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第11話 卒業試験

僕らがパーティーを組んで暫くしたある日、リッツ達3人衆が養成所に復帰した。

と言っても、ヤーフルさんは模擬戦で僕の相手しかしないので、3人衆は昼の修行が始まると何処かに行ってしまった。


ちなみに、僕はリッツにあの時の事を謝ろうと思っていたんだけど、リッツ達はこっちをみて睨んでくるし、話しかけるチャンスがなく過ぎていってしまう。


それと、ヤーフルさんとの模擬戦については、ヤーフルさんの癖が最近読める様になってきたため、少し反撃もできる様になってきた。

まぁ、全部防御されてしまうんだけど……

あと少しで、ヤーフルさんから一本取れそうなんだけどなぁ。


更に、最近ではパーティー戦を想定し、ジャルとアナとの連携技も研究している。

と言っても、前衛がジャルで後衛がアナのスタイルは変わっていない。

ジャルが盾で受けて、アナはスリングショットで後ろから狙い撃つ。

僕は遊撃で、敵の体力を削ったり、アナが撃って隙ができた相手に強撃を喰らわす中衛を受け持つ。


ちょっとずつ、森にも入る練習もした。

森で自分達の食料を調達するとか、テントを組んでみるとか、焚き木を焚いてみた。

焚き木は、中々火を点けるのが難しい。

母さんみたいに、火魔法が使えたら楽なのにな……

ちなみに、ジャルは回復系メインなので、火魔法は使えない。


ある日、ジャルが猪を見つける。

魔獣じゃない、ただの獣の猪だ!

「ちょっと狩ってみないか?」

とジャルが言うので、僕は答えた。


「怪我しそうになったら、逃げるつもりでやってみようか。

アナが最初に撃って、ジャルが受ける。

僕はこのナイフで削る。

この作戦でいい?」


「「ラジャー!」」

僕の作戦に、2人が肯定で答える。


まずはアナがスリングショットで石を撃って……

猪の右目にヒットする!

猪は怒り狂って、ジャルに突撃する。

ジャルは、盾にシルドと言う、簡易な防御魔法を掛け、猪の突撃を防ぎ切る。


そして、木の上から飛び降り、猪のやや後ろから血抜き君を突き刺す!

腰から右脚にかけて深めに斬り裂き、猪の右脚の血を一気に抜き、脚を硬直させる。

態勢が崩れたところで、アナは猪の左目を撃ち、両目を潰す。

更に、ジャルが盾で猪を押し込み、木の間に挟む。

最後に僕が、猪の頸動脈に血抜き君を突き刺し、猪が意識を失い、泡を吹き始めたところで、一気に心臓に血抜き君を突き刺してトドメを刺す。

こうして、僕達のパーティーは初めての大きな獣を狩ることができた。

正直、ちょっと怖かったけど、この3人ならなんとかなる。

きっと、これからもやって行ける、僕はそう思った。


ちなみに、近場だから良かったものの、猪を家に持ち帰るのは大変だった。

うーん、これから更に森の奥を目指すなら、道具等を保管する中継地点を用意する必要があるなぁ。

僕達じゃあまり多くは持てないし……


その夜は、みんなで猪鍋を食べた。

大根や人参と一緒に猪の肉を煮込み、我が家秘伝の白味噌と言う調味料で味をつける。

なお、父さんの生まれた地域は白味噌派らしいんだけど、この村の主流は赤味噌らしい。

僕は……

赤味噌は辛いので若干苦手かな。

それはともかく、猪鍋は美味しかったな。

父さんなんて、「また、取ってこいよな」

とか言うんだけど、3人で「無理だし!」って答えた。

そうそう見つからないしね。


こんな感じで、僕達は日々を楽しく暮らしていき、冬が来て12月になった……


最近、ちょっと寒いせいか、ヤーフルさんは関節が痛む様で動きが悪くなってきた。

そして、ある日の午後の模擬戦で、ついに……


いつも通り、ヤーフルさんは木刀での連撃を打ち込んでくる。

初撃は上、次は右2回、左、上、上、下からのすくい上げ、最後に上からの大振り。

ここ数ヶ月で何度か見たパターンがきた!

