第127話 バーニングナックル
僕の名前は絶獺 魔砂、小さな頃からロボットが好きで、ロボットアニメを見たりフィギュアを集めている様な普通の子供だった。
そして、高校ではロボット研に入り、電子回路や姿勢制御に取り組んでいたのだが、今は……
一度死んで、怪しげな邪神の導きで転生した僕は、気づいたらロボット……
いや、ゴーレムと言った方が正解、になっていた。
というか、普通は転生したら前世の知識を生かしたチートだろ、普通!
ゴーレムをロボットにして魔改造し、現代兵器を模した武器で無双するならともかく、僕自身がゴーレムじゃ改造なんてできないじゃないか!
いやまぁ、スライムとか、ゴブリンとか、うわん?とかになって死ぬよりはマシだけどさ、せめて委員長と同じ魔族なら良かったのに……
それでも、まだロボットに近いだけ良かったと自分を慰め、これまで生きてきた。
ただ、ゴーレムになって良かった事もある。
この石の身体は強く、魔石を奪われない限り死ぬ事は無い。
石や砂が有ればすぐに回復できるしね。
痛みや苦しみはなく、人を殴り殺す忌避感や罪悪感も無い。
コレは魔物だからかもしれないが、試しに襲った人間の村で、悪のロボットの様に敵、一般市民を嬲り殺してみたが、ただひたすらに楽しいだけだった。
ゴーレムのモノアイから見える景色が、無機質だからという理由もあるかもしれない。
ちなみに、ゴーレムなのにある程度は魔法を使う事もできるし。
使えるのは火魔法と土魔法の2種類。
だから、火炎放射や土の散弾なんかも打ち出せる。
そう考えると、この種族……
かなり当たりなのかもしれない。
そんなある日、僕はいつも通り小さな村を見つけ、村の門を土魔法の散弾で打ち開けると、そこには……
鷹塔を殺したガキと、死魔袋を殺した少女がいた。
コイツは……
付き合っているのか?
前世で僕に彼女はいなかった。
ロボット研には憧れの魔魅痩先輩はいたけど……
魔魅痩先輩、あの人は無事に向こうの世界で生きているのだろうか?
ってそれはともかく、年齢=彼女いない歴の僕の前でイチャイチャするとは……
しかも美少女と……
許さん!
お父さんは許しませんぞ!
のレベルの怒りが湧き上がってくる。
当然、SATHUGAI だ。
僕は腕を振り上げ、一気にガキを打ち抜く。
フハハハハ、ゴブリンとは違うのだよ、ゴブリンとは!
砂塵が収まると、そこにはガキの死骸が……
ない?
更に、恋人である美少女も、全く心配していない?
ガキは、ギリギリの所で平然と避けた様だった。
そして、僕を無視して2人で話し始める。
「あのさ、ブルー、最近のゴーレムって……
こんなに凶暴なの?
流石に速攻で襲われたのは初めてなんだけど。
って言うか、ゴーレムなのに赤いし、角があるし、星のマークとかついてるのは普通なのかな?」
「いやシアン、コイツは普通のゴーレムではないな。
多分、転生者だな。
名前はマサゴと言うらしい。
ん?
このボディは超絶殲滅機ジャスティレインだと。
そんな長い名前は覚えられんわ」
?
今のところこの身体は言葉を発する機能がない。
だから、嶽堕の使者の魔族ですら会話できず、一方的に通達されただけだったのに……
この美少女ちゃんは俺の言葉がわかるらしい。
「いや、魂がわかるだけで、言葉は出してないぞ?
と言うか、私の名はブルー、美少女ちゃんとか変な名はいらんわ」
ま、マジで意思が通じている!
この身体で、初めての事に僕は興奮する。
是非僕と友達になって、いやパートナーとして一緒に戦って欲しい。
そうしたら、命は助けてあげるから。
僕はそう願うと、ブルーは僕ならば明らかに余裕にできる勝負を提案してきた。
やはり、相思相愛?
「そうだな……
このシアンに勝ったら、お主のパートナーとやらになってもいいぞ?
