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タイムループは終わらせない  作者: 菱川あいず
第2章ー濫用されるタイムループ
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酒池肉林の7月26日(1)

 裕介の通いつけの駅は浦和競馬場の最寄りから別の駅へと移った。決して誠人と芝生の上で酒盛りをすることに飽きたわけではない。

 さかずきを交わした回数は100回を超えたが、口下手の裕介は未だに誠人の無限の会話の引き出しの半分も開けられていないと思う。たとえば、誠人には6回もの結婚歴と離婚歴があるらしいが、裕介が全容を把握できたのはその内の2回分のに過ぎない。おそらく全てがフィリピーナとの偽装結婚だとは思うが、万が一ということもあるので確認しておきたかった。


 しかし、裕介には抑えがたい別の好奇心が生じていた。

 それは、誠人が教えてくれた「遊び」を経験したい、というものである。

 誠人はウマい飯屋やよく玉が出るパチンコ屋を紹介するたびに、「今度連れてってやるよ」と言ってくれるのだが、もちろん約束はすべからく不履行となっている。タイムループから抜け出さない限り、「今度」は永遠に訪れないからだ。



 裕介が新たに拠点に選んだのは大宮だった。

 この付近では有数の地方都市である。裕介は以下の点を総合的に考慮してこの場所を拠点に選んだ。


 第1点。ランチの美味しいお店がたくさんあること。

 今までの裕介は、市役所の食堂で定食を食べることを除いては、外食をすることがほとんどなかった。食事は単なる栄養摂取の手段であり、楽しむものではなく、できることならば時間を割かないで済むように点滴で済ませたいという過激な思想の持ち主であったからだ。そして、何より巷の飲食点の料理は味が濃くて裕介の舌が拒絶した。

 しかし、誠人が勧めてくれた、山盛りの白飯が進むことだけを狙いとして可及的かきゅうてきに味付けを濃くしたようなB級グルメの店を何軒か巡るうちに、裕介の舌は徐々にチューニングされていった。

 濃い味は麻薬だ。

 某濃厚ラーメンの店が「3度来たらやみつきになるので、とりあえず3度来てください」とうたっていることも虚偽広告ではない。コンビニのおにぎりや弁当に慣れ親しんでいる昨今の若者は無意識のうちに中毒にむしばまれている。


 裕介は大宮に軒を連ねる飲食店を順繰りに回り、ジャンクなものを食い漁っていた。



 第2点。大きなゲームセンターがあること。

 ミイラ取りがミイラになるとはまさにこのことで、堅実にお金を増やすために浦和競馬場に赴いた裕介は、結果としてまんまと射幸性しゃこうせいとりこになっていた。

 とはいえ、競馬はツマラない。一度遊ぶと次回以降は結果が分かってしまうから。競馬をモチーフにしたゲーム機もしかり。

 他方で、裕介が気に入ったのはスロットやコインプレッシャー系のゲーム機である。

 これらは裕介が主体となって関与するものである以上、その日のボタンを押すタイミング、コインを入れる微妙な角度によって結果が全く変わってくる。予定調和で作られたこの世界に影響を与えられるのは裕介だけなのだという事実を再認識する。

 この世界の神は裕介だ。ハハハハハ。愉快極まりない。

 自分のことを神だと思っている痛い人間は大抵がゲーム廃人のニートだ、という俗信は少なくとも裕介には通用するようだ。



 第3点。お気に入りのキャバ嬢がいること。

 総合考慮、とは言ったが実はこの点が全てと言っても過言ではない。

 正直、ランチやゲーセンならば大宮以外の場所にだってある。

 しかし、莉菜りなちゃんは大宮にしかいない。無論、「莉菜ちゃん」という名前の女の子はどこにでもいるだろうが、裕介が熱を上げている莉菜ちゃんは、世界中のどこを探したって、大宮以外にはいない。


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