表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/145

第18話 逃亡

3回目のゴブリン討伐に出掛けた僕達は、雨季の後の森の厳しさを思い知る事になる。


最初の問題は、せっかく作った拠点のいくつかが、水浸しになっていた事だった。

ある程度は粘土で塞いでいたんだけどなぁ……

小高い場所に作った拠点は大丈夫だったので、今後は作る場所にも注意しないとなって話になった。

ちなみに、水浸しになった拠点の資材は腐って使えなくなっていた。

なので、途中で資材が無くなり……

3日分しか進めなかった。


そして、前回の教訓を活かして、今度は作り溜めした資材を沢山持って、再度ゴブリン討伐に出掛けたが、4日目に躓く事になる。

何故ならば……


血吸ヤマビル

体長数㎝

赤黒くて、ヌメヌメしているナメクジの様な軟体動物だ。

雨後に大量発生し、沼から這い出てきて、動物の体表に取り付き、血を吸い続ける害蟲。

落ち葉の下、木の上、ぬかるみに潜んでおり、体温や呼吸を感知して這い寄ってくるため、大量発生した地域に足を踏み入れると、全身の血を吸われて死ぬ事もある。

実際に、大量のヒルに血を吸われ、鹿やウサギが失血死していたし……


特殊な毒(麻酔薬にも使える)を持っており、血を吸われても痛みを感じない様になっていて、気付かない事も多い。更に厄介な事に、無理やり剥がすと皮膚ごと喰いちぎり、傷口が広がり、寄生虫や病毒を植え付ける事もあるので、吸われたら満腹になるまで吸わせるか、塩水をかけるか、火で炙るしかないけど火傷は必須だから危険だと言われている。


偶々塩を持っていたから良かったけど、僕の腕に1匹付いていた時は、パニックになってしまった。

ヒルが取れた後も、病毒で死ぬんじゃないかと不安になり、それ以上の探索は出来なくなった。

まぁ、数日経っても病毒や寄生虫の影響はなく、特になんともなかったんだけどね……


その後の探索は、全身の隙間が無いように服を着込み、ヒルが侵入しやすい場所には塩水を染み込ませる。

これで大丈夫、と思ったのだが……

初夏の蒸し暑い森の中を厚着で進む。

想像以上に体力を消耗する行軍となった。

汗が止まらないが、恐怖で服が脱げない。

結局、5日目でアナがダウンして、僕達は引き返した。

ちなみに、僕とアナはヒルが苦手だが、ジャルは結構平気で、ヒルを察知してデコピンで弾いていた。

うーん、僕も慣れないとダメなのだろうか……


更に今度は、ヒル避けの香草を持ってゴブリン討伐に出掛けた。

そろそろ、湿地も減ってきただろうし。

そう思ったのだが……

甘かった。


もちろん、多少のヒルなら、香草で避ける事はできた。

だが、6日目に通りがかった道は、至る所にヒルが蠢いており、通る事ができなかった。

しかも、ゴブリンの生息域に行くには、此処を通らなければならない……

ジャルが松明を持って近づいてみたが、火の中にヒルが飛び込んで来るため、さしものジャルも怖がっていた。


でも、此処を通らなければ、ゴブリンは狩れない。

僕の夢、僕達の目標は叶わない。

それは……

できない。


仕方がないので、完全武装して特攻を覚悟し、僕が血抜き君を引き抜いたその瞬間……

ザワザワと、ヒルが一斉に逃げ始めた。

ヒルは何故か、血抜き君の半径5メートルくらいまで近づこうとしない。

同じ吸血種として、何かを感じるのだろうか?

それとも、血抜き君はヒルの上位種?

そんなわけないか……

ナイフとヒルじゃ違いすぎるしねぇ。


ともかく、これで僕達は雨後の森の最大の試練を乗り越える事ができた。

更に進んで行くと、あの気配がある?

僕達は気配のある辺りを捜索すると、ゴブリンの死骸があった。


ゴブリンの死骸は、やや時間が経っているのか殆ど蟲に喰われ、骨と皮とちょっとだけの腐った肉のみだった。

だが、魔石はちゃんと残っており、回収する事ができた。

あと、ゴブリンナイフも使えそうだ。

他にも魔石の気配があるので、探してみると……

最終的に3つの魔石、ナイフが3本手に入った。

残念ながら、ゴブリンの耳は残っていないので取れなかった。

耳が取れれば討伐ボーナスが出るんだけどな……

まぁ、ゴブリンを倒したのはヒルだし、仕方ないか。

魔石とナイフは売る事ができるしね。


僕達は、一旦村に戻り、マルコさんの店で魔石とナイフを換金した。

合計1950ジルになった。

魔石が1個500ジルで、ナイフは1個150ジルだ。

僕達には結構な大金だよなぁ……


そして、やはり分配で揉める事になる。

「じゃあ、1人650ジルって事で?」

と、僕が提案すると、

「いや、結局僕とアナは何にもしてないし、ブルーが1350ジルで、残りを2人で分けるよ!」

と、ジャルが反論する。


「いや、ちゃんと分けないと!

