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第120話 過去の亡霊

フォーマルハウトのダンジョンや、ベルゼさん達の思い出の品がないか、少し気になったので僕は聖都とやらに向かう。

ちなみに、ヴァンが持てない問題は、猫用の籠を買う事で解決したのだが、この買い物にも大分苦労した。

なにせ、300年前の貨幣なんて、使えなくなっていて当たり前だし、仕方ないので魔石を換金しようとしたが、冒険者ギルドに行っても当然登録なんて残っていない。

僕みたいな子供が、金銀財宝を売ったら怪しまれるし、多分かなり安い金額でぼったくられる。

それに、銅級や銀級の証も、偽物だって言われるし、冒険者になるなら冒険者養成学校に入れって言われた。

ちなみに、冒険者養成学校に入るにはかなりのお金が必要で、とてもそんなお金は持っていない。

仕方ないから、盗賊でも狩ろうと思って探したが、治安が良すぎて、盗賊なんて全然いない……

どうしようかと悩んでいたら、親切なオバさんが僕に銀貨を一枚恵んでくれた。

そのお金で、なんとか籠を買い、聖都へとダッシュで向かう。

しかし、最初の村は辺境だったけど、聖都に向かうにつれ、村も町もどんどん大きくなっていった。

the大蒼帝国は、本当に栄えているらしい。

それが全部、ベルゼさん達の頑張りによるものだと思うと、少し嬉しい。

ベルゼさん、クロロさん、ヨードさん、ブロモさん、アスタチンさん、サルファさん、ニトロさん……

みんなが頑張ったおかげで、みんなが作った国は繁栄していますよ。

僕は、冥界の皆に、そう伝わるように祈った。


そして、10日ほどで僕は聖都にたどり着く。

聖都はとても大きく、こんな大きな街を見たのは、僕は初めてだった。

外周部は壁の外側で、貧民街と言われており、12の区画に分けられている。

ちなみに、その1区画ですら、カンクの街よりも大きく、貧民街と言われているが、アラバ村に比べればかなり恵まれている。

街は活気にあふれて、貧民や孤児なども見かけない。

とても良い街だ。

僕はそう思った。

外周部は内側に壁があり、その中は平民街と呼ばれる区画が6つある。

ちなみに、平民と言っても、他国なら地方の貧乏よりもよっぽど裕福で、王侯貴族並みの暮らしをしているらしい。

あのダンジョンがあるのもこの区画で、平民街に行くには身分証を手に入れる必要がある。

更に、ダンジョンに入るには、国の許可証がいるらしいが……

相当の金と年月が要るらしい。

それと、平民街を更に壁で分けた内側が、選民街。

選民街には義賊、えっと他の国なら貴族って言うが、初代7死仁が貴族を嫌い、義賊を称していたと言う事みたいで、7死仁の血族、この国の政治を仕切る評議会、全軍を仕切る現7死仁、それに最高権力者の皇帝代理が住んでいるらしい。

ちなみに、シアンハイドロ、つまり僕が永世皇帝で、それ以外は皇帝代理と言うシステムらしいが……

今更僕が出て行って皇帝になる気はない。

今回、できればベルゼさんの子孫達にも、僕は皇帝にならないと伝えたいと思っている。

いや、皇帝とか柄じゃないし、自由がなくなるのはゴメンだしね。


それはともかく、まずはダンジョンだ。

とはいえ、あのダンジョンはthe大蒼帝国の、この国の収益の要らしく、侵入はかなり難しいらしい。

いや、そもそも平民街にすら入れないけどね〜

あはは。

昼間なんて、孤児と間違えられて孤児院に入れられそうになるしさ……

この国に僕の居場所は……

ないらしい。


仕方ないので、僕は夜陰に紛れて壁を登り、ダンジョンの区画に入り込む。

幸い、見張り1人を眠らすだけで、問題なく入れたのだが……

魔力が、残り少ない。

自分で魔力を作れない僕は、魔物から吸収する必要があるのだが、最近魔物と戦っていないので吸収できない。

だからこそのダンジョンでもあるのだけれど……

ダンジョンの入り口には見張りの兵士が3人、その奥に5人いる。

事情を話しても、多分無理だろうな……

だったら仕方ない。

僕は、ダメ元で入り口の兵士に話してみる。


「ねえねえ、おじさん。

僕も中に入りたいんだけど、ダメかな?」


「ん?

なんでこんなところに子供が?

