第124話 未知の世界との遭遇
アレ?
オデは小さいヤツを叩いたハズ?
ダガ……
飛んで行ったのはチガウヤツ?!
なんか、見たことある気もするが……
ウガーッ!
別にタカトォ様の敵、関係ない!
オデはタカトォ様の牙、オデサマ強い。
オデサマはタカトォ様の次に最強!
えっと、なんだっけ?
よくわからん。
……
わからんが、どうでもいい!
敵はコロス、人間もコロス、味方はできるだけコロサナイ……
味方ってなんだ?
この小さいのは、敵?
「へー、本当にブモブモ言っているんだね。
知能は低い……
のかな?
ちなみにさ、多分違うと思うんだけど、キミがタカトォなの?」
「ブモー!
ブモー、ブモー、ブモー!
ブモー、ブモー、ブモー?
ブモー」
小さいヤツはタカトォ様を侮辱した?
侮辱ってなんだっけ?
しかし、わかった事もある。
うん、オデは頭いい。
コイツはとにかく敵だ。
敵はコロス、ただそれだけだ。
オデはビードレクスを振り上げ、さっきよりも渾身の力を込めて振り下ろす!
巨岩すら粉砕する必殺の一撃、例え避けたとしても無事ではすまないダロウ。
オデの一撃はドーンという大きな音を立て、地面に大きな穴を開けて砂塵が舞い上がる。
コレで小さいヤツはペッシャンコ。
ブモー、ブモー……
笑いが止まらんノゥ。
しかし、砂塵の向こう側から声が聞こえてくる。
「うーん、話が通じないのかなぁ?
ベーやんが壊れた?
まぁ、どうでもいいけどさ。
そんな遅い攻撃じゃ、当たらないよ?
威力はまあまあだけど……
でも、当たらなければ意味がないよって、言葉が通じないか。
本当にブモブモしか言わないんだね」
また侮辱された?
まぁ、タカトォ様の事じゃないし、どうでもいい。
縦がダメなら横で払う。
オデはやっぱり頭いい。
とにかく思い切り、ビードレクスをブンブン振り回す。
普通なら絶対死ぬ威力だ。
しかし、何故だか小さいヤツには当たらない。
しかも、オデの攻撃を綺麗に避けて、目の前に立つ。
「だから、当たらなければ意味がないって……
それすらわからないか……
まぁ、別にいいけどさ」
小さいヤツはそう言うと、手に持っていたチンケな小刀を振るう。
そんな攻撃、効くか!
やはり人間は頭が悪い。
いや、オデが頭良過ぎるだけか?
ブモブモ、さぁ小さいヤツよ、死ぬがいい!
?
右腕を振り上げようとするが……
上がらない。
アレ?
ビードレクスが地面に落ちている。
しかも、オデの腕と一緒に……
ブモー!
腕が、腕がぁー!
オデの腕は鮮やかに斬られ、落ちている。
咄嗟に左腕で傷口を塞ごうとするが……
左腕も落ちる……
そして最後に喉を斬り裂かれ、心臓を1突きされると、オデの意識は……
――――――――――――――――――――
やはり、特別な夕餉には美青年が一番いい。
手足を縛り、麻痺薬で動けなくされた、銀髪の青年が私の前に運ばれてくる。
これはこれは……
中々の素体だ。
前世だったら、速攻で恋に堕ちていただろう。
しかし、今では極上の食事にしか見えない。
まずは、ゆっくりと目を抉り取り、舌の上で転がすように味わう。
ドロリとした、この滑りが舌触りが良く心地よい。
次に、鼠蹊部のアレを切り取り、豪快に咀嚼する。
血と、白い体液が混じり合い、絵も言われない風味を醸し出す。
一緒に飲むゴブリン酒が良く合う。
ちなみにゴブリン酒はシラカバの様な木の樹液と、ゴブリンの唾液で作る臭くてクソまずい酒だが……
アルコール度数はそこそこあり、無いよりはマシだから飲んでいる。
まぁ酒と食事くらいしか楽しみなんてないし……
あと、人間の女を襲うことくらいか。
前世が女で、と言っても処女だったからヤられる感覚はわからないが、あの突き刺す様な衝動は、解き放つ快感は、そして我が子が腹を喰い破り出てくる瞬間は堪らない。
ちなみに、ブーポポルニクスは私の最初の子供だったりするのだが、ぶっちゃけなんであんな馬鹿が私の子供なんだと思うくらいの馬鹿さ加減だ。
まぁ、ゴブリンに血縁とか親子とかの感情は薄いから、馬鹿だろうが使えればどうでもいいんだけどね。
自分の子供って言っても、弱い奴は殺処分することもあるし、気に入らないって理由で嬲り殺すこともある。
それはともかく、次は腹を開き、腸を傷付けない様に気をつけながら、肝臓を剥き出しにする。
門脈を糸で縛り、止血したら一気に肝臓を切り取り、生で食べる。
美味い!