丁度シアンの実力も見てみたかったし、私では相性が悪くてお主を倒せないしな。
シアンも良かろうて?」
「いや
勝手に決められても……
って言ってもどのみち倒さなきゃいけないだろうし、仕方ないか。
それにゴーレムって初めてだから、楽しそうだしね」
そう言って、ガキはナイフを構え、ブルーは後ろに下がる。
ふふ、これで思う存分にこのガキを甚振ることができるな。
だけど、あまりアッサリ殺すのも……
いや待て、一応、鷹塔を殺したガキでもあるしな。
やはり、油断は禁物だ。
僕の身体は重いから、振り下ろしのモーションは早いが、振り上げのモーションは遅い。
だから、さっきも避けられてしまったのだろう。
まぁ、それでも普通の相手なら避けられないはずだけどね。
ならばと僕は足に集中して、高出力の炎魔法を放つ。
これでロボットアニメのバーニアスラスタを模した高速機動ができるのだ。
まぁ、姿勢制御が若干難しいのだが、真っ直ぐならば関係ない。
いくぜ、ジャスティレイン必殺のハイパーダッシュタックルだ!
僕はまるで巨石の弾丸の様になって、ガキにタックルをかます。
さながら暴走トラックの如く、大質量が高速で迫る!
このスピード、避けられまい。
一瞬でガキを轢き殺し、死体を確認するが……
やはりいない?
流石にあのスピードは見切れないはずなのに。
「今の何?
早っ、て感じでビックリしたよ。
火魔法で飛ぶとか、凄いね!
僕にもできるかな……
いや、熱そうだし、無理かなぁ」
何故避けられた?!
あのスピードならわかっていても避けられないはず……
「あー、シアン。
なんで避けられたかを不思議がっているぞ?
って言うか、よくあんなギリギリで避けるよな」
「んー、魔力で来る方向とかはわかるからね。
動きも直線的だし。
でも、結構速いから身体強化なしじゃキツいかも?」
魔力が読める?
そんな、チートじゃないか!?
これじゃ、僕の攻撃は当たらない……
いや、更に速ければ流石に避けられないはず!
僕は、腕を前に水平に出し、指を正確にガキに向け狙い澄ます。
喰らえ、必殺必中バレットフィンガー!
僕は指を切り離し、切断部に火魔法を圧縮して弾丸の様に飛ばす。
30mmはある指の弾丸が、さっきの突進よりも高速でガキに向け放たれる。
まぁ、反動も少しあるし、照準がないからそこまで正確には撃てないが、ガキに当てるくらいは造作もない。
僕の放った弾丸は、一瞬でガキの左腕を吹き飛ばす。
ッチ、少し外れたか。
だが、これで奴は瀕死のはず……
「痛っ!
今の速くて見えなかったよ。
おかげで腕が落ちちゃったし……
よいしょっと。
ふう、くっ付いた。
ちょっと今のはヤバイかもね。
とはいえ、なんとなく感じは掴んだし、次は避けられるかも?」
「ちょ、拾った腕をくっ付けるとか……
やはり、シアン、本当に貴様は人間なのか?
いや、魂の波長は間違いなく人間だけどな、普通の人間は手をくっ付けるなんてできんぞ」
「いや、師父に比べたら僕なんて……
まだ普通だと思うけど?
ちなみに、ただの回復魔法だから、聖属性があれば誰でもできるんじゃないの?」
「レオンも大概人間離れしていたが……
シアン程ビックリ人間ではなかったはずだぞ?
それに、普通の聖属性持ちでも、傷を治すのが精一杯だからな。
大司教クラスなら他人の腕位はくっ付けられるかもしれないがな、自分の腕を痛みを無視して付けられるなんて、ゾンビ位しか私は知らんぞ」
「確かに師父は凄く強いから、怪我すらしなかったからなぁ……
でもでも、僕の心臓とか再生していたし、ジャルも魔力は低いけど傷くらいは簡単に治せたし、手をくっ付けるくらい普通だと思っていたよ。
まぁ、僕は人を治すよりも、自分を治す方が得意だからより治しやすいのかもしれないけど……」
腕をくっ付ける衝撃に呆然としていると、2人は勝手に話をしていた。
回復魔法だと?
しかも、腕の痛みを無視して使える?
そんなのズルい!
チートじゃないか!
いや、反則級だ。
魔力が読める、回復魔法が使える、死なない、そして人間で、美少女と一緒に旅をしている。
ズルい、ズル過ぎる!
そんな奴は……
僕が倒す!
今度は、指全部を使ってバレットフィンガーを撃ちまくる。
喰らえ、喰らえ、喰らえ、喰らえ、喰らえ、喰らえ、喰らえ、喰らえ、喰らえよ!
