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第110話 深層の入口

僕は、アニマを使い、隠し部屋の奥へと入った。

そこまでは良かったのだが……

出れなくなった。

多分、アニマを使った瞬間に時空が歪む感じがしたから、何処かに転移したっぽい。

うん……

帰れなくなった。

ちょっと見に行くだけのつもりだったから、クロロさん達には伝えなかったんだけど、ヤバイな……


まぁでも、どうしようもないからいいか。

まずはここから出ることを考えよう。

いや、焦ったって仕方ないし、ちゃんと攻略して、戻ればいいか。

どのみち、クロロさん達では、ここでは生き残れないのだから。

しかし、あの隠し部屋の向こうに魔物の気配を感じていたのだが、それと同じ気配を前から感じる。

実は転送されたのは短距離ってオチか?

でも、後ろの壁の先には何も感じないんだよなぁ……

ダンジョンの気配とかさ。

そして、ここはフォーマルハウトのダンジョンとは別の感じがする。

なんていうか、濃密な感じ?

イマイチ気配が読みにくいというか、感じていたのはこの魔力の残渣なのかもしれない。


そして、前の曲がり角から、現れる魔物。

気配はゴブリンだが……

ボスゴブリンよりも濃厚な魔力。

溢れて出す精気と、圧倒的なパワー。

どうだろう、キラーマンティスくらいの強さだろうか?

そして、そのゴブリンは僕に話掛けてきた。


「小僧、ここが我らが主人、メンデレーエフ様の墓陵であると知っての侵入か?

いや、そもそも何処から来たのだ……

まさか、お前がアニマを?

オールドワンに認められたとでも言うのか?

こんな小僧がか?

まさか……

お前、どうやってここに来た?」


「えっと、ダゴンとか言うパキポディウムを倒したら、クトゥグァとか言うやたら強いヒバゴンが現れて……

結局、一撃を与えただけで、なんか知らんけどアニマをくれた、みたいな?

っていうか、それよりなんでゴブリンが喋れるのかな。

まぁ良くは知らんけど、アンタは何者なわけ?」


僕は答える。

ちなみに、確かにコイツは強いが、それ程でもない相手に、一方的に質問されるのが癇に障っのか、少しだけ強気で答えてしまった。

まぁ、このゴブリンが怒り出しても、別に怖くないが、情報を聞き出すのが優先だったかもしれない。

そんな僕の思惑とは関係なく、喋るゴブリンは自分の事を語り出す。


「お前みたいな小僧が、ダゴン様を倒し、クトゥグァ様を退けただと?

面白い!

グヒヒヒヒ。

ならば、この俺様がお前を倒してやろう。

我はゴブリンの究極を目指し、メンデレーエフ様に作られし魔法生物ゴブリガなり!

そして、我が名はバイアクヘー、双斧 呪埿と怨愚の使い手なり。

さぁ行くぞ、俺様の中で永眠するがいい!」


そう言うと、バイアクヘーは腰にぶら下げていた2本の手斧を持ち、構えた。

僕も即座に血抜き君を抜き、構えるとバイアクヘーは身体をしならせながら、右手からの斧の一撃を放ってくる。

ビュンという鋭い音が響き、僕が避けた後の地面が大きく削られる。

まともに喰らったら、かなりヤバイくらいの力だ。

そして、スピードも速い。

そんな事をゆっくり考える暇もなく、左手の斬撃が横薙ぎで払われる。

当然避けるけど、喰らえば真っ二つ。

クロロさんやベルゼさんでは、避ける事すら出来ないだろう。

まぁ、僕なら余裕だけどね。

とりあえず、次の斬撃は一歩前に踏み込みながらギリギリで避け、バイアクヘーの内股に向かってスライディングで滑り込みながら、脚を斬りつける。

ザクリという手答えの下、確かにかなり斬り裂いたはずなのだが……

僕が斬りつけた場所は、即座に傷が塞がり、回復していく。


「ブハハ、ウヒヒ。

そんなチャチな攻撃は効かんぞ?

確かに貴様は、地上で我らが同胞を屠ったのかもしれないが、ここではその常識は通じない。

我ら、魔法生物は地上では本来の力を出すことができぬからな。

しかし、ここならば我らの力を十全に出すことができる!

我が力は無限の再生力だ。

もし、小僧お前が我を殺したいなら、我が魔石を奪うか、首を落とす以外にないぞ?

まぁ、そんな事は無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理だ!

わかったら、大人しく死ぬがいい」


「へー、無限に再生するんだ。

でも、さっき斬った時、一瞬だけ筋肉が硬直していたよね。

つまり、痛みは感じるんじゃないの?

だから、無限に再生するって事は、無限に痛み続けるって事だよね。

最近さ、僕が死ぬような戦いって無くてさ、大分身体が鈍っていたんだよね。

丁度良いから、僕の慣らしに付き合ってもらうよ?」


「俺様が慣らしだと?

ならば、こちらも全力で蹴散らしてやるわ!

その不遜な言葉を、冥府で後悔させてやる」


そう言って、バイアクヘーはさっきより力強く連続攻撃を繰り出してくる。

とはいえ、2本の斧だけの攻撃で、特殊能力や、特別な技は何もない。

ただ、強くて早いだけ……

対する僕は速さと斬れ味で上回っており、バイアクヘーの腕や脚を、何度も何度も斬りつける。

ちなみに、無限の再生力があると言っても、血は回復しないらしく、バイアクヘーの顔はゴブリンの緑色から、血が抜かれた後の青色に変わってきている。


そして、次第に力や速さも失われ、バイアクヘーは時には膝を地面に落とす事も……

多分、再生能力は無限だが、スタミナは無限ではないのだろう。


「どうしたのさ。

さっきまでの勢いはどうしたの?

