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第二章 35  小太りの商人

 様々な出来事が積み重なり多忙を極めていたのだが、僕は以前訪れた骨董品店の店主から連絡をもらい、お店まで出向いていた。


 「では、これから行われる業者市に僕も連れて行ってもらえるんですね。」


 「ああ、まぁ見学だけならって事でお許しが出てね。今から出かけるが、大丈夫かね?」


 僕は店主に二つ返事をして、彼のお供として会場となっている市場へと向かった。

 会場は非常に活気に満ちていた、しかも考えていた以上に僕には馴染みと言っていい品々が所狭しとならんでいたのだ。例えばインスタントのコーヒーや、チョコレートの箱などが山積みとなっていた。だが、僕はそんな商品がこの世界の店舗に並んでいるのを見た事がなかった。これついて店主に尋ねると、基本的には外の世界から来ている事は極力隠されているそうで、中身を入替えこの世界の商品として売られているそうだ。

 なんともがっかりな話だったが、コチラに来てからさほど食の味などで苦労しなかったのは、このような商品がいくつも存在していたからかもしない。


 「私は壺のセリへ参加するので、あとは自由に見学しなさい。」


 そう言って骨董品店の店主は足早に去って行った。今日は出物があると張り切っていた彼は少し興奮ぎみだった。僕は一人になったので早速お目当てのモノを探しにく事にした。それは「物」ではなく「者」という事になる。つまり別の世界からどうような人物が品々を持ってきているのか?それを知りたかったのだ。

 何か手掛かりはないかと会場内をキョロキョロと見回っていると、同じくキョロキョロとせわしなく歩く男を目にした。同じキョロキョロ同士、目が合うとなぜかお互いに会釈を交わした。男は見るからに利発そうな感じが表情に溢れていて、少し小太りな青年だった。


 「どうも、何かお目当てのモノは見つかりましたか?」


 この言葉でこの男が主催者側の人間だと分かった。男が着ていたシャツの胸元に「ハナマキ商会」と書かれている。これが、そしてこの男が僕の「お目当て」という事か。


 「ええ、たぶん……。あの、ちょっとお聞きしてもいいですか?」


 男は笑顔でなんなりと、と笑った。


 「あなたはこちら側の人間ですか?それとも別の世界の?」


 僕の質問が予想外だったのか、男は目を丸くして一瞬止まった。


 「君は召喚者ですね。そういう質問はあまりされた事がないなぁ。」


 そう言って彼は両腕を組んで真剣に考え始めた。なにか閃いたのか一度頷いてから耳打ちするような形で「本当は内緒なのですがね、一応僕はこの世界生まれです。ですが先祖は別の世界から来たようですよ。ですのでその問は明確に答えるのが困難です。要するに生まれ育ちか、ルーツかで違う訳ですから。」

と言ってまた笑った。すでに明確に答えになっていた。なかなかおもしろい人だ。


 「では、さすがに教えてくれない気がしますが、どうやって別の世界の物品を入手しているんですか?」


 という、質問に対しては、やはりさすがに教えてくれなかった。それはあくまでも企業秘密だという理由で、だ。僕が聞いて得た情報はこの人物がハナマキ・リョウタという商人で、この世界で別世界の物品を流通させているのは彼の所属する「ハナマキ商会」であるとう事だけだった。

 ハナマキさんはどのような物品がこの世界に流通しているのかをかなり詳細に教えてくれた。おかげで僕はこの世界で手に入る物、入らない物の区別がなんとなくイメージが出来た。よく分からないが僕らは変に馬が合ってしばらくそんな話で盛り上がってしまった。彼は忙しい身である事を思い出し、慌てて失礼すると言ったが、僕は最後に彼にこんなお願いをした。


 「コラトゥーラを仕入れて頂けませんか?」


 「コ、コラトゥーラ?なんだいそれは?」


 「僕がいた世界にあるイタリアと言う国の、魚から作った醤油みたいなもんです。パスタやサラダにとても合うんですよ。僕は飲食店で働いているんですが、コラトゥーラがあればもっとお客さんが喜ぶのにってよく思うんですよ。」


 ハナマキ・リョウタはゴソゴソと胸元から手帳を取り出し、几帳面そうにメモを取っていた。


 「とりあえず、今度手に入るか頑張ってみるよ!」

 

 彼はそう言って再びキョロキョロとせわしく去って行った。まさに商人って感じの人だった。

 その後、僕は再び場内を散策し、懐かしい前の世界の商品を眺めて楽しんだ。僕がいた頃にはなかった新しい味のポテトスナックなどを見ると、ここへ来た月日を実感するのだった。そんな懐古的なしみじみとした気分で僕は市場の外に出たのだが、そこへとても慌てた様子のセイラさんが僕を呼び止めた。


 「ソメヤさん!はぁはぁ、よ、よかったのです……、ぜんぜん中へ入れてもらえなくて……、待っていたのですソメヤさん。」


 息を切らせていた彼女は少し涙目にも見える。


 「どうしたの?そんなに慌てて。」


 「ナガイさんとタナカさんが……。」



 セイラさんの話を聞いて愕然とした。ナガイ君とタナカさんは今かなりの大けがをして家でシノハラさんに治癒魔法を施してもらっているという。

 今日ナガイ君とタナカさんは当初の計画通りにジャンクスを見張っていた。昼過ぎに顔中に包帯を巻いたジャンクスがゲルフ・バンブーの邸宅を出たそうだ。(包帯はテンガロンハットの男による傷がまだ完治していないのだろう。)もちろんいつものお供3人と共に外出という事だったが、2人はしばらくジャンクスをつけていた。そしてジャンクスが向かっているのが、方向的にガイガーさんの病院の方だと気が付いた。尚もジャンクスの同行を追っていたが、不意に二人の前に立ちはだかる一人の男がいたのだという。その男は鳥を模した仮面をつけていたそうだ。

 間違いなくデルさんが言っていたブラシェッドバンブーの幹部「八行者(はちあんじゃ)」の一人「利欲 (りよく)のグリーズ」だろう。

 グリーズに2人が大けがをさせられたという事だろうか。しかし、詳細は聞かなければ分からないが、それぞれアイテムをを持っているあの二人が、一人を相手に大けがを負っているという事が信じられなかった。

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