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第一章 28  もえる魔法

 「私の属性は……、属性は……『もえ』です……。」


 「『もえ』?『燃える』?『炎』って事?」


 「いえ……、『萌』です……。」


 「えっ!えっ?魔法の属性って『炎』とか『雷』とか『水』とか、そう言うのじゃないの?せいぜい『闇』みたいのは聞いた事あるけど……、『萌』?


 「あぁぁぁぁぁ!やっぱりそういう反応なんですねっ!だから言いたくなかったのです!最悪です!最低にツイていないのですっ!………な、なのに……、素敵に見えてしまうのです……、うぅ…。」


 僕は本来どちらかと言えばМっ気のある方だと思っていたが、このシチュエーションが妙に楽しい。新しい自分の発見してしまったようだ。にしても、魔法の属性が『萌』?なんともかわいらしい。要するに相手を萌えさせる事で自分の意のままに使役するって感じだろうか?そう考えるとかなり強力な魔法じゃないか。十分に戦力として機能する。僕は彼女の魔法が戦力として素晴らしい事、そして卑屈にならずに胸を張るべきものである事伝えた。今の状態の彼女にどれほど伝わるかは甚だ疑問ではあったが……。セイラさんは大きな瞳をウルウルとさせて懇願する。


 「ちゃんと答えたのです……。3歩の約束です……。」


 「ああ……。じゃあ、どうぞ……。」


 セイラさんは顔を赤らめて3歩近づくと、(おもむろ)に僕に抱き付こうとした。僕はセイラさんの接近をデコピンで迎撃した。パチンっ!


 「痛いっ!何をするのですか!」


 「君こそ何をするつもりですか?約束は3歩近づくというもののハズですよ。」


 「でも……、もう…我慢できないのです。」


 「では、最後にもう一つ答えてくれたら……。どんな答えを望んでいるか…分かるよね?」


 「なんて悪魔のような人なのですか。なんなのですかその極めきったゲスっぷりは……。でも……、もう……あなたナシでは生きていけそうもありません……。私をお傍に置いてください。」


 セイラさんはそう言うや否や僕に抱きついてきた。方法はどうであれとりあえず彼女の口から「加入」の意思表示を得た訳だ。そこそこの所でセイラさんを引き離して退室して、ツボミさんにその話をするつもりだった。


 ……のだが……。あれ?なんかすごいいい匂い。僕をじっと見つめる瞳もめちゃくちゃかわいい。僕は自分の意志とは反しセイラさんをぎゅっと抱きしめる。……セイラさんが自分の意志で使ったのか、それとも冷静ではない状態故の事故か……、明らかにこれは『萌魔法』の力によるものではあるまいか……。

 

 おかしい、こんな事でドキドキなんて、もうしない人間になっていたと思っていたが、ドッキドキじゃないか……。意外と豊かな胸を通してセイラさんの激しい鼓動も伝わってくる。


 見つめ合っていた僕らの視線による緊張感によって保たれていた距離感は、セイラさんが瞳を閉じた事により破られた。僕は小さく艶やかなその唇に自らの唇を重ねようと首を傾ける……。その瞬間セイラさんの部屋のドアがノックされた。


 「セイラちゃん?タカキ君来てる?やっぱりみんなで話そうと思って、シノハラさんと、ナガイ君も連れて来たんだけど?話聞いてくれる?」


 3人の顔を思い浮かべ僕は、元々たいした事ない精神力を振り絞り冷静さを叩き起こした。

 がんばれソメヤ・タカキ!この状態で発見されたらこのパーティーは崩壊だ。

 かろうじてセイラさんを引き離しドアを開けるように促した。セイラさんもその時点ではなんとか冷静な状態に見えた。


 そして、彼女はいつもの物憂げな感じで3人を中に入れた。椅子に座る僕は3人を笑顔で迎え、セイラさんから加入の了承を得た事を伝えた。その内容を聞いて3人、特にツボミさんは歓喜しが、どうにもその場の空気はひどくぎこちないものであった。そりゃそうだ、僕もセイラさんも上気したした表情までは元に戻せなかったのだから。


 話はすべて丸く収まった形で解散となったのだが、セイラさんの部屋を去る時、セイラさんが僕に微笑みかけたのは錯覚だろうか。そして、こう言った事にするどい嗅覚を発揮するシノハラさんは、「セイラさんの部屋の中で不自然なくらいかしこまっていましたね」と僕の目も見ずに言って去って行った。


 この件に関しては自分自身、計画とは違う微妙な状態に陥ってしまったのだが、いくつかの疑問点が残った。

 当初、あんな無理やりな方法でセイラさんが加入する意思を表したとしても、薬が切れた後は確実にゴネるだろうと考えていた。これについては前回セイラさんが、僕で実験をした件を引き合いに押し通すつもりであったが、彼女はあれから何も言っては来なかった。

 と言う訳で事実上、彼女のパーティーへの加入は既成事実化してしまったのだ。


 さらに、あのあわやキスしてしまいそうな「事故」において、3人が部屋に来た後のセイラさんがすぐに冷静さを取り戻していた事は甚だ疑問に感じてしまう。

 自意識過剰だと笑われてしまうかもしれにあが、あの薬、じつは途中でもう切れていたんじゃないか?つまり散々呪われては来たものの、実はセイラさんにそこそこ気に入られているのでは……。


 なんて事を考えると、さらにややこしくなるので、僕はこの件に関しては思考するのを止めた。


 とりあえず、パーティーに魔導士……、いや、萌魔導士が加入したのだ。いよいよゲンイチロー討伐を行う事が出来るのだ。……たぶん。

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