第111話 閑話 血塗られた夜明け
俺達は、入口にいたゴロツキ2人を殺した後、遺体をダンジョンの中に入れて無いものにした。
別に放置しても良かったのだが、腐っても嫌だし……
違うな、微妙に残る罪悪感を消すため、その為にダンジョンに吸収させた。
ただそれだけだ。
そして、その後は全員で出口を目指す。
とは言え、みんな眠らされて入ってきたから、どこが出口なのかを知らないのだけど……
しかし、そんな心配は必要無かった。
一本道だったしな。
出口には、更に2人の見張りが居たが、こちらには気付いていない。
「今回は、僕達にやらせてくれないか?」
サルファとニトロがそう提案する。
やるって……
殺るって意味だよな?
多分……
まぁ、いつかは経験してもらわなければならない事ではあるが、本当にいいのか、僅かに逡巡してしまう。
いや、シアンさんのためだ。
それにここまで来て、後には引けない。
「なら、右側の男を頼む。
2人で確実に、瞬殺してくれ。
俺は、左を捕まえてみる。
とにかく、情報が必要だからな」
「「了解」」
サルファとニトロは武器を構え、俺は刀を仕舞ってから出口の男達に近づく。
最初にサルファが風刃鞭で斬り裂き、ニトロがグリセロールで頭を吹き飛ばす。
明らかにオーバーキルだから、シアンさんに怒られそうだけど、まぁいい。
一方で、驚いたもう1人の男を、俺は後ろからブン殴って気絶させる。
一撃で倒れる男……
手加減はしたつもりだが、死んでないよな?
一応、ゴブリンもどきが死なない程度で殴ったつもりだけど……
とりあえず、俺達は気絶した男を少し奥に運び、手足をロープで縛りあげる。
そして、水をかけ、頬を引っ叩いて無理矢理に起こす。
「うぉ?
ここはどこだ?
お前ら……
俺がヨグソトース団の団員だと知っていて、こんな事をしているのか?
バカな奴らだ、全員死ぬぞ。
さっさとこの縄を解け!」
「もちろん、知っているさ。
でも、死ぬのはお前らヨグソトース団の方だ。
えっと、クロロ、拷問のやり方とか知ってる?」
「えっと……
確か、爪とか剥がすと良いんだっけ?
ゴブリンなら皮膚を剥がして遊ぶとか、シアンさんが言っていた気がするけど」
「ちょ、ちょっと待てお前ら。
俺らの怖さがわかってないのかよ?
この街を支配している、ヨグソトース団だぞ?
逆らえば誰でも皆殺し、お前らみたいなガキなんてすぐに殺される。
それに、閃光のヨグソトース様や、破槌のベンゾピレン様、斬り裂きジャクアルカリ様、破軍策士ビフェニル様、魔壊師キレート様と言った将が綺羅星の様に揃っているんだ、ちょっとダンジョンで自信をつけた程度で、勝てると思っているのか?
無駄だ、拷問なんてやめておけ。
俺を解放すれば、楽に死なせてやるくらいはとりなしてやるぞ?」
「それって、どっちでも死ぬし、一緒だよね?
まぁ、強い奴がいるのはわかったけど、シアンさんに鍛えられた俺達がどこまで戦えるか、むしろ楽しみだよ。
って事で、拷問は決定として、素直に話す気はないかな?
ヨグソトースの居場所と、団員の人数、あと外がどうなっているかが知りたい」
「へんっ、いくら俺が下っ端とは言え、仲間の情報は売れない。
無駄な事はやめておきな!」
ならばと、俺はとりあえずこの下っ端の爪を適当に剥がしてみる。
一気に全部……
絶叫し、泣き叫ぶ下っ端。
痛い痛いと言うだけで、他の事は喋らない。
コイツらも結束力が高いのか……
確かに、俺だって爪を剥がされたくらいでシアンさんを売れって脅されても、絶対に喋らないだろう。
それは多分クロロ達も同じ。
ならば、どこまでやれば良い?
指を全て落とすか?
いや、手脚を落とした方が?
でも、多分死ぬし、喋らない。
もっと痛く、苦痛が長引かないと……
そうか、この刀ならいけるかもしれない。
俺は、刀を抜き、下っ端の腕の皮膚を薄く剥いでいく。
この刀の効果は痛覚。
つまり、広範囲に広く剥いでいけば、身体へのダメージは最小限で、痛みは最大限に与えられる。
下っ端は、あまりにもの痛みに、気絶と覚醒を繰り返す。
しかし、下っ端は絶叫するだけで、話そうとはしない……
「なぁ、クロロ……
コイツらただのゴロツキだと思っていたんだけど、かなり結束力が強いのかな?
ここまでされたら、普通は喋ると思うんだが?」
「いや、最初から痛みで喋れないだけじゃない?
とりあえず、腕を落として、ポーションを飲ませてみるよ?」
そう言って、クロロは下っ端の腕をアイスブランドで凍らせながら斬り、シアンさんに貰った貴重なポーションを飲ませる。
「くはっ、頼む、なんでも喋るから……
許してくれ……
いや、許して下さい、お願いします!」
「じゃあ、ヨグソトースはどこにいる?」
「団長は、丘の上の館か、ガキどもを攫いに行っていると思う。
あの役目だけは、団長が必ずやるから、そろそろ出かけているはずだ。
なぁ、これ以上は俺が殺されちまう。
お願いだ、助けてくれよ。
なっ?
なんなら逃げ道とか案内してやるからさ。
頼むよ!」
「悪いが、俺達はヨグソトース団を倒して、この街を奪うつもりだから。
逃げるつもりはないぜ。
それに、お前には、俺達の拷問で死ぬか、話してヨグソトース団に殺されるかの二択しかないんだろ?
