第105話 逆恨みの末期
僕は、ジャンの最後の言葉に、一瞬唖然としてしまった。
しかし、その一瞬はイヌゴブリン達が僕に襲いかかるには……
十分な時間だ!
イヌゴブリン達は、一斉に僕に向かってきて襲いかかり、噛み付こうとする。
いや、遅いかかる、か?
狭い部屋で逃げ場はない。
それでも、なんかムカムカしている僕を、この程度の雑魚に止めれる訳がないだろ?
まず、1匹掴んで、別のイヌゴブリンにぶつける。
思い切り振ったら、3匹くらいがいい感じに吹き飛んだ。
マヌケめ、過密すぎるんだよ。
その勢いで、後ろの3匹もコケる。
残り3匹は、隙間を縫って肉薄してくるが、3匹くらいは敵じゃない。
1匹ずつ、確実に顔面をぶん殴る。
別に、そんな事をする必要は全くないんだけど、ほとんど腹いせみたいな?
あまりに強く殴り過ぎたため、脳漿が飛び散り、ちょっと臭い。
3匹殴り終えると、コケただけの3匹が起き上がり、鋭いその爪を僕に突き立ててくる。
僕は、右脚で手前のイヌゴブリンをヒザ蹴り、右脚を下ろして足刀で左のイヌゴブリンを蹴りつつ、右肘で肘打ちして、ほぼ同時に倒す。
3匹とも、首が捻れ死亡。
最初に掴んだイヌゴブリンも、死んでいるので、後は3匹か。
その3匹も吹き飛んだ衝撃で、まだ倒れたまま。
なので、1匹ずつ足で頭を踏み潰して殺す。
でもまだ……
殺したらない。
そう思ってるいると、イヌゴブリンの死骸はすぐにダンジョンに吸い取られ、魔石だけが残る。
いつもなら、そんなに早くないのに……
しかも、魔石だけ残った事なんて一度もない。
オカシイ、可笑しい?
まぁ、別に解体しなくていいから、便利なんだけどね。
それより何より、死骸が吸い込まれると、すぐにイヌゴブリンがリポップした。
なるほど、だから、魔石が切れるまでは際限なくイヌゴブリンが出る、そんな仕組みか?
コレは……
いいなぁ。
雑魚でも、出続ければそれなりに脅威になる。
まぁ100匹以上倒せば、きっと気も晴れるだろうし。
とにかく、魔石だけ回収して、即座にイヌゴブリン共を駆逐していく、殴るか蹴りで。
そんなこんなで、今が100匹目、流石にクロロさんやベルゼさんならこの辺が限界かも?
僕もメンドくさくなってきたし、そろそろ血抜き君を使い始める。
斬って、斬って、斬って、斬る、そしてkill
ザクリザクリと刺しては、斬る。
そして、200匹、もうかなりメンドくさくなってきた。
ちょっと弱過ぎて、退屈な作業になってきたから。
それでも、相手は待ってはくれないから、とにかく斬る。
身体強化の魔法も入れて、スピードアップしながら斬る。
10匹まとめて斬ると、効率は良いらしい。
魔石を拾う時間も取れるし。
それからすぐに、なんだかんだで400匹。
もう、完全に作業と化している。
正直言って飽きてきた。
まぁ、でもこの部屋の魔石のストックも切れてきたみたいで、イヌゴブリンはあと100匹くらいだろう。
そう思っていたら、10匹分のイヌゴブリンの肉体がぐちゃぐちゃに掛け合わさり、中に100匹分の魔石が入った変な生物、まぁ魔物なんて元から変な生物だけど、そんな感じなのが出てきた。
と言っても、所詮はイヌゴブリンの肉体、そんなには強くない。
それに、チグハグ過ぎて、動きもおかしい。
うーん、なんだろう、400匹も倒される事を想定していなくて、変な作用が働いた、そんな感じ?
それでも、流石は魔石100個分らしい、斬りつけても、すぐに再生してしまう。
これで強ければやり甲斐はあるんだが……
動きが鈍く、つまらない。
死ぬまで斬りつけるだけの相手なら……
僕は、イヌゴブリンの集合体の頭をペスで殴りつけ、気絶させる。
流石に気絶すれば、動けなくなるらしい。
そして、血抜き君に充分に血を吸わせつつ、集合体の再生よりも早く斬り裂いていき、魔石の塊を一気に引き抜く。
これを2、3回繰り返すと、残りの魔石は5個くらいになった。
10匹分のイヌゴブリンに5個の魔石。
やはり、身体が維持できないらしく、腕や脚から崩壊していった。
残ったのは、5匹分のイヌゴブリンの肉体、と言っても腕と腰から下が崩壊して、もうないから、不完全な出来損ないだけど。
僕は、動けないソイツを蹴飛ばして遊び、最終的には全魔力を吸い取って干からびさせる。
こうして、僕が集合体を倒すと、後ろの扉のロックが外れた音がした。
ちなみに、宝箱の中は……
鋼鉄の鎌だった。
しかも、魔力は一切こもっていない、普通のよく切れる鎌だ。
疲れた……
なんだかとっても疲れた。
もうなんか、どうでもいい。
ジャンの事も、ボロンさんの事も、サナの事も……
それはどうでも良くない!