僕は攻撃に合わせ身体の位置をずらし、最後の大振りを誘って、ヤーフルさんの懐に飛び込んで喉元に木のナイフを突きつける。

もちろん、寸止めで。


ヤーフルさんは、酷く驚いた顔をし、

「今日は調子が悪いだけだ!」

と、怒鳴って帰ってしまった。


そして、翌日から、ヤーフルさんは僕の相手をしてくれなくなった。

曰く、「お前の相手ばかりしたら不公平だろう」との事だが、相変わらずジャルとアナには指導しないし、今は3人衆の指導を熱心にやっている。

なので僕達は、自主練を3人でやるしかなかった。

それはそれで、楽しいし修行になるんだけどね。

ジャルとアナは最近本当に強くなったし。


ちなみに、冒険者養成所は正月は休みで、2月には卒業試験がある。

卒業試験については、ヤーフルさんから説明があったが、大体こんな感じだった。

・今回は3対3のチーム戦で行う

・武器や防具は練習用の木刀に限らず、何を使用してもいい

・相手が降参するか、戦闘不能になるまで続ける、死亡しても自己責任とする

・勝ったチームの生きているメンバーのみ冒険者として登録できる


って、殺し合い⁈

もっと安全にできないか聞いたが、実際に冒険者になるには必要な事だと、ヤーフルさんは聞く耳持たなかった。

それどころか、「嫌なら逃げてもいいんだぞ?」と、イヤラシイ笑みで言われた。


なので、一応父さんにも聞いてみると……

「いや、どこの養成所でも最後は真剣を使うぞ。

それだけ命懸けの仕事ってことだからな。

それに、危険を察知して逃げれない奴は結局死ぬからな。

相手を見極めて、ヤバイと思ったら早めに降参するんだぞ。

ブルーはまだ小さいんだから、いくらでもチャンスはある。

わかったな?」

と、言われ、そう言うものなんだと納得した。


そして、雪が降る季節になり、養成所は休みが多くなり、僕達は狩や採取をしながら、拠点づくりのための物資調達、近隣の探索を続けた。

もちろん、連携の強化や個々の修行も忘れずにね。


あと、時々父さんとも模擬戦をしてもらってるんだけど……

父さんには3人掛かりでも、1勝もできていない。

いつか、父さんに追いつけるといいなぁ。


そうして、今日。

ついに、卒業試験の日が来た。

僕達は今日のために入念に準備をしてきた。

ジャルは父さんに樫の木を削った厚めの盾を新調してもらい、防御力を強化した。

アナは家の手伝いで貰った給料で、鉄の球を10個購入した。

どちらも、殺傷能力は低いが、この2人が使えば、強力な武器となる。


そして、僕は父さんに樫の木で、長めのナイフを作って貰った。

かなり硬めの木を削って作って貰ったので、相手が真剣でも、ある程度なら受け切れるだろう。

まぁ、かなり凄腕の剣士ならヤバイんだけど、リッツ達だから大丈夫だろう。

父さん曰く、むしろ受け方次第では衝撃を殺しやすいそうとの事だしね。

まぁ念のため、血抜き君は懐にしまってあるし……

ちなみに、手斧は流石に持ってこなかった。

あれは殺傷能力が高くて、ヤバイからね。


僕達はいつもの教室で、作戦を決め、さあ行こうと思った時に、ヤーフルさんから声をかけられた。


「ブルー、お前はちょっと待て。

お前だけに話がある。

他の2人は先に行ってろ。

さあ、さっさと行け!」

ヤーフルさんに追い立てられ、ジャルとアナは先に出て行った。


「ヤーフルさん、試合前に話って……

なんですか?」

そう僕が聞くと、ヤーフルさんは、

「ああ、大した話じゃないんだが……

悪いけどちょっと死んでくれや?」

と言って、長剣を抜き、僕の目の前で構えた。






突然凶刃を繰り出すヤーフルに、少年は戸惑いながらも抵抗する。

はたして無事に卒業試験を受けることはできるのだろうか?


次回 第12話 ヤーフルさんの目的

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