第25話 炎の魔術士
聖騎士から渡された紙に書いてあった3人は、以下の通りだ。
1人目
ブリック
16歳 男
銀髪で目が青い
西地区で母親と暮らしている。
働き者で性格は温厚らしいが、燃え上がる様な火の魔法を使っているとの噂がある。
2人目
アカリ
21歳 女
グレーの髪で、目は茶色
東地区で、最近出会った彼氏と同棲している。
過去に騙された男を焼き殺したとの噂がある。
3人目
ミル
17歳 男
黒髪、黒目
北地区に独り暮らし
魔術士の弟子をしていた、との噂があるが、その魔術士は昨年に失踪している。
炎の魔法が得意との噂もある。
3人目のミルは魔術士に弟子入りしていたらしい。
つまり、なら確実に魔法は使える。
他の2人は魔法かどうかわからないし、一番怪しいのは3人目か?
でも、犯人の目撃情報では銀髪らしいので、1人目も怪しい。
意外性で言えば2人目だが……
女の恨みは怖いと言うけど、孤児院は関係ない気がする。
まぁでも、西地区、東地区、北地区の順番の方が良いだろう。
北地区は若干治安が悪いし。
安全を見た方が良い。
と言う事で、僕達はまず、1人目のブリックから調査する事にした。
ポイントは、銀髪で、火の魔法を使う、銀翼十字団である事だ。
相手をよく見て、観察しないとわからないだろう。
ブリックは銀髪なので、捜索初日にすぐに見つかった。
それは良いのだが、一方で僕達の追跡もすぐに見つかってしまう。
「君達、僕に何か用かな?」
ブリックは隠れて見ていた僕達に近づいてくる。
コイツ、気配を察知する特殊能力者か?
それならば、コイツが犯人の可能性も……
こちらも緊張しながら話しかける。
「あんたが、火の魔法を使えると聞いたんだが?」
「君達冒険者かい?
そうか、僕をスカウトに来たんだね?
だけど、僕の得意なのは恋の火魔法なのさ。
実際に炎は出せないけど、大抵の女の子は僕にトキメキの炎を燃やすから、ついた仇名が炎の恋愛マスターだったりするんだよね。
なので、冒険者にはなれないよ?」
コイツうぜえ、僕はそう思った。
たしかにイケメンではあるんだけど……
ただ、ちょっと不安になってアナに小声で聞いてみた。
「魅了の魔法かな?
ただ、魔力はほとんど感じないけど、アナはブリックに惚れそう?」
「は?
私はあんなの好みじゃないんだけど。
というか、犯人なら殺して良い?」
大丈夫な様だ、いや、大丈夫じゃねー。
「いや、多分犯人じゃないから、勝手に殺さないで。
無関係な人間を殺したら、自警団に追われて真犯人には届かなくなる。
だから、我慢して、いいね?」
僕はアナをなだめ、再びブリックに聞く。
「あの、確認なんだけどさ、1年くらい前に孤児院が焼けた事件は知ってる?」
「事件?
ただの火事だって聞いたけど?
東地区だっけ?
怖いよね、冬は乾燥するからさ、お互い気をつけようよね」
ブリックは嘘を言っている様には見えない。
恐らくは犯人じゃないだろう……
「わかったよ、変な質問して悪かったな。
あと、他にこの町で本物の火の魔法を使う奴に心当たりはないか?」
「残念ながら、魔法使いなんて滅多にいないからね。
僕は知らないね」
「そうか、これが最後の質問なんだけど、何で僕達が見ていたのに気づいたんだい?」
「まぁ僕のファンは多いからね。
視線に敏感になってしまったのさ。
でも、君達も僕を見続けていると、危ないからね?
嗚呼、男女問わず魅了してしまう僕の美しさが罪なんだよ」
そう言って、ブリックは自己陶酔しだした。
そして、アナが近寄り……
顔面を思いっきりブン殴る!