いかんいかん、疲れで大分思考能力が落ちている。
サナの事が一番気になるのだから、それだけは忘れてはいけない。
とりあえず、回復魔法で疲れを癒し、冷静になって考える。
このままでは、ジャンはサナにも牙を剥くかもしれない。
そうなったら、取り返しがつかない事になる。
やはり、ジャンを追わないと。
僕は、急いで上層の安全地帯に向かうと、そこにはジャンとサナがいなかった。
とりあえず、手前にいたニトロさんに事情を聴く。
「えっ?
ジャンはさっき帰ってきて、サナさんを連れて何処かに行ったよ。
その前にポテ三兄弟も居たから、危ないって注意はしたんだけどさ」
ニトロさんのその言葉に、僕は嫌な予感がして蒼ざめる。
第1階層は誰もいない。
第2階層には、人の気配がする。
僕は急いでそこに駆けつけると……
あ、あああ、ああ、あ……
そこにはジャンが死んでいた。
死骸の傍らでは、ジャンの魂が言い訳を叫んでいる、見苦しく。
そして、その後ろでは……
サナが……
僕だってもうそこまで子供じゃない。
夜の森で動物達がしているところや、盗賊達が攫った女性にしているところを見た事だってある。
それを、サナが、無理矢理、ポテに……
あまりの絶望に膝をついてしまう。
身体に力が入らない。
何故だ、何故、何故、何故……
そんな僕の様子を見て、鉤爪の男、確かポテリコだったかは、僕に語りかける。
「なんだ、あのガキか。
人の死体を見るのは初めてか?
ヨグの兄貴は気をつけろって言っていたが、大した事ないな。
まぁ、見られたからには、お前も死んでもらうぜ?
恨むなら、こんなダンジョンにホイホイついてきた、己の愚かさを恨むんだな。
じゃあな、あばよ!」
そう言って、ポテリコは僕に鉤爪を振り下ろす。
そして、僕は……
無意識に、ポテリコの心臓に血抜き君を突き立て、一瞬で干からびさせて殺してしまう。
えっ?
僕はなんで……
なんで楽に殺してしまったのだろうか?
咄嗟とは言え、絶望で力が抜けていたとは言え、こんな奴を楽にしてしまった。
なんだか、僕はそんな自分に怒りを覚え、許せなくなった。
だから、次は、ちゃんとやろうと気合いを入れ直す。
まずは、こちらを気にせずに順番待ちをしているポテロンから。
「なぁ、ポテチ。
早くオイラにもヤらせてくれよ」
「うるさいな、まだ俺が楽しんでいるだろ。
それより、さっきガキの声がしなかったか?」
「さあな、そんなのポテリコが殺したんじゃないか。
それより、オイラもう我慢できねーよ、早くしろ」
2人は、僕に気づかずに呑気にそんな会話をしている。
だから、僕はポテロンにこっそりと近づき、背中の脊髄の辺りに、麻痺の魔法をピンポイントで打ち込む。
これで、全身が動かなくなるはず。
そして、ポテロンは膝から崩れ落ち、パタリと倒れる。
次は、サナを汚しているポテチ。
ただ、一応行為としては知っているが、やった事はないので、無理矢理剥がして良いのかわからない。
だから、僕はポテチの行為が終わった瞬間を狙い、やはり魔法で脊髄を麻痺させる。
ポテチが倒れると、僕はサナに駆け寄り、汚れた全身を濡れた布で綺麗に拭き取り、綺麗な毛布に包んだ。
それでも、サナはショックが大きかったのか、虚ろな目をして、無言だった。
まるで、僕が来るのが遅いと責めているかのように……
僕は催眠魔法でサナを眠らせ、全身に回復魔法をかけ、更に洗脳魔法で嫌な事を忘れさせた。
これで、何もかも忘れて幸せに生きてくれれば……
それは別として、サナを汚したこの3人は許せない。
「さあ、お仕置きの時間だよ?」
僕は無表情でそう言って、どうしようか考える。
最初はポテロンからかな。
とりあえず、ポテロンの鉈を奪い、手足の指の先っぽだけを少し切り落とす。
更に、顔の皮膚を剥がしてみる。
そして、麻痺の魔法を解除すると、ポテロンは血を流しながら、地面を転がる。
最初は絶叫しながら、次第に力が抜けていき、最終的に動かなくなった。
すかさず、僕は麻痺の魔法をかけ、体力だけは回復させてから、目を抉り、耳を削いで、指先を更に少しずつ切り落とす。
それから再び、暫くはポテロンが絶叫しながら転げ回る様を、淡々と眺める。
こんな感じで、10回くらい繰り返すと、流石に失血し過ぎて回復しなくなる。
このままだと、ポテロンは……
死ぬ。
それはつまらないなぁ……
という事で、僕はポテロンを土魔法で壁に埋め、暗黒魔法をイメージして魔法をかける。
ターンアンデット、対象をゾンビやスケルトンにする魔法で、師父からは禁忌と言われた魔法だ。
まぁ、師父はもういないし、このダンジョン内だけなら……
そして、暗黒魔法なんて初めて試したが、結果は上手くいった様だ。
ポテロンは地中に半分埋まって出れないまま、ゾンビと化している。
ちゃんと魂も固定されているから、良い感じだ。
「だ、ダズゲでぐれ、グルジイ。
サムイ、イダイ……
もう、コロジテグレ……」
「ダメだよ、サナの苦しみに比べたら大した事ないんだから。
お前には未来永劫、ここで贖罪の苦しみを味わってもらわないとね」
「ゾンな……
オイラ、何もシデナイのに……」
ちょっとうるさいので、喉の部分だけ聖魔法で浄化し、喋れなくする。
すると、苦痛の表情を浮かべたので、別の場所も適当に浄化しておいた。
これできっと、ポテロンも自分の犯した罪を知り、反省するだろう。
そして、次はポテチだ。
コイツは特別だ、サナにあんな事をしたのだから……
反省?