じゃあ、僕が750でどう?」

と、僕が提案すると、

「そんなにも貰えないわ。

最低でも、1000はブルーの分でいいと思うの。」

更にアナが反論する。


結局、最終的に僕が800、ジャルとアナが500ずつ、残りをパーティー共有の貯金とした。

っていうか、なんでこうなるんだろうねって、みんなで笑った。

やっぱり、このパーティーは最高だ!


ちなみに、マルコさんには、久しぶりに魔石が手に入ったと、凄く喜ばれ、感謝された。

それだけでも、ハンターになって良かったなぁと、僕は思った。

まぁ、狩って無いけどね。


僕達は資材や食料を十分準備して、更に次のゴブリン討伐に出掛けた。

ヒルの巣窟までは、何事もなく通り過ぎ、ヒルの巣窟では魔石とゴブリンナイフを2個ゲットした!

今回は物凄く順調だ。


そして……

ヒルの巣窟を抜けると、あのザワザワを感じた。

しかも、複数の!

どうやら、魔石の感覚に慣れてきたのか、かなりサーチ能力が上がってきている様な気がする。

僕は、少し外れの位置に単独でいるゴブリンに狙いをつけ、ジャルとアナより先行して斥候を務める。


ジャルとアナに、手でサインをしながら徐々に近づいて行く。

いた!

ゴブリンがウサギを追いかけている。

僕にとっては、初めての無傷じゃないゴブリンだし、ジャルとアナにとっては、初めての死んでないゴブリンになる。


武器はやはりゴブリンナイフで、小柄で防具は持っていない。

ジャルとアナを呼んで、遠巻きに様子を伺う。

「生きているゴブリンって初めて見たけど、なんか怖いな……」


「なんか、独特の恐怖感があるわね。

緊張してきた……」

と、ジャルとアナは少しビビっていた。


「でも、今はウサギに夢中だから、チャンスだと思う。

まず、アナがゴブリンを狙って、それから僕とジャルで倒す作戦で行こう」

小声で作戦を伝えると、2人は緊張した面持ちで頷く。


アナがスリングショットを構え、狙いをつける。

十分な射程距離に入るまでは、慎重に待つ。

アナの表情は真剣で、手に汗を握っている。

そんな事には全く気付かず、ゴブリンはウサギを夢中で追いかけていた。


そして、ウサギに向かって飛びかかろうとした瞬間を狙い、アナがスリングショットで鉄球を撃つ!


だがしかし!

ウサギが咄嗟に方向を変え、ゴブリンの股をすり抜けたため、ゴブリンは反転してしまい……

ゴブリンから外れて、鉄球は近くの木に当たりバスッ!と小さな音を立てる。


ヤバい、ゴブリンに気付かれた!

ゴブリンは無傷で、グギャグギャ言いながら向かってくる。

どうする?

戦うか、逃げるか?

まだ少し距離はあるが……


ジャルとアナの方を見ると、アナが失敗のショックで呆然としている。

咄嗟に、僕はアナの手を取り、「逃げるよ!」と、ジャルに言って、逃げ出す。

ジャルも頷き、すぐに撤退する。


暫く走って、アナの手を放し、ジャルに「先に行って!」と、伝える。

待ち合わせは、ヒルの巣窟の手前の草原、事前に打ち合わせた通りだ。

まぁ、ジャルに魔石を1個持たせてあるから、位置はなんとなく把握できるしね。


僕はゴブリンのペースに合わせ、ジャルとアナの方に気がいかない様、ゴブリンを挑発して囮になる。

もちろん、戦いはしない。

十分引きつけた所で、ゴブリンに煙玉をぶつけ、一気に逃げる。


暫く走っていると、ゴブリンを撒く事ができた。

そして、僕はジャルとアナと合流する。


「私がミスったせいで……

ごめんなさい。

しかも、ブルーを危険な目に合わせちゃったし……」

その後のアナは僕に謝り続けていた。


僕は、

「いやいや、タイミングを指示したのは僕だし、アナは悪くないよ。

っていうか、あのウサギの反転がすごかったよね」

と言い返し、ジャルと2人で宥め賺した。


その後は、再戦する気にもなれないし、疲れが溜まっていたので、ヒルの巣窟を抜け、野営をした。

そして、僕達は村へと帰るのだった。



少年達は、初めての戦闘で得た教訓を活かし、次への糧とする。

そして、勝利を勝ち取るのだった。


次回 第19話 初討伐

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