僕の事を蹴散らして、冥府で後悔させてくれるだよね。

まぁ、その程度じゃ所詮は慣らしにしかならないんだけどね。

でも……

久しぶりに楽しかったから、良かったよ」


「くっ……

ならば殺せ!

これ以上の恥辱は、耐え切れぬ……

しかし、永き安寧に胡座をかいていたのは、この俺様の方だったのか。

だが、強者に殺されるなら本望だ。

さっさと俺様を殺すがいい」


「えーっ。

やっと身体が温まってきたのに、こうして時間稼ぎしてあげているんだから、もうちょっと頑張ろうよ。

ちなみにさ、バイアクヘーはゴブリガだから喋れるのかもしれないけど、普通のゴブリンも感情とか愛情を持っているのかな?」


「我々魔物とて、知能のある生き物だ。

確かに普通のゴブリンは低脳だが、感情だって、愛情だってある。

そして、俺様くらいになれば、惨めに生かされる屈辱よりも死を選ぶ……

と言いたいところだが、俺様は無限の再生能力を持っている。

だから、自らでは死ねぬのだ。

それ故に、戦っての死を望む。

小さいが強き者よ、俺様の願いを叶えてはくれぬか?」


「そっか……

偶に倒したゴブリンらしき夢を見た事があったけど、アレはゴブリンの気持ちだったのかもしれない……

全然同情はしないし、躊躇も後悔もないけどね。


まぁ、心配しないでも僕が殺すから安心してよ。

ん?

殺すから安心とか、なんか変な感じだけど。

その前に、せっかくだから色々聞かせてもらいたいんだけど。

ちなみに、感情があるなら、魔物と人間は分かり合う事ができるのかな?」


「ワヒャヒ、お前面白い事を言うな。

それは、無理だ。

我ら魔物には、根源的に人間を襲い、喰らい、犯し、引き裂きたいという逆らえない欲求がある。

実際に、我らが創造主たるメンデレーエフ様に対してですら、そう思ったくらいだしな。

まぁ、実際はメンデレーエフ様は襲えないのだが……

あのお方はベリアルの指輪を持っていたからな。

ベリアルの指輪には本能ですら逆らえない、圧倒的な力がある。

お前もあの指輪を手に入れれば、その意味がわかるだろう」


「ふーん。

まぁ、僕も魔物と分かり合うつもりなんかないんだけどね。

いやむしろ……

感情なんてない方が、殺しやすくていい、みたいな?

ただただ害悪として、何にも考えずに殺されてくれれば良いんだけどなぁ。

それよりさ、一応僕もベリアルの指輪と同じくらいの力を持った武器を2個持っているんだけどね。

この短剣が血抜き君で、この手甲がペスね。

ちなみに、ベリアルの指輪とかは血抜き君よりも凄いって事なのかな?」


僕がそう言うと、血抜き君の赤い刀身が、更に赤みを増した。

そして、その様子を見ていたバイアクヘーは、腰を抜かし、座り込む。

まぁ、僕は何にも感じなかったのだけど、バイアクヘーは何かの力を感じたらしい。


「そ、そ、その力は……

ベリアルの指輪と同格……

いや、その死の瘴気は、あの指輪以上……

そんなモノを持って、本当に正気か?

メンデレーエフ様ですら、5日に1度、しかもごく短時間しか正気を保てなかったと言うのに……

それ以上の力を、しかも2つだと?

貴様は化け物か?」


「魔物に、じゃなくて魔法生物に化け物呼ばわりされるほど、僕は凄くないよ。

それほど強くはないし。

ちなみに、単に僕はその死の瘴気とやらを感じない体質なだけて、それ以外はごく普通なんだけどね。

って言うか、逆に血抜き君は斬っても血が出ないだけだし、ペスは殴ると気絶させるだけで、そんなに強いかって言ったら微妙?

その他にも色々あるけど、偶にしか使えないしねぇ……

結局、血魔法も魂魔法も、あの時しか使えなかったし。

でも、この分だとベリアルの指輪とやらも、何に使えるのかわかんないか。

まぁ、質問はこれくらいでいいや。

って、それよりもう戦う気がないなら、トドメを刺そうか?

ちなみに、派手に痛く死ぬのと、地味に楽に死ぬのはどっちがいいかな」


「好きにしろ。

だが、俺様が死んだら、魔石とこの斧は貴様が使ってくれると嬉しい。




なんてな……

死ねや!」


バイアクヘーは、不意を打ち、いや打ったつもりで最後の力を振り絞り、斧の斬撃を繰り出してきた。

まるで、残り少ない命の残渣を出し尽くすかのように……

僕の理想的な死に際、全身全霊の力で命を燃やし尽くす。

それを、魔物が……

いや、魔法生物だっけ。

そんな事はどうでもいい。

バイアクヘーの必死なその姿を見ると、魔物にも感情があると言う話が、より現実的に見えてしまう。

ならば……


僕は、即座に身体強化魔法をかけ、バイアクヘーの首を一撃で刎ねる。

ほぼ全力の一撃で。

バイアクヘーに、憎き殺すべき魔物に対して、最大の礼を尽くして。

この日、僕は初めて魔物を1人の戦士として殺した。

多分、僕はこの事を一生忘れないだろう。

僕はそう、心に刻みつけるのだった。



若者達は、明日を目指して突き進む。

倒すべきは……


次回 第111話 閑話 血塗られた夜明け

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