第128話 山賊
あのマサゴとかいうよくわからん転生者のゴーレムを倒した後、私達は村人に歓迎され、一晩の宿を借りることになったのだが……
シアンと部屋は別々だったのに、深夜にシアンが私の寝所に這入ってきた。
コレは所謂アレか?
私も性別は女だし、知識として知らんわけではない。
もちろん、普通の相手なら刻んで、並べて、晒してやるのだが……
シアンが相手では抵抗できるかはわからない。
しかし、私の腹を見ただけで顔を赤らめて目を逸らした奴がいきなり来るか?
いやもちろん、戦闘で昂ったリビドーが抑えきれず迸るのかもしれないが……
いや、奴の本性は実はアレなのかもしれんな。
これは、覚悟を決めるしかないのかもしれない。
実際、私はシアンの事をどう思っているのだろうか?
最初に遭った時は畏怖を感じた。
戦闘を見た時は驚愕を感じた。
敵を倒した時は憧憬を感じた。
今ではシアンの生き様を見続けたいと感じている。
つまりコレは……
恋と言う奴なのだろうか?
いや、なんか違う気がするな。
私の産まれた村の奴らが言うには、恋をすると指の混ざりにほほの香りを感じて、離れない苦いレモンの匂いがするらしい。
よくわからんが、多分恋ではないが、故意に求められれば拒めない。
そう言う関係なんだろうと割り切る。
「ブルー、あのさ……
こんな夜更けに起こしちゃってアレなんだけどさ。
多分、この村に野盗が向かっているっぽいんだけど、どうする?」
「ん?
夜這いと言う奴ではないのか?
なんだ、緊張して損したじゃないか」
「よ、夜這いっ!
そ、そんなつもりは全くと言うか……
そうだよね、夜中に女の子の部屋に入って来たらそう思っても仕方ないよね。
ご、ごめんね、すぐに出ていくから」
「ちょ、野盗の話はもういいのか?
なんなら私が退治してやってもいいんだぞ。
ちなみに相手は何人くらいで、どの辺まで来ているんだ?」
「えっと、相手が魔力の少ない人間だから、正確にはわからないんだけど……
多分10人くらいかな。
もうすぐ村に着くよ。
念のために伝えに来たけど、夜這いじゃないし、ブルーだと殺しちゃうかもしれないからと思って……
本当に夜這いじゃないよ。
じゃ、そう言う事で」
「いやだから、落ち着け。
夜這いじゃないのはわかったから。
どちらにしても、私も行くぞ?
今から着替えるからちょっと待て」
「あ、わかってくれたんだ。
良かった……
って僕の前で脱がないでよ!
宿の外で待っているからね」
そう言ってシアンは外に出て行った。
ふむ、貞操の危機は去ったが、野盗の危機はきたってところか。
私は急いで装備を整え、って軽装備とナイフだけだがすぐに着替え、外に出る。
外に出ると、シアンはソワソワしながら待っていたのだが……
先を見ると村の端の家が燃えていた。
どうやら野盗が火を放ったらしい。
「あ、早かったね。
なんか野盗は火矢を放ったみたいだよ。
それで村の人はちょっと混乱してるみたい。
門番の人も……
今殺されたみたいだね。
まぁ、ゴーレムに門が破壊されてるから仕方ないかもだけど。
それで、どうする?
倒すか、逃げるか?」
「いや、私が言うのもなんだが、普通は一泊の恩があるとか言って野盗を倒すんじゃないのか?
それに、門番が殺されたとか、確か昨日仲良く話してたあの門番だよな……」
「別に僕が殺したわけじゃないし、そう言うのはあんまり気にしない主義だから。
恩って言ってもゴーレムを倒した御礼だったから、あんまり気にしなくてもいいんじゃない?
まぁ、倒すにしてもすぐ終わると思うけど一応聞いてみた、みたいな?」
「なら、サッサと終わらせて寝るぞ。
まぁ、褥で今夜は寝かさないとか言うなら考えてやらんでもないがな?」
「ちょ、だから夜這いは誤解だって!
とにかく、サッサと倒しに行くよ。
あっ、でも殺さないでよ、野盗でも」
「わかった、わかった。
峰打ちにしておくから安心しろ」
そう言って、私とシアンは村の中央に向かって走り出す。
村の中央では、野盗達に村人達が集められていた。
ちなみに、抵抗した村の男衆は野盗に斬り殺されており、村人達の前で無残に骸を晒している。
野盗は、そこそこ手練れの様だな。
そんな事を考えていると、親玉らしき下卑た男が怒鳴る様に話しかけてきた。
「おい、ソコのガキと……
まだ小さいが中々上ものじゃねーか。
女、お前はたっぷりと後で可愛がってやるから安心しろ、ゲヘヘ」
虫唾が走る。
って言うか、ゲヘヘとか素で言う奴初めてみたな。
「シアン、コイツは私がやるけどいいか?」
どう見てもコイツが親玉っぽいしな。
ちょっとイラッとしたし、私の力もシアンに見せておくかなと、思い提案する。
「うーん、まぁブルーなら問題ないか……
んじゃ、他の野盗は僕が倒しておくね」
「チッ、ガキが舐めるんじゃねーよ。
俺達は群青の絆って言う、この辺では名の知れた山賊だぜ。
そして、俺様はリーダーのバビッチ様だ。
俺様の震罵幻滅流斧術を見て、その余裕いつまで続くかな?」
そう言って、親玉らしき男は斧を見せつけるように左右に振り回す。
確かに、手慣れた動きをしている。
それに、筋骨隆々の大男だ。
まともに喰らえば私の身体では保たない。
まぁ、喰らえばだがな。
親玉は左斜めから斧で斬りかかる、と見せかけて私の目の前ギリギリに刃先を通過させ、反転しながら後ろ回し蹴りを放つ。
多分、傷が付くと商品価値が下がるからだろうが……
そんな鈍間な攻撃は当たらない。
まぁ、この程度の相手なら本気で来ても余裕で避けられるのだけど。
最適で最善のルートをゆっくりと歩き、親玉の前まで辿り着く。
多分、自分が近づかれた事すら気が付かないだろう。
しかし、殺さないとすると……
手首と足の腱を正確に切ってやる。
ちなみに、手首の腱は僅かでも切り過ぎると動脈まで切れてしまうから、かなり精密に切らないといけないけどな。
そして、切る速さはほぼ一瞬だから、この木偶の棒には気付かれもしないだろう。
親玉は突然に力が入らなくなり、振っていた斧の反動で、あらぬ方向に体勢を崩し、自分で倒れて頭を打って気絶した。
なお、頭は気絶するギリギリの衝撃で打つ様に調整し、手持ちの斧で自爆しないようにも調整した。
「どうだシアン、私もそこそこはやるだろう?」
「うん、凄い凄い!
