第12話 ヤーフルさんの目的
長剣を構えたヤーフルさんに、僕は尋ねる。
「なんで、そんな事するんですか?
僕が何か悪い事をしたとでも言うんですか?」
「その喋り方とか、ガキのくせに生意気な態度、俺の言う事を聞かないし、全部がムカつくんだよ!
そうだよ、お前が悪いんだよ!
だからな、ちょっとサクッとヤラレてくれよ?
って言っても、今すぐ殺すわけじゃねーぜ。
腕と足を斬る程度だ。
その後で、リッツがお前に復讐したいらしいからな、まぁ運が良ければ生き残るかもしれないしな、いいだろ?」
正直なところ、ヤーフルさんの言っている事は無茶苦茶で、どう対応していいかがわからない。
多分、リッツが僕に復讐をしたがっていて、ヤーフルさんが手助けするって事でいいとは思うんだけど……
「ヤーフルさんが僕を殺したい理由はわからないけど、僕にも生きる権利はある!
だから反撃はしますよ?」
十分に間合いを取り、僕は答える。
「ダメだな。
お前、教官であるこの俺に怪我させたら、冒険者にもうなれないぜ?
それでもいいのかよ?」
「冒険者規則第12条3項に、冒険者同士の私闘は結果に関わらず不問とするってあるじゃないですか。
だから、僕が反撃しても関係ないはず!」
「バーカ、お前はまだ冒険者じゃねーんだよ。
だから、冒険者規則の適用外だ。
だから安心して、死ね」
ヤーフルさんに、話は通じなかった。
どうしよう?
このままでは手足を斬られてからリッツと戦い、下手すれば殺されてしまう。
一方で、反撃すれば冒険者にはなれない。
それに、実力差があるヤーフルさんを倒さなければならない。
ほぼ詰んでいるなぁ……
でも、どちらにしても、もう冒険者になれないのは確実か。
僕は悟った様な気分で、「ははははは」と、乾いた笑いをし、懐に隠し持っていた血抜き君を抜き取る。
漆黒の刀身と、禍々しい雰囲気に、ヤーフルさんは思わず息を飲んで見つめてくる。
「おいお前、そのナイフ……
どこで手に入れた?」
「これ?
このナイフは、マルコさんの店で買ったんだけど?
誰も抜けなかったらしいんだけど、僕が持ったら抜けたから安くして貰ったんだよ」
「まさか……
いや、ブラッドイーターなら持ち主は発狂するはず。
ブルー、お前、まともなんだよな?」
「何を基準にまともかはわからないけど、僕は至って普通だよ?
って言うか、オカシイのはヤーフルさんの方じゃないか!」
僕が言い返すと、ヤーフルさんはしばし考え込む。
そして……
「かーっ、
もう訳がわからないぜ!
って事で、死ね!」
と言って、襲いかかってくる。
僕は、足元の椅子を投げつける!
これは模擬戦じゃないから!
ヤーフルさんは不意打ちに驚き、思わず飛んできた椅子を斬ってしまう。
斬りが浅く、長剣が椅子に中途半端に突き刺さる。
「ナニ⁈
ぬ、抜けねぇ!」
ヤーフルさんは少し焦っている。
僕は、その隙にヤーフルさんの右の手の甲に、血抜き君を突き刺す。
ヤーフルさんの右手は、血の気が引き、真っ白になっていく。
ヤーフルさんは、「お、俺の手ガァ!」と、何だが安っぽい科白を吐いて、長剣から手を離し、後ずさる。
僕は、その隙に血抜き君を抜き取り、再び構える。
初めて人を刺した……
感触はゴブリンや猪と大差ない。
だが、気分的には嫌な感じがした。
どうも僕は魔物や獣相手の方が、向いているらしい。
ただ、血抜き君は若干喜んでいる気がする……
そんな事を考えていると、ヤーフルさんは半ベソをかきながら、僕に謝りだす。
「や、やっぱりそのナイフ……
普通じゃねぇ!
やはり、ブラッドイーター?
いや、そんなはずはねぇ、あれは確か封印されているはず……
でも、一瞬で俺の手から血を持ってきやがったし……………………………
ってそんな事考えてる場合じゃねぇ!
お、お、お、俺が悪かった。
い、命ばかりは助けてくれないか?
本当は俺だって、こんな事したくなかったんだよ。
なっ?
わかってくれよ?
実はリッツの親父さん、えっとリッツはカシ村の村長の息子で、まぁつまり、村長からリッツの復讐を手助けするよう頼まれたんだよ!
俺だって、何回か断ったんだぜ?
だけど、村長からの頼みは断れないだろ?
だから、仕方なかったんだよ!
俺は悪くないんだよ。
なぁ、頼む、俺はもうお前と戦わないから……
殺さないでくれ!」
僕は考える。
僕だって、できれば殺したくはないが……
ヤーフルさんを逃せば、冒険者にはなれない。
そして、最悪、ヤーフルさんを襲った濡れ衣を被せられる気がする。
なので、僕はヤーフルさんに言った。
「ヤーフルさん。
死にたくないなら、誠意を見せてくれないかな?
例えここで逃げても、僕が父さんに話せば、ヤーフルさんは僕の父さんに殺されるんじゃない?
だから、なかった事にしてあげるからさ……
わかるよね?」
「わ、わかった。
この事は一生誰にも言わない。
それと、その机の中に冒険者の証が入っている。
ちゃんと6人分があるから、全員冒険者になれる。
卒業試験は全員クリアーで良いから。」
そう言ってヤーフルさんは、鍵を投げてきた。
更に僕は、
「これだけ?」
と聞くと、ヤーフルさんは、
「わ、わかった。
俺は冒険者を辞めるから。
こ、この銀級の証もやるから。
この村からも出ていく。
だから、頼むよ、殺さないでよ」
と、懇願してきた。
僕は、サッサと行けと手振りすると、ヤーフルさんは銀級の証を置いて、一目散に逃げて行った。
ヤーフルさんが居なくなった後で、僕は机を開けると、そこには銅級の証が6個入っていた。
僕はそれを持って外に出る。
そして、ジャルとアナに「ヤーフルさんが急いで出て行ったが、どうしたんだ?」「何かあったの?」と、聞かれた。
僕は、「ん?何もなかったよ?」と、平然と答えると、2人ともヤレヤレという感じで、生暖かい目で見られた。
「それで、ヤーフルさんいないけど、卒業試験はどうするんだ?」
「あ、それなら、全員合格で良いって。
ほら、これが2人の分だよ」
そう言って、僕はジャルとアナに銅級の証を一つずつ渡す。
「やったな、これで僕達も冒険者の仲間入りだな」
「うん、そうだね、スカイハイ正式結成だね!」
ジャルもアナも嬉しそうだ。
そして、僕はリッツ達の所に行き、事情を説明すると……
「ふざけるな!」
と、リッツがキレだした。
そして……
「カール、ビスコ、やるぞ!」
と言って、3人衆は戦闘態勢に入った。
経緯は色々あったが、無事全員で卒業試験に合格した。
はずなのだが……
リッツ達は復讐の鬼と化し、僕達に戦いを挑んでくる。
少年達の戦いが始まる。
次回 第13話 リベンジ




