表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
121/145

第121話 再開

アレから20年か……

俺の名前はシアン。

元冒険者だ。

ちなみに、昔はそれなりに強かったんだぜ?

それこそ、上級の魔物だって倒せるくらいに。

しかし、以前の仕事にしくじり……

簡単なはずの仕事だった。

ゴブリンなんて楽勝だと舐めていた……

しかし、単純な、本当に単純な罠、所謂落とし穴に引っかかり、俺は左脚を負傷し、冒険者としての力を失ってしまった。

そして、脚の治療の為に蓄えていたお金も、魔石も、武具も失ってしまった。

おかげで、なんとか歩ける程度には回復したのだが、以前の様には戦えなくなってしまった。

だから、今はこんな辺境の小さな村で、自警団の隊長をやっている。

まぁ、そのおかげで愛する妻にも出会え、今はそれなりに幸せな生活をしているから不満は無いけれど。


だが、最近そんな平穏な生活を脅かすモノがいる。

そうゴブリンだ。

奴らは、急激に数を増やし、勢力を伸ばしている。

噂では、2つ隣の村が滅ぼされたらしい。

そして、俺達の村にも斥候らしきゴブリンがチラホラと現れるようになってきた。

辛うじて、俺が指揮する自警団が駆除しているが、これ以上数が増えたら、村の奴らでは荷が勝ってしまう……

帝国にも救援は要請しているが、準帝国圏のこの辺境では、あまり期待ができない。

それに、魔王が復活したとか、ゴブリンロードが誕生したとか言う噂もあるから、帝国と言えど自分達を守るので精一杯なのだろう。

だから、今は俺達だけでやっていくしかない、つい最近までそう考えていたのはとても甘かったらしい。

俺は魔物の感知能力に優れており、魔物の居場所がわかる。

以前ならば数やその動きまで感知できたくらいだ。

まぁ、今は昔程の力は無いが、この圧倒的な数を感じないわけがない……

かなりの数が迫っている。

50匹、いや100匹以上いるかもしれない!

その気配を感じた俺は、自警団を召集する。

月は夜の真上、俺は大声で皆を起こし、準備をさせる。

正直言って、状況は絶望的だが、やれる事はやってみるしかない。

今回の作戦は……

俺達自警団が囮になり、女子供を逃す、ただそれだけだ。

この日の為に、日頃から避難訓練は行なっているし、自警団の皆も準備ができている。

皆、自分の家族をゴブリン供の餌にはさせないと、決死の覚悟をしているしな。

でも……

今回はそれすら絶望的だ。

敵の数が、あまりにも多すぎる。

良くて数名が生き残るか……

普通に考えて全滅、だろうな。

伝説の勇者なら村を守りきれるかもしれないが、冒険者崩れの俺と、村の若者程度では話になる相手ではない。

いっそのこと、俺達家族だけでも逃げてしまおうかとも考えたが、この村の連中も家族みたいなものだし、見捨てる事はできない。

だから、俺達にできるのは1匹でも多くゴブリンを殺し、時間を稼ぐ事……

まぁ、俺が魔物の感知できなければ、こんな準備すらできずに蹂躙されていただろうが……

人間をナメるなよ!

例え、勝つ事はできなくても、一矢報いてやる。


女子供が逃げ出した後、俺達は村にひっそりと潜んで奴らを待つ。

そして、暫くすると……

来た!

やはり相当の数だ。

しかも奴ら、村に入る前に火矢を放ってきた。

嘘だろ?

並みのゴブリンの知能なら、火矢など使わずに突撃してくるはず。

やはり、ゴブリンロードが誕生したと言うのは噂だけじゃないのかもしれない。

それでも、焼けたのは数件で、俺達の隠れている場所は少し奥の石造りの建物だから問題ない。

火矢の後は、前衛が突撃してくる。

だが、半数程度は俺達の張った罠にかかり、無力化されている。

あの時の御礼だ、ザマァみろ。


「それじゃ、行くぞ!」


俺は号令をかけ、無骨な鉄の剣を持って飛び出す。

大量のゴブリン相手に、斬れ味は要らない。

斬れ味がいい剣は、血糊がついてすぐに斬れなくなるしな。

もちろん、あの剣があれば話は別だが……

俺達はゴブリンが来た方向の村の入り口に向かい、村に入ろうとするゴブリンを叩き斬る。

俺が前衛で、他の自衛団員は後衛に着く。

基本的には俺が倒し、討ち漏らしを後衛の槍で突いて始末する形だが……

今回は相手の数が多過ぎる!

