第16話 帰途
物心つく前から僕達の育った僕達の家
優しい神父様とちょっと厳しいシスターがいて、僕達と同じ様な境遇の子供達が沢山いた、僕達の家族の住む場所
それが、すでに焼かれ、廃墟になっていた……
僕は、すぐに事態を把握する事ができなかった。
なんで?
どうしてだ?
お米を沢山貰ってきたのに。
1000ジルあれば服や日常品を買ってあげれたのに。
全てが無くなってしまった……
僕が立ち尽くしていると、アナに頬を引っ叩かれた。
「家は焼けたけど、別の場所にいるかもしれない!
だから、探すよ!
まだ皆んな死んだって決まったわけじゃない、諦めないで!」
「そ、そうだね、近所の信者さんの所に行ってみよう!」
そう言って、僕達は近くの信者さん、リーズさんの家を訪ねた。
「あらま、あんた達、無事だったんだね。
あんな事があったのに、これも神様の導きかね〜
ほらほらお上がり」
そう言って、リーズさんは僕達を家に招き入れてくれた。
「僕達が冒険者の養成所に行っている間に、一体何があったんですか?」
僕はリーズさんに訪ねると……
「あれは、5日程前の事なんだけどね。
夜中に教会に誰かが訪ねてきて、そいつが教会の皆さんを刺し殺して、教会に火を点けて逃げたらしいんよ。
だから、火が消えた後も、そりゃあ酷い有様でねぇ……
本当に酷い事をする人もいるもんだよ。
私ら聖十字教徒は、みんな真面目で一生懸命なのにねぇ。
本当、神様を疑ってしまったわよ。
でもまぁ、あんた達だけでも無事で良かったねぇ」
「そ、そんな……
神父様も、シスターも、孤児のみんなも、誰1人助からなかったの?」
「残念ながら……
でも、あんた達は生きているんだし、みんなの分も生きるんだよ?」
「その訪問者は、どんな人だったんですか?」
「確か……
銀髪の少年だったらしいんだけど……
ってあんた達、復讐なんて考えちゃいけないよ、あんた達まで死んだら神父様達も浮かばれないからねぇ」
僕達はリーズさんにお礼を言って、教会に戻る。
何か手掛かりが無いか、探すために。
アナは、しきりにカールの逆恨みだと、つぶやいている。
かなり、ショックだったのだろう。
僕が教会の跡地を調べると……
流石に遺体は埋葬されたらしいのでなかったが、至る所に血の跡が見られた。
よっぽど凄惨な現場だったのだろう。
僕達は、神への祈りを捧げた。
神父様やシスター達が安らかに、天国で安らかに過ごせる様に。
僕は、祈りを終え、ふと下を見ると、焼け焦げた翼のブローチが落ちている。
銀翼十字団だ!
ちなみに、僕達の信仰する聖十時教団は、神霊たるシャダイを信奉し、ヨアヒムの福音書に従い、博愛、節制、謙虚、純潔を教義としている。
一方、銀翼十字団は、神霊たるシャダイを信奉するのは同じだが、ソドミーの黙示録に従い、自由、探究、破壊と再生を教義にしている。
そのため、聖十時教団が銀翼十字団に襲われる事や、時には銀翼十字団を聖十時教団が討伐するなど、お互いの仲はとても悪い。
元は同じ神を信奉しているのに、どうしてこんなにも違うのだろうか……
そして、多分ここにこのブローチがあると言う事は、神父様達をやったのは、銀翼十字団だろう。
実は神父様は昔、聖騎士団にいて、銀翼十字団討伐にも何度か参加していたらしい。
その復讐かもしれない……
僕はアナに見つからない様、すぐにブローチを隠す。
アナが見たら、銀翼十字団を探しに行きそうだし……
とにかく、奴らは危険だからな、と言っても多分もう奴らはいないだろうけど。
自由が教義の銀翼十字団はあまり拠点を固定しない。
ここに来たのも偶々かもしれないし、偶々きた銀翼十字団のアサシン、きっと新米の僕達では歯が立たない。
いや、何もできずに惨殺されるのがオチだろう。
決して戦ってはいけない。
一通り、手掛かりを探すフリをし、その後、僕達は教会を立ち去った。
帰り道は、カシ村まで何事もなく平穏だった。
そして……
カシ村で、カールを見つけてしまう。
ちなみにカールは茶髪で、間違いなく犯人ではない。
と言うか、カールにとっては運悪く、村外れで、薬草を採取している所を、僕達が見つけてしまった。
そして、アナが詰め寄り、問いかける。
「カール!
