第一章 12 パーティーはじめました
シノハラさんを寄宿舎に送り届けた後、そのまま僕は「物憂げな猫亭」へ向かった。そこには思いがけない人物がお茶を飲んでいた。
「やぁ、タカキ君!私だ!」
今日もハツラツと太陽のような笑顔をした女の子が僕に手を上げた。
「ああ、えっと……ツボミさん?」
「あれ?ソメヤ君とツボミちゃん、知り合いだったんだ。」
シモンズさんが意外そうな顔で言った。
「ええ、一度話しただけですけどね。シモンズさんも知り合いなんですか?」
「ああ、私はシモンズさんにはいろいろ世話になっていてな、あっ、世話になると言ってもエッチ意味じゃないぞ、くれぐれも誤解しないでくれ。」
「いや……、誰もそんな飛躍しないから……。」
相変わらず、この子は空気も読めずにハズしまくっているなぁ……。
「いや、ツボミちゃんの父親と友人でね。まぁ、小さな頃からの知り合いさ。」
シモンズさんは少女の寒いギャグ?に慣れているようで、完全にスルーしていった。
そうかスルーすればいいかと、この子の取り扱いが分かってきた。
「なかなか寄宿舎でも見かけないので、君が働いているというこの店に来てみたという訳だ。まさかシモンズさんの店で働いているとは思わなかったぞ。」
「えっ?僕がここで働いているって誰から聞いたの?僕まだ知り合いが少ないんでほとんど知らないハズだけど。」
「そうなのか、安心しろ私も友達はいない。よって誰に聞いた訳でもなく立ち聞きしただけだ。」
いや、僕は知り合いが少ないとは言ったが、友達がいないとは言っていない。しかもそんなヘビーな話をそんなに闊達に言われても……。シモンズもなんだか心を痛めているような表情だ。
「君は寄宿舎ではかなりの有名人だぞ。寄宿舎三大変人の1人に数えられているぞ。最近君が新たに連れてきた女の子は現在判定中で、認定されれば変人四天王と呼ばれるのは必至だな。」
僕の知らない所でそんな話になっていたのか……。詳しく聞きたくもない話だが、やはり聞いてみると僕はこの世界で初めて召喚されて「無職」という身分を得た人物という事と、ひたすらバイトに明け暮れているというのが理由との事だった。ちなみに残りの2人の変人を聞いてみると1人は予想通り、あのネガティブな魔導士だった。この話を聞いてあの魔導士が僕の名前をしていた理由が分かった気がした。ちなみにこんな形で知った彼女の名前はセイラ=デコラティブ。なんだかかわいい名前だ。
「で、残りの1人は?」
「それは、私に決まっておろうが。」
あっ、やっぱり。
なぜツボミ=オーキッドが胸を張っているのかが僕には分からなかったが……。
「……、で、僕に何の用だったの?」
「おお、そうだな、本題に入らなくてはな。私はパティーに入ろうといろいろと頑張って来たのだが、全部断られてしまってな。どうにもならないので、自分で作る事にした。それでも実は勧誘をしても断られっぱなしだ。そこで、変人のよしみで君を私のパーティーに勧誘しに来たという訳だ。」
「あっ、いや、完全に言わなくてもいい情報がたくさんあったと思うんだけど。そこまで赤裸々に告白しなくてもよくないかい?余計に入りづらくなるよね……。」
「私はいつも赤裸々だ。包み隠さず常に真っ裸で人と接して来たぞ!これはポリシーだ!あっ、いや裸で接すると言っても決していやらしい意味ではないぞ、誤解しないでくれ。」
うん、スルーしよう。
「ちなみに、君は職業はなんなの?見たところ剣士っぽいけど。」
「私の職業は『勇者』だ。魔王を倒すことを定められた勇者だ!」
なんだか中二的な発言にちょっとときめいたりしていた。悪くない。
「……やはり君も女が勇者などバカバカしいと思うかい?」
「いや、むしろ恰好いいんじゃないかな。僕は好きだけどねそういうの。」
なぜか、ツボミさんは赤ら顔であたふたとし始めた。
「ちょ、ちょっと待ってくれ、ま、まずはパーティーへの参加の有無の返事を頂きたい……。そんな、急に『好き』だなんて告白をされても心の準備が……な。う~どうすればいいのだ私は。」
これもスルーでいっか。
「パーティーへの件はちょっと待って欲しい。誘ってもらうのはうれしいんだけど、僕にも仲間がいるからね。相談してみるよ。」
「あ、ああそうか……、私もしっかり検討しておくよ……(ぽっ)」
腕組みをして天を仰ぐシモンズが首を振って目を閉じる。
「ああ、そうだ、実はそこの君。君にもパーティーに参加してもらいたいのだ。」
ツボミさんの視線の先には皿洗いを手伝うナガイ・ヤスユキがいた。
「えっ!えっ?ぼ、僕ですか?えっ?」
貧弱な剣士を勧誘。普通なら意外な気がするかもしれないが、その前に「無職」を勧誘しているだけに特段驚きはしない。なんだか他に行き場のない連中の寄せ集めという気がしなくもないが……。
「ついでにあのネガティブな魔導士も勧誘したりしないだろうね?」
「ああ、彼女には一番に声をかけたのだが、あえなく轟沈してしまった。」
「すでに、誘ったんですか!しかも断られたんですか!」
「うむ、変人は変人を知るとは言うが、私の変人度が足りなかったのかもしれんな。」
「言わないよっ!しかも、君のが多すぎたのかもしれないだろっ!」
しまった、スルー我慢できずに連続で突っ込んでしまった。
「まぁ、ツボミちゃん、この少年を誘うにしても、この子は今難問を抱えていてな。それを解決しない限り無理な話だわな。」
シモンズさんは冷静にそう言うと、ナガイ・ヤスユキを取り巻く状況を説明した。
ツボミさんはそれこそ、パーティーを作り結束してナガイ・ヤスユキを救おうではないかと息巻いた。いずれにしても僕はこの問題をどうにかしなっくてはと考えていたので、仲間は確かにいた方がいい。そう思い暫定的と明言した上で勇者ツボミ=オーキッドのパーティーに参加したのだった。




