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第106話 決意

実行犯の内、2人は処理した。

後は……

死んだ1人と、ジャンだけ。

しかし、魂になってしまえば、僕には手が出せない。


「おい、ペス。

お前なら何か知っているだろう?」


僕が無表情でそう言うと、左手の手甲のペスが一瞬ビクリと跳ねた気がした。

コイツなら、魂を扱う事が出来るはず。

何か教えろと、念を送ると、目の前に一瞬、エラーと言う文字が浮かんだ気がした。

多分気のせいだが。

そして……

頭の中に、魂を操作する魔法が思い浮かんでくる。


「なるほどね。

じゃあ、最初はジャンからだね」


ジャンとポテリコの魂は、先程までの僕の所業を見て、恐れ慄いている。

だが、ここで死ぬと、魂が自縛され、逃げる事は出来ない。

つまり、逃げ場なんてない。

僕は、ジャンの魂に近づき、声をかける。


「ゴメンねジャン。

君の事は憎んでいないんだけど……

君がいると、サナが永遠に悲しむ事になるから。

居なかった事にしてもらうね?」


そう言って、僕は魂の消滅をイメージし、魔力を注ぐ。

ジャンの魂は、一瞬で霧散し、消えた。

ソウルバニッシュ、魂だけでなく、対象の存在すらもなかった事にする消滅の魔法。

一応、僕だけは覚えているけど。

サナ達は、ジャンの事を完全に忘れてしまっただろう。

これで、サナがジャンを思い出し悲しむ事はなくなった。

多分だけど……


ちなみに、ジャンの魂が消されるのを見て、自分も消されると認識したのか、ポテリコはこれ以上苦しまない事に少し安堵している。

どうやら、魂の記憶までは消せない?

いや、単に目の前で知らない誰かの魂が消えた、程度の認識だろう。

そして、ポテリコはさぁ殺せ、みたいな事を言っているのだが……

そんな事するわけないじゃん!


「ソウルペイン」


僕は、ポテリコの魂を少しずつ魔法で傷つけていく。

ちなみに、魂は傷つけられると回復しないし、この魔法は、それが永続する効果がある。

つまり、ポテリコの魂は、死んでもなお痛み続け、苦しみにのたうち回る。

まぁ、これならば、後100年位は苦しめば反省もするだろう。

流石に100年後は僕もサナも生きてないしね。

僕はもっと早いかもしれないし……


それよりも、サナをどうしようかな。

そんな事を考えると、誰かがこちらに来た。

この気配は……

ヨグソトースJr.か。


ヨグソトースJr.は、僕達の様子を見て驚き、剣を抜いて構える。


「おい!

シアン、だったな?

お前、何をした!?」


恐怖に震える手で剣をこちらに向け、ヨグソトースJr.は僕に訪ねる。


「何って……

サナを汚した罰を与えただけだよ?

それよりもさ、お兄さんもそれに関わっているのかな?」


「い、いや。

急にポテ達がダンジョンに入って……

まぁいつものイタズラだとは思っていたが……

俺は……

知りませんでした。

本当に」


うん、多分本当だろう。

なぜなら、嘘をついたら苦しむ様に、洗脳魔法をかけたからね。

それならば丁度良い。

サナの事はコイツに頼もうかな。


「それでも、コイツらは、お兄さんの仲間だよね?

ならさ、お兄さんにも責任を取ってもらわないとだよね?」


「頼む!

本当に俺は何も知らないんだ!

命だけは、助けてくれ……」


剣を落とし、ヨグソトースJr.は土下座して、僕に懇願する。


「それならさ、お兄さんは外に出れるんだよね?