貴方なんであんな酷い事を!
孤児院の人達には罪はないはずなのに……」
カールは、意味がわからないと言った顔で、驚いている。
「お、お前らなんでここにいるんだよ?
孤児院なんて知らねーよ。
そもそも、お前らにやられた傷が治ってないんだぞ!」
それを聞いて、アナは……
「あんな小さな子供達を殺しておいて……
許さない」
そう言ってから、カールの顔面を何度も何度も殴る。
カールは卒業試験の時にアナに折られた腕が治っておらず、抵抗はできない。
その後、殴られ過ぎて気絶したカールを、2人で森の奥に運ぶ。
そして……
アナはかつてカールの武器だったシミターを、カールの心臓に突き刺す。
カールの心臓から大量の血が吹き出る!
僕は、アナを止める事ができずに、ただ見ているだけしかできなかった……
アナは、血塗れになりながら、狂った様にケタケタと笑っていた。
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私の名前はアンナベール、聖十時教団の聖騎士の父親の妾の子供として産まれた。
しかし、この父親がロクデナシで、聖騎士と言うより、性器士と言うあだ名が付くくらい、だらしなかった。
しかも、酔っ払うと母様に暴力を振るうとか、しょっちゅうあった。
ただ、剣の腕は確からしく、銀翼十字団の討伐での功績が高いため、誰も文句は言えなかったらしい。
そして、私が5歳のある日、性器士の父親が酔っ払って母様を殺してしまう。
そして、更に翌日、その父親は銀翼十字団の討伐で、無関係の住民まで巻き込んで殺しまくり、仲間に討伐されてしまった……
らしい。
その後は、かなり色々あって、私も関係者として処刑される寸前で、神父様に救われ、アナと言う名前に改名して孤児院に連れていって貰えた。
父親が死んだ頃は、銀翼十字団に入り、アサシンになって、聖騎士達に復讐する事も考えたが、神父様、シスター、そしてジャル達の暖かさに救われた。
特に、私の中でジャルの存在は一番大きく。
今では、ジャルのために生き、ジャルと死ぬまで寄り添いたいと思っている。
だけど、やっぱり私はあの父親の娘なんだろう。
ビスコとの戦いでは、一瞬人を殺しかける狂気に酔いそうになり、凄く焦った。
だから、必死に助けようとした。
でも、あの焼けた教会を見た時、どうしようもない殺意が私の中に渦巻いてしまった。
ジャルは隠している様だが、これが銀翼十字団のアサシンの仕業だと言うのは、私にだってわかる。
銀翼十字団相手では、私達が復讐できるわけもなく、ジャルを死なせる事になる。
だから、私はカールが犯人と思い込む事にした。
そして、カールを見た瞬間に殺意が増大し、私はカールを気絶するまで殴った後に、殺してしまった。
カエルの子はカエル
私には、あのロクデナシの父親の血が流れている。
そう思うと、無性に楽しくなって、ジャルがいるのも忘れ、ケタケタと笑ってしまった……
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神父様は以前、人の所為にすると許せなくなるから、常に自分の所為だと思いなさい、と言っていた。
僕はその言葉を守り、リッツ達に虐めを受けていた時にも、自分の所為だと思うようにしていた。
多分、アナも一緒だったはず。
しかし、今のアナは自分の所為と消化する事ができず、カールを許せずに殺してしまった……
そして、未だに僕はアナがカールを殺したのは、僕の所為だと考えてしまう。
だから、アナと一緒にカールの死体を隠した。
隠し終わった後、
「これは2人だけの秘密だから」
と、アナが言うのが無性に艶かしく感じた。
その夜からだ、僕とアナは男女の関係になった。
翌朝、僕達は急ぎ足でアラバ村に向かう。
そして、2日後、村に着いた僕達を、ブルーが迎えてくれた。
僕はの無邪気な笑顔と、「おかえり!」
の言葉を眩しく感じながらも、アナと2人で、
「「ただいま」」
と、答えた。
少年達は、敵を求め森の奥に進む。
ハンターとして初めての魔物討伐、この日のために辛い修行や、過酷な訓練にも耐えてきたのだから……
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