第14話 復讐の末路
カールは、僕とアナをビスコの所に、行かせるつもりはない様だ。
と言うか、仲間同士なのに信頼関係がないのだろう……
まぁ僕達の事も虐めていたし、そんなもんなのかもしれない。
ブルーは、まだまだ大丈夫そうだし。
って言うか、ブルーは僕とアナより強いからなぁ。
まだブルーは、9歳なんだけどね。
それはともかく、アナが焦っているので、できるだけ早く終わらせたい。
「アナ、2人でカールを止めて、ビスコの所に行くよ!」
「わかったよ、ジャル。
いつもので行くよ!」
僕とアナのいつもの連携攻撃。
さっきまでのシールド攻撃も偶にはやるけど、ブルー相手だと避けられる可能性が高い。
だから、いつもは僕が防いでアナが遠隔攻撃のパターンAと、今回はパターンBだ!
まずは、僕がカールの攻撃を受け流し、力押しで態勢を崩してやる。
その隙に、アナが僕の後ろから出てきて……
カールに足払いを喰らわす!
シミターを僕の盾で押されていたカールは、あっさりと転ぶ。
そして、転んだカールの右腕をアナが思いっきり捻りあげ、その後、カールの肘に足を乗せて思いっきり踏みつける。
カールの右腕は、この原理で関節を破壊される。
カールは断末魔の様な叫びをあげ、痛がる。
更に僕が盾を押し付け、地面にカールを固定すると、アナは常備しているロープで、カールを縛り上げる。
これで、カールは当分動けない。
パターンB
それは、大きな盾で動きが鈍い僕に変わって、アナが格闘戦をやる連携攻撃だ。
僕は、最初は無理だと思ったけど、実際やってみるとブルーにかなり有効だった。
しかも、アナは意外と格闘戦が得意みたいだし……
こうして、僕とアナはカールを倒し、ビスコの下に向かった。
ビスコは……
確かに血が沢山出て気絶しているが、時間をかけ、治癒魔法をかけてやればギリギリ生きれるかもしれない。
もちろん、放置したら死ぬ。
僕は……
「アナ、悪いけどビスコはもう助からない。
だけど、この傷はビスコが手製の変な木の鎧を使ったせいで、アナが悪いわけじゃない。
自爆、冒険者なら自業自得、もっと言うと自縄自縛みたいなもので、仕方ない事だよ。
それに、生き延びてもビスコは僕達を逆恨みするだろうし……
可哀想だが、リッツとの戦いが終わっても生きていたら、村医者に連れて行こう」
僕はアナに嘘をついた。
「そんな……
でも、ジャルで無理なら私にはどうしようもないし……
ゴメンねビスコ。
早めにリッツを倒して、村医者に連れて行くから、それまで死なないでね」
アナは若干涙目でビスコに話しかけ、「急ぐよ!」と言った。
僕とアナは、ブルーの所に向かって駆け出した。
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あれから暫く、リッツの怒りが収まらないかなぁ、と僕はリッツの攻撃を避けるだけに専念していた。
相変わらず、リッツは怒りに任せ、目一杯剣を振り続けており……
既に腕が痙攣し始めて、まともに剣が振り上げられなくなっている。
「リッツ、もう限界でしょ?
諦めたらどうかな?」
「ぜー、ぜー、ぜー
ば、馬鹿にするな。
お前を殺すまでは絶対に諦めない。
じゃないと、俺の気が狂いそうなんだよ。
頼むから、死んでくれよ?」
「嫌だよ、そんなん。
リッツはちょっと疲れてるんだよ。
実家に帰って休んだ方がいいんじゃない?
それに、冒険者の証はちゃんとあげるからさ……」
そんな話をしていると、ジャルとアナが戻ってきた。
「ブルー大丈夫?」
アナに聞かれる。
「うん、傷一つないよ〜
それより、2人の方は終わったの?」
「カールは、気絶させて縛ったから当分大丈夫だけど……
ビスコはちょっと死にかけている、自爆で。
だから、3人で早く終わらせよう!」
ジャルが説明してくれた。
それを聞いて、リッツは叫びだす。
「どいつもこいつも……
使えない奴らだな!