なら、サナを連れて、遠くに逃げてくれるかな。

ちなみに、裏切ってサナを見捨てて逃げれば、お兄さんが死ぬ呪いの魔法をかけておくね。

これで、お兄さんはサナから離れたら死ぬ。

それじゃ、サナを頼んだよ」


呪いとかは、嘘だけどね。

それでも、あの恐怖に怯えた目なら間違いなく信じているだろう。

そして、ヨグソトースJr.はサナを抱えて急いで出て行った。

それを見届けた後、僕はこの場を土魔法で壁を作って、ポテ達を閉じ込めるのだった。



俺がサナと逃げてから、あれからもう10年が過ぎた。

フォーマルハウトの街からかなり遠く、馬車や船を乗り継ぎ、国境も幾度か越え、俺達は小さな山村でひっそりと暮らしている。

幸いに、逃げ出す時に金と魔石を大量に持ち出したから、資金には困っていない。

それでも、俺達は小さな畑を耕しながら、目立たぬように、細々と日々を暮らしている。

あれから、色々とあったが、サナはなんとか元気を取り戻し、俺を知らない誰かと勘違いしながら、一緒に旅をした。

そして途中、サナは子供を産んだ。

……ポテチの子を。

もちろん、サナはあの時の事を覚えていないが、何故か名付けの時にはチポテと名付けた。

流石に俺もその名前はマズイと思い止めたが、サナは頑として譲らなかった。

思えば、あれが最初で最後の喧嘩だったかもしれない。

チポテは元気に育っている。

最近では村のガキ大将になりつつあるんだが、俺を見るあの目、ポテチに似たあの目が、俺を責めている様に感じ、ポテチを見るたびに俺は苛立ちを覚えてしまう。

それでも……

俺はこれから先もサナを守り生きていく。

最初は呪いの怖さもあったが、最近では本当にサナを愛してしまっている俺がいる。

だから、この誓いは絶対に守らなければならない。


そういえば最近、フォーマルハウトの近くで新しい国が興ったと言う噂を聞いた。

きっとシアンさんが関わっている。

親父達は無事だろうか……

いや、あのシアンさんに関わった時点で、無事である可能性は極めて低い。

確かに親父は強かった。

それこそ盗賊5人位なら1人で相手ができるほどに。

だけど、シアンさんは別格、それこそ伝説に連なる人物、勇者、英雄、覇王や魔王に匹敵するレベルじゃないかと思う。

だから、親父くらいでは……

しかも、俺はあそこから逃げ、身を隠して生きてるんだし、関係ないと思うしかない……

ただ今は、サナの事だけを守りながら……



第3章ダンジョン編



















































いや、勝手に終わられても困るし?

前にも同じようなネタをやった?

そうだったかな……

遅めのエイプリルフールって事でって、なんの事か全く意味がわからないし?

そもそも、誰がそんな事を言っているのか……




まぁ、それはさておき、ヨグソトースJr.が去った後で、僕は今後について考える。

当初の予定では、このダンジョンの奥に行く事、アニマを嵌めて先に進む事だったのだが、ジャン達に会って、目的は変わってしまった。

そう、皆を一人前の冒険者に育てて、一緒に攻略する事が目的になってしまった。

その目的自体は、別に間違いじゃない……

そう思いたい。

というか、途中の方法に正解はあるかもしれないが、目的に正解も不正解もないのかもしれない。

あくまで、主観的なものだし、まぁ無理な目標を立てるのは不正解って意見もあるのだけど。

ただ、今回の目標はそれ程無理がある訳でも無いはず。

だか、やり方がマズかったのだ。

もっと僕が上手くやれば……

ジャンは死なず、サナは無事だったかもしれない。

いや、正直言って、何をどうやってもダメだった気もしなくはないけど、反省は必要だと思う。

なので、何がいけなかったか考えてみる。

最初から僕が全力を出せば……

力の差に絶望して、ジャンは早々にダンジョン攻略を諦めただろう。

そこそこの力なら?

ベルゼさんみたいに距離を置かれるか、依存されていた可能性が高い。

そして、いずれにしても、僕がいないところで失敗する。

やはり、力は見せなくて正解だった、そう思いたい。

なら、せめてジャンに力のある魔剣を与えていたら?

