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第一章 15  性技は勝つ

 「だ、大丈夫だったのか?何かされなかったか?」


 ツボミさんが真っ先に駆け寄って来た。僕はその日そのまま何もないままに解放された。そしてナガイ君の件については全て解決した事を告げた。ナガイ君は素直に喜んで感謝の言葉を口にした。


 「ただし……、後日、僕は彼女と勝負する事になった。」


 「勝負?」「彼女?」


 「勝負?」と聞き直したのはツボミさんで、「彼女?」と聞き直したのはシノハラさんだ。


 「あ~、組織の連中はみんな女性だったんだ、リーダーもね。そしてその人と後日戦う事になった訳。」


 「勝負!戦う!タカキ君、ぜひ私にやらせてくれないか!」


 ツボミさんはやる気満々で進言した。

 僕は告げられていた勝負の内容を考えて、サッキュバスとツボミさんで妙な妄想をしてしまった。めくるめく官能の世界……………。ぶるんぶるんと頭を振り、妄想を掻き消し、動揺を隠すように、戦うのは僕である事が条件だと言い彼女を納得させた。

 サッキュバスとの戦い、つまり勝負の内容はサッキュバスの性技に対して僕がその後も溺れずにいられるか否かと言う事らしい。負ければ、彼女たちの仲間としてダスク・バンブーの一員という訳だ。


 その日の夜、僕は「物憂げな猫亭」の閉店作業中にシモンズにだけはすべてを話した。


 「ぶっ!まっ、まじかっ!うらやましいような、そうでもないような……。しかし、メアリー・ファニングって言ったらなかなか有名なサッキュバスだぜ。まさかダスク・バンブーってそういう組織だったとはなぁ……、こりゃ知識不足だったよ。」


 「まぁ、これが済めばなんとか丸く収まるんですかねぇ。」


 「ってか、普通に勝てる気でいるのか?」


 「ああ、そうか、どうなんでしょう?」


 「……君ってのは本当に大物だよ。」



 2日後の夜、僕は約束の時間に再びダスク・バンブーのアジトを尋ねた。僕は再びピンクの部屋に通され、メアリー・ファニングを待っていた。

 別の部屋ではすでにスペシャルなお楽しみは始まっているようで、(なま)めかしい声があちこちから聞こえていた。ある意味バイト的に行っていた事の延長だと考えると特段緊張もせずに済んだが、確かにメアリー・ファニングは美人だしすごい体をしていた事を思い出し、周りの環境も影響したのか妙にムラムラしてきてしまった。

 そんな状況の中、僕は係のサッキュバスに連れられメアリー・ファニングの部屋へ案内された。


 「よく来たねソメヤ・タカキ、待っていたよ。」


 メアリー・ファニングは今日はピンクの下着しか着けていなかった。この部屋もやはり部屋中がピンク色で、立ち込めるフローラルの香りで空間のすべてが甘い。あえて湿度を高めているのか、メアリー・ファニングの肌はしっとりとしているのが見るだけで分かる。ここはまさに淫魔の統べる空間という事だ。


 「ふふふ、さぁ、君の知る世界を覆す体験をさせてあげるよ。さて、いつまで自意識を保てるかな?私の虜にしてあげよう。おいで……。」


 メアリー・ファニングは妖艶に笑うとゆっくりと僕を手招きし、自分が座るベッドへ(いざな)った。

 はじめ彼女は完全に僕を子ども扱いで(もてあそ)ぶような態度で接してきた。途中まで僕は彼女の好きにさせていたが、僕はすでにいろんな条件が重なりムラムラしていた。しょうもない演出はもう面倒だと思い、ここはある程度好きにさせてもらおうという欲求に身を任せる事にした。

 それまでの受動的な態度から能動的、積極的態度に完全に変更し、彼女に襲いかかった。彼女は見るからに「何を素人が」という余裕の表情で僕を受け入れていたが、次第にその表情は焦りに変わり、いつしかただの女の顔になっていった。

 ここからはその時彼女が発した言葉をいくつか紹介しよう。


 「ちょっ、まっ、待って!なっなにそれっ!」


 「嘘でしょっ!ちっ違うそこはっ!なんでよっ!」


 「まっ、まじで♥えっ……、うん、嫌じゃないけど……♥」


 という感じだった。つまり勝負は僕の完全勝利と言っていいだろう。

 サッキュバス、淫魔、僕は前の世界で嫌と言うほど知り合っていたという事を改めて感じていた。サッキュバス、恐れるに足らず。というより、前の世界のお姉さん方、すごかったんだなと素直に感心してしまった。

 さらにメアリー・ファニングは終了後こんな発言をした。


  「ふふふ、私の知る世界が覆される体験をしてしまったわ。もう、ぜんぜん自意識を保てなかった。もう君の虜になってしまったわね。」


 いろんな意味でさっぱりした僕は、メアリー・ファニングと改めて話をして拘束されている男たちの借金返済の条件を緩和してくれるようお願いした。自分の意志で続ける者については、僕がどうこう言う類のものでもないので自己判断に任せた。


 「ある意味、人から恐れられ、忌み嫌われるダスク・バンブーじゃなくて、人から感謝されるようなダスク・バンブーにして行こうよ。たぶんその方が男の人達のゴールド回収の生産性も上がるし、より健全な精気を吸えるようになるかもしれないよ。」


 「もう全部君の言う通りにします。」


 すでにメアリー・ファニングは僕の言う事は大概聞いてくれそうだ。

 という形で、ダスク・バンブーに係る諸問題は解決に向かったのだった。

 余談として、帰り道ミシマ・タクマに出会ったのだが、彼はこんな事を口にした。


 「タカキっちぃ~、実はさ知り合いに聞いたんだけど、俺が借金している組織ってサッキュバスの組織なんだって~、もう、なんかもろエロい組織らしくてさぁ~、今からもう楽しみでさぁ~。」


 まぁ……、こいつの心配はもう止めよう。と、スキップする彼の後姿に思ったのだった。

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