第13話 リベンジ
既に3人衆は戦闘態勢に入った。
その目は真剣で、話は聞いて貰えそうにない。
ちなみに、3人衆の武器はいずれも凶器で、リッツは長剣、両刃刀でやや細身、多分鋼鉄製じゃないかと思う。
ヤーフルさんの鉄の剣より、質は良さげだった。
防具はつけていない。
カールは、鉄の曲刀、所謂シミターと言われる剣だと思う。
カールは木の小さな盾と、薄手の皮の鎧をつけている。
ビスコはトゲ付き鉄球に鎖がついた武器、初めて見るけど、モーニングスターって奴か?
を構え、自作っぽい木の鎧をつけている。
リッツは、カール達に、
「お前らは、あっちの雑魚共を片付けてこい!」
と、指示してから、僕の方を向き、剣を構え、対峙する。
僕は、ヤーフルさんの鉄の剣を投げ捨て、木のナイフを構える。
すると、リッツは更に怒りだした。
「お前、いつもいつも俺を馬鹿にしやがって!
なんで、木のナイフなんだよ!
俺にはオモチャで充分って事か?
その剣を拾いなおせよ!」
いや、ヤーフルさんの剣は重いし……
それに、実はこの木のナイフは硬めの木に、父さん手製の謎の硬化液を染み込ませてあり、かなり硬くなっている。
だから、僕は返答する。
「いや、リッツだって怪我したくはないだろ?
この前みたいにさ……
だから、このナイフで相手しようと準備してきたんだけど?
それと、ジャルとアナは雑魚じゃない!
あの2人は、僕より強いよ?」
「五月蝿い、五月蝿い、五月蝿い!
俺はお前らと違って、命懸けでハンター目指しているんだ!
だから、孤児やガキに負けるわけにはいかない、そんな事許さない!
カール達だってそうだ。
あの2人が、すぐに雑魚を殺して戻ってくるからな。
それまで、俺が存分に叩きのめしてやんよ」
そう言って、リッツは僕に襲いかかってきた。
相変わらず、リッツの剣さばきは、ヤーフルさんの教えた型通りだが、かなり練習したのだろう。
綺麗な一筋が、僕にめがけ放たれる!
だが、間合いも充分あり、軌道も読めている。
僕は、木のナイフをリッツの剣の刃に向かって垂直に当て、剣を弾く。
いくら硬くしてあると言っても、所詮は木のナイフ、マトモに受けたら削れるしね。
しかし、リッツは木のナイフで弾かれた事に驚き、一瞬の隙ができる。
僕はそれを狙って、リッツの水月に蹴りを入れ、バックステップで間合いを取り直す。
リッツは、「グハッ!」っと呻いて後ずさる。
それを見て、僕は思わず。
「あはは、雑魚っぽいのはリッツの方じゃないか」
と、言ってしまう。
すると、リッツは顔を真っ赤にして、「ウガー」とか叫びながら、やたらめったらに剣を振り回して、襲いかかってきた。
軌道は読みにくいが、充分間合いさえ取れば当たらない。
僕は、避けるのに徹し、時々ナイフで弾いて反撃する事を繰り返す。
暫くすると、リッツは息が切れてきて、ゼーハー言うようになってきた。
そう言えば、ジャルとアナは大丈夫かなぁ?
――――――――――――――――
ブルーがリッツに話をしに行ったら、こじれて卒業試験をやる事になったみたいなんだけど、私達3人は分断され、私の目の前にはビスコがいる。
ちなみに、ジャルは、カールと相対している。
正直、私はビスコが苦手だ。
と言っても、戦いではなく、生理的に。
自信がないくせに、弱い相手にはトコトン強気で、目つきがイヤラシイ。
今も、「ぼ、僕はジェントルマンだからなぁ、女の子には優しくしてあげるんだな?」
とか、下卑た笑みを浮かべ、モーニングスターを振り回しながらジワジワ近づいてくる。
キモチワルイ!
ただそれだけだ。
私はすぐさま後ろを振り向き、ダッシュでその場を離れる。
そして、ジャルとブルーの邪魔にならない位置に移動する。
ビスコは、私がただ逃げているだけだと思って、喜んで追いかけてきている。
でも、私の方が速いから、距離は充分開いている。
正直に言えば、あの3人衆に囲まれて虐められた事はトラウマになっている。
だからこそ、ここで負けるわけにはいかない!
私は、ビスコの鎧のない部分を探す。
頭か手足、それと股間……
「ふふっ」
思わず笑みがこぼれる。
ビスコは誘っていると勘違いしたのか、狂喜の笑いを浮かべ、走り出す。
そして、私はゆっくり、正確にスリングショットを構え、できるだけ近い位置で、鉄球を股間に打ち込む!
そして……
鉄球は正確に、ビスコの股間へと吸い込まれ、ビスコは痛みでもんどりうって倒れる。
また、手製っぽい木の鎧はバキバキに割れ……
ビスコの腹に刺さり、血塗れになっている。
更に、ビスコが振り回していたモーニングスターの鉄球が上から落ちてきて、胴体に直撃する!
