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第一章 46  戦況

 「ほう……、外見の割に……。なかなかの覇気を感じるぜお前。」


 「もう、だからあれも手配書にあったでしょうが、あれはナガイっていうバーサーカーですよ、もう。」


 「バーサーカー?……そんな雰囲気でもないがな……。いいだろう、んじゃ、お前から相手してやる。」


 というやり取りをガン無視してナガイ君は近くにいるモンスター達に斬りかかっていた。


 「もう、完全に空気だなラウムさん……。」


 ひきつった表情のダークエルフを放置してエロバーサーカーは次々にモンスターを狩っていった。一太刀で数匹のモンスターが額を割られ、反撃の(いとま )もなく次々に地面にひれ伏した。

 ナガイ君は手を叩くローズさんを顧みてガッツポーズをした。そんな隙をつき獰猛そうな猿型の獣人がすさまじい速さでステップで踏みながら、複数のフェイントを入れた攻撃をして来た。手には湾曲したサーベルのような剣が握られている。傍から見ても一瞬ドキッとさせれれた場面であったが、ナガイ君は滑らかにその剣先を避け、流れるような体さばきで猿の獣人の胴を一閃した。獣人は悶絶しあがくようにその場を離れようとした、が、そのまま彼は首筋に黒い刀身を埋め込まれ絶命した。


 「なに逃げてんだよぉ、逃げ場なんてねぇ~ぞお前ら!死ぬ気で戦え!」


 ダークエルフのラウムは容赦なくモンスターを(ほふ )り、モンスター達を恐怖で縛った。その行動でモンスター達は一斉に見境なく暴れ出した。再び怯むタカーズの戦意を繋ぎ止めたのはツボミさんとミシマさんだった。

 ツボミさんはのっけからソニックブレードをモンスターの群れに放った。衝撃波で十数体が弾け飛び、その強力さを改めて目の当たりにする。

 ミシマさんも剛刀「馬鹿力」を無遠慮に振り回した。斬るというよりは殴ると形容出来そうな攻撃だった。一振りで数体がなぎ倒され、返す刀でもう数体が。これを連続で繰り出すその姿は、その名に恥じぬ「勇者」の姿だった。

 地味に活躍していたのがセイラさんだ。彼女は数体のモンスター(♂)を萌魔法で操り、同士討ちにしていた。これ自体がモンスター達の疑心暗鬼を生み、元々さして統率の取れていたようには見えない彼らの部隊に混乱を招き、多くの戦力を削ぐ結果となった。


 「もう、しょうがないな……。弱い。弱すぎるもう。ふぅ~、消し飛べ。」


 再び優勢に見える僕らに絶望を見せつけたのはホルスタインのミノタウロスだった。彼は巨大な大槌を振るい地面に打ち付けた。その時点では振動はしたが特段変わった事はなかった。だが、いくつかの振動が蛇のように地面に亀裂を入れながら蛇行して進んでいくのが見て取れた。そしてそれは数か所で地面からの大爆発を生んだ。さながら火山帯を思わせる光景がそこにはあった。

 彼は僕らだけではなく、モンスター達をも巻き添えに無差別攻撃を繰り返した。


 「馬鹿野郎っ!メテオ・モールを打つ時は一言言ってからにしろってんだろうがっ!俺まで殺す気かっ!」


 ラウムが頭を(はた )く事でようやくミノタウロスは攻撃を止めた。

 まさに戦争映画で観たような光景が広がっていた。そのような甚大な被害を出す攻撃を受け、救急チームも救護の許容量を大きく超えていた。シノハラさんの横顔も疲労の色が濃くなってきていた。それでも、かろうじて彼らは護衛チームの「壁」の頑張りで無傷で懸命に救護を続けてくれていた。


  互いの陣営に酷烈な被害が出たとは言え、それでもモンスターの数は尚、僕達を圧倒していた。モンスター達は再び火煙を乗り越え僕達に襲い掛かってきた。それを、ナガイ君、ツボミさん、ミシマさん、そしてセイラさんに使役されたモンスター達が食い止めている。その光景を高飛車に眺めながら動く影があった。


 「そろそろ遊んでやるか。」


 そう言ってダークエルフのラウムは、抜刀してナガイ君に襲い掛かった。凄まじい速度で、まさに人ならざる物の動きと言えた。だが、我らがエロバーサーカーはその攻撃をモンスターを倒しながら身軽に避けて見せた。

 さらに、避けたその上半身が反った状態でラウムに向けて渾身の突きを放った。その動きはラウムを動揺させるのに十分なものであった。


 「な…なんなんだ貴様……。そんな変幻自在の剣術は初めて見る……。バーサーカー?違うな……、本来バーサーカーはそもそも防御に重きは置かねぇだろ。ましてや貴様は極度の興奮状態で我を忘れている風でもない……。」


 そう言ってラウムは僕の方をチラッと見た。まぁ、解説しろっていうフリなんだろう。僕は仕方なくナガイ君情報を開陳した。


 「ナガイ君はバーサーカーでも特異なエロバーサーカーだ。実は興奮はかなりしている、それも我を忘れるほどのね。だが防御はする、なぜならケガをしたら事後のお楽しみが台無しだからね。彼を動かしているのはリビドー。エロパワーが彼を興奮させ未知なる力を引き出しているのと同時に、エロい事をしたいという思いが自意識を定着させるという矛盾を生んだのだ。そしてその矛盾が生み出した奇跡の剣士!それがナガイ・ヤスユキなのだっ!」


 僕の渾身の解説に白い眼をしたラウムは、聞いて損したと舌打ちした。なんて失礼な奴だと僕も舌打ちをした。


 「なんだかよく分からねぇが、びっくりだぜ。遊びはなしだ、全力で行く!」


 ラウムは再び驚異的な跳躍を見せナガイ君に黒い刀身のサーベルを振るう。しなるサーベルは変幻自在に左右上下に揺れ血肉を得ようと生き物のように躍動した。それでもナガイ君は巧みにその剣先を避け続けていた。だが、先ほどとは違いラウムの執拗な攻撃に反撃の機会を伺えないようだった。しだいにラウムの剣先はナガイ君の衣服を(かす )るようになり彼の表情からも「余裕」が褪せてきていた。


 「もう、んじゃ僕ももう一丁っ!」


 ナガイ君とラウムの戦闘を目にもくれずにミノタウロスがさらには巨大な大槌を振るう体制に入った。だがそれを見逃さず、その巨体に衝撃波が浴びせられた。ソニックブレード。ツボミさんだった。


 「いい加減にせぬか!この牛がっ!もう打たせぬぞ!」

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