いや、ジャンの属性に合った土属性の魔剣は、僕でも重くて持てない程デカイ。

しかも、大量の魔力を消費し、敵味方関係なく周りを破壊する魔法しか使えないし。

まぁ普通の斬れ味の良い剣をあげても良かったけど、それならジャンは僕の渡した剣なんか使わなかっただろう。

色々考えても、どうやったら育つのか、わからない。

僕は自分で強さを求めて努力したし、ジャルやアナはちょっと手助けするだけで良かった。

師父や師母のやり方は……

僕も奇跡的に生き延びたけど、あれは普通の人には適用できない。

まぁ、僕だってそんなに特殊ってわけじゃないけどね。

それに、こんな所で悩んでいても仕方ないか……


とりあえず、これからの事を考えよう。

とにかく、僕以外のメンバーを鍛え、一人前の冒険者に育てる。

ジャンの意思を継いで。

それだけが、僕が存在を消してしまったジャンへの贖罪だから……

それに、クロロさんやベルゼさんも放っては置けないしね。

という事で、1度クロロさんの所に戻る。


2人は第8階層で、角あり角なし角ゴブリンもどきと戦っていた。

どうやら囲まれてしまったらしい?

たまにこの階層は、仲間を呼ばれ囲まれる事があるんだけど……

今回は8匹に囲まれてしまったらしい。

負けはしないだろうが、クロロさんと、ベルゼさんではちょっと不利かもしれないな……


「クロロさーん、大丈夫?」


僕が声をかけると、角あり角なし角ゴブリンもどきが2匹、焦って僕に向かってきた。

まぁ、鈍いし、弱いし、焦って転回したから態勢も整ってないけどね。

そんな奴は、素手で充分と、殴り殺す。


「ごめーん、なんかこっちに来たから殺したけど良かったかな?」


「いえ、僕は大丈夫です。

ちょっと敵が多くて苦労していましたし。

ありがとうございます!」


そうクロロさんが返答し、次いでベルゼさんも返答する。


「俺も大丈夫です。

シアンさんありがとうございます。

いやむしろ、情け無い所を見せてすみません」


一応、僕が来た隙に2人とも1匹ずつは仕留めたので残りは4匹。

僕は略ゴブリンもどきの合間を縫って、2人の所に行く。


「クロロさん、ちょっとそのアイスブランドを貸してくれる?

この剣ならね、こうした方が良いから」


そう言って、クロロさんのアイスブランドを借り、略ゴブリンもどきに斬りかかる。


「凍てつけ!」


僕はアイスブランドを振りながら、冷気の魔法を発動する。

1撃目はワザと空振りだが、略ゴブリンもどきは裸だし、冷気が来れば動きは鈍る。

なので、2撃目で2匹を一刀両断する。


「こんな感じ?

無理に当てなくても、2撃目でまとめて殺せばいいんだよ。

それに、冷気も効率良く狙えばかなり使えるからね。

次はベルゼさんの死狂裂を貸してくれる?

この刀は、ちょっと斬ればいいんだから、あまり距離を置かない方が良いんだよ」


そう言って、僕は刀を構えずに略ゴブリンもどきに近づく。

かなりの至近距離で、略ゴブリンもどき達は鋭い爪で僕に襲いかかる。

しかし、僕はその腕を狙い半歩下がって刀で防御する。

そして、略ゴブリンもどき2匹の手は、勝手に刀でかすり傷をつけられる。

それだけで、略ゴブリンもどきは苦しみだし、地面を転がり回る。


「こんな感じだよ?

単に防御するだけでも充分なんだよ。

あと一歩踏み込めれば、ベルゼさんはもっと強くなれるはずだから」


「いやいや、シアンさんほど俺は強くないし。

無理は言わないで下さいよ。

まぁ前よりは恐怖はありませんが、それでもそこまで至近距離には行けませんよ普通。

この辺の敵の一撃は結構強いですから、当たったら終わりですし」


「僕が強いって……

本来は体格も筋力も、歳上のベルゼさんとクロロさんの方が上なんだけど?

