、村長さんや村の人達も遠巻きに見学に来ている。
「それでは、古のしきたりに従い、年齢順で各自口上を述べた後、僕が合図をしたら戦いを開始します。
お互い、悔いの残らないよう、全力の戦いを期待しています!」
アルフ兄さんが、開始の説明をする。
って口上⁈
そんな事全く考えていなかったんだけど……
まぁ父さん達が先だし、真似をすれば良いか。
「俺は元クリムゾンの団長、金級冒険者、殲滅のバルド、我が子ミルの仇討ちと我が子ブルーの成長を見るために真剣に戦う事を誓う!」
「私は元クリムゾンの副団長、金級魔術士、灰燼のスカーレット、我が子ミルの死を嘆き、我が子ブルーの成長を喜ぶために真剣に戦う事を誓う!」
父さんと母さんが口上を述べた。
なるほど、パーティー名、クラス、名前を言った後に目的を言えば良いのか。
そして、次いでジャルとアナが口上を述べる。
「僕はスカイハイの銅級冒険者兼魔術士、聖魔法使いのジャルです。
ブルーの家族には大恩ある身ですが、故あってそれを裏切ってしまいました。
でも、自らの信念と義のためこの仇討ちを受け、真剣に戦う事を誓います!」
「私はスカイハイの銅級冒険者、弓使いのアナ。
上手くは言えないけれど、この仇討ちを受け真剣に戦う事を誓います!」
そして、最後が僕だ。
「僕はしゅかいはいの……」
焦って噛んでしまう。
僕は赤面して暫く黙り込んでしまう。
戦場に気まずい沈黙が流れる……
えーいめんどくさい!
「僕はブルー!
真剣に戦います!」
僕は短めに切って口上を終わらせる。
「それでは、両者正々堂々と戦う様に。
レディー、ファイト!」
僕の口上の後で、お互いある程度距離を取ると、アルフ兄さんが開始の合図をし、僕達は臨戦態勢に入る。
先制攻撃は母さんの炎魔法。
無数の火球を連続で繰り出してくる!
僕は、ジャルに水桶の水を頭からかけてもらい、火球の弾幕を紙一重で避けて近づいていく。
この程度の炎なら、掠っても何とかなる!
際どく避けて、真ん中辺りに進むと、母さんが「ブルー、避けなさい!」と、言って僕の身長の2倍はある巨大な火球を撃ってきた。
これを喰らえば、確実に戦闘不能になる。
だが、これを避ければ、火球の後ろから父さんが出てきて一撃で戦闘不能になるだろう。
つまり、喰らっても、避けても負ける、そう言う一撃だ。
だから、僕は敢えて火球に向かって走り出す。
そして……
僕が火球に当たる前に、アナの弓が飛んできて、火球の中心を貫き、火球が消滅した!
驚いた父さんをすり抜け、母さんの下に僕はたどり着く。
「驚いたわ、貴方達は魔法を相殺する手段を隠し持っていたのね」
「ジャルが、ミル兄さんの師匠の魔術士の家で見つけた方法らしいよ?
高品質の魔石に別属性の魔法をかけて、魔法のコアを撃ちぬけば、魔法を相殺できるんだって。
アナに無理をさせないために、見つけたって言っていたよ。
それじゃあ母さん、ちょっとだけ手を斬らせてもらうよ」
そう言って、僕は母さんに手を差し出す。
母さんは、「ブルー、立派になったわね」と、言って僕の手を取った。
僕は、母さんの手の甲をちょっとだけ血抜き君で斬ると、母さんは貧血で倒れた。
倒れた母さんを、僕はアルフ兄さんが引き渡し、ジャル達の所を見る。
父さんは状況を判断し、ジャルの所に向かっており、ジャルは父さんの猛攻を必死で耐えていた。
アナは、時々弓で応戦するも、父さんのナイフに全て弾かれてしまう!
僕が間に合えば3対1
そう思って駆け出した瞬間、ジャルが父さんの一撃に耐えられず、宙を舞う!
そして、そのまま気絶してしまう。
僕は全速力でアナの下に駆け寄る。
アナは煙玉を使い、なんとか父さんと距離を置くが、父さんは全ての矢を弾いてしまうため、ジリジリと近寄られてしまう。
「アナ、大丈夫⁈」
僕はなんとかアナと父さんの間に入り込み、父さんの一撃を弾いて間合いを取る。
「私は大丈夫、ジャルは気絶してるっぽいけど……
でも、ブルーのお父さん強すぎるよ。
私の矢がかすりもしない。
というか、ナイフの振り下ろしの風圧だけでもヤバイわ」
「なら、父さんは僕が相手をしているから、アナはなんとか隙を突いて、父さんの後ろに回り込んでみて!」
「わかった、やってみる!」
僕達は即座に作戦を組み立てる。
「ブルー、父さんはそんなに甘くないぞ!」
そう言って、父さんはいつもの模擬戦よりも激しく強い連撃を繰り出す!
連続攻撃なのに、一撃一撃が正確で、重い。
僕は、血抜き君と手斧の二刀流で、なんとか受け流しながら、猛攻に耐える。
その間、アナは弓矢を射続けるが、父さんは全て弾く!
だが、暫くすると、父さんの攻撃が緩みだしてきた。
「ブルー、お前なんかしたか?
さっきから手が痺れ始めてきたんだが……」
「僕じゃないよ。
アナの新必殺技だよ」
そう、さっきからアナが射ていた矢には、微妙な振動が加えられており、弾いた相手の手を痺れさせる。
実際、僕やジャルが弾けば数発で手が痺れる。
だが、流石父さんだ。
効果が出るまで数十発かかっている。
しかし、2対1で片手が痺れているのは致命的だ。
僕は、勝負に出て父さんに突撃する!
「だが、甘い!」
僕が、取った!と思った瞬間、父さんの回し蹴りが襲いかかってくる。
油断した僕は、その蹴りをまともに喰らって背中から落ちる。
強烈な痛みに、息も出来ない。
でも、蹴られた瞬間に僕も父さんの脚を、血抜き君で斬りつけている。
これで父さんも、脚が暫く動かないはず。
そして、意識の戻ったジャルがアナと連携して父さんを追い詰め、父さんは降伏した。
こうして、僕達は勝利したのだった。
幸いみんな軽傷で、後遺症の残るような怪我はしていない。
良かった。
その夜、みんなで夕食を食べた時、母さんがミル兄さんについて語りだした。
「ミルには魔術士として期待し過ぎたの。
5歳から英才教育として、魔法を倒れるまで使ったり、色んな修行をしたわ。
多分厳し過ぎたせいか、ある時全く魔法が使えなくなってね。
家に引きこもってしまってね。
その時、ブルーが産まれたりとかもあったから、知り合いの魔術士に預ける事にしたの。
だから、銀翼に入ってしまったのも、自由を求めるのも私のせいなの。
本当にごめんなさいね」
「いや、ガチで母さんが悪いじゃん!
まぁ父さんの修行もそんな感じだけどさ……
って言うか仇討ちもいらなかったレベルじゃない?」
ジャルとアナは苦笑いしている。
「それはそうと、アナ、貴方……
お腹に新しい魔力を感じるんだけど。
おめでた?」
その時、僕にはその意味がわからなかった。
アナとジャルが結婚する。
それはとても嬉しく、そして虚しさを感じる出来事だった。
少年の初恋は秘めた想いを告げる事無く終わりを告げる。
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