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タイムループは終わらせない  作者: 菱川あいず
最終章ー幸せ運ぶタイムループ
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4年後の7月26日(6)

 天界事情についての話がようやくタイムループの話に繋がった。

 

 「能力はタイムループだけじゃないんだ。私は、神様と同等の力を持っていた。人の心も行動も自由に操れた。やろうと思えば、戦争をけしかけることだって、一国の長に核兵器のボタンを押させることだってできたんだよ」

 「それはすごいな」

 力なく相槌は打ったものの、裕介の興味があるのは、戦争や世界壊滅の話ではなく、まさに4年前の裕介に降りかかった不思議な出来事だけである。

 

 裕介の気持ちを察したのか、生まれたばかりの映月は話を元に戻した。


 「タイムループを起こした7月26日が、パパとママが結ばれるラストチャンスだった。あの日、パパがママにアプローチしてなかったら別の男にママを取られてたからね」

 「はあ?」

 「合コンにパパとライオン男ともう一人いたでしょ?」

 「たしかにいたが、どういう奴だったかは覚えてない」

 「思い出そうとしなくてもいいよ。何の特徴もない男だからどうせ思い出せないだろうし。でも、その男と結ばれるのがママのあるべき現実だった。許せないよね。私もパパと同じ気持ちだよ」


 生まれる前の映月も、瑞季を裕介以外の男のものにしたくないという点で裕介と利害関係が共通している。このあるべき現実とやらを知ったとき、生まれる前の映月も今の裕介同様にはらわたが煮え繰り返る思いだったのだろう。そう考えると少しだけ怒りがしずまった。


 「だから、7月26日の合コンにパパを差し込むのは至上命題だった。どうしてもあの合コンにパパを参加させなくちゃいけなかった。そのために私はタイムループを使った。パパがあの合コンに行く可能性がなくなった時点で時間が巻き戻るように設定して」

 「じゃあ、チャラ男を助けるために時間を巻き戻したわけじゃないのか…」

 「当たり前じゃん。あんな暴力警察官、むしろ助けちゃダメでしょ。人間のクズでしょ」

 

 ルックスが2歳の子に対して言うのは不謹慎かもしれないが、コイツとは美味い酒が飲めそうである。


 「あのライオン男はあくまでも手段。見た目にはそぐわないけど、パパとママの恋のキューピット役として選んだわけ。パパをあの合コンに連れていくために、合コンに行く道半ばで果てた幻の参加者に協力してもらったということ。パパと合コンを結び付けられるのがあのチャラ男くらいしかいなかったんだよね。チャラ男が死ぬと同時に時間が巻き戻ったのは、その瞬間にパパを合コンに連れて行ってもらえる可能性が消滅したから。それだけ。あのクズを地獄から舞い戻らせちゃったのは残念な弊害へいがいだね」

 

 

 チャラ男を救うことがタイムループを解除する条件だとずっと思い込んでいた裕介にとっては、簡単に頭に入ってくるような話ではなかった。

 しかし、生まれる前の映月の言う通りだとすれば、チャラ男の死がタイムループの引き金だとするとどうしても説明のつかなかったことに説明がつく。


 裕介が現在の妻である瑞季に痴漢をしてしまったあの日のこと。

 あの日、意図せずではあったが、裕介はチャラ男の命を救ってしまった。しかし、それでも時間は巻き戻された。チャラ男を救うためのタイムループだとすれば、巻き戻しの原因はチャラ男が取調室から離れたときに暴漢に襲われて殺されたからだ、というウルトラC難度の離れ技的説明を施すしかなかった。

 しかし、裕介を合コンに導くことがタイムループの目的だとすれば、あの日、チャラ男が取調室を離れた途端に巻き戻しが起こったのは、チャラ男が電話で次の予定-合コンに行く予定をキャンセルしたからだということになる。チャラ男の欠席連絡によって同伴者である裕介も合コンに参加しないことが確定した。ゆえに巻き戻しが起こった。これですんなりと説明がつくのである。


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