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第122話 転生者

私の名前は鷹塔鷺、元女子高生……

そして、今はゴブリンの王様をやっている。

こんな事を唐突に言っても理解してもらえないかもしれないが、それが事実だから仕方ない。


あれはあの暑い夏の事だった。

私達のクラスは、集団食中毒にかかり、全員が死んだ。

それはファーガス菌という、極めて珍しい細菌によって引き起こされる食中毒だったらしく、治療法はなかった。

それから、私達は長い間苦しみ、為すすべもなく臓器を蹂躙され、死んでいった。

やっと死の苦しみから解放された……

私は末期の際にそう思ったのだが、死んだはずの先に居たのは、真っ白な部屋だった。

そこには何故か、私のクラスメイトがいた。

クラスの全員、30人が揃っていて、みんな驚いている。

委員長も、嶽堕君もいる。


そして更に、そんな私達の目の前に神様が現れた。

私達の目の前に現れたのは、白く揺らめく人影、いや神影か?

そして、ソレは私達に語りかけてきた。


「ヤッピー、みんな元気?

えっ、死んでるって。

うんうん、わかるわかるその気持ちさ。

でもさ、みんなは運が良いよ〜

なんてったって生き還る事が出来るんだからね。

これからみんなには、異世界に転生してもらいます!

そうそう、ラノベとかアニメで良くあるアレだよん。

転生したら〇〇だった散、みたいな感じ?

憧れるよね?

嬉しいよね?

うんうんわかるわかる、君達が喜んでくれているのが良くわかるよ。

これから異世界に転生するみんなには、ランダムでスキルと種族が与えられるよ。

はっきり言って反則レベルの力とチートな能力が与えられるから、みんな頑張って敵を倒しちゃってね。

ん?

質問?

そんなの行けばわかるし、面倒な事は勘弁してよ。

んじゃ、バイビー!」


神……

だよね?

胡散臭いソレは、一方的に私達に転生させると言って去っていった。

転生?

その言葉を聞いて、男子のほとんどは盛り上がっていた。

嶽堕君はクールに考え事をしていたけど。

一部の女子も同様に、エルフがいいとか、王女になりたいとか……

ありがちなシチュエーションを妄想し、夢を見ていた。

私はどちらかと言うと、混乱して状況が飲み込めていなかった部類で、訳もわからずただ状況を見守っていた。

いや違う、単に思考が停止して何も考えていなかっただけで、逃げる事も、期待する事も考えていなかった。

だって、死ぬ直前まであんなに苦しんだ後だったし、仕方がないじゃない……


そんな私達を嘲笑う様に、委員長から始まり1人ずつ光に包まれ消えていった。

そして、私は最後から2番目。

それなりに待ち時間は長かったが、混乱していたせいか、ほとんどすぐだったような気がする。

光に包まれて、目が覚めると……

見知らない世界、知らない場所。

本当に転生したんだ。

そんな事を考えるのも束の間、私の手は……

緑色だった。


「なんじゃこりゃー!」


思わずそう叫んでしまう。

いや、その時は言葉を正確に発音できなかったから、ギャンギャゴリャ、みたいな感じだったと思う。

そんな事はさておき、気がついたら私はゴブリンになっていた。

確かに種族はランダムって言っていたけど……

魔物って何でよ!

しかもゴブリンとか……

オスだし、アレがついてるし……

なんなのよ!