だから、俺達は次第にジリ貧になっていき、遂にはゴブリン供に囲まれてしまう。

しかも、今俺の前にはボスゴブリンまでいる。

ボスゴブリンは、やたらと柄が長い斧を持っているが……

ユニークか。

普通のボスゴブリンだと棍棒程度で、力任せな奴が多いが、時折ユニークと呼ばれる特殊な武器を持った奴が現れる事がある。

そして、ユニークは強者か、軍隊でなければ相手できないとも言われているくらい強い。

つまり……







絶望的な状態だ。

斬れない剣で、強敵と戦う。

これがどんなに無謀な事か、冒険者見習いが直ぐに野良のゴブリンと戦うくらいの無謀さ加減に、我ながら嫌気がさしてくる。

しかも相手は、こちらを舐めているみたいだし。

どう甚振って遊ぶかを考えているのではないか、と言うくらい余裕の笑顔でこちらを見ている。

クソッ、それでも……

やるしか無い!

俺は、剣を振り上げ、渾身の力で




一瞬のうちに、吹き飛ばされ、俺は地面に転がる。

なんとか受け身は取ったが、右腕の骨が折れてやがる、スゲェ痛い。

ダメだ……

このままでは、死ぬ。

しかし、無慈悲にもボスゴブリンは俺に近づいてくる。

そんな俺を嘲るように、ボスゴブリンの斧は俺の首を一刀両断に……

しない?


「オジさん大丈夫?」


何故だか、突然後ろから声をかけられる。

ゴブリンが喋ったのか?

いや、ゴブリンではない。

子供だ……

えっ、子供?

なんでこんな所に、ここは既にゴブリンに囲まれている……

村の子供ではないし、いやその前に普通なら殺される、一瞬で。

俺は混乱し、返事ができずに周りを見渡すと、俺達を囲んでいたゴブリンはほとんど死んでいる。

生きているのは、あのボスゴブリンのみ。


「あのさ、あのボスゴブリンはオジさんの獲物だよね?

やっぱ、横取りしたらダメだよね。

でも、正直言って今のオジさんでは、ちょっと厳しいと思うんだけど……

そうだ、魔石と武器は要らないから、殺すだけならどうかな?」


「いや、俺達では勝てないって言うか……

お前も危ないから逃げるんだ、アイツは並みのボスゴブリンじゃない、ユニーククラスだ。

子供で勝てる相手じゃない!

お前もちょっと腕に自信があるのかもしれないが、やめておけ。

俺達が、必ず逃がしてやるから、逃げるんだ!」


「えー、あの程度なら問題ないよ?

って言うか、余裕過ぎて……

まぁそれはいいとして、オジさんでは倒せないっぽいしね、ちょっと休んでてよ。

下手に出て来られると邪魔だしさ」


そう言って、その子供はボスゴブリンの前に立つ。

アレ?

なんだかボスゴブリンの腰が引けている。

さっきまでの余裕で下卑た笑みはなくなり、恐怖に歪んでいる。

そして……

その子供は、赤い刀身のナイフの様な短い短剣を一振り。

ただそれだけで、ボスゴブリンの首は胴体と離れ離れになり……

ボスゴブリンは、一瞬で絶命した。

その子供の攻撃は、あまりにも見事な手際で、俺は美しさすら感じてしまったくらいだった。

そして、新たにやってくるゴブリン達も、まるでゴミの様に即座に斬り裂いていく。

気づけば……

村の周りはゴブリンの死骸だけしかなかった。


「んー、とりあえずこれで全部、かな?