あんなにバタバタ動いている相手にあれだけ正確に攻撃できるなんて。
しかも、ちゃんと殺さないように調整してくれたし、凄いよ、僕には真似できない」
そう言って、シアンは私を褒め称えるのだが……
私が親玉を倒している間に、シアンは他の野盗の手首、足首を全て落としていた。
あの一瞬で、それだけの事をしながら、私の事も見ていたって……
やはり、シアンは恐ろしく強い。
そして、手首、足首を斬られた野盗達を見てみると、全員傷口から血を流していない……
「いや、シアンの方が沢山やっているし、凄くないか?
しかも、この切り口は血が出ていないし、傷が塞がっている。
どうやったらこんな風になるんだ?」
「そんな、僕なんて大したことないよ。
この血抜き君で斬ると血が出ないんだよね。
あと、回復魔法で傷を治せば簡単にできるよ」
「いやいや、普通は斬りながら回復魔法を相手にかけるなんてできないからな?
まぁしかし、コイツらは生かして、回復させて逃すのか?
そうすれば改心した振りをして、確かに一時的には野盗を辞めるかもしれないが……
いいのか本当に」
まぁ、人殺しの私が言う事でもないが。
シアンは甘過ぎる、そう思って聞いてみたのだが……
「いやいや、そんな事はしないよ。
そんな事しても誰も喜ばないしね。
だから、いつもこう言う風にしてるんだ」
シアンはそう言うと、動けない野盗達を集め縦に並べて行く。
野盗達は口々に脅したり、助けを求めたり、謝罪をするのだが……
シアンは一切気にせず、野盗の唇付近と舌を斬り落とし、前に並べた野盗の尻に回復魔法で融合させる。
ちなみに、普通の回復魔法では別の人間の組織を融合させる事はできない。
それをいとも簡単にやってしまうシアンはやはり……
しかも、野盗であれば男女関係なく、繋いでいく。
いやしかし、これは……
「なぁ、シアン。
これは一体何だ?」
「なんだって言われると野盗だよとしか言えないけど、所謂ムカデ人間みたいな?
でも本物のムカデの怪人じゃなくて、見た目がムカデみたいなもので、見た目もファンキーで楽しそうな人々みたいでしょ?」
「いや、これって殺すよりも酷くないか?
って言うか、こんなのすぐに死ぬし、殺したのと変わらないんじゃないのか?」
「えっ?!
別に僕は殺してないよ?
だってこの人たち生きてるし。
それに、死んだら終わりだからさ、生きてるだけこの人たちも幸せだと思うんだよ。
死んで花身は咲かないって言うしさ、ダメかな?
それに、この人たちさ、いっぱい他の人を殺してるし、普通に手足が無いくらいじゃダメだと思うんだよね」
「うーむ、直接殺さなければいいって言う事か?
ちなみに、明らかに死ぬのがわかっている状態なら、未失の殺意と言ってな……
まぁ、別に山賊如きがどうなろうと知った事ではないか。
死ぬより辛い罰だしな。
ちなみに、この状態でどれくらい生きるんだコイツら?」
「んー、10日位は生きれる魔力は与えてあるけど、ちゃんと世話すれば寿命まで生きれるよ、多分。
でも大抵は野生動物に食われたり、村人や憲兵さんに殺されるんじゃないかな。
だから、寿命か、他人か事故で死ぬから僕は殺してないって言う事はわかってもらえたかな?」
「あとな、完全に殺さなければ別に半殺しまではいいって事で良いのか?」
「うん、完全に殺したら僕の敵になるから注意してね。
まぁでも、いつかはブルーと本気で戦うのも良いかもね」
「いや、それは勘弁してくれ。
いや勘弁してください、お願いします。
まだ夜這いの方がマシだしな」
「や、だからソレは誤解で……
ブルーは可愛いんだから、もっと自分を大切にね」
そんな会話の後、私達はそれぞれ部屋に戻って眠りにつき、翌朝に村人に殺され、焼かれたムカデ人間を見て村を後にするのだった。
鳥は何故空を飛ぶのか?
空を飛ぶ力があるから?
空を飛ぶのが定めだから?
自由に空が飛びたいから?
ならば魔物は何故飛ぶのだろうか……
次回 第129話 凶鳥




