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第二章 26  用心棒

 その夜、ツボミさんの怒声がリビングルームに響いた事は想定の範囲内の出来事であった。僕は「猫の手本舗」の業務内容だけは伏せて、今回の出来事のあらましをみんなに伝えたのだった。

 クロエさん達と顔見知りになった事、みずいろ庵で噂を聞いた事、クロエさんをさらった組織がバンブーの名を冠する組織である事、そして、その組織ゲルフ・バンブーの対立について、組織の長であるギンジさんに力を貸したいという内容だ。

 ツボミさんが大声を上げた部分は概ね2か所。まずはゲルフ・バンブーの内紛に介入するという部分。これはツボミさんだけでなく、ナガイ君を含め、みんな一様に否定的な声を上げた。2つ目はゲルフ・バンブーの長が、ツボミさんの父である伝説の勇者カイカ・オーキッドの仲間であったという事実。そのような非合法な組織の人間を仲間にしていた父親に対して彼女はひどく憤慨したのだった。


 「ツボミさん、そのギンジさんという人は決して悪い人じゃあないんだよ。さっきも説明した通り、それが原因での内紛とも言えるんだから。」


 「ぼ、僕もギンジさんは悪い人には見えませんでした。でも、ソメヤさん……だからと言ってゲルフ・バンブーのお家事情に絡むのは……。」


 ナガイ君の意見も最もだった。僕がブラッシェド・バンブーにこだわり、それに連なる組織にも関心を持ってしまうのは、完全に個人的な考えからだったからだ。ブラッシェド・バンブーがこの世界の存在と、僕達を召喚した本当の目的を知る者達だと僕は(勝手に)解釈している。これは本来のこのパーティーが絡まなくてもいい類の話では確かにあるのだ。


 「いや、私がまだ憤慨しているのは、この件に介入するという事自体ではない。タカキ君がそのギンジなる人物が信用に足るというのなら、私はその選択にこれ以上どうこう言うつもりはない。むしろ人助けとなるのなら私の力を進んで使おう。だが、もう一つはどうしても怒りが収まらんのだ。私の口からは言いたくもないが、父上のパーティーはおかしな人間ばかりだったんだ!あのシモンズさんがまともに思えるメンツなのだ。そこが私は許せんのだ。伝説の勇者のパーティーがそんな……。それにしても私が知らない仲間が他にいたとは……。」


 いろいろツッコミどころがある発言だった。確かにシモンズさんがまともに見えるってのは相当だとは僕も同意してしまうかもしれないが………。さて、自身のパーティーのメンツを見渡してみてどうだろうか?僕が言うのもなんだけれど………。


 「でも、実際には私達は何をすればいいんですか?またタカキーズの時のようにそのお店の警護とか?」


 シノハラさんはちょっと怪訝そうな表情で僕を見た。彼女はタカキーズのサッキュバス達の事は個々には好意を持ってくれていたが、今でも僕がメアリーさんと何かあったのではと疑っているのだ。(実際あったのだが……)今回も彼女の鋭い女の勘が働いて、何かしら思うトコロがあるようだ。まぁ、それはそうだ、なぜなら話の中に「さらわれたクロエさんを…」「店の女性たちが…」なんてキーワードが出ればある程度バレバレだろう。ただし、シノハラさん、今回僕は本当に何もないからね。ナガイだけ、ナガイだけ……、と心の中でつぶやくのだった。


 「正直、いきなり大々的に動きたくはないと考えいるんだよね。例えば、僕達が常駐して守るみたいなのはね。なので店舗に用心棒的な人をひとり置こうと思っているんだ。」


 僕のそんな言葉に急にエロ坊主がソワソワし始める。ナガイ君は僕がその役を自分に振るのだろうと確信しているようだ。本来なら用心棒など危険な役回りは即答で断るはずなのだが、今回常駐するのは「猫の手本舗」なのだ、エロバーサーカーとしてはそりゃ気持ちが揺れ動くというものだ。ってか、何を期待しているんだこいつは……。


 「って、ナガイ君、今回はその用心棒を君に頼むつもりはないよ……。今のトコロはね……。」


 とりあえずナガイ君のソワソワが見苦しいので、速攻で彼の「不安と希望」を絶ってやった。あからさまにがかっりとしたその姿に、若干不安よりエロが優っていた事が伺い知れた。


 「でも、そんな用心棒なんて出来そうな知り合いいます?」


 シノハラさんが小首をかしげて言った。


 「う~ん、適任という訳ではないけれど、最近あるパーティーを抜けて時間を持て余していて、さらに敵の武装を無力化してしまう人物がいた事を思い出してね。」


 「なるほど、確かに彼の『お払い箱』ならば可能か……、だが、その後はどうする?相手が素手になったら今度は彼がほとんど無力になる。」


 ツボミさんの指摘は全くその通りであった。


 「そこで、今度こそ君の出番だナガイ君。実は『猫の手本舗』を見渡せる向かいの建物に空き部屋を確認している。そこに常駐して状況を常に監視して、いざという時は出動。いいね。」


 「えっ、じゃあ、そもそもやっぱり僕がお店に常駐でもいいじゃないですか。」


 僕はじっと彼の目を見て、常駐できない理由があるだろうと無言で伝えた。ナガイ君は完璧に悟って肩を落として、かしこまりましたとボソボソと言った。そもそもナガイ君に少なからず「自制心」というモノがあればこんな面倒な方法は必要ないのだが、それがエロバーサーカーの性と言ってしまえばそれまでだろう。

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