転生して一番美味いと思ったのが、この生レバーだ。
転生前は焼いたレバーしか食べた事がなく、どちらかというと嫌いな食材だった。
しかし、生レバーの味は凄く強烈だった。
口の中に入れたときの滑らかさ、噛みしめたときの食感、極上の風味……
しかも、さっき取れたばかりの新鮮な味わい。
贅沢を言えば、焼肉のタレか、ワサビ醤油が欲しいのだけど、無しでも充分に美味しいし、まぁいいか。
そして、最後に心臓を抉り取り、血塗れになりながらも豪快に咀嚼する。
ちなみに、こんな姿を前世で見たら即刻で気絶するだろうなってくらい悲惨な絵面だが、ゴブリンになった今は気にもならない。
あとは、筋肉とかを手下に捌かせて、焼いてステーキにするかなと考えていると……
洞窟の中にソレは突然やってきた。
人間の少年、いや青年と少年の間くらいか?
顔は普通で、美少年という訳ではない。
逆に特徴があまりない、そんな印象すら受ける。
体つきはまだ未成熟だが、筋肉はそれなりに引き締まっている。
まぁ、好みじゃないから食べたい訳ではないけど。
だけど……
魔力が異常な気がする。
いや、強大な魔力は感じないけど、歪な……
変な気持ち悪い感じがする。
あと、あの武器と防具……
なんだか怖い。
しかも、ソレは私に語りかけてきた。
「キミがタカトォで、転生者のゴブリンロードでいいのかな?」
「ん?
貴方何者?
ゴブリン語が喋れるなんて……
いや違うわね、その妖しく光る指輪のせいかしら?
まぁいいわ、私の名前は鷹塔鷺、たかとう さき、よ。
貴方が言う通り、元女子高生の転生者よ。
というか、貴方こそ何者?」
ソレは限りなく怪しい奴ではあるが……
いや、こんな所まで乗り込んでくる奴がまともなわけがないか……
でもなんとなく、なんとなくだが、久しぶりに会話が通じる人間と言う事で、少し嬉しくなってしまう。
「僕の名前はシアン。
冒険者だよ。
タカトォじゃなくてたかとうさんか。
ちなみに、女子高生ってどう言う意味なんですか?
あと、転生者も実は意味がわかってなかったりするんですけど……」
冒険者?
ただの人間という事?
ただの人間が私の部下を、多分ブーポポルニクスも倒して来たって意味なんだろうか?
いや、でも確かに魔物や同級生では無さそうだし……
「女子高生は、えっと……
16ー18歳くらいで、人間の学生、学校に通う人って意味で通じるかしら?
あと、転生者はこの世界とは別の世界で生きていて、死んだらこっちで生まれ変わったモノといえばわかるかしら。
別の世界って言うのは、地球って言って、魔法も魔物もない世界よ。
科学が発展していて、とても良いところ……
もう帰れないかもしれないけどね。
それより、シアン君、キミ本当に人間なの?
