第28話 狩の再開
アナと、そしてジャルが無事に帰ってきた。
そして、お土産にウィングブーツをくれた。
ウィングブーツは、重力軽減の魔法陣が組み込まれている様で、軽くて丈夫なのに加え、敏捷性がアップする様だ。
反面、身体が軽くなる分、力が入りにくくなるが、僕にはスピード重視の戦い方の方が合っているから問題ない。
まぁ血抜き君のおかげでもあるんだけどね。
早速、僕はウィングブーツを履いて、父さんとの模擬戦に挑む。
最初は普通に近づいて、父さんの間合いの少し前で一気に踏み込んで加速して斬り込む!
一瞬の出来事に、父さんは咄嗟の防御が出来ず、僕の木のナイフが父さんの喉元に当たった。
「ついに一本取られるとはな……
あと数年は大丈夫だと思っていたんだが、こんなに早いとは思わなかったよ」
「うーん、でも実力と言うより、アナとジャルにもらったこのブーツの性能のおかげなんだけどね」
「それでも、年齢差や経験の差を考えれば大したものだろうよ。
もうハンターになるのを止める気は、全くないしな。
一人前と言っても過言じゃないな。
しっかりと頑張れよ」
「ありがとう、父さん!
頑張ってゴブリンどもを根絶やしにしてくるよ」
「いや、ボスゴブリンやマザーは危険だから、あまり無理はするなよ?」
「マザーって?」
「マザーって言うのはな、通常のゴブリンは雄しか生まれない。
だから、鹿や猿の雌や、女の人を襲って繁殖する。
だけど、ゴブリンは腹を食い破って出てくるから、1匹ずつしか生まれない。
ただ、ごく稀に雌のゴブリンが生まれると、それがマザーになる。
マザーはボスゴブリンとつがいになり、沢山のゴブリンを生む。
これがゴブリンの集落になるんだ。
だから、今ブルーが行っているゴブリンの集落にはマザーがいる。
マザーの周りはボスがいて、大量のゴブリンが守っている。
だから、あまり近づかない方が良いぞ」
「逆にマザーさえ倒せば、ゴブリンは全滅できる?」
「ああ、そうなるな。
それにマザーの魔石は凄く大きく、上質らしいからな……
って、父さんでも危険な相手だからな?
今はまだ、ダメだぞ!」
その後、暫く父さんと模擬戦を続けたが、結局20戦やって2本しか取れなかった。
やはり父さんは強い。
まだまだ勝てないな。
あと、母さんと組むと鬼強いらしいんだけど……
それから数日後、僕達は久しぶりにゴブリン討伐に出かけた。
アナとジャルは、今回の帰省でなんだか更に逞しくなった気がする。
僕も頑張って修行をしたんだけどなぁ……
そして、それ以外にも、なんだか2人の絆が深まっている気がする。
なんか……
モヤモヤする。
相変わらずヒルの巣窟にはヒルが大量に居て、ゴブリンの死骸が3体あった。
そして、いつも通り血抜き君でヒルを引かせ、巣窟を抜けていった。
森を抜け、草原には10匹のゴブリンが……
やや奥の右側3匹、奥の中央4匹、やや手前の左側3匹で展開している。
春先で草の背は低く、見通しは良い。
相手にはまだ気づかれていない。
「アナは右側から狙って!
僕は左側から狩っていくから」
「わかった、無理はしないで!」
「久しぶりだから、慎重にね!」
アナとジャルの返事を聞いて、僕はすぐに駆け出す。
速い!
やはりこのブーツの性能は凄い!
僕は、駆け抜けたスピードを回転力に転換して手斧に乗せ、一箇所に固まっていたゴブリン3体の首を一瞬で斬り落とす。
ちなみに、右手に手斧、左手に血抜き君を持つ事で、血抜き君が返り血を全て吸収してくれるから、僕は一切血を浴びていない。
それに、この手斧も、血が全然つかないので、連続で斬っても、斬れ味は落ちない。
あと、なんとなくだが、この手斧は首が狙いやすい。
なんか不思議な能力でも憑いているのだろうか……
一方、アナの方も丁度弓を射始めており、僕が振り返ると2匹のゴブリンが倒れていた。
僕は、またすぐに駆け出し、中央奥のゴブリンに向かう。
奴らは、ややバラけていたが、所詮はただのナイフゴブリンだ。
僕は1匹ずつ首を落としていき、3匹倒したところで、4匹目をアナの矢が貫いた。
僕は、魔石と耳を回収しつつ、アナとジャルの下に向かう。
「ブルー!
あれからまたかなり強くなったな!
凄いよ、あんな一瞬で一気に首を斬り落とすとか、どんどん差が開いていくよなぁ……」
「ブルー、私達がいない間に頑張ったね」
ジャルとアナに褒められ、僕の頬がちょっと上気する。
「でもさ、アナの弓の威力も、大分上がっているよね?
