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第1話 初めてのゴブリン

これはとある辺境の小さな村、そこで生まれ育った小さな少年の、それなりにありふれた、多分普通の物語である。


僕の名前はブルー

髪の色は皆んなと同じ黒髪で、目も黒目。

肌はやや白めの黄褐色。

青いところなんて何にも無いが、産まれた時に蒙古斑が沢山あって青かったから、父さんがブルーとつけたらしい。

ちなみに、蒙古と言うのは伝説の東方民族で、キバ民族らしいのだが‥

牙が長い民族の特徴とか言われてもあんまり嬉しくはない。

まぁ今はいないらしいから、いいんだけど。


僕は、元冒険者で今は普通の村人の父さんと、元魔道師の母さんの三男として産まれ、今は8歳、一番上のアルフ兄さん18歳は跡継ぎで畑仕事に勤しんでいるし、二番目のミル兄さん15歳は魔法の素質があるため隣町の魔法学校に行っている。


ちなみに、隣町といっても山を二つ越える必要があり、近くはないので住み込みで働きながら通っているらしい。

会えないから詳しくはわからないが、時々来る手紙には楽しく暮らしていると書いてあるらしい。

らしいと言うのも、ミル兄さんが10歳の時に魔法の素質が見つかり、隣町に行く事になり、3歳の僕はあまりミル兄さんを覚えていないから、というのと文字が読めないからの二つの意味があるんだけど‥


それと、可愛い妹のラーナ4歳がいて父母と四人兄弟がウチの家族構成だ。

生活は、自給自足だが、父さんが川の近くに大きめに開墾したため、そんなには困っていない。

家族が十分に食べていけるだけの米や野菜はあるし、時々父さんや兄さんとウサギやハトを狩って来るので偶には肉も食べられる。

家族の仲は良く、僕はほとんど苦労なく育ったと言ってもいいだろう。

農作業の手伝いは‥

まぁ時々大変だけど。


ちなみに、魔法の素質を持つのはミル兄さんとラーナだけでアルフ兄さんと僕は全く素質がないらしい。

魔法‥

母さん曰く、万能ではないらしいけど、憧れるよな〜

まぁでも、魔法は使えなくても腕利きの冒険者とか、かっての魔大戦を潜り抜けた英雄とかの話には憧れる。

子供心に将来が輝いて見えるのは‥

仕方ないことなんだろう。


そんな日常のある日のこと。

と言うか、永遠にこの日常が続くことを疑っていなかったある日のこと。


それは4月の日差しが麗らかなある日、農作業の手伝いをしていると、ウサギが畑の端に出てきた。

父さんや兄さんは気付いていない‥

僕は、ウサギをそっと追いかける。


ちなみに、この辺りにいるウサギは土ウサギと言って、土や雪の中に隠れるのは上手だが、時々虫を食べに地面に顔を出す。

なので、足はあんまり速くなく、子供の僕でも充分に追いかける事ができる。

まぁあとは、繁殖力が凄いらしく、数が多いため結構外にいるのを見かける事もあるんだけど……


と、いう事でいつもの様に、そっと近づいて鍬を叩きつける。

ダメだ、いつもなら父さんか兄さんがタイミングを教えてくれるが、僕1人では逃げられてしまった。


慌てて追っ掛けると、ウサギは逃げ、森に入って行く。

浅い所までなら大丈夫だろう。

なんとか追い詰め、無事に捕まえる事が出来た。

初めて自分一人で狩る事ができた、僕は凄く嬉しかった。

だから‥

思わず「ウサギ、獲ったぞ〜!」と叫んでしまった。


すると、後ろでガサッという音がした。

僕は恐る恐る振り向くと……

人影⁈

いや、大きさは僕と同じの子供くらい。

緑の肌で、痩せ細り、服は着ていない。


ゴブリンだ!!

こんな人里では珍しい。

普通はもっと離れた場所で集団で暮らしているはず……

ただ、時たまはぐれが迷い込んで来ると聞いた事がある。

ゴブリンは怪我や病気をすると、集落から追い出され、彷徨うようになるらしい‥

実際、僕が出会ったゴブリンも、激痩せで骨と皮だけみたいになっており、目の病気か瞼をずっと閉じている。

そして‥右手には小さなナイフを握っている!

グリュグリュとつぶやきながら、手探りで此方に向かってくるゴブリン。

とにかく、とにかく怖かった。

初めて会うモンスター、死の匂いに恐怖ですくみあがる。


ただ、相手も目が見えないせいか手探りで歩いており、動きも鈍い。

とりあえず、足下の石を投げてぶつける!

ゴブリンは「グェ!」っと叫んでフラついている。

更に石を投げ続ける。

そして‥

5、6発投げた所で頭に当たり、ゴブリンは倒れる。


念のため、恐る恐る近づき、鍬で突っついてみるが、時折痙攣しているものの起き上がる様子はない。

僕は意を決して、鍬をゴブリンの首に振り下ろす!

ザシュ!

と言う音がして、ゴブリンの首が切れ、ゴブリンが事切れる。

殺した‥

これまでも、ウサギやハトを狩って殺した事は何度でもある。

殺して命を頂く大切さを知るため、そう言われて気持ち悪いなと最初は思ったが、慣れれば平気になっていた。

むしろ最近では殺すことに抵抗も、感慨も無くなって、肉を食べるための普通の行為、そうなっていた。


だが、今回は違う。

相手が元々死にかけではあったが、下手すれば怪我や……

死んでいた可能性もある。

実際、普通のゴブリンなら油断すると大人でも殺されることがあるらしいし‥

つまり、8歳で戦う相手ではない。


そんな相手を倒した事が……

非常に快感だった。

それに、人型の生き物を殺す。

人殺しみたいな感覚‥

いや、魔族は人類の敵だし、罪悪感はない。

むしろ、殺した事で正しいことをした。

つまり、正義なんだと自分を肯定する。

ただ、最後のグチャっとした感触が、忘れられない。

ある意味悪い意味で。

もっと倒したい、そういう思いが止まらない。


暫くは呼吸が激しく、動けなかった。

しかし、興奮が冷めてくると冷静になり、事後処理について考えた。

というか何故か、ゴブリンの死骸の心臓辺りが気になる。

とりあえず、ゴブリンの右手にあるナイフを奪い、心臓辺りに突き刺す。

グリグリとねじり、中身を取り出す。

石だ!

透明で綺麗な石が入っていた。

これは多分魔石だ。

魔道具に使っているのを見た事がある。

道具屋に持って行けば高く売れると思う。

血でヌラヌラする魔石を、僕はポケットにしまい込んだ。


後は‥

ガリガリに痩せたゴブリンの死骸は、放置すれば誰かに見つかり、騒ぎになるだろう。

だから、僕は鍬で穴を掘り、死骸を入れ、埋めた。


そして、何事も無かったようにウサギを持ち帰り、父さんの所に戻った。

ポケットに魔石とナイフを隠したままに‥

少年はあの感触を求め、ハンターを目指す。

そして、修行が始まる‥


第2話 ハンターを目指して

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