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第二章 17  猫の手本舗

 「へ~、これも僕の『気のせい』と同じシリーズのアイテムなんですか。ソードブレイカーか~、なんだか名前の響きがかっこいいですね。」


 ジャンクコーナーから無事にサルベージした「お払い箱」をいじりながらナガイ君は無邪気に言った。


 「ソードブレイカーというと、武器というよりは防具に分類される感じですね。確かにタナカさんはあまり好戦的なタイプにも見えなかったので合っていそうですね。」


 とナガイ君とは対照的に論理的な事を言ったフクスケはさらに、


 「で、これを使いつつ、どのようにタナカさんを自立させるつもりなんですか?」


 ツボミさんとの帰宅後、僕はパーティーのみんなを集めて、まさにその対策を伝えるつもりでいた。


 「まずはタナカさんの意思確認をする。彼が自ら今のパーティーを抜ける意思を確かめたいんだ。その意思があるならこのソードブレイカーを渡そうと思うんだ。」


 「でも、この間タナカさん、あんなパーティーすぐに辞めたいって言っていたじゃないですか。」


 シノハラさんが不安げな顔で僕に言った。


 「確かにね。でも辞められないとも言っていたよね。つまり辞めるのにはかなりの労力がいるって事になる。借金は肩代わりしてあげられる。でも、あのパーティーの人達にとってタナカさんは使いやすい……、(はばか)らずに言えば❝奴隷❞のような存在だからね。それ故においそれと手放すかどうか……。だからタナカさん自身が彼らと戦う意思があるのかどうかが重要になってくるんだ。その意思があるのかどうか……。そしてそのためのソードブレイカーなんだよ。自分の力で彼らに抗える力としてね。もちろん戦う事になった時は、みんなの力も借りるつもりだけれどね。」


 僕の言葉にみんな納得して頷いてくれた。

 こうしてツボミパーティーによる「タナカさんを自立させよう作戦」が開始されたのだった。



 翌日、僕はナガイ君を伴って街にいた。僕達の生活圏からは少し離れた郊外の一画だ。ここのところタナカさん用のアイテムの探索で、僕はこのファーケンの様々な場所に訪れ、かなりいろんな店や施設を知ることが出来た。そこでタナカさんだけではなく、ナガイ君の自立をまずは行おうと思っていた。皆さんが想像する通り彼の自立、つまり彼を「使い物」にするための施設と言えば、タカキーズのような場所しかありえない。そう考えると、いろんな意味(エロい意味含めて)で自立ではなく他立という造語を思い描いてしまうが……。


 「ソメヤさん……、みんなに内緒って……、もしかしていかがわしい場所に行くんじゃ……。」


 「その不安そうな表情を装いつつ、どこかでうれしそうにするのを止めてくれないかナガイくん。」


 「そんな!そんなつもりは毛頭ないですよ!僕は!だって僕はローズさん一筋ですから……。」


 「赤面してモジモジしても、君の中でひどく卑猥なシーンが思い出されているのがすぐに分かるな……。」


 僕は夢想にふけるエロ坊主を放って置いて先日見かけた、いわゆるエロいお店を探した。確か猫耳の女の子が看板のお店だった記憶があるのだが。僕がキョロキョロと探していると、ナガイ君がフラフラと通りに入って行った。また、この男は勝手な行動をと呆れていると、僕の記憶の中にあったお目当ての看板を発見したのだった。この男はおそらく天性の嗅覚でエロい臭いを察知したのではないだろうか。


 「ソメヤさん、あれ、なんだか可愛らしい看板がありますよ。」


 もはや先ほどのローズさん一筋の言葉は何処へ?まぁ、駄々をこねる茶番に付き合うのも面倒くさいので話を進めた。


 「おおっ、ナガイ君、ちょっと気になるねこのお店。入ってみようか。(カタコト)」


 ナガイ君は僕の前を歩きながら頷いて店内に入って行った。

 カウンターで僕は受付のおばさんから、この店の概要について説明を受けた。ここにいる女の子たちはサッキュバスではないらしい。夢魔と呼ばれるモンスターの仲間で「猫又」と呼ばれているそうだ。元の世界でいうところの「妖怪」にそんなのがいた記憶がある。ちなみに店舗名は「猫の手本舗」という深く考えるといやらしさが倍増しそうな名称だった。


 「ナガイ君、どう?気は乗らないだろうけれど『気のせい』の発動を促すためにも……、ねっ?」


 「ええ~、マジですか~、いや、でもやっぱりダメですよ~!」


 と言ってソファから立ち上がるエロ坊主。「すまん、すまん」と訳の分からない相槌を打ってそのまま、女の子を選べる部屋を覗かせた。一応、健全な男子であるところの僕も一緒に覗く。そこには猫耳の水着姿の女の子たちが5人ソファに座っていた。どんなモンスターなのかと思ったが、随分可愛らしい種族のようだ。ナガイ君は再び「そうは言っても~」だの「そういう訳には~」などと戯言を言った後、僕が誰にも言わないからと付け加えると「2番の女の子でお願いします」と即答した。


 女の子の名前はアスタと言って小柄ないかにもエロ坊主が好きそうな子だった。髪の色は黒く、そこにピコピコとせわしく動く猫耳も黒く艶やかだった。耳の他に人間と異なる点は小ぶりで引き締まったお尻に、同じく黒いしっぽが生えている事だけだった。ナガイ君はだらしない表情でアスタと店の奥へと消えて行った。

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