「い、痛いよ……
タスケテ……
ゲフ」
そう言って、ビスコは血を吐いて倒れる。
流石にやり過ぎた⁈
私は顔面蒼白になり、ジャルの下に駆けて行った。
――――――――――――――――――
今、僕はカールと相対している。
多分、カールは僕が盾だけだから、防御しかできないと思っているのではないだろうか?
これは僕の勝手な推測だが……
あの3人衆のリーダーはリッツだが、リッツは力があるけど、剣の技術は大したことはない。
むしろ、技術で言えばカールの方が上手い。
そして、カールは慎重で狡猾だから、ビスコにアナを狙わせ、攻撃手段のない僕をゆっくり倒しにきた、そんな所じゃないかなと。
ちなみに、ビスコはハッキリ言って単体なら凄く弱いくせに、もっと弱い相手には強気なやな奴だ。
アナを色んな意味で狙っており、「アナは僕が妾に貰ってやるよ?うヒヒ」とか言ってた事あるし……
いつか殺してやろうか?
それはともかく、ブルーがリッツと、アナがビスコと戦っている今、僕は早急にカールを倒し、2人を護る必要がある。
「カール、悪いけど早めに終わらせてもらうよ?」
僕がカールに言うと、カールは鼻で笑う。
「は?
言ってろよ?
って言うかジャル、お前まだ盾だけなんだな。
まぁ孤児だから武器が買えないのは仕方ないが、盾なんて護るだけで攻撃できねーじゃないか」
確かに盾は防具で、攻撃用ではない。
僕も前はそう思っていた。
しかし、ブルーに色々教わって、今はそうじゃない事を知っている。
もちろん、盾で攻撃するには、かなりの膂力がいるから、あの地獄の特訓が無ければ、無理だったと思うけど……
まぁでもそんな事、カールに教えてやる必要はないか。
と言う事で、僕は、
「ば、ばれた?
でも、時間さえ稼げばアナが来るから、僕は自分を守るだけでいいんだよ!」
と、自分なりに演技してみる。
カールは、
「やっぱりな、リッツが怖いし、さっさとヤらせて貰うぜ?
死ね!」
と、言って、盾で隠しきれていない部分、つまり足元を狙って、シミターで突いてくる!
僕は、カールの突きのタイミングを見極め、シミターの切っ先に軽く盾をぶつけてズラし、盾ごと正面から突っ込みカールを吹き飛ばす。
ブルーの父さんに教わり、新たに覚えた技、シールドチャージだ!
ただ、実戦で使うのは初めてだし、過去のトラウマのせいか、踏み込みが一歩浅かった様だ。
カールはちょこっとダメージを喰らった程度だった。
しかし、カールは何が起きたかわからず混乱しているし、僕も実戦で戦える自信がついた。
ならば次は……
僕は盾を片手で持ち、小さな盾を持つ様に構える。
ちなみに、この新しい盾、前のより大きめだが、重さは軽く、強度は約2倍程になっている。
ブルーの父さん、何者かはよく知らないけど、こんな凄い盾を作れるとか凄過ぎる。
もちろん、大きい分取り回しは難しいし、相手が見え難くなる。
だから、筋力を鍛え、右手の片手持ちを可能にした。
と言っても、これも防御のためではない。
カールも、片手持ちにした事に気付き、
「ジャル、さっきので左手でもヤられたか?
そんな持ち方じゃ、正面がガラ空きだぜ!」
と、言って盾の反対からの袈裟斬りを放ってくる。
僕は、敢えて一歩踏み込み、カールの袈裟斬りが振り下ろされる前に、右手の盾を全身の筋肉を使って回転力を与えながらカールに叩き込む!
シールドバッシュ、僕が覚えたもう一つの盾技だ。
カールは僕の盾を直撃し、派手に吹き飛ぶ。
すると、そこにアナが走ってやってくる。
アナは息を切らし、顔が青ざめている。
「アナ、どうしたの?
ビスコに何かされたの?」
「ち、違うの!
ビスコが、ビスコがコケて……
死にそうなの!
ジャル、何とかならないかな?」
コケて死にそうとか、ビスコはどんだけマヌケなんだろう。
まぁ死にそうなら仕方ない。
ただ、僕の回復魔法で治せるレベルじゃないっぽい気もするが……
と、思っていると、カールが満身創痍で立ち上がり、再び僕らに剣を構える。
「カール、戦いは一時中止にしよう。
ビスコが死にそうらしいんだ!」
「五月蝿い!
お前らを倒さないと、俺がリッツに殺されるんだよ!
だから、死んでくれよ」
そう言って、カールは再び僕達に向かってシミターを構えた。
僕らは共にハンターを目指し、切磋琢磨する仲間……
だったはずなのに。
そして今、かつて仲間だったモノを見て僕達が思うことは……
次回 第14話 復讐の末路




