表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/145

第2話 ハンターを目指して

ゴブリンを倒したその後、何事も無かったように家に帰り、僕は普通に過ごしていた。

もちろん、あのナイフと魔石は机の奥にしまってある。


あれから数日後、みんなで夕飯を食べている時に僕は父さんに聞いてみた。

「父さん、僕は大きくなったら冒険者、できればハンターになりたいんだけど、どうしたらいい?」


「ハンター⁈

ウチは十分田畑が広いから、ブルーは心配しなくてもいいんだぞ?」


「違うよ父さん。

ウチの為にじゃなくて、僕がハンターになりたいんだよ。

ハンターになって、この村を守りたいんだよ」


「しかしな、冒険者ってのは命懸けの仕事なんだぞ。

俺も冒険者、と言ってもハンターではなくストーカー、つまり探窟家の方だったが‥

ストーカーは戦うより探すのがメインだったけど、それでも何度も死にかけた事があるんだよ。

ハンターはむしろ戦う方だからな‥

それでもいいのか?」


「それでも、僕は真剣にハンターを目指したいんだよ。

ダメかな?」


「ダメではないが……

母さんはどう思う?」

父さんは母さんに話を振る。


「そうね〜、ストーカーだとなかなか帰ってこれないけど、ハンターならこの村を拠点にして帰ってこれるのよね?

ミルみたいに遠くに行って帰れないと寂しいし……

父さんに修行をつけてもらって、大丈夫そうならいいんじゃない?」


「そうだな、俺の修行についてこれるなら、認めてやろう。

だが、これまでの農作業よりももっと厳しいぞ?

本当に大丈夫か?」


「うん、頑張るからお願いします!

もちろん、ちゃんと農作業もやるから」


「じゃあ仕方ないな、明日から頑張れよ」

こうして僕の修行が決まった。


そんな話をしていると、妹のラーナが、

「ラーナもハンターになる〜」

と言い出したので、母さんは、

「ラーナは私と魔法の修行をしましょうね〜」

「うん、わかった〜」

と、和やかな雰囲気で締めくくった。

ちなみに、アルフ兄さんも

「夢があるって羨ましいな〜」

と言っていたが、継ぐ畑がある方が断然いいんだぞと父さんに怒られていた。


そして、父さんからOKをもらった僕は、翌日からハンターに向けた修行を始める。


まずは、朝起きて筋トレを始める。

ラヂオ体操という古から伝わる体操で身体を解した後、腕立て伏せを100回、腹筋を50回、背筋を50回を1セットで行う。

初日は1セットも出来ずにバテてしまったが、一カ月で2セットまで行けるようになった。

筋トレの後は畑仕事へ。

主に鍬での開墾がメインで、父さんが木を倒した所を中心に掘り返し、均していく。

切り株を取り除く作業は非常に大変で、抜根というらしいけど、鍬でちょっとずつ根を切り、掘る。

また根を切り、掘る。

これをひたすら繰り返していく。

そして、ある程度掘ったら、反対側から力をかけて倒し、穴に落とし込む。

そして、余分な根っこを切り落とし、切り株を拾い上げて捨てに行く。

最初の切り株を取り除くまでに4日かかった……

ちなみに、父さんが見本を見せてくれたが、ハイパワーのフルスイングで土ごと切り株を吹っ飛ばしていた‥

いや、8歳の僕には無理だし。

でもスゲーって褒めてたら、調子に乗って鍬を折ってしまい、母さんにスゲー怒られていたけどね。


そして、夕方にやっと、剣の修行が始める。

と、言っても素振りのみ。

しかも、ただ突きのみをひたすら‥

父さんに木のナイフを作ってもらい、それを使って練習する。

両手で柄を持ち、脇を締め、腰を落として構え、ヤーッという掛け声を発してただ前に突き出す。

これをひたすらに繰り返し、ベストな位置を見つけて、更に同じことができるように繰り返す。

毎日毎日同じだが、僕は飽きずに繰り返した。

こんな単調な練習をなぜ飽きずに続けられたかというと、一度だけ父さんが実演してくれたのがひどく印象的で忘れられ無かったからだった。

父さんの突きは、驚くほど速く、正確で、力強かった。

僕は避ける暇もなく喉元に寸止めされた木のナイフに、一瞬あの時と同じ死の匂いを感じた。

だから、あの突きを出せるよう、繰り返し、繰り返し飽きずに続けていた。

まぁでも、僕ではあの領域には程遠い。

もっと頑張らないと……


ちなみに、父さんにナイフにした理由を聞くと、長い剣や槍は重いし荷物になるからストーカー向きではなく、使い方がわからなかったから……

らしい。

いや、ハンターなら荷物は多少なんとかなるんだけど、と思いはしたが、まぁでも仕方ないしという事で諦めた。

それに、今となってはナイフが一番しっくりくるし……



そんな感じで修行を5カ月ほど続け今は9月、修行の成果は徐々に出ており、朝の筋トレは5セット、切り株は1日1個を処理できるようになってきた。

また、突きの練習も最初はだんだん脇が開く癖があると怒られていたが、最近ではしっかりと脇を締め、ブレなく正確な突きを出せるようになってきた。


すると、父さんが次の段階として教えてくれたのは格闘戦だった。

父さんが小枝で攻撃し、ナイフで弾いて蹴りを繰り出す。

実際、ナイフよりも蹴りの方がリーチが長く、しかも相手は上半身の攻撃を弾かれているので、下からの攻撃に対応しにくいから当たりやすい、というのが理由らしい。

全くもって剣の修行じゃないけど、実戦に近いし、ナイフを突くだけよりは楽しいので黙々とやり続ける。

というか、ナイフで小枝を弾くのも中々難しい。

最初は上からの攻撃だけだったのが、上下左右、突き払い、フェイント、とバリエーションに富んだ攻撃に変わって行く。

正直、小枝を弾けるのは3回に1回くらい。

ただ弾くのだけで、態勢を崩すまでは至っていない。


また、ナイフを振った後に蹴りを出すと、体幹がズレてバランスを崩してしまう。

これでは蹴りの威力も出ない……

思ったより難しい修行に、段々楽しさが増えてくる。

僕はまたひたすらに繰り返し修行を行なった。

もちろん、父さんが畑にいる時は突きの練習を繰り返した。


そうこうしていると、更に3カ月が過ぎ、今は12月。

この辺りは寒暖差が小さく、大雪にはならないが、畑仕事は2月まで休みになる。

とりあえず、筋トレと突きと体術の練習はできるが、切り株の抜根は必要なくなる。


ということで、次の段階は本格的な体術の練習になった。

今回からは木のナイフすら使用しない。

体術の練習と言っても、父さん相手では体格も実力も違い過ぎるので、今回の相手はアルフ兄さんになった。

ちなみに、アルフ兄さんは、農家の跡取りなので武術の修行なんてした事はない。

だが、毎日畑仕事で身体は鍛えているし、10歳の年齢差があるから体格は兄さんの方が遥かに大きい。

なので、兄さんの攻撃を避けて、懐に入り殴る、という修行のハードルはかなり高い。


うん、これはさすがに……

無理かもしれない。



毎日の修行を父親に認められた少年は、武器を買いに店に行く、そこで見つけた武器‥とは?


第3話 黒いナイフ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