いいぜ、お前らを殺したらあの2人も、俺がトドメを刺してやる!」
「いや、こっちは3人だよ?
諦めようよ」
僕は必死にリッツを説得しようとするが……
リッツは懐から、赤い小さな魔石を取り出す。
あれは……
なんか、リッツからチリチリする様な感じがしていたが、あの魔石だったのか。
リッツは赤い魔石を握りしめ、拳を掲げ、呪文を唱え始める!
「赤き血の如く、紅蓮の焔よ全てを焼き尽くせ……」
僕は、咄嗟にアナを引き寄せ、ジャルの盾に3人で縮こまって隠れる。
ジャルは盾を魔法で強化し、僕達はリッツの放つ火の魔法を防ぐ。
「フレイムダムド!」
リッツの叫びと共に、赤い魔石が砕け散り、紅蓮の竜巻がリッツを中心に巻き起こり、僕達の頬をチリチリと焼いて行く。
そして……
暫くすると火は収まり、そこには……
かつてリッツだったモノが、黒焦げになって仁王立ちしていた。
多分、ちゃんと制御できないのに、魔石を使って魔法を放ったのだろう。
魔法は威力が強いが、暴走もしやすい。
治癒魔法だって加減を間違えると、かえって悪化させることもあるらしいし。
後ほど母さんに聞いた所、魔石を使ったとしても、魔法の使えない初心者がいきなり攻撃魔法を制御するのは難しいらしい。
だから、大暴走して自爆しても仕方がない、そう言う事らしいのだ。
ただ、僕は黒焦げになったリッツを見て、美しいと思った。
ただひたすら勝利を目指した、その果ての死だ。
だからこそ、美しい。
僕もあんな最期になりたいと思った。
まぁ、隣でアナとジャルはゲーゲー吐いているんだけど……
この感覚は共有できないらしい。
暫く僕は見つめていたが、ジャルとアナが我に帰って、ビスコの所に行く事にした。
ビスコは……
結局、息絶えていた。
ただ、さっきのリッツと比べると、ただの豚の死骸にしか見えなかった。
同じ戦いで死んだはずなのに、何が違うのだろうか……
カールは、縄を解いてやり、水をぶっかけると、目が覚めた。
そして、暫く喚いていたが、リッツとビスコが死んだ事を知ると、愕然と項垂れ、シミターを捨て、何処かに行ってしまった。
こうして、僕達の戦いは終わった。
ジャルは、
「これは、彼らの復讐だっただけじゃなく、僕達の復讐でもあった。
偶々今回は僕達の勝ちだったけど、こんな事を繰り返したら、いつかは僕達の末路もああなるかもしれない。
だから、僕達は気持ちを強く持って、負けない様に僕達の道を行こう」
と、言っていた。
アナは、
「私は2人を護るためなら、もう迷わない。
例え、相手が誰だろうと、殺せる!
もっと強くなる」
と、誓っていた。
若干の狂気を帯びながら……
僕達は父さんと村長を呼び、2人の遺体は荼毘に付された。
そして、その骨はカシ村の村長に届けらたらしい。
リッツの鋼鉄の剣は、あの焔の中、溶けずに残っていた。
なので、僕は父さんに束を作り直してもらい、研ぎ直して僕の剣とした。
また、シミターはアナが、モーニングスターはジャルが戦利品としてもらう事になった。
一悶着はあったが、僕達は無事冒険者になった。
やっと、スカイハイの冒険が始まるのだった。
余談だが、ヤーフルさんは、カシ村に逃げていたが、リッツの死を知った村長の奥さんに毒殺されたらしい。
まぁどうでもいい話か……
少年達は、時に傷つき、迷い、苦しみながらも、やっとハンターになることができた。
しかし、所詮は新米ハンター、その準備は地道で、大変なものだった。
次回 第15話 準備




