クローバー
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暗闇に一人、佇む少女
セーラ服をなびかせ、不敵に笑う
片手に持っていた、家族写真のようなもの
……煤がつき、黒くなっているが
幸せそうな笑顔を浮かべる三人が写っている
少女はその写真を見て微笑み、赤く染まった夕日を見て呟いた
「待ってて……父さん、母さん」
第一幕 保健室
「ま〜た来たの?宮原さん」
ガラガラ、と保健室の扉を開ければ
こちらを伺い、微笑を浮かべる養護教諭の"佐藤真由"先生
「…だって、教室にいたってつまんないしさ〜」
ボフッと気持ちの良いベッドに座れば
そこは具合の悪い人のです、と追い出されてしまった
「でも、今日は体調良さそうねぇ」
「ん、まーね」
真由先生は"宮原星"と書かれた健康カードを捲る
「…いっつも思うけど、星さんって名前珍しいわよね」
「……そう?"しょう"って名前ならいっぱいいるじゃん」
「漢字が、よ。まぁ綺麗で素敵だと思うけどねぇ〜」
この漢字は両親が天体観察が好きで、
星のように人を魅了するような素敵な子になってほしい。
という理由で付けたそう
その両親も私が5歳の時、亡くなったけど…。
【宮原家火災事件】
今から11年前、宮原正樹、桜、その子供である私、星。
この三人の家が火災により全焼
当時、5歳の私はなんとか脱出したものの、両親は火災に巻き込まれて死亡。
………ということになっている。
が、実際は違う。
両親は私の目の前で、毒物により手足の自由を奪われた。
私はこの時両親に、逃げろ と言われ脱出
後から警察に聞いたところ、両親は家の中で
壁に、手足を釘で止められ、額には自分の血で十字架が書かれていたらしい。
その上で心臓にナイフが突き立てられ、腹部は十字架に抉り取られてたそう。
あまりの残虐性と、犯人特定のために、世間一般では
私の両親は"焼死"となっている。
この事件は未だ未解決。
もう時効を迎えた。
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「…あれ、もうすぐ親御さんの命日じゃない?」
「ん……そういえばそうだ」
「…いまだ解決してないのよね、浮かばれないわねほんと」
「…………本当に、ね」
「……あ、ほら!チャイムなるよ。ほら教室戻りな」
保健室を出て、教室へ向かう
途中、開校30周年記年の鏡に映る自分を見て呟いた。
「……絶対に許さない」