第21話 夜襲
弓ゴブリンから逃げ帰った後、僕には暫くの休憩が必要だった。
そのため、ヒルの巣窟は抜けられ無かったが、消臭剤のおかげかゴブリンは追って来なかったので、僕達は草原の中でゆっくりと休む事ができた。
「それで、ゴブリン討伐はどうするんだ?
ブルーが無理そうなら帰っても良いし。
無理はしなくても良いんだぞ?」
「いや、ダメだよ。
ジャルの気持ちはありがたいんだけど、今倒さないと、僕の心が折れてしまいそうな気がするし。
それに、弓ゴブリンが村に来たら被害は甚大だよ。
だから、今日僕達で……
倒そう!」
「わかった、でも無理はしないようにな。
ちなみに、弓相手にどうするかが重要だよな。
何か作戦かは考えてる?
多分、アナのスリングショットでは飛距離が足らないだろうし……」
「ジャルの盾に隠れて近づいて、私が撃つのはどうかな?
木の上にいるなら、落とせば良いし」
「いや、それだと、ナイフゴブリンがジャルとアナを襲いに来るだろう……
僕も弓ゴブリンがいるから、遊撃もできないし」
「そうすると、両方を押さえないとダメって事か……
もしくは、相手の隙を突くしかない、って事だよな?」
「うん、だからね……」
僕はジャルとアナに作戦を説明する。
「ブルー、本当にそんなんで、上手く行くのか?」
「私は良いけど、ブルーが一番危険になるんじゃ……」
ジャルとアナは心配そうに聞いてくる。
「正直なところ、五分五分くらいか、ミスったら死人が出る可能性が高い……
僕もそう思う。
でもさ、試して見なければわからないし、この作戦に賭けてみてくれないかな?
もちろん、強制はしないけど、僕1人でもやってみるつもりだよ」
「いや、ブルー1人では行かせない。
それに、ブルーはスカイハイのリーダーだし、ブルーが決めたらなら従うよ。
な、アナ」
「もちろんよ。
私もリーダーの決定には従うわ。
それに……
絶対、私がブルーを護るから、絶対に死なせないから」
「ありがとう、2人とも。
それじゃあ、準備を始めよう」
そう言って、僕達は早めに夕飯を済まし、交代で仮眠を取った。
そして、月が夜の真上に来る頃に、僕達は弓ゴブリン討伐に出かけた。
僕達は消臭剤を入念にかけ、月明かりを頼りに草原を屈みながらゆっくり進む。
それに、念のため弓ゴブリンの斜め前からのルートを取っているため、より時間がかかっている。
ちなみに、この地域のゴブリンは類人種らしく、人に近い生態をしており、昼行性のため、夜は寝ている事も多いらしい。
多分、弓ゴブリンは全く動いていないので、木の上で寝ている可能性が高い。
ナイフゴブリンは交代したみたいな気配があったから、夜番をしている可能性があるけどね……
生い茂る草の中をゆっくり、ゆっくり、息を殺しながら進む。
そして、やっと草原と森の境界にたどり着いた。
ナイフゴブリン、もとい、交代した棍棒ゴブリンは起きてはいるが、うつらうつらとしている。
弓ゴブリンは……
ちょっとこの位置では見えにくい。
しかし、森に入ってしまえば、樹に隠れる事も出来るので弓の脅威は半減する。
僕達は、慎重に、静かに移動しながら、予定通りに棍棒ゴブリンを先に倒す事にする。
まず、僕が先行して、棍棒ゴブリンに背後から近づく。
そろり、そろりと、気付かれないように……
そして、ゴブリンの首に縄輪をひっかける!
縄をひっかけた一瞬、ゴブリンが振り向き、目が合ってびっくりしたが、ジャルとアナが一気に引っ張り、樹の枝に吊るす事に成功した。
すぐさま僕が心臓に血抜き君を一突きし、棍棒ゴブリンにトドメを刺す。
念のため、アナがスリングショットを構えていたが、杞憂で済んだらしい。
ほとんど音はしなかったし、僕は無事だ。
そして、残るは1匹。
弓ゴブリンだ!
僕達は慎重に進み……
弓ゴブリンを見つける。
よかった、やっぱり寝ているようだ。
アナは慎重にスリングショットを引き絞り、弓ゴブリンの頭上に鉄球を撃ち込む!
ボスッという鈍い音がして、弓ゴブリンが落ちてくる。
そして、落ちた先で僕が血抜き君でトドメを刺す。
こうして、僕達は無事に弓ゴブリンを怪我もなく倒す事に成功した。
ちなみに、弓ゴブリンの弓は樫の木で作った、しっかりした作りのもので、ゴブリンと一緒に落ちたが無事だった。
矢は何本か折れて、3本しか残ってないけどね……
とりあえず、弓はアナに渡し、試しに撃ってもらうと中々の命中精度だった。
威力も飛距離もこれまでのスリングショットより強力だ。
「うーん、ただ連射できないし、弓を引き絞る力が結構いるから、一撃必殺にしないとダメかも。
それに、狙いをつけるのが意外と難しいからより慎重に撃つ必要があるわ」
「でも、今後は弓も練習しないとね。
出来ればアナが動きながら、動いている敵を正確に狙い撃ちできるレベルになれば、無敵だよ。
大丈夫、ジャルの防御もあるし、アナならできるさ」
「とりあえず、今は弓が3本しかないから、連続撃ちは練習できないけど、頑張ってみるね」
そう言って、アナは必死に練習を続ける。
僕はその間索敵し、ジャルは弓拾いをやってくれていた。
そして、朝になると、交代のゴブリンが近づいてくる気配を感じた。
弓ゴブリンがいると思い、何も知らずに近づいてくるナイフゴブリン。
そのナイフゴブリンの頭を、離れた位置にいたアナの弓が正確に撃ち抜き、一撃でゴブリンを仕留める。
ただまあ、今回は相手が油断しており、臨戦態勢じゃなかったのが大きいのだが、アナにとっては射撃の自信がついただろうし、いい事なんだろう。
こうして、僕達は新たな武器を手に入れ、3体のゴブリンを狩る事ができた。
今回の成果はこれで十分だろう。
僕達は、綺麗な朝焼けを見ながら、帰途に着くのだった。
少年達は冬を前にして、今年最後のゴブリン討伐に出かける。
無事に冬を越す準備をするために。
次回 第22話 冬支度