私はまだおじさんさんじゃないよ、お兄さんと言って欲しいなぁ。

それはともかく、ここは危ないから入っちゃダメだよ。

と言うか、ボク、どこから来たんだい。

身分証を見せてくれるかな?」


見張りのおじさんは、優しく僕に語りかけてくれたが……

やはり、ダメらしい。

まぁそれはそうだよね。

仕方ないので、僕は両手をパチンと魔力を込めながら叩く。

猫玉C

掌の音をハウリングさせて、相手を一瞬気絶させる広範囲技だ。

ちなみに、ヴァンにも効くので、籠の中で気絶している。

僕は、その隙にダンジョンの中に入り、懐かしい扉を開ける。

いや、年数で言ったらかなり時間は経っているが、僕からしたら、ほんの数日前なんだけどね。


ダンジョンの中には、まぁ当然かもしれないが、泊まって死にかけている人はいない。

全員、討伐が終わったら家に帰り、休む。

だから、この時間に居るのは深層組だけらしい。

実際、第5階層までの敵は倒されていて、魔物は1匹もいなかった。

そして、僕はあの場所へと向かう。

そう、あの事件のあった、第2階層のあの場所だ。

壁の封印は未だに破られておらず、僕は封印を解いて中に入る。

その場所には……


「ダズゲでクレ。

モウユルジデクダザイ」


そう懇願するポテチと、物言わぬゾンビのポテロンがいた。

どうやら、300年以上苦しんだみたいだ。

それなら……


「じゃ、引き続き苦しんでね?」


と言って、再度封印を施し、立ち去る。

そして次は……

向かうは第10階層、そこには7人の若者達がいた。

敵は真ゴブリンスピリッツが3匹。

実力は……

互角ってところか?

まぁ3対7で互角って言うのも微妙だが、真ゴブリンスピリッツは連携が取れているし、あの刀が邪魔なんだと思う。

対する若者達は、それなりではあるが、死線を潜れる程の覚悟は無いみたいだし、踏み込みが甘い。

そして、体力は真ゴブリンスピリッツの方が上だから……

僕は、暫く黙って見ていたが、段々と若者達の方が劣勢になっていく。

仕方ないな……


僕は、若者達の間をすり抜け、真ゴブリンスピリッツ3匹の手を斬り落とし、刀を奪う。

その一瞬の出来事に、全員が硬直してしまう。

もちろん、真ゴブリンスピリッツも含めて……


「今だよ!

お兄さん達、突撃!」


僕がそう声をかけると、若者達は一斉に攻撃を始め、真ゴブリンスピリッツを倒していく。

その隙に、僕は隠し部屋へと入る。

そこには……

クロロさんからの手紙が置いてあった。


〝シアンさんへ。

貴方がこの手紙を読んでいる頃、私はもう死んでいるかもしれません。

生きて、貴方に再び会えない事を、大変申し訳なく思っていますが、時の流れには逆らう事は出来ませんので、ご了承下さい。

さて、代わりと言っては何ですが、この国の重臣には貴方が現れたら最大限の敬意を払う様に伝えてあります。

永世皇帝の称号も貴方のものですので、遠慮なくお受け取り下さい。

貴方である証拠は、貴方の愛剣と、手甲の名を伝えれば伝わる様なシステムにしています。

本当はもっと色々と話したい事があったのですが……

あまり長くなるのもシアンさんは好まないと思うので、一言だけ。

シアンさん、我ら7死仁は今でも貴方を尊敬し、敬愛し、忠誠を捧げています。

もしも許されるなら、我らの想いをお受け取り下さい〝

その後も色々書いてあったけど、割愛する。

……しかし、内容が重いな。

いやさ、可愛い女の子からの熱烈アピールならいいけど、クロロさん達からの想いは重すぎる。

いや、単に憧れだけじゃなく、年月の重みを感じているのかもしれない。

それと、僕は別に皇帝とか要らんしさ。

そもそも、帰る場所を作って欲しいとか、頼んだ覚えはないし、ベルゼさんが勝手に忖度しただけだ。

まぁ、気持ちはありがたいけど、魔物がいなくて魔力不足になるのは困る。

それに、昔のお金は使えないし、魔石は換金できないし、色々と不都合が多すぎる。

そんな事を考えながら、僕は隠し部屋を出ると、外には先程の若者達が待っていた。


「オイ、お前!

何で子供がこんなところにいる?

それに、勝手に手出ししやがって……

お前何者だ?」


「ゴメン、ゴメン。

ただ、大分押されていたし、一応勝てそうなら放っておこうと思ったんだけどさ、危なげだったからつい……

僕はアズライト、ただの冒険者見習いだよ?

ちょっとここの部屋に用があっただけだから」


「馬鹿野郎、俺達だって次期7死仁候補と言われるパーティだぜ?