オジさん達も魔石の回収を手伝ってくれるかな」


その少年は、何事もなかったかのように、俺達に魔石集めを依頼してくる。


「わ、わかった。

いや、それよりも助かった。

本当に、助かったぜ。

ありがとう。

もちろん、魔石は全部持って行ってくれ。

集めるのは手伝うし。

アンタは村の恩人だ、今は何も無いが……

出来るだけの事はさせてくれ」


「いやいや、これは全部オジさん達の獲物でしょ?

だから、僕は要らないんだけど。

それに、途中出会った人達を助けた時に頼まれたから来ただけなんだけど。

一応みんな無事とか言ってたよ。

人数までは確認してないけど、大丈夫じゃないかな?」


「ほ、本当か?

あの状況では絶望的だと思っていたのに……

やはり、アンタは村の恩人だ、でも俺達には何も恩返しできるものはないし。

せめて魔石だけでも持って行ってくれないか?」


「まぁ、くれるなら貰うけどさ……

そうだ、これを換金してくれないかな?

お金がないから、ちょっとだけ困っていたんだよね。

そうだな……

60シアニルでどうかな?

その程度あれば充分だし」


「安!

いや、これだけの魔石があれば……

10000シアニルは固いぞ?

それに、村の恩人にそんな安い値段しか渡さなかったとなれば、この村の信用に関わる。

とは言え、確かにこの村では10000シアニルは出せない。

とりあえず、1000シアニルを手付けにして、残りはこの魔石を換金して必ず返す!

それでどうだ?」


「いや、別にそんなに要らないし……

んじゃ、500シアニルでいいから。

それに、オジさん達も村の立て直しとかにお金がいるでしょ?

それよりもさ、この辺にシアンさんって言う凄い強い冒険者が居るって聞いたんだけど、知らない?」


「それは……

多分、俺の事だが、今はそんなに強くはないんだ。

昔に怪我をしてな。

でも、あの時の愛刀があれば……

いや、あの剣があっても、さっきのユニーククラスのボスゴブリンはきつかった。

って言うか、アンタこそ何者だ?

ただの子供じゃないよな」


「僕の名前もシアンだよ。

単に同じ名前で強い人が居るって聞いて、来てみただけなんだけどね。

なんだ……

オジさんか。

まぁ、同じ名前のよしみで、これをあげるね」


そう言って、何もない空間から、その少年は刀を出したのだが……

なんだ、この斬れ味が鋭い刀は?!

以前に俺が持っていた愛刀よりも、凄い。

魔力は感じないから、魔剣ではないと思うが……

いずれにしても、業物である事は間違いない!


「ちょ、こんな凄いもの、本当に貰ってもいいのか?

いや、アンタがさっき使っていたヤバイ短剣程ではないけど、これもかなり凄いぞ?

こんな凄いもの、本当にいいのか?」


「いや、別にいっぱいあるしさ。

単に真ゴブリンスピリッツが使っていた刀だし。

多分30本以上はあるから、気にしなくていいよ。

それよりさ、これからゴブリン達の住処に行くけど、オジさん達はどうする?」


「いや、俺達が行っても……

足手まといになるだけだ。

子供だけで行かせるなんて、大人としては失格なんだろうが……

できれば、アンタだけで行ってくれ。

ただ、俺達はこの村を守ってみせるから……

終わったら是非とも寄ってくれよな。

これを乗り切れたら、村を挙げて祝おうぜ」


「うん、ありがとう。

正直ついて来られたらどうしようかと思っていたんだよね。

そしたら、オジさん達も頑張ってね〜」


そう言って、その少年は手を振り去っていった。

しかし、あの強さ……

まるで、伝説の初代皇帝のシアンハイドレート様のような……

まさかそんな訳ないか。

あっ、ていうかお金を渡し忘れた。

ヤベェ……

しかも、大量の魔石が置いてあるし。

いや、これはあの子供の物だ。

俺は、必ずあの子との約束を果たそうと、心に誓うのだった。


人は死んだら無に還る。

しかし、そんな理を破るモノがいる。

幸せな人生、心踊る冒険、愛すべき仲間達……

転生はそんな願いの下……


次回 第122話 転生者

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