第26話 自由のために?
ブルーや、その家族に良く似た黒髪の青年……
「私達は、炎の魔術士を探しているだけ」
私はそう答えた。
「なら、俺の事だなお嬢ちゃん。
俺の名前は炎の大魔導師ミル様だ!
どうだ?
ビビったか?
サインが欲しいなら書いてやるぞ」
「貴方がミル……
貴方が神父様達を殺し、教会を燃やした銀翼十字団のアサシンね?」
ビビってはいないし、多分コイツが犯人だが、念のため確認しておく。
「んー、まぁ半分正解?
俺は銀翼十字団の理念を信奉しているし、腐れ神父を天に代わってオシオキしてやったけど、アサシンではないぜ?
そもそも、銀翼に組織行動や役割分担なんてねーしな。
って言うか、そもそも集団行動が出来ないのになんで団なんだろうな?
正直イミフだけどよ、まぁそれが自由って奴なんだよ。
と言う事で、あの外道神父は俺の手で天に召されたんだが……
問題は何故お前らが知っている?
大方、聖十時教団の手先だとは思うが……」
「神父様は腐れでも、外道でもない!
それに優しいシスターや、罪の無い子供達までなんで殺したの?」
そう言って、私はミルを睨みつける。
「何故って?
それは自由のためさ。
自由のためなら修羅となり、自由を奪う奴らを皆殺しにする。
それが我ら銀翼十字団の祈り……
だからさ。
って言うか、なるほど、お嬢ちゃん達はあの教会の関係者か。
教会関係者で、冒険者……
あぁ、お嬢ちゃんがアナで、坊やがジャルか。
なるほど、なるほど。
ならば、仇討ちに来たのも自由って訳だな。
うんうん。
だがな、お嬢ちゃん達じゃ実力不足だ、そこの坊やなんてビビって動けないだろ?
諦めてお家に帰った方が良いぜ」
確かに、実際にジャルはミルの魔力に当てられたのか、さっきから一言も喋らない。
私が振り返ると、
「アイツはヤバい」
と、震えた声でボソッと言った。
私は再びミルに向き合い、質問を続ける。
「貴方はなんで、罪の無い人を殺して平気なの?
ブルーの家族、アラバ村のみんなは知っているの?
自由自由って言うけど、本当は何がしたいのよ!」
「アラバ村?
ま、まさか……
親父とお袋の知り合いか?
そういえば……
弟の名前はブルー……だったな。
ヤバい、ヤバい、ヤバい、ヤバい、ヤバい、ヤバい、ヤバい、ヤバい……」
そう言うと、ミルは急に腕を血が出るまで搔きむしり出した。
「親父にバレたら、自由が無くなる。
お袋はもっと最悪だ。
お前ら、あの2人がどんだけ化け物か、知ってるのかよ?
本当にヤバいぞ?
いやマジで。
どうする?
どうする?
そうか、お前らを殺して証拠隠滅しかないな。
悪いが、お前らには申し訳ないが、俺の自由のために死んでくれ!」
そう言って、ミルは巨大な炎の魔法を打ち込んで来た!
私が避けれない!ここまでか……
と、思った瞬間……
ジャルが私の前に立ちはだかり、かろうじて護ってくれた。
だが、かなりギリギリだったみたいで、
「耐えられるのは、あと2発くらいだ。
多分2人では逃げれない、だから、アナだけでも逃げてくれないか」
そう背中越しにジャルは言った。
「嫌よ!
私は死んでもあの男を倒す!
例えブルーの家族だとしても……
だから、この前言っていた、アレを試させて!」
「ダメだよ!
アレは危険過ぎる!」
ジャルは否定するが、次弾が飛んできて、ジャルを吹き飛ばす。
私もかろうじて避けたが、危なかった。
「ジャル、聞いて。
もう私達が生き残るには、アレしかないの。
だから、お願い!」
「わかった、もうこうなったら俺とアナの相性に賭けるしかないな……」
そう言って、ジャルは私に魔法をかけてくれた。
「しぶとい奴らだな!
