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タイムループは終わらせない  作者: 菱川あいず
第3章ー牙を剥くタイムループ
35/51

完全犯罪の7月26日(2)

 ターゲットは直感で選んだ。

 顔を見たのもすれ違った一瞬のみ。

 年齢は裕介と同じくらいだろうか。肩の辺りでカールしている髪の毛の色はゴールデンレトリバーの毛並みくらい明るい。分厚いファンデーションで元の質感が完全に隠された顔には眉毛は痕跡程度にしか存在せず、鼻に開けられたピアスのみが自己主張をしている。

 ショッキングピンクのブラウスの袖口は大胆にカットされており、肉付きの乏しい二の腕が丸々露出している。胸はEカップくらいありそうだが、この手の子はパットを使っている可能性が高いのでとりあえず保留。

 合成皮革ごうせいひかくの黒のミニスカートは短く、下着が見えないのが不思議なくらいである。


 裕介は文字通り女の尻を追いかけながら、もしやノーパンなのでは、と期待を膨らませていた。



 この女性をカテゴライズすれば、確実にギャルの部類に入る。過去の裕介だったらこんな女性に惹かれることは断じてなかった。さすがに男尊女卑思想まではなかったものの、少なくともギャルだけは全力で卑下していた。


 そんな裕介を変えたのは、間違いなく莉菜ちゃんだった。

 「普段は地味で、大学では存在消してる」

 というのは莉菜ちゃん談だが、「ロム」に出勤しているときの莉菜ちゃんはかなり派手だった。キャバ嬢全般が派手ではあるが、莉菜ちゃんの派手さその水準をはるかに超えていた。

 付け睫毛まつげの長さは業界水準の1.5倍。ネイルの長さは業界水準の2倍。チークの量は業界水準の3倍。莉菜ちゃんもカテゴライズすれば、直球のギャルである。


 

 畢竟ひっきょうするに、人の好みというものは生まれつき備わっているものではなく、多分に経験に依存する。

 「好きになった人がタイプ」とは、芸能人が好みの異性の好みを訊かれたときの上手なかわし文句だが、意外と核心を突いている。男性の場合、過去に付き合った女性、過去に面倒を見てくれた女性、過去に優しくしてくれた女性の面影を追う。それらの女性の特徴を結ぶことによって好みのタイプは形成されていく。


 裕介が初めて仲良くなった異性は莉菜ちゃんだ。

 好きになった理由は、手を握ってくれたから、という些細すぎるものだったが、結果として莉菜ちゃんが裕介のイデアとなった。女性を見るときには、莉菜ちゃんと顔が似ているか、スタイルが似ているか、雰囲気は似ているかという相対評価を無意識の内に行っていた。

 今回痴漢のターゲットに選ばれた女性も同様の選考基準を経ている。莉菜ちゃんは鼻ピアスをしていないので、この女性の方が輪をかけて派手な気もするが、あまり莉菜ちゃんに似すぎているとそれはそれで良心の呵責かしゃくを生みそうなので良しとしよう。どちらにせよ、記念すべき最初の被害者ではあるものの、それだけの女でしかない。裕介の連続痴漢完全犯罪事件は今日を契機に毎日続く予定なので、えり好みする必要もない。




 人同士がぶつかる、というほどではないが、それなりに満員の電車内で裕介は隣のつり革を握っている女性の顔を初めてまじまじと観察した。

 悪くない。というか、かなり可愛い。グミより固いものは噛んだことはありません、と自白している小さなあごも裕介の好みだ。キャンディーのような甘い香水の匂いがさらに欲情をそそる。正直鼻のピアスはあるよりはない方がいいが、それだけで気持ちがえることはない。


 裕介は不自然に思われないようにゆっくりと女性の背後に回りこんだ。


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