第112話 超絶倫獣
ゴブリガのバイアクヘーを倒した後、僕は先に進んだ。
まぁ、一本道だけど。
その先にいたのは……
人間に近い魔物?
なんか不思議な感じがする何かだった。
しかし、実際にたどり着いて見てみると、狼みたいな男、だった。
顔は完全に狼、身体は全身がけむくじゃらで、でも爪は長いが五本の指は人間みたいな感じ。
足は2本で立っている。
ちなみに、犬にも似ているが、雰囲気は狼かな。
アラバ村で戦ったガルフと同じ臭い、いや雰囲気がする。
そう思うと、ちょっとだけ腹が立つ。
いや、コイツは全く関係ないし、あのガルフ達の親玉でもない。
というか、接点すら全くない赤の他人。
というか他魔物?
まぁ、考えても仕方ないか……
とりあえず近づいてみよう。
「よく来たな、勇者よ!」
そいつは僕を見ると話しかけてきた。
「えっと、僕は勇者じゃないけど?
って言うか、子供が来たとか言わないの?」
「お前は、ゴブリガを倒したのだろう?
ならば、見た目が子供だろうと関係あるまい。
私はお主を勇者として、全身全霊で迎え討つのみ!
私はメンデレーエフ様に作られし究極のルーガルー、超絶倫獣ベラボー魔なり。
ちなみに、普通の狼人は、満月しか変身できないが、私は満月以外はこの絶倫獣フォームに変身できるのだ。
凄いだろ?」
「へー、そうなんだ。
よくわかんないけど凄いね。
確かに、アレはデカイし、絶倫なのかもしれないけどさ……
絶倫だからって違う意味で興奮されても、困るって言うか……」
「違う!
絶倫と言うのは、共に歩くものを絶していると言う意味で、比類なきモノと言う事だ!
精力絶倫マンでは無いんだ!
他の獣を超絶する存在として、私は作られたのだ。
愚弄するな」
「そっか、それならちょっと安心したよ。
ショタの狼人なんて、シャレにならないし。
ピーをフリフリしてこられたらさ、斬るのも汚らわしいじゃん。
それで、絶倫マンもゴブリガみたいに無限の再生力があるの?」
「絶倫マン……
まぁいい勇者よ。
私の再生力はそれ程強くはない。
まぁ、ゴブリガに比べれば、と言う意味でな。
私の力は、超スピードだ。
獣の限界を超えたスピードに、お前はついてこれないだろう!」
次の相手はスピード型か……
だが、多分だけど何らかの欠陥があるはず。
どうもこのダンジョンは、侵入者を試している様な気がする。
それこそ本当に勇者の試練的な……
まぁ、僕は勇者と言うにはかなりアレだけどさ……
とにかく、あのスピードのピー野郎をサクッと殺して、次に行こう。
そう思い、僕が血抜き君を抜くと、絶倫マンはかなりの速度で、鋭い爪の斬撃を放ってきた。
速い!
ギリギリ視認できたが、避けるのは間に合わず、咄嗟に手甲で受けて……
それでも僕は吹き飛ばされ、背中を壁に打ち付けてしまう。
まぁ、軽く受け身は取ったから、ダメージはそこまででもないが……
「はっはっはー。
勇者よ、私のスピードは凄いだろう。
運動エネルギーは、速度の二乗に比例するらしいからな。
私の速度ならば、分厚い鋼鉄すらも軽く斬り裂く事ができるぞ。
これが、ルーガルーたる、私の力だ!
ライカンスロープやワーウルフ、ウルフマンとは格が違う。
私こそが、究極の狼人。
身に染みて理解したか?」
勝ち誇る絶倫マンを観察しながら、僕は立ち上がる。
「なるほどね。
スピードは確かに速い。
でもさ、絶倫マンの身体はそれについていってないよね?
速すぎて、腕が自壊してすぐに攻撃できないから、回復の時間を会話で稼いでいるのかな。
でも、とっても残念だな。
絶倫マンはさ、様子見で左手の攻撃だけで止めたよね?
右手と足も繰り出せば、僕を1回は殺せたかもしれないのに。
惜しい、本当に惜しいよ。
やはり自壊すると、痛むからかな?
でもさ、格上の相手を殺したいなら、ちゃんと初見で躊躇なく全力を出さないと。
まぁ、それでも僕が相手ってのは、部が悪すぎたかな。
ちなみに、僕の師匠、師父と師母なら絶倫マンの全力でも傷1つつかないと思うよ?
狼人としては究極かもしれないけど、そんなに勝ち誇らない方がいいって言うか……
あと、クトゥグァの攻撃の方が、ちょっと早かったから。
こう言うのを、確か……
井の中の河津掛け、だっけ?
とにかく、そんな攻撃では、僕は殺せないよ?」
「くっ。
流石勇者、と言ったところか……
私の力を、弱点をそこまで見抜くとは。
しかし、これが私の全力だと思うなよ?
次は本気の捨て身で行く!
