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第22話 冬支度

弓ゴブリンを倒し、村に帰った僕達は、ゴブリンの討伐報酬の一部で矢を買い揃えた。

安い木の矢、鉄の鏃付きの木の矢、かなり高い鋼鉄製の矢の3種類を買って、それぞれを試してみる。


木の矢はゴブリンが使っていたのと同じで、軽くて扱いは容易なので飛距離は出るが、威力は低い。

それと、風や空気抵抗の影響で、飛距離が伸びるほど狙いにくい。

連続で数発撃ちながら、ロングレンジで小動物を狩ったり、急所狙いで相手を削るにはいいみたいだ。

牽制にもなるし。


鉄の鏃付きの木の矢は、先端に少し重みがあるので、まっすぐ飛ばし易いらしい。

威力もそこそこあり、ゴブリン討伐には一番向いてるみたいだ。


最後に、鋼鉄製の矢は……

矢としてはかなり重いので、近距離しか撃てないらしい。

ただ、威力はかなり強く、木の板を撃ち抜く事ができる。

なので、鎧や兜を着けた敵や、硬い魔物やデカイ魔物にも有効になる可能性がある。

アナとしては、鋼鉄製の矢を使いこなしたいらしく、「私、ムッキムキになる!」、と息巻いていたが、ジャルは微妙な顔をしていた。


そして、2日休んだら、僕達はウチの畑の収穫の手伝いを始めた。

ちなみに、アナは母さん達と脱穀を手伝い、ジャルと僕は芋堀や収穫後の地ならしを中心に手伝った。

この時期だけで、1年の大半の食料を得なければならないしね、仕方ないんだけど。


それと、農作業はとにかく、やる事と覚える事が多い。

毎日芋だけ掘っていればいいわけでなく、掘る時期の見極め、掘った後に来年用の肥料を混ぜ込み、埋めて地ならしする。

そして、農機具を手入れして、次の場所を決める。

順番を間違えると父さんに怒られるし……

僕は毎年の事だから多少は慣れているが、ジャルは初めてだったからかなり苦労をしていた。


あと、僕は朝晩の鍛錬は欠かさずしているが、1日のほとんどが農作業で終わるので、ジャルとアナは農作業が終わるとすぐに帰ってしまった。


そんなこんなで、僕達は畑仕事を約1カ月こなし、収穫と後処理を全て終わらせた。

まぁ、幸いロープの原料になる藁や、ジャルとアナの冬の食料は充分確保できたから後顧の憂いは少ないんだけどね……

だから、後は魔石をちょっと取って分配すれば、ジャルとアナも余裕持って冬を越す事ができるだろう。


ただ、朝晩の冷え込みがキツくなってきたし、野営がキツイかもしれない。

僕達は防寒具や毛布等を買い込み、気合いを入れてゴブリン討伐に出かけた……

のは良いんだけど、荷物が重く、思った様には進めなかった。

枯れ木や枯葉集めには困らなかったので、火を焚くのは簡単だったけど、火事にならない様気を付けなければならないし、寒い日は完全に寒いしね。


という事で、ヒルの巣窟にたどり着くのに7日もかかってしまった。

多分、雪ならもっとかかるかもしれない。

次は春までゴブリン討伐に来れないだろう。


すっかり寒くなったせいか、ヒルの巣窟だった森は閑散として、動物の白骨が転がっているだけだった。

ヒルは居なくなっている。

寒いからだろうか?

まぁ、幸い適当に探しただけでゴブリンの魔石を4個拾う事ができた。

ラッキー!


そして、ヒルの巣窟を抜け、草原に出る。

近くに魔石の気配はない。

とりあえず、僕達は昼食を取り、作戦会議を行う。


「多分、草原にゴブリンはいないと思う。

あの森だと思うんだけど、また僕が偵察に行こうか?」


「また弓ゴブリンがいたら危ないし、私が居れば弓で応戦できるから、3人で一緒に行きましょ!」


「僕もアナの案に一票かな。

多分、アナの方が弓ゴブリンより飛距離が出ると思うし、ブルーよりも目が良いだろ?

まぁ、ブルーの感知能力には負けるかもしれないけど、アナを信じてみてよ」


「うん、わかった。

じゃあ今回は皆んなで一緒に行こう!

