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第115話 閑話 死仁

ダンジョンの入り口まで戻った俺とクロロは、20人程のゴロツキに囲まれてしまう。

待ち伏せ……

矢傷や途中の戦闘による刃傷、それに全速力で逃げてスタミナも切れている。

十全ならば、コイツら程度、余裕のはずなのに……

冷や汗をかいている俺達を見て、ゴロツキのリーダーっぽい男が話しかけてくる。


「はっはっは、俺達もついているな。

破槌や斬り裂きを倒したガキどもを殺せば、次の幹部は俺達にも回ってくるんだぜ。

流石は破軍策士ビフェニル様だ。

あの方についていけば、破槌も無駄死にしなかったのにな、バカな奴だぜ。

まぁ、女は黙って腰だけ振っていればいいのに、男の戦場に出てくるのが悪いんだけどな。

それは、お前らガキも同じだぜ。

ダンジョンでちょっといい武器を見つけたからって、調子に乗んなよ。

さっさとその武器を渡せば、楽に殺してやるぜ?」


男達のその言葉を聞いて、クロロは急に狂ったかのように笑い出した。


「おい、クロロ!

急にどうした、大丈夫なのか?」


「アハハ、ああごめんごめん。

いや、ちょっと面白くなってきちゃってさ。

別に恐怖でおかしくなったわけじゃないよ?

むしろ、死ぬのが2回目になるんだなって思ったらさ、あの人に近づける気がしてさ。

そしたら、無性に嬉しくって言うか、楽しくなっちゃってね。

つまりさ、死ねば良かったんだよなぁって。

ベルゼ、君ならわかるだろ?」


確かに……

死に近づけばシアンさんに近づく。

それは即ち、俺達の望み……

そうか、死んでもいいんだよなぁ。


「ハハッ。

間違いない、死ねば良かったんだな。

なんでそんな簡単な事も、気づかなかったんだろう?

やっぱ、シアンさんが居なくなって、俺達も気が抜けていたんだろうな……

だけど、俺ももう理解した。

クロロ、一緒に死んでくれるかい?」


「ああ、ベルゼと死ぬなら僕は良いよ」


そう言って、クロロは頷く。


「お前ら、死ぬとか何を言っているんだ?

さっさと命乞いでもしろよ!

なぁ、おい!」


俺達の雰囲気を察したのか、ゴロツキのリーダーは焦ってこちらに剣を向けてきた。

それに対して、俺は自らその剣に刺さりに行く様に、前に出て行く。


「死、死にたいのか?!」


俺の常軌を逸した動きに、ゴロツキの剣先は一瞬ブレてしまう。

ヌルイな……

そんなブレた剣では俺は刺せない。

まぁ、本気で刺しに来てもコイツの腕では、かすりもしないだろうが。

俺は、ギリギリで避けて、ゴロツキを斬り裂く。

同時にクロロも動き、全力で冷気を振りまく。

ちょっ、それじゃ俺も寒いし!

いや、寒さで痛みも麻痺してきたから良いや。

とにかく、後の事は考えずに、全力で斬る!

斬って、斬って、斬って、斬りまくる。

気付いたら、全員斬り殺していた後で、危うくクロロにまで斬りかかるところだった。


辺り一面は血の海、そしてクロロの方は真っ赤な氷片がまるで雪の様に……

むせ返る様な鉄錆の臭いが、流れた血の多さを物語っている。


「これで終わり……

ってワケはなさそうだな。

ハハッ、全力を出し切って、もう一歩も動けないってところなのに……

なんでだろうな?

敵を見ると、自然に身体が動いちまう。

やっぱ、シアンさんとの繋がりなんだろうな、死ぬって事はさ」


「僕ももう、魔力が切れて気絶しそうだけどさ、楽しくて仕方ないよ。

多分、シアンさんが力を貸してくれている、死に根源的な愛を、仁を感じる。

ふふっ、これで生き残ったら、死仁とでも名乗るかな、ポエミィにさ。

さて、死ぬまで殺そうか?」


ボロボロでも笑う俺達を見て、増援のゴロツキ達はギョッとした顔をしている。

そして、一部のゴロツキは俺達の様子を見て、腰が抜けている。


「お前ら、なんでそんな、ボロボロな状態で戦えるんだよ?

お前ら本当に人間か?!」


なんだか凄く失礼な事を言われているが、声を出すのも無駄な体力と、無言で斬り裂いていく。

人間、いや死仁になろうと考えながら……


それから先はあまり記憶が無いが、ただひたすらに斬っていた。

そして、目の前が朦朧として、はっきりと見えなくなった頃、俺の刀は、槍に受け止められる。

ああ……

これで終わりか。

そう思いながら、俺の意識は……
































「俺は死んだのか?」


目覚めると、見慣れた天井……

ダンジョンの中?

それよりも、クロロは?!