木の矢なのに、ゴブリンの頭が弾けてたんだけど?」
「ふふん、実は矢にジャルの魔法を付加してもらっているのよ♪」
「僕の魔法も、ちょっとずつだけど進化してるって事で……
正直、2人の成長スピードには全然負けるけどさ」
アナはかなりの自慢げで、ジャルは自信なさそうに答える。
「いやさ、僕もこのブーツのおかげだから、これがなかったら、アナの弓の方が絶対に速いよ。
それはともかく、森の中にもまだ10匹のゴブリンが居るみたいだけど、どうする?」
「まだ昼前だしね。
あと10匹なら、狩ってみようか?
ただ、森の中だからアナの弓は使えないから、1匹ずつ確実に仕留めよう」
「私のシミターも血を欲しているわよ?
ふふっ」
「じゃあ無理しない程度に行こうか。
僕か先頭で、2人はサポートをよろしくね!」
「「了解!」」
幸い、森の中のゴブリンはバラけており、僕1人でも余裕なくらいだった。
まぁ、色々パターンを変えて、後ろから近づいて喉を掻っ切ったり、ジャルが囮でアナが後ろから刺したり、ジャルが聖魔法でゴブリンにブーストをかけ破裂させたりと……
治癒以外の聖魔法を他人にかけると、かけられた本人にかなりの悪影響が出るらしいんだけど、本当に聖属性なんだろうか?
僕は自分が爆散する様子を想像し、やはり本気のジャルとは戦いたくないなと思った。
最後の3匹は、ゴブリンリーダーと護衛だったので、こちらも正面から出ていき、3対3で対峙した。
と言っても、護衛の2匹がアナとジャルに向かったすぐに、僕がゴブリンリーダーの首を斬り落とすと、呆気に取られ隙ができ、アナとジャルにあっさりと狩られた。
「やっぱ、2人とも強くなったね!」
「いやいや、ブルーが一瞬でリーダーを倒したのが凄いからだからね?
流石に僕とアナじゃリーダーはキツイし」
「違うよ、ゴブリンリーダーは僕の初速を見誤っただけだし、ただの不意打ちだよ?
それより、モーニングスターとシミターで普通のゴブリンを一撃なら充分強いから!」
夕食時にはそんな話し合いをしながら、みんなで楽しくご飯を食べた。
そして、僕が見張りでアナが寝静まった頃、ジャルがやってきて僕に鍵を渡した。
「この鍵は、カンクの町の東地区第四銀行の貸金庫の鍵なんだけど……
僕とアナの出生の秘密が書いた手記が入っている。
もしも、僕に何かあった時は、ブルー、君の判断でどうするか決めて欲しい。
僕は君をリーダーとして信頼しているから、任せていいかい?」
真剣な表情で、話すジャルに僕も真顔で頷いた。
その後、ジャルが寝て、アナが交代に起きた時、アナは衝撃の告白をしてきた。
「ブルー、私は多分貴方のお兄さん、ミルさんを殺してしまったの。
だから、恨むなら恨んでくれてもいい。
復讐したいなら、ブルーになら殺されてもいいから。
だけどね、ジャルは無関係だから、だから殺すなら私だけにして欲しいの」
「ちょ、ちょっと意味がわからない。
待って……
つまり、何らかの理由があって、アナはミル兄さんに会って、殺してしまった、そう言う事で良いの?
それは、偶々事故でとか、死ぬ所に立ち会ったとか、そう言う意味では無くて?」
「違うわ、理由は言えないんだけど、貴方のお兄さんと戦う事になって……
そして、死闘の上で私達が勝った。
正確には、私が貴方のお兄さんを射抜いた。
そして、その後は私が気絶したから正確にはわからないのだけど、ミルさんは死んだらしいわ。
でも、あの傷では助からないし、殺したのは私よ。
その事については、弁解する気も、後悔もないの。
ただ、貴方のお兄さんは私達よりもかなり強かった。
だから、偶々私達が生きているだけ。
それでブルーに恨まれるのは……
悲しいけど、仕方ない事だと思ってるし、仇討ちを望むなら殺されてもいいと思っているの」
「うーん……
兄さんが死んだ事はとても悲しい。
でも、一度も会っていないミル兄さんよりも、パーティーメンバーのアナとジャルが死んでいたら……
もっと悲しい。
だから、理由はわからないけど、復讐しようとは思わない。
アナとジャルにも、何らかの理由があるだろうし……」
「ブルー、ありがとう!」
僕は、アナに涙ながらに抱きしめられ、思わずフリーズしてしまう。
暫くして、アナが泣き止むと、僕はアナに言った。
「僕はアナとジャルが大切だから良いけど……
父さんと母さんは、どうしよう?
あの2人にはきっと隠しきれないから……」
「それなら、村に帰ったら僕が話すよ。
ごめんブルー、大事な事なのに黙っていて……」
そこには、覚悟を決めたジャルが立っていた。
大切な人の死は、簡単には割り切れない。
だから、誰かのせいにしないわけにはいられない。
例え二度と帰らないとしても……
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