そんなんで済むわけがない。
ポテロンよりも、もっと苦しんでもらわないと、釣り合いが取れない。
まずは、僕はポテチの指先だけに、ピンポイントで身体強化魔法をかける。
すると、ポテチの指先は一瞬膨らみ、肉塊を飛び散らせて弾け飛ぶ。
ふふっ、やっぱり僕とポテチの相性は悪いみたいだ。
アナとジャルみたいに、身体強化はできない様だ。
次はそうだな……
僕は、ポテチの心臓付近にイヌゴブリンの魔石を埋め込んでみる。
人間に魔石を埋め込んでみると、魔物になるのか?
前からちょっと興味があったんだよね。
そして、魔石を埋め込まれたポテチは、暫くの間、脊髄が麻痺しているにもかかわらず、釣り上げられた魚のように、ビチビチと跳ねていた。
その後、暫くすると動かなくなり、全身が緑色に変色していった。
そう、まるでゴブリンの様に……
更に、暫くすると、ポテチゴブリンは立ち上がる。
麻痺の魔法はまだ効いているのに。
「グワッ!
すごいぞ、力が漲る!
ハハ、グハハ。
俺様は無敵の力を手に入れたぞ!
ウヒャヒャヒャヒャ、これならば……
血が見たい、肉を貪りたい、そこの雌から?
いや、ガキからの方がいいか。
フン、貴様など一捻りで殺してやるぜ!」
そう言って、ポテチゴブリンは、装備している鎌を構え、僕に近づいてくる。
強さとしては……
ゴブリンリーダーくらいか?
本人は魔石の力で強くなった気になっているが、僕からみたらかなり弱い。
でもまぁ、魔物化したならちょうどいい。
僕の罪悪感もちょっと減るしね。
まずは鎌の攻撃を軽く避け、身を躱す。
そして、全身に数回痛打を喰らわせる。
「グボッ、何だ?
俺様はかなり強くなったはずなのに!
何故だ?!
こんなガキに……」
「それは、所詮は君がその程度だった、そういう事なんだよ。
本来なら、サナが本気なら君達は死んでいた。
あの時、僅かにヨグソトースJr.に撃つのを躊躇わなければ……
とっくに君達は死んでいた。
だけど、サナは弓を壊され、そして君達の卑怯な奸計に嵌められ、傷をつけられた。
サナが、どんなに深く傷ついたか、貴様に想像できるか?
だから、僕は君を許さない。
苦しんで、苦しんで、苦しんで、永久に苦しんでほしい。
そう思ったから、君を魔物にしてみたんだよ?
ただ、イヌゴブリン程度のクズ魔石だからね、
さて、お遊びはこれまでだ」
そう言って、僕は魔鋼糸と言う特殊な糸で、ポテチをぐるぐる巻きにする。
まるで焼豚のように……
ポテチの焼豚って、名前だけならちょっと美味しそうだが、見た目はただの魔物だし、食べる気にはならない。
そして更に……
「ヤメろ!
お願いだ!
それだけは、グッ、ガー!
痛い、痛い……」
と、宣うポテチに気にせず、魔笹の竹で作った竹竿を、ポテチの尻の穴から刺していき、腸は突き破り、胃を通し、食道から口まで貫通させていく。
所謂、串刺刑ってやつだ。
まぁ魚なら良くやるけど、実は魔物でも良くやられる事がある。
こうすると、魔物は直ぐに死ねず、動く事も出来ずに泣き叫ぶ姿を見せる事で、魔物避けになるからだ。
それに、魔笹の竹竿を使ったから、魔力が少しずつ伝達され、半永久的にポテチは死なないだろう。
死ぬ事もできずに、永久に身体の内部から全身に痛みを感じ、寝る事も、気絶する事もできない。
まぁ、それでも生温いかもしれないが……
さて、その次は……
少年は、決意する。
今までの反省を活かして。
だが、それは間違った方向ではないのだろうか……
次回 第106話 決意