そして、「うぜえ!」と言って、立ち去っていく。
僕は、若干の恐怖を感じながらも慌ててアナを追った。
翌日からは、2人目のアカリを探した。
しかし、7日経ってもアカリは見つからなかった。
それもそのはず、アカリは家から一歩も出ていなかったからである。
僕達は、ようやくアカリの彼氏の家を突き止め、彼氏が家を出たのを見計らって、その家に侵入した。
そこで見つけたのは……
両手両足を縛られ、身動きの取れないグレーの髪の女の人だった。
糞尿は垂れ流しで、全身打撲痕だらけでグッタリしていたが、かろうじて息はしていた。
僕とアナは急いで縄を外し、回復魔法と気付け薬で意識を戻させる。
そして、お湯で身体を拭き、着替えさせて落ち着いたところで、事情を聞いた。
「つまり、新しく出会った彼氏に監禁されて、毎日酷い目に遭わされている。
そう言う事でいいんですか?」
僕が聞くと、アカリは伏し目がちに頷く。
アナは、
「許せない。
私が殺してあげようか?」
と、怒りを露わにしている。
ちなみに、孤児院の事は知らなく。
前の彼氏も別れた後に勝手に焼身自殺しただけで、アカリは魔法は使えないらしい。
それに、家の中を調べたが、銀翼十字団の痕跡はなく、犯人とは関係が無いと判断した。
そして、僕達はアカリの彼氏の帰りを待ち伏せし、家の中でボコってアカリの居た場所に縛り付けた。
その後、アカリをマルロさんの店に連れて行き、事情を話したところ、マルロさんが預かってくれる事になった。
アカリを見つけた翌日、北地区に向かう途中で昨日のDV 男を含め5人の男達に囲まれ、「ついて来い!」と言われ、路地裏へと連れて行かれた。
そして、アナが3人、僕が2人に囲まれているのだが……
「俺の女は何処に行った?
話さないと、殺すぞ?」
DV 男はナイフを持って、僕を脅してきた。
「あの、一応僕達は銅級の冒険者です。
だから、武器を持っている貴方達を殺しても罪には問われない。
わかっていますよね?」
「あゝん?
舐めてんのか?
ガキがこの人数の大人に勝てると思ってるのか?
冒険者ごっこしてるなら、ちゃんと世の中教えてやるよ」
「アナ、と、言う事らしいよ?」
僕がそう言うと、アナはシミターをゆっくり抜き、そして一瞬で打ち払い、またゆっくりと鞘に収める。
3人の男達は、何が起きたかわからぬまま、一瞬で両目を斬り裂かれていた。
これは、居合と言う技らしいのだが、本来は刀と言う直刀でやるらしい。
ちなみに、アナは遠距離攻撃が得意だが、近接戦が苦手、と言うわけではない。
もちろん、弓を引くのは別として、アナの力は強くないので、一刀両断はできない。
だが、急所への正確無比な攻撃はブルー以上だったりする。
それはともかく、一瞬で仲間を倒された事に驚いた残りの2人の隙を突いて、僕はシールドスマッシュで2人を吹き飛ばす。
軽い……
不意打ちとは言え、凄く軽い。
いや、ゴブリンが重い、もとい、力が強いと言う事なんだろう。
実際にゴブリンの死骸は軽いしね。
つまるところ、僕達が強くなっているのだろう。
僕が倒した2人は気絶し、残りの3人は目を押さえながらのたうちまわっている。
僕達は、全員の身ぐるみを剥ぎ、首謀者のDV男だけをマルロさんとアカリの下に連れて行く。
すると、アカリは隠し持っていたナイフで、DV男の腹を刺した。
僕達が止める間もなく……
そして、僕達が呆気に取られているその隙に、アカリは、そのナイフで自らの首を斬り裂き、自殺した。
僕は、必死に回復魔法をかけたが…………
アカリは死んでしまった。
ついでにDV男も。
マルロさんは、
「きっと、あの2人しかわからない何かがあるんだろうね。
君達が気に病む事はないよ」
と言っていたが、何もできなかった無力さを、僕は噛み締めていた。
ちなみに、アナは、
「容疑者が減ってわかりやすくなったわね」
と、全く気にしていないようだったけどね。
2日程休んで、僕達は北地区にミルを探しに出かけた。
しかし、ミルが弟子入りしたと言う魔術士の家を張っていたが、誰一人出入りはなかった。
1週間程張り込みをしてみたが、結局ミルの手掛かりは見つからなかった。
そう思った矢先に……
「ところでお前ら、俺になんか用か?」
どことなくブルーや、その家族に似た、黒髪の青年に後ろから声をかけられた。
僕達は、その気配を全く感知できなかった。
そして、一旦認識してしまうと、その魔力の大きさに、僕は身動きが取れなくなってしまったのだった。
少年と少女の仇は……
謎の青年の正体は!
次回 第26話 自由のために?




