第二章 13 アイテム探し、ぐい吞みとしゃもじ
二軒目に尋ねたのは街の中央部にある寂れた通りにある骨董品店だった。シチュエーションから言えばここはかなり期待を持って入店した。だが、結果から言うと残念ながら完全に空振りだった。この店は普通に壺や皿などの古美術品を扱う店らしい。それでも僕は店内を歩き回り、その中にある膨大な点数の古美術品を見て回った。別に壺や皿に価値を見出すほど高尚な趣味を持っている訳ではない。
だが、本来の目的としては完全に空振りだったのだが、ある意味でここへ訪れた事には意味があったのかもしれない。そう思わせてくれたのは壺や皿の名札だった。いくつかの名札にはこのような記述があったのだ。
「備前焼火襷」「古伊万里染付」「有田焼深川製染付」「信楽桧垣文壺 」などなどだ。ほとんど骨董品には知識のない僕でも、どこかで聞いた事のある焼物の産地の名称が並んでいた。僕は自分でも気が付かずに、ずいぶん難しい顔で店内を見回っていたらしく、店主であるおじいさんが心配そうに僕を見つめていた。
「あっ、すみません……。決して怪しい者では……。」
バツの悪さをごまかそうとして、すっかり怪しい者のような発言をしてしまった。
「あっ、いや……、どうも親の仇でも見るような目つきで壺を眺めているんでな……。」
「はは……。いや、あの、じつは僕は召喚された者なんですが、ここにいくつかある古美術品って別の世界から持ち込まれた物ですよね。例えば備前とか有田とかって。」
「そうだな。確かにいくつかは別世界からの物だと聞いとるよ。」
僕は衝撃的だった。今まであまり意識した事がなかったのだが、僕達のような召喚されたのは人間だけでなく、元の世界の物品もまたこの世界に持ち込まれている事にだ。
「そういった物ってどのように仕入れていらっしゃるんですか?」
「ああ、私らの商売は免許制になっていてな、そういった資格を持っている業者だけが参加出来る業者市ってのが月一回あるんだわ。基本はそこでだな。なんだ?あんた興味があるのかい?」
「ええ、少し……。出来ればその業者市って見学出来ませんか?」
「う~ん、どうだろうな、まぁ、よければ出来るかどうか協会に聞いてやるがね。」
「ぜひ、お願いします!」
気さくな店主とそんな約束をして僕は店を後にした。何も購入しないのも申し訳なかっので古伊万里のぐい呑みを一つ買った。美術的な価値はほぼない1,000ゴールドほどの盃だ。
元の世界の物品がこちらに来ている事に対して、僕はこう感じていた。
「輸出入的な意味で、任意にこちらと元の世界を行き来している者達がいる」と。
確かにそれは非常に魅力的な商売なのではないだろうか。それぞれの世界にしかないモノが取引されるとしたらその価値は通常よりも確実に上がるだろう。
前の世界で突如として現れ、あっという間にポピュラーになった野菜やフルーツ、時代を超越するような奇抜なデザイン、人の想像力を超えているような新しい物語。そのようなモノはもしかしたらこの世界から来たのかもしれない。そんな確証もない事を一人で得心してしまった。
おそらくこの考え、そしてそれを知りたいと考えている事はこの世界の理に反する行為であろう。またいらぬ敵を作ってしまうかもしれない。
そう、僕はだからこそ知りたいと思ってしまった。
三件目。
みずいろ庵の常連さんに紹介された店舗は三店舗。その最後の店に僕は向かう。
来店した二つの店でそれぞれ得るものはあったが、本来の目的にはかすりもしない状況だった。この三件目は分類的にはリサイクルショップと言っていいのかもしれない。武器の類も扱っているが、日用品の中古も多く陳列されていた。
まずは武器のコーナーに足を運ぶ。正直数は多くなく、すぐにお目当ての物がない事が分かった。僕は武器は諦めマジックミラーのようなアイテムでも見つかりはしないかと店内を物色した。普通に日常で役に立ちそうなアイテムはたくさんあったが(例えばごはんが付きづらいしゃもじや、吸水性に優れた珪藻土のバスマットなど)ここでもやはりタナカさんに自信を持たせるためのアイテムを探し出すことは出来なかった。
僕は諦めてとりあえず「ごはんが付きづらいしゃもじ」だけはゲットして店を出た。シャロンさんにあげたら喜びそうだ。という完全なる打算で買ってみた。
店の外に出ると入店時には気が付かなかったのだが、店の小脇にテントが張られており、そこにはジャンク品コーナーと書かれていた。期待が一気に沸き上がりすぐにテントに飛び込んだ。だが、そこにあったのはまさにジャンクの名に等しいガラクタばかりだった。
始まりの街の倉庫でミシマさんの剛剣「馬鹿力」を見つけた時よりもその内容は劣悪だった。ほとんど原型を留めていないような武器類の墓場と言っていいだろう。言わば鉄くずの塊が並んでいるだけだった。90度に折れ曲がった剣や、穂先のみの槍、櫛のように歯が欠けた剣などばかりだった。
僕の期待は一気にしおれて行き、がっくりと肩をおとしため息を吐く。
「ふぅ~、そう、うまい話はないか……。」
そう呟いてテントを出ると、トボトボとバイトへと向かうのだった。