身体強化無しの、単純な力比べなら、僕の方が負けるんだよ。

まぁ、僕もそれなりには鍛えてはいるから、意外といい勝負にはなると思うけどさ。

違うのは経験と技、それに感知能力くらいだよ」


「いやいや、シアンさんは感知能力が普通って言いますけど、シアンさんの感知能力は普通じゃないですからね?

普通は、なんとなく魔石の気配を感じるだけで、数とか強さまではわかりませんから。

それに、索敵範囲も相当広いし、魔力の流れも読めるんですよね。

そんな凄い感知能力は、聞いたこともないですよ。

あと、経験と技が僕達とは段違いですし、ベルゼと僕はまだまだですから……

それがいいとは思いませんけど、先は長いですね。


それはともかく、上の様子はどうでした?

サナさんは、元気していましたか?」


そう、その話をしに来たのだ。

だが、どう話して良いのかわからない……

暫く沈黙しながら、死にかけの略ゴブリンもどきを踏み付け、息の根を止める。

グギャグギャ五月蝿くても嫌だしね。


「まさか……

サナさんの身に何かあったんですか?

ねぇ、シアンさん!

上で何があったんですか、教えて下さい!」


クロロさんが、僕に詰め寄る。

クロロさんとサナの間に何かあったのだろうか?

そうすると、余計話しにくいな……

でも、言うしかないな。


「それが……

サナは、サナはポテ三兄弟に汚され、死んだ」


その言葉に、皆暫く沈黙を続ける。

いや、実際は死んでないけど、ヨグソトースJr.の事もあるので、僕は死んだ事にしておいた。


「何故……

シアンさんがついていながら、なんでサナさんが!

いえ、すみません。

僕だって自分で守りきれるほど強くなっていないのに、偉そうな事は言えませんが……

それでも、シアンさんなら何とかできたんじゃないですか?」


「どうしようもなかった」


ジャンの事もあったし、まぁジャンの事は説明できないけど。

そんな悔しさを込め、やや怒り気味で答えたら、力が入ってしまったのか、クロロさんとベルゼさんが硬直し、苦しみ出した。

いかんいかん、あまりの怒りに制御を忘れてしまった。


「解除!

えっと、大丈夫?

あのさ、色々あって、サナは助けられなかった。

ボロンに嵌められて、第3階層のイヌゴブリンの無限部屋に入れられてしまってさ、まぁ実際は無限じゃなくて500匹位しか出なかったけどね。

そして、そこから出たら、第2階層で……



詳しくは話したくないんだけど、サナが汚され、殺された。


だから、クロロさんには悪いんだけど、ポテ三兄弟とヨグソトースJr.は、僕が殺した。


ごめん、確かに僕なら止めれたかもしれないが、仕方なかった。

あの時、ボロンを殺しておけば……

そう思わなくもないんだけど、そんな簡単に殺す決断なんて、できないし。

もし、ちょっと疑っただけの段階で、人が殺せるならそれは問題だと思うし……」


「いや、そんな状況で助けれるはずがないですよ。

クロロも本当はわかっているんだろ?

もし、俺達2人が無限部屋に入ったら、絶対に死ぬ。

シアンさんじゃなきゃ、無理な状況で、最善を尽くして無理だった。

それは、仕方ないと思うぞ?」


「ベルゼ……

確かに、すみませんでしたシアンさん。

それと、確かにヨグソトースJr.は僕の手で殺してやりたかったですが……

シアンさんが殺したなら、文句はありません。

代わりに倒してくれて、ありがとうございます」


ベルゼさんのフォローで、クロロさんも納得してくれて良かった。

そして、僕はこれからの事について、クロロさん達に相談を始めるのだった。


少年は若者達を強くするための、修行を始める。

それが、若者達の想像を超えるものであっても……


第107話 死練

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