そんな私の怒りを余所に、異世界での辛い現実が始まってしまう。

特に、初めての戦闘は今でも忘れる事ができない。

ソレは、転生してすぐの事だった。

私は、非常に堪え難い渇きと飢えに苛まれ、森を彷徨い歩いた。

そして、出会ったのは1匹のホーンラビットだった。

しかも、ホーンラビットは、こちらを獲物だと思ったのか、その兇悪なブツをこちらに向けて突っ込んで来る。

いや、ブツって言ってもツノだけどさ。

当然、格闘技の経験も、喧嘩だってした事がない只の女子高生の私が、普通なら戦えるはずがなかった。

そのはずなのだが、何故か私は自然に棍棒を振る事ができ、ホーンラビットを一撃で仕留める事ができた。


棍棒スキル


私があのクソ神から与えられた能力の1つだ。

それに、ゴブリンと言っても最弱と言う訳ではなく、それなりの強さを持っていた。

だから、初めての戦闘でもホーンラビット程度なら殺す事ができたのだった。

そして私は……

飢えと渇きを満たすべく、ホーンラビットの死骸を生で貪り喰った。

それこそ、野獣や魔物の様に……

ふと気づくと血塗れで、恐らく兇悪な笑顔で兎を貪り喰う私に、私は私が魔物になった事を認識した。

もうあの世界には帰れない、これが夢だったら良かったのにと何度も思ったが、無理だと言う事を知った。

それから私は魔物として生きた。

棍棒スキルでホーンラビットや鹿やイノシシを狩り、生き続けた。


そして、そんなある日の事だった。

目の前に現れたのは、1匹のゴブリンだった。

緑色の肌、おぞましい顔つき、それでいて矮小で貧相な生き物……

今の私も同じなんだけどさ。

ゴブリンは私を見ると、動きを止め、低頭低身になって頭を地面に擦り付ける。

所謂、土下座と言うやつだ。

突然の事で一瞬驚いたが、そういえばと私のスキルを思い出し納得した。


ゴブリン統率


それがあのクソ神から与えられたもう一つのスキル。

全てのゴブリンを自由に操れるらしい。

とはいえ、操るには一度会って服従させる必要があり、しかも奴らアホだから……

ちゃんと命令が伝わらない事もかなり多い。

しかし、それでも着実に仲間を増やしていき、やっと村と呼べるレベルまでゴブリンが増えた頃、アレが来た。

アレと言っても生理ではない。

1番最初は多分、邪馬討やまうち君。

スライムに転生し、溶解能力と捕食スキルで最初はブイブイ言わせていたらしいが……

ある日の事、炎耐性を得るためにファイアリザードに挑んで死んだ。

その時の衝撃は私の脳を焼き、全身が火達磨になって死ぬ苦痛を味わった。

フィードバックシステムと言うらしいが、転生したクラスメイトの誰かが死ぬと、クラスメイト全員に死に際の感覚が伝わるらしい。

誰が死んだかがわかるから便利……

んなわけあるかい!

誰かが死ぬ度に苦痛を味合わなければならない。

そんな気の狂った世界で、しかもゴブリンとして生きる苦痛を誰がわかってくれるって言うの?

ちなみに、邪馬討君の最期の言葉は、やっぱり大賢者が無いとダメか……

って意味わからんし!


そして、4人位のクラスメイトが死んだ位のある日、私達の集団に魔族が訪ねて来た。

どうやら嶽堕君の使い、らしい……

こんな姿、クラスメイトには見せれないし。

特に嶽堕君本人じゃなくて良かった、そう思うのもつかの間、魔族に転生したのは嶽堕君だけじゃなく、委員長も魔族になったらしい。

なんで私じゃなく、委員長なのか……

使者の話では、嶽堕君が魔王として、委員長は女帝として君臨し、魔族を2分して統括しているらしい。

魔族……

知性があり、力が強く、そして美男美女が揃っている。

最上位の種族の一つで、私の様なゴブリンとは天と地ほど違う。

私はこの時ほど世の中の不平等さを恨んだ事はなかっただろう。


ちなみに、嶽堕君はクラスメイトが死なない様に協力を呼びかけているらしく、ゴブリンロード誕生の噂を聞いて使者を出してきたらしい。

確かに、クラスメイトが死ねば苦しいし、魔物同士争うよりも協力した方が良い。

それに、あのクソ神が言っていた私達の敵は……

人間らしい。

つまり、魔物になった私達が人間を全滅する事が今回のゲームのクリア条件。

私達は人殺しのため、この世界に転生した。


それからの私は、やけになって行った。

とにかく群れを増やしていく、次々とゴブリン達を従えて小さな村を襲い始めた。

男や老人は殺して食料とし、女は孕ませ、殺した。

まぁ、ゴブリンに孕まされた生物は、ゴブリンの胎児に腹を喰い破られて死ぬし。

とにかく、殺し、奪い、犯す。

ただそれだけの繰り返し……

ちなみに、最初は私が受けた理不尽さに対する憂さ晴らしと、早くこのゲームを終わらせたいと言う気持ちからだったのだが……

今はもうただひたすらに人を殺していくのが楽しい。

コレが魔物としてのサガなのだろうか?

私は、身も心も魔物になってしまったらしい……


そして、配下のゴブリンが2000匹を超えたある日の事だった。

伝令ゴブリンから、突然の訃報が届く。


※実際はゴブリン語

「王に連絡致します。

第七師団が壊滅、ガトゥンワ様が戦死致しました」


「何?

あのハルバードのガトゥンワが……

奴は我が軍の中でも随一の猛者。

アイツの師団がやられるなんて……

相手は、相手は誰?

軍隊か?

まさか勝手に何処かの国を攻めたのか?

あれほど無理はするなと言っておいたのに。

クソッ、だから馬鹿は嫌いなんだよ」


「恐れながら、王よ。

ガトゥンワ様は小さな辺境の村で、亡くなりました。

相手は不明ですが、村にいた住人はごく僅か。

しかも、正体不明の相手にほぼ全滅させられました。

現在、近くにいる第二師団のベテャムキン様と、第九師団のショボンヌ様に派兵を依頼しておりますが……

いかが致しましょう?」


「ま、マジ?

ガトゥンワが村人程度にやられるとか……

ありえないんですけど?

アイツ確か、単体なら2番目に強いよね。

そうすると、ベテャムキンとショボンヌじゃ歯が立たないんじゃないの……

相手は本当に人間なの?」


「いえ……

相手が人間かどうかですら不明です。

正に正体不明ですので、わかりませんとしか……

しかし、いくら正体不明とは言え、ガトゥンワ様と交戦後であれば、幾分かは消耗しているはずではないでしょうか」


「そうね、でも念のためブーポポルニクスに激鎚ビードレクスを渡して応援に行かせてちょうだい。

それと、ベンゾーを連絡役にして、確実に相手の情報を調べる様にして」


「ハッ!

了解致しました」


そう言って、連絡役は去っていく。

しかし……

何か嫌な予感がする。

私は、この世界に来て一番嫌な感じがする様な気がして、身震いするのだった。



忍者は影だ。

主人に忠を尽くし、主人のために死ぬ定め……


次回 第123話 忍びの端くれ

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