勝手に手出しするんじゃねーよ。

それに、何で隠し部屋がある事を知っている?

俺達だって知らなかったのに、見習い風情が……

それに、不法侵入だろお前。

とにかく、衛兵の所に突き出してやるからな」


「へー、君達程度が僕を?

ふーん、じゃ全員の腕を斬り落としても文句はないよね。

いいよ、ちょっとイラッとしてるし、かかってきなよ」


僕がそう威圧すると、若者達は一斉に息を呑み、汗が大量に流れ、次第に呼吸が荒くなり、倒れる。


全く……

この程度に耐えられないなら、冒険者は辞めた方が良いと思うよ?

そう思いながら、僕は若者達を無視して第3階層の無限部屋に。

そこでイヌゴブリンを倒しまくって魔力を補充し、外へと出たのだが……

待っていたのは衛兵ではなく、黒尽くめの男達だった。


「お前か?

永世皇帝を語り、平民街とダンジョンに不法侵入した奴と言うのは」


黒尽くめのリーダーはそう聞いてくる。

この人は、ちょっとは強そうだな。

そして……

風刃鞭を持っている。

サルファさんの子孫……

か?

顔立ちは似てないけど。

まぁ300年経てば仕方ないかもだけど、サルファさんの関係者ならあまり戦いたくないなぁ……


「えっと、僕はシアンです。

このナイフが血抜き君で、この手甲がペスって言えばわかるのかな?

別に皇帝とか名乗っているつもりはないし、勝手に入ったって言えば、勝手に入った事になるのだけど、入らせてって言っても聞いてもらえなかったし。

それに、前は普通に入っていたわけだし、後から制限とかかけられていても困るって言うか……

単にクロロさんの手紙を読んだりしただけで、悪い事はしていないよ?

ちなみに、貴方はサルファさんの子孫なのかな?」


「その短剣と手甲……

まさか本物……

しかし、だか、いや、まさか……

何で今になって、今更現れたんだ?

もう今更、この国では永世皇帝など必要としていないのに……

我が名は16代目散死のサルファ、7死仁の1人だ。

そして、the大蒼帝国の暗部筆頭なり、我らが国のため、そして民の安寧のために永世皇帝の存在は認めない!

消え去れ、過去の威光め!」


そう言って、新サルファさんは風刃鞭で襲いかかってくる。

不可視の風魔法の刃と、鞭の変幻自在な攻撃が僕に襲いかかってくる。

だけど……

この程度ではなぁ。

初代のサルファさんよりはちょっと強いくらい?

って言っても、ダンジョンにいた時の話で、その後も成長しているだろうから、どれくらいまで強くなったかは知らんけど。

だけど、どちらにしろ魔力が読める僕には、風刃鞭の攻撃は効かない。

それに、長い年月で風刃鞭自体の斬れ味も下がっているみたいだしね。


「何故だ?

初代の再来と言われた、俺の風刃が効かないだと。

永世皇帝などお伽話、誇張された存在だと思っていたが……

それでも、負ける訳にはいかんのだ!

この技で死ね!

行くぞ、トルネードブレイド!」


そう言って、新サルファさんは高速回転し、竜巻の様になって襲いかかってくる。

なんか……

目が回りそう。

ぐるぐる〜

ぐるぐる〜

ぐるぐる〜

暫く避けていると、新サルファさんは……

魔力切れと、目が回ったみたいで、技を解きフラフラになっている。


「そう言う大技は、相手の特性に合わせて確実に決めないとダメだよ?

攻撃が終わった時の状態もちゃんと考えないと……

戦闘は家に帰るまでが戦いなんだからね?」


「う、うるさい!

なんで一撃も当たらないんだ?

くっ……

流石は永世皇帝という事か……

いや、その強さ、本当に人間か?

だが、この国を、私達が、先代が、全ての民達が作り上げたものを、突然出てきたお前に渡す事はできん!

我が命に代えても、お前を倒す」


「あのさ、悪いけど新サルファさんじゃ、僕には勝てないよ?

それに……

僕は永世皇帝とかになる気は、全く無いんだけど?

って言うか、単にダンジョンの中に入れれば良かったって言うか、なんと言うか、みたいな?


んー、もうめんどくさいなぁ……

わかったよ、もうこの国から出て行くから、どうせ魔物が少ないから退屈だったしね。

あと、僕が居たことは秘密にしておいてね。

じゃ、僕は行くよ」


そう言って、僕は全速力でその場を離れた。

魔力は満タンだから、充分力はあるしね。

そして……

なんとなく西へと向かうのだった。



行き場をなくした少年の行き先は……


第4章 終活編

次回 第121話 再開

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