なら、俺達がヨグソトース団を倒せば、生き残る可能性もあるんだぜ。
まぁ、お前が喋らなくても、他の奴に聞くから別にいいけどさ、どうする?」
「わかった!
喋るから、助けてくれ。
団員は全員で200人はいるはずだ。
大半は街の事務所にいるはず。
幹部の一部は館にいる事もあるが、俺ら下っ端じゃ把握はしていない。
見分け方?
団員は全員、この目のマークのバッジをつけているぜ。
あと、幹部は魔石の入ったネックレスをしているはず。
俺が知ってるのはそれくらいだ。
頼む、殺さないで……」
「ちなみに、さっきの出口を出ればすぐに街なんだな?
今が朝で、次の見張り交代が昼っていうのも間違いないんだよな。
よし、丁度良いタイミングだったみたいだな。
ならばまずは、事務所を制圧しよう!」
「コイツはどうする?」
「縛ったままダンジョンに入れておこう。
まぁ、なんかの役に立つかもしれないし」
こうして、俺達は外の情報を得て、ダンジョンから出た。
ダンジョンから出ると、ごちゃごちゃした街並みと、真っ赤な朝焼けが見えた。
その光景はまるで、飛び散った鮮血の様だった。
それは、これからの俺達の運命を示唆しているかの様に……
そこからは、一気に事務所とやらに向かった。
途中、数人のゴロツキに絡まれたが、速攻で躊躇なく殺した。
目のマークのバッジをつけているから、多分ヨグソトース団の団員だろうが……
正直、びっくりするくらい弱かった。
強さで言えば、デミゴブリン程度か?
これなら、100人居ても大丈夫かも。
なんて言うのは、ちょっと甘かったか。
事務所の前で見張っていた2人は、少し強かった。
ダンジョンで言えば、角なしゴブリンもどきくらいか?
初めて普通に戦う長剣使いだった、というのもあるだろうが、それなりに剣術を学んできたのか、太刀筋がしっかりしていた。
だからといって、その程度の相手に負ける訳にもいかないし、数合打ち合ったくらいで斬り伏せる。
事務所の中には更に15人くらいが居た。
まぁ朝早いし、これでも少ない方なんだろうが、1人だけ別格の奴がいる。
巨大な木の槌を持った、筋骨隆々な女?
多分コイツが破槌のベンゾピレン。
まさか、女だとは……
「こんな朝方に子供が何の用だい?
まさかお使いって訳でもなさそうだし、ここはお遊びで来る所じゃあないよ。
まぁ、入口の2人を倒したみたいだし、雑魚って訳でもなさそうだけど……
ちょっと楽しみだねぇ、私が直々に相手してやんよ。
さぁ、かかってきな!」
そう言って、ベンゾピレンは木の槌を構え、軽々と振り回す。
凄い威圧感だ……
恐らく、あのダンジョンに行っていなければ、即死する相手……
まぁ、昔なら入口の2人にも勝てなかったとは思うが、あの2人よりも更に格上で強い。
とは言え、シアンさんに比べたら児戯に等しいかもしれないから、そこまでは恐怖を感じない。
「どうするベルゼ。
2人がかりで行くか?」
ヨードが聞いてくる。
「いや、この程度の相手に負けたら、シアンさんに顔向けできないし。
俺1人でやらせてくれないか?」
「わかったけど、無理はするなよ?」
「何をコソコソと話しているんだい?
ハン?
1人でかかってくるつもりかい。
この私、破槌のベンゾピレンも舐められたもんだね。
お前らみたいな子供にサシで挑まれるたあ……
なんか情けなくなってくるねぇ。
まぁいいさ、1人ずつ殺していけば良いだけだしね。
さっきとかかってきな?」
そう言って、ベンゾピレンは俺を挑発してくる。
確かに、コイツは強い。
多分、真ゴブリンスピリッツ位の強さはあるが……
ただし、その武器はただのデカイだけの木の槌でしかない。
まともに喰らえば即死かもしれないが、喰らわなければ全く怖くはない。
武器は、邪魔なら壊せばいい。
シアンさんはそう言っていたっけ?
俺は、ダッシュで駆け寄り、ベンゾピレンに肉薄する。
ベンゾピレンはそれを迎え討ちに、渾身の横薙ぎを繰り出してくる。
だが、一拍遅い!
俺は充分な間を持って、ベンゾピレンの横薙ぎを身体を最大限に傾けて避け、その柄を斬る!
巨大な槌の先は、横薙ぎの力のまま他のゴロツキに向かい、粉砕する。
「悪いけど、アンタは俺より死ぬ覚悟が少ない。
それが、アンタの敗因だ」
そう言って、俺はベンゾピレンの胴体を一刀の下に斬り裂く。
まぁ、実際の実力差はなく、武器の差くらいだったのかもしれないが……
シアンさんに貰ったこの刀は、木の槌くらいに負ける訳がないしな。
そして、いかに鍛え抜いた身体だろうと、魔物程ではないし、斬り裂けない訳がない。
派手に鮮血を振りまいて死んでいくベンゾピレンを見て、手下のゴロツキ共は逃げようとするが……
クロロ達が、速攻で屠っていく。
こうして、俺達はヨグソトース団の拠点の1つ、事務所を制圧する事に成功したのだった。
そして、金庫から大量の金と、この街の地図、ヨグソトース団の配置が書かれたものを手入れたのだった。
少年は先に進む。
目的の指輪を探して……
次に現れた敵は、謎の……
次回 第112話 超絶倫獣