しかし、この一撃で終わりだ。
俺のために死んでくれ!」
ミルはこれまでよりも大きい炎の魔法を撃ち込んでくる!
そして、私は自らその火の中に飛び込み、突き抜けた先で、ミルの土手っ腹に鋼鉄の矢を射た!
ジャルが使ったのは、プロテクトの魔法と、ブーストの魔法。
プロテクトは通常盾などの物に使う魔法で、人に使う魔法ではない。
しかも、物を硬くし魔法に強くする魔法だから、生物に使えば、当然全身が硬直して動けなくなる。
そこで、ブーストを上書きして、無理矢理身体を動かす。
ただ、ブーストは通常、術士本人専用で、他人にかけると魔力が合わずに悪影響を及ぼす。
実際に、ウサギで試した時は、プロテクトをかけると硬直したまま死に、ブーストをかけると内臓を撒き散らして爆散した。
一方で、私とジャルの魔性、つまり魔力の相性は比較的近く、少量なら受け入れる事が出来ていた。
だから、私はプロテクトで炎のダメージを抑え、ブーストで矢を射る事が出来たのだ。
ただし、ブーストの魔法は、ジャルですら使用後に倒れる魔法だから……
私は矢を射た後、意識がなくなって……いった。
――――――――――――――――――――――――
アナが無茶をしたおかげで、僕達はミルにダメージを与える事に成功した。
一応、アナは見た目にはダメージが無い。
息はしているから大丈夫だとは思うが、当分は起きないだろう。
本当は回復魔法をかけたいが……
聖魔法で負ったダメージは、聖魔法で回復出来ない。
むしろ悪化する。
だから、暫くは放置しておくしかない。
一方で、ミルは腹に鋼鉄の矢を受け、口から血を流し倒れている。
僕はモーニングスターを構えながら、ミルに近づいていく。
「お前ら…スゲーな。
坊やが聖魔法を使えるのも…驚きだが、それを人にかけて炎の中を潜って攻撃とか…正気の沙汰とは思えねー狂気っぷりだぜ…。
聖十字教団なら異端審問レベルだよな。
正直…銀翼十字団にスカウトしたいくらいだぜ。
まぁ、そんなクレイジーな奴らに戦って負けたんだ…
これもまた自由ってやつなんだよなって感じ?
だから、恨んじゃいねーぜ。
ありがとな」
ミルは、息を途切らせながらも何故か僕に礼を言った。
ちなみに、ミルは魔法を使った後、黒髪が銀髪に変わっていた。
ブルーのお母さんも、魔法を使うと髪の色が変わるから、多分血統か何かが関係しているんだろう。
「正直なところ、ブルーにお兄さんを殺したなんて言えないから。
ミルさんの事は、貴方の家族には言わないよ。
悪いけど、ただの敵として死んでもらいます」
「そりゃ、有難い!
ウチの両親にバレたら、多分俺の自由な死も無駄になるからな……
本当、あの両親は化け物レベルだからなぁ。
捕まったら、手足をもがれて、蟲人間にされていたところだったぜ。
死ねて助かったぜ?
重ね重ねありがとうな。
そうだ、お礼と言っちゃ何だが、この鍵をやるよ。
東地区の第四銀行の貸金庫の鍵だ。
お前らの知りたい情報が入っているぜ。
じゃあな……」
ミルはそう言って僕に鍵を投げつけ、そして自らの魔法で自分を燃やし……
跡形も残らず消えていった。
正直、僕には理解出来なかったが、これが銀翼十字団の言う自由……なんだろうか?
それに仇を討ったと言うよりは、ブルーの家族を殺したと言う罪悪感が重くのしかかる。
殺した相手に礼を言われるのもよくわからんし。
ただただ徒労感が虚しいだけだった……
そして、僕はアナを背負い、宿に帰って寝かせ、東地区の第四銀行へと向かうのだった。
ミルに渡された鍵を持って行き、ジャルは一冊の手記を手に入れる。
そこには、知りたくなかった情報が書かれていたのだった……
第27話 神父の手記