僕の悲痛な叫びとは裏腹に、ガキは全ての弾丸を避けきってしまう。
「だから、その攻撃は見切ったって言ったのに、
指の向きで大体予想できるからさ、連続で撃っても意味は無いと思うよ?」
ガキのその言葉に、僕は更に怒りが込み上げる。
ならば、僕の最強技を見せてやんよ!
そう思い、僕は右手に魔力を最大限に込める。
ジャスティレイン最大にて最強の必殺技、バーニングナックルを喰らわしてやる。
ちなみに、バーニングナックルは腕に魔力を最大限に込め、対象に接触した瞬間に魔力の大暴走で半径100メートルを火の海に変える必殺技だ。
コレならば避けれないし、爆風と炎で再生もできまい。
欠点としては、僕自身もかなりのダメージを受けるのと、何故だか暫くの間は腕が再生しない事だが。
それでも、このガキを倒すには仕方ない。
あと、美少女ちゃんと、この村も灰塵と帰すが……
このチートなガキは絶対にヤバイ。
だから、ここで仕留める!
僕は、ガキに向かって魔力の篭った右腕を振りかぶる。
この攻撃自体は早くはない。
だから、このガキには避けられるだろう。
だが、それで良いのだ!
ガキに当たらなくても、地面に触れた瞬間に、僕の右腕は大爆発を起こす。
そして、気づいたら焼け野原だ。
フハハ、僕に戦いを挑んだ事を後悔する間もなく死んで行くがいい!
僕の右腕は正確にガキを狙い……
ガキは避けずに受け止めた?!
あんなナイフ1本で何故だ?
それに、奴なら余裕で避けられるはずなのに……
しかも、右腕が爆発しない。
次第に右腕の魔力は失われていき、僕の右腕は砂塵と化した。
「ふぅ。
あんな魔力を暴発させたら危ないじゃないか!
ブルーとか村まで巻き添えにする気なの?
僕だからなんとかなったけど、ちゃんと考えて戦ってよね!」
「まぁ、私的にはこやつが勝って変なことをされるよりは、爆風で死ぬのも悪くはないがな。
しかし、シアンは相手の魔力も吸えるのか?
もうなんだか色々あり過ぎてよくわからんな」
「いや、逆だよ。
僕自身は魔力がないから、だから相手から貰う必要があるって言うか……
この魔力吸収能力があるから色々できるようになったんだ。
ちなみに、大分吸い過ぎたせいか……
このゴーレム、小さくなったね」
ガキに言われてやっと気づく。
僕の体が……
ガキと同じくらいの大きさになっている。
や、ヤバイ!
僕は参ったと、片手は無いが四つん這いになり、頭を地面に打ちつけながら土下座する。
みっともないかもしれないが、生き延びるためならなんでもやる。
頼むよ、ちょっと調子に乗っただけで悪気はないんだよ。
本当はいいゴーレムなんだよ、もしくは正義のロボットなんだよ、だから助けてよ。
声は出ないが、ブルーに魂で懇願する。
すると、ガキは僕の肩に同情する様な瞳で手を当て……
魔力が全て吸い取られ、僕の意識は……
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こうして、マサゴとかいう転生者のゴーレムは、アッサリとシアンに倒された。
やはり、シアンは只者ではないらしい。
これ程の魔物ですら殺せるとは……
しかも、まだこれから成長する事を考えると、そのうち前世の私を超えるかもしれないな。
「しかしまぁ、シアンも大概容赦ないな。
一応、奴も元は人間らしいぞ?」
「いやさ、元は人間かもしれないけどさ、爆発させようとする魔物は流石に不味いでしょ。
それに、転生者なら倒しても罪悪感は出ないみたいだし。
うん、違うな……
転生者との戦いは楽しいんだよね。
凄い強いしさ、なんかワクワクするみたいな?
1人倒すと次が出てくる気がするし、ブルーは次はどんな魔物だと思う?」
「さあな、目の前に立つ奴が敵ならなんでも良いんじゃないか?
私的にはオークとか殺しやすい相手の方が楽しいけどな、ふふふ」
とりあえず、シアンといれば退屈はしなさそうだしな。
人は殺せないけど……
そんな事を考えながら、私はシアンとの旅を続けるのだった。
シアンは人を殺さない。
……のか?
いや、何をもって人と定義するのだろうか。
次回 第128話 山賊