ただ、深追いはしないよ。

夕方までに戻って、ヒルの巣窟を抜けたとこで野営しよう。

流石にここじゃ、火は焚けないしね」


こうして、僕達は消臭剤をかけ、3人で慎重に進んでいく。

森が見えてきたところで、魔石の気配は5つ。

僕は、魔石の気配がする方向を指差す。


「正面の3匹は、皮の鎧を着けた短剣を持っているゴブリンと、左右にナイフゴブリンだよ。

右と左のゴブリンは隠れているからよく見えないけど、多分鎧は着けていないと思う」


「多分、鎧を着けたゴブリンがリーダー格だな。

正面を固めて、左右から挟撃する……

奴らも色々対策を練っているんだな。

まぁこっちにはブルーとアナがいるから筒抜けなんだけどね。

ブルー、アナがあの岩の上からゴブリンを狙撃するから、君は遊撃で頼んでも良いかい?」


「僕は良いけど、アナが無防備にならない?」


「大丈夫、僕が矢の補充しながら護るから。

むしろ、ブルーの方が危険だから無理はしないでくれよ」


「それに、私の弓の腕も上がっているんだよ。

安心してね」


僕は2人に頷き、臨戦態勢に入る。

アナとジャルは慎重に岩まで進む。

僕は、右側から隠れているゴブリンに向かって隠れながらゆっくり進んでいく。


アナは岩にたどり着くと、弓矢を取り出し、両手一杯にその弦を引き絞る。

そして、風向きを気にしながら、弓矢を解き放つ!

その姿は、とても綺麗で、僕は思わず進むのをやめ見惚れてしまった。

この時僕が抱いた感情は、今の時点では何なのか僕にはわからなかった。


アナの放った矢は放物線を描いて、まっすぐに正面のゴブリンに向かって行き、

ゴブリンリーダーの右目に直撃する!

この距離で⁈

確かにアナの弓の腕はかなり上がっている様だ。

きっと、僕を驚かそうと2人で秘密特訓をしたのだろう。

2人で、か……

アナの成長が嬉しい反面、何故か胸がチクリと痛む気がした。

いかんいかん、戦闘中だぞ。

僕は気持ちを切り替えて進む。


そして、こちらに近づいてきたナイフゴブリンと対峙する。

ナイフゴブリンは、アナの弓を腕と肩口に喰らっており、かなりダメージを受けている。

これならば……

僕は、武器を手斧に切り替え、襲い来るゴブリンを避けて、喉元を一閃で切り裂く!

ゴブリンは大量の血を吹き出し、倒れる。

血抜き君は強い敵には有効だが、戦闘時間を考えると、弱い相手なら手斧の方が早い。

それに、僕だって、何もしてなかった訳じゃないんだ。


僕は、1匹目のゴブリンが死んでいるのを確認し、アナ達の方を見ると、左のゴブリンが鉄の鏃の木の矢に貫かれ倒れるところだった。

前言撤回……

僕はまだまだだな。


続いて、僕はゴブリンリーダーの方向に向かう。

そこには、ゴブリンリーダーを護る様に仁王立ちしてナイフゴブリン2匹が死んでいた……


なんだよそれ⁈

ゴブリンにも忠誠心が、仲間を守る気持ちがあるって事か?

そんな……

人間みたいじゃないか!

そんなの許せない!

僕は、何故だかそう感じ、怒りが込み上げてくる。

認めない。

ゴブリンに愛とか友情とかはあってはいけない。

そう思いながら、僕はゴブリンリーダーを睨め付ける。


だが、相手も同じ様な事を考えていたのか、残った左目で僕を睨みつけ、まるで『人間如きがー!』と言っているかの様に、グギャグギャと叫んでいる。

そして、僕が間合いに入ると、短剣を上から振り下ろしてきた。

僕は血抜き君で受け流し、再び間合いを取る。


力は相手の方が上だが、スピードはこちらが勝っている。

そして、相手が片目なのはこちらのアドバンテージだ。

暫く打ち合うこと数合で、アナの放った矢がゴブリンリーダーの頬を掠める。

痛みに気を逸らされたゴブリンリーダーの隙を突き、僕はゴブリンリーダーの右腕を斬り裂く!


かなり深めに入り、ゴブリンリーダーの右腕を麻痺させる事に成功した。

だが、ゴブリンリーダーは間合いを取り、短剣を口に咥えた後……

全身のバネを使って、こちらに飛び込んできた!


僕は不意を突かれ、やられる!と覚悟した瞬間、鉄の鏃の木の矢がゴブリンリーダーの額に突き刺さる。

そして、ゴブリンリーダーは絶命した。


結局…………

僕は今回1匹しかゴブリンを倒す事ができなかった。

そんな自分の惨めさを、僕は感じざるを得なかったのだった。

少年は自分の無力さを知り、ひたすらに高みを目指す。

心の奥に芽生えた、秘めた感情を振り払うように……

一方、少女は心の奥に隠した想いを……


次回 第23話 冬休み

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