覚悟しろ勇者!」
そう言って、絶倫マンは両手を広げ、構えを取る。
そして、両脚を屈伸し、そのバネでこちらに回転しながら飛び込んで来た。
脚は自壊して血塗れになり、腕も引き千切れそうなほど全力で振り回している……
恐らく、これが全力と言うのは間違いないだろう。
マトモに喰らえば、僕はひき肉に……
まぁ、喰らえばだけど。
僕は即座に身体強化魔法をかけ、迎え討つ。
それは、一瞬の攻防……
回りながら迫り来る絶倫マンの腕の隙間を縫って、脇腹から血抜き君を突き刺す。
後は、絶倫マンの推進力で勝手に切れる。
そして、絶倫マンはそのまま壁にぶつかり、派手な音を立てて自らをひき肉に変えた……
なるほど、全力を出せば、自らを殺す。
1人1殺の必殺技と言うわけか……
確かに強い、絶倫な相手だった。
身体強化と、魔力を読んだ上で、勘ですり抜けた方向が間違えば、ひき肉となっていたのは僕だった。
そして、僕が喰らえば、ブレーキがかかって絶倫マンは生き延びたのかもしれない。
まぁ、全ては推測に過ぎないが……
僕は、絶倫マンの魔石を回収し、先へと進む。
しかし、やはりこのダンジョン、何らかの意図で魔法生物が配置されている気がする。
その意図が何かはわからないが、1つの能力を極めた究極生物を作っているような……
実際、次の相手も同様だった。
「ウホホッ、僕ちんの名前はアルマ痔牢だよ。
究極のレプティリアン、超硬魔獣のリザードマンだよん。
無敵の防御力を持つ僕ちんを傷つけるなんて、無理無理ノンノンなのさ。
この鱗はダイヤモンドよりも硬く、更に魔法の結界が付与されているんだぜ、どんな攻撃も受け付けないよ。
たから諦めて、帰ったら?」
どうやら次は防御力特化らしい。
口調が若干ふざけているのがムカつくが、確かに硬そうだ。
「確かに硬そうだけど……
それでも、この血抜き君で斬れなかったモノはないから。
どちらが凄いか、勝負してみようか」
そう言って、僕は血抜き君でアルマ痔牢を斬りつける。
だが、カキンと言う音がして、血抜き君は弾かれてしまう。
硬い……
ギリギリ表面に傷をつける事はできたが、斬り裂く事はできなかった。
こんなのは初めてだ……
しかし、驚いたのは僕だけでなかったらしい。
「な、なんで……
僕ちんの鱗に傷をつけるなんて……
しかも、刃こぼれすらしていない?
なんだよそのナイフ、反則級じゃないか!
ズルイやズルイ。
ありえなーい!
フー、フー。
いかんいかん、僕ちんは血圧高めだから、あんまり怒らせないでくれたまえ。
まぁでも落ち着けば大したことないし。
たかだか傷1つだろ。
そんなんじゃ、僕ちんは殺せないよ。
どうするんだい?」
「うーん、どうしようかな。
斬れないんじゃ、仕方ないし……
ちなみに、アルマ痔牢の防御は凄いけど、攻撃はできるわけ?」
「えっ?
それは……
考えた事がないかも。
いや、ここまで誰かがきた事なんてないし、僕ちん戦いなんて初めてなんだよー。
でもまぁ、この爪が当たったら痛いよ〜」
そう言って、アルマ痔牢は爪の斬撃を繰り出すが……
さっきの絶倫マンに比べたら、かなり遅い。
話にならないレベルで。
ならば……
僕はその攻撃をヒラリと避け、アルマ痔牢の後ろに回り込む。
そして……
鱗と鱗の間に血抜き君を刺し入れ、鱗を一気に剥がす!
すると……
「グギャー!」
という絶叫を上げ、アルマ痔牢は失神してしまう。
防御力は凄い反面、痛みには慣れていないのだろう。
その後も、僕は鱗を剥がし続けると、アルマ痔牢は絶叫と気絶を繰り返した。
そして……
全ての鱗を剥がすと、アルマ痔牢は息絶えた。
アルマ痔牢死す!
いや、なんとなくタイトルをつけただけで意味はない。
退屈だっただけだ。
ちなみに、掌サイズの鱗は何かに使えそうだったので、回収して収納魔法に仕舞った。
これで盾を作れば、良いものができるかもしれないしね。
それと、僕だったから余裕だったが、アルマ痔牢は決して弱いわけではない。
この硬い鱗の下は、かなり弾力のある皮下脂肪に覆われており、強い衝撃を喰らっても吸収してしまうだろう。
魔法も多分、鱗で弾かれて効かない。
だから、血抜き君を持っていなければ詰んでいた。
例え、師父や師母の様な強者であっても、コイツには勝てなかったかもしれない……
まぁ、愚鈍だし攻撃力も強くはないので、倒す必要がなければ、無理に戦わなくてスルーすれば良いのだろうけど。
しかし、この先もずっとこんな調子だと……
面倒だなぁ。
もうちょっと血湧き肉躍るみたいな、戦いが楽しめる相手はいないのだろうか?
まぁ、素材とか魔石とか武器が良いから、そんなに問題はないのだけど……
それと、クロロさんやベルゼさんは大丈夫だろうか?
僕を探して無茶をしていないかが、ちょっと心配になってくる。
まぁ、アニマがないから此処にはこれないと思うけど……
僕は、そんな心配をちょっとだけしながら、先へと進むのだった。
目指すはあの館……
幹部の一人を倒し、勢いに乗った若者達は、敵の本拠地へと向かう……
第113話 閑話 油断