まぁ、臭いは人間なんだけどさ、ここまで来るとかあり得ないし、何者なわけ?」
「えっと、そうするとたかとうさんは、元人間で、僕よりも歳上のお姉さんって事かな。
でも生まれ変わって、ゴブリンになって人間を食べているって事でいいのかな?
うーん、人を食べて無ければ、たかとうさんとは分かり合えたかもしれないのに……
それと、僕は本当にただの冒険者で、人間だよ。
だから、たかとうさんとは、戦わなければならないんだ」
「そう。
せっかく話が通じる人間だし、当分は生かしてあげようかと思ったんだけどね。
話し相手にしたかったから、ちょっと残念だよ。
そしたら、ここじゃなんだし、外で戦おうか。
あんまりココは汚したくないんだ。
食卓兼台所だしね。
それくらいはいいだろ?」
シアン君は私の提案に従い、外に出て行く。
私は、愛用の棍棒を持ち、ゆっくりと洞窟を出る。
あー、そういえば外に出るのも久しぶりかも。
「お待たせ」
私はそう言ってシアン君に対峙する。
すると、シアン君は僅かに微笑み、ナイフを抜いた。
何、あのナイフ……
魔物よりも禍々しい、凶悪な力を感じる。
もしも斬られれば、私でもヤバイかもしれない。
って言うか、普通に考えても私の配下の大半を1人で殺した訳だし、ヤバイのはヤバイよね。
マジ卍って言うか、ヤバみみたいな……
なんて、冗談が言える程度の余裕はあるんだけどね。
「シアン君、せっかくだから冥土の土産代わりに教えてあげる。
私達を転生させたあのクソ邪神曰くなんだけどさ、この世界で強さを決める最も重要なファクターはレベルらしいわよ。
そして、私は60レベル、ゴブリン属がレベルを上げるには人を喰らう事と、配下を繁殖で増やす事、それだけだから簡単なのよね。
逆に君ら人間は、産まれ持った素養がレベルと関係しているみたいね。
まぁ、レベルの高い魔物を倒す事でもレベル上げできるみたいだけど、レベルの次に重要な種族差はどうにもならない。
世知辛い世の中よね。
そして、更には私達にはスキルが与えられている。
という事で、貴方に勝ち目はないわよ?」
まぁ、もちろん実際はそれだけではなく、人間には武器や知恵がある、経験や技の研鑽もある。
特にこの子は武器がヤバイ感じがするしね。
だけど、それでもこの子のレベルは30しかない。
私の鑑定ではレベルくらいしか見えないが、レベルさえわかれば大体実力がわかるから楽なのよね。
私達転生者はレベルに応じてスキルポイントが与えられ、自由に割り振る事ができる。
私は、棍棒にほとんど割り振って、肉体強化と超繁殖、鑑定しか持っていないけど、種族特性で魔法系が苦手で、ポイント自体低めなのもある。
それでも、かなり有利なのは変わらないだろう。
しかし、そんな私の忠告にシアン君は、絶望するどころかすごい爽やかな笑顔で答える。
「レベル?
スキル?
よくわかんないけど、たかとうさんは強そうで楽しみだよ。
うん、勝てる気がしないし。
ちなみに、お礼に僕の力も教えてあげるね。
僕には産まれながら魔力がないけど、他人の魔力は吸い取る事ができるよ。
だから、身体強化魔法も使えるんだ。
それと、呪いの効果を受けない体質らしいから、この血抜き君と、ペスとベーやんを装備しているよ?」
よくわからないのはこちらも同じだ。
魔力がないけど、魔法が使える?
呪いを受けないスキル?
そして呪われた武器防具って事?
更に、この子は死を全く恐れていない。
その言葉からは怯えも恐れも感じない。
いや、むしろ楽しんでいる?
本当にヤバイわね、この子……
ならば、と私は棍棒を構え、シアン君との間合いを取るのだった。
スキル、その一撃は……
そして少年は更なる強さを求めるのだった。
次回 第125話 修業再び