そう思い横を見ると、クロロも寝かされている。

そして……

俺達を心配そうに見ている、ヨード達がいた。


「ベルゼ、大丈夫かい?

まだ回復したばかりだから、ちょっと寝ていた方がいいよ。

しかし、驚いたよ。

分断されて、道に迷ってさ。

追手を斬り伏せながら、なんとかダンジョンにたどり着いたらさ、血の海の中にベルゼとクロロがいるじゃんね。

しかも、僕達まで斬ろうとしてくるしさ。

言っとくけど、ベルゼの刀で斬られると、むっちゃ痛いんだからな?

そんで、仕方なく槍で受けたら倒れるしさ、もう本当に焦ったよ。

いやマジで。

それで、気絶したベルゼとクロロを、僕とブロモで運んだんだよ。

それから、ポーションを使って、やっと落ち着いたってところかな」


「ちなみに、サルファとニトロが居ないが……

まさか、やられていないよな?」


「サルファとニトロは、入り口で見張りをしているよ。

まぁ、僕達の方にはあまり敵が来なかったしね。

どうやらベルゼとクロロを倒せばいい、みたいに考えているみたいだし。

頭を潰せば終わる、とか考えているのかもね」


みんな無事……

それを聞いて、少し安堵する。

安堵……

さっきまでは死ぬつもりだったのに、まぁ腐ってもリーダーを任されているって事か……


「しかし、シアンさんが残してくれた貴重なポーションを……

すまない。

俺がもうちょっとしっかりしていたら、こんな事にはならなかったのに。

本当に申し訳ない!」


「いやいや、ベルゼとクロロに敵が集中したおかげで、僕達の被害は少なかったし。

って言うか、2人がほとんど殺してくれたから、敵もかなり減ったはず。

それにね、シアンさんがポーションを隠しておいてくれたみたいでさ、20個はあったから。

シアンさんなら、間違いなく使えって言うだろうしね。

気にする事は無いよ」


「ありがとう。

それでも、助かったのは事実だし。

感謝しているよ。

でも、俺達もまだまだだよな……

シアンさんなら、多分異常に気づいて、館には近づかなかっただろうし、近づいたとしても余裕で乗り切ったと思う。

しかも、かなり手加減して、誰も殺さずに……

きっと、逃げる必要も無かっただろうなぁ。

まぁ、俺達なんてシアンさんの足下にも及ばないのだろうけどさ、せめてもう少しヤレるところを見せたかったな」


「そんな事ないって、以前の僕達に比べたら、格段に進歩しているし。

それに、ベルゼはシアンさんがいない穴を、頑張って埋めているしね。

誰もベルゼに文句なんてないよ。

いや、敵さんはかなり文句があるかもね。

あんなに殺されたら、組織としてヤバイだろうからね。

ふふっ」


「まぁ、ヨードがそう言ってくれると、ちょっと安心するよ。

ちなみに、クロロはまだ起きていないけど……

大丈夫なんだよな?」


「ああ、クロロならさっき起きて、ベルゼの心配が無いってわかったら、寝ちゃったよ?

クロロの方が、まだ軽症だったしね。

いや、実際軽症ではなかったけどさ。

逆にベルゼはかなりヤバかった。

シアンさんのポーションが無ければ、死んでいたかもしれない……

ベルゼが助かって、本当に良かった。

クロロもスゲー心配してたんだぜ。

だから、2人とももう少し休みな」


ヨードのその言葉に、安心して俺は再び眠りについた。

どうやら、敵はあれから攻めてこなかった。

これも何かの作戦か?

とも考えだが、別に油断なんてしないし、こちらは態勢を整えるだけだから構わない。

とりあえず翌日は、リハビリがてらゴブリンもどきを狩った。

身体に支障は無い、流石シアンさんのポーションってところか。

関節も筋肉も内臓の機能も影響ない。

むしろ、身体が軽くなった?

昨日よりも少し早く動ける気がする。


そして、身体よりも顕著に、心の変化の方が大きかった。

今までなら、僅かな死の気配に躊躇して、踏み込めなかった領域に気軽に踏み込める。

相手と自分、お互いどちらか、いや両者かもしれないが、絶対に死ぬ範囲……

そこを軽々と飛び越え、相手を斬り裂く。

まるで、木人形を斬る様に。

なんか、やっとシアンさんが言っていた事がわかった。

確かに、俺にはあと一歩の踏み込みが足らなかった。

だが、それは死を覚悟しただけでなく、死を望まないと行けない領域……

多分、シアンさんはその一歩すら、俺達より早く乗り越えてきたのだろう。

そして今は、更に先を歩いているはず。


「やっぱり、遠いな……」


そんな俺の呟きに、クロロは黙って頷いてくれるのだった。


少年は、未だかつてない、強敵と戦う。

そして、新たな境地に……


次回 第116話 予感

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