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第一章 25  超かわいい魔導士

 露紙と漏斗とビーカーで入れてもらった紅茶はなぜか懐かしい味がした。魔導士感を演出するアイテムなのだろうか。およそ女の子の部屋とは思えないダークな色彩のその部屋は、セイラ=デコラティブ本人を具現化したかのようにネガティブな空気が漂っていた。こんな黒と紫で固められた部屋で過ごせば、それは「ネガティブな気」が体内に蓄積されるだろうと思わずにはいられなかった。


 「ツボミちゃんはともかく、あなたまで部屋に招かなくてはならないとは、もう夜だと言うのにツイテいないのです。私はソメヤ・タカキを呪います。」


 「ちょ、ちょっと待て!最近ホニャララの神じゃなくて、ピンポイントで僕を呪っているぞ!」


 「はぁ…。」


 「視線を逸らして、凄まじく倦怠感を込めた溜息をつかないでくれますか。本気で落ち込むわ……。」


 セイラさんと腹を割って話す決意をして、僕とツボミさんは彼女のドアの戸をノックした。実際、僕はその時、部屋に入れてもらう事すら困難であろうと思っていたのだが、ツボミさんを同行させたのが吉だったのか第一関門は労せずして突破できたのだ。


 「ちなみに、部屋で何か実験でもしているの?」


 その部屋にはさまざまな怪しげな物で埋め尽くされていた。棚の小瓶の中には見た事もないような植物や、どぎつい色の粉末や液体などが規則正しく並べられていた。


 「魔導士たる者、常に新たな魔法の発明に勤しむのは当然なのです。」


 なんだかテンプレ的な回答だった。しかもこの部屋の雰囲気もわざとらし過ぎる感じがする。暗い部屋で実験。なんとなく魔導士感をあえて前面に押し出そうと言う意図が出過ぎな感じがした。


 「ふーん。にしてもこんなに締め切ってやらなくてもいいのに。」


 「あなたにそんな事を言われる筋合いはないのです。」


 気が付くと攻撃的に出られているな。ただ、当初は会話にすらならなかったからな、とりあえずは前進していると考えていいのだろう。


 「まぁまぁ、2人とも……。セイラちゃん、実はなタカキ君がセイラちゃんの事がどうしても必要なので、密室で二人きりで会いたいと言い出してな。それはけしからんだろうという事で、こうして私も同行させてもらったという訳だ。」


 「……、なぜ君は話をややこしくするような、言い回ししか出来ないんですか……。」


 ツボミさんのアホな発言を聞いたセイラさんは、青白い頬を少しだけ赤らめていたようにも見えたが、慌ててノートを開き何かを確認しながらブツブツ言い始めた。


 「そんな成分を……、入れた………ないハズ…。」


 「ちょっと、待て!もしかしてこのお茶に何かもったのか!今、成分とか、入れたとか言ったよな!」


 セイラさんは僕の言葉に吃驚の表情を浮かべた。


 「いや、私は別に人を馬鹿にしなくなる薬の臨床実験をしようだなんて考えていたわけではありませんよぉ!」


 「したんだね!僕を使って実験したんだよね!だいたい成分も何も、もともとツボミさんの話は表現がおかしいんだけど、時系列が滅茶苦茶でしょ!僕がここに来たい、君に会いたいと言ったのはお茶を飲む前!」


 「………………はっ!私とした事が!」


 いいのか?この子を仲間にしていいのだろうか?

 ネガティブな部分を差し引いても十分にやばいコではないだろうか。そんな思いが沸々と湧き上がってきた。

 しかし、そう思っているのも束の間……。とぼけた顔でこちらを見ている魔導士が急に煌めいて見えていた。一重なのに大きく見えるキラキラの瞳。形の整った小さな鼻。涼やかな印象を留める薄くしっとりとした唇。ダークブラウンのショートカットの裾がヒラヒラとそよいでいる。僕は一気に動機が激しくなる。止められない、僕はセイラさんを引き寄せ強烈に抱きしめた。


 「ぎゃぁぁぁぁぁ!」


 セイラの悲鳴が轟いた。僕はその甲高い悲鳴にすらトキメキを拒絶する事が出来ない。ああ、素晴らしい悲鳴だ、きっと天使が悲鳴をあげたらこんな感じなんだろうな……。頭の芯の部分ではこれはおそらくセイラさんに盛られた薬の作用であろうと分かっていた。しかし、自分のバカな思考、言動を制御出来なかったのだ。やっぱり薬って怖い……。僕は抱きしめたセイラさんの頬に濃厚なキスを見舞う。


 「ぎゃぁぁぁぁぁ!ツボミちゃん―――――――!」


 セイラさんがそう叫ぶのよりの早く、僕の後頭部には強烈な衝撃が加えられていた。ツボミさんの手刀のようだ。薄れゆく意識の中で2人のやり取りが聞こえた。


 「許せん!タカキ君!私の前で他の女の子とイチャイチャしおって!うらやましいではないか!」


 「え―――――――ん!結局何作ってもこんな結果になっちゃう!どうせ私にはこんな能力しかないのよ!え―――――――ん!」


 「やはり、これは……、その…惚れ薬のような物なのか?セイラちゃん。」


 「そう……、どんなに工夫しても、私の魔法のせいで全部惚れ薬みたいになっちゃう……うう…。」


 「うむ、確かにセイラちゃんにとっては大問題だな……、して…セイラちゃん…、今の薬私にも少し分けてくれまいか……、あっ、いや、勘違いしないでくれ!別に今のがうらやましくて、後でタカキ君に使おうだなんて不純な考えではないのだよっ、うん。はは。」


 そこまで聞いて徐々に声は遠くなって行った。

 ああ、セイラ=デコラティブ……超かわいい……。僕の視界は完全に闇に溶けて行った。

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