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魔物を狩る

前編、中編、後編の三部構成となります。

「くそっ!!」

 二十代くらいの青年が叫ぶ。そして剣を構える。構えるその剣は亀裂が入っており、軽く壁に打ち付けただけでその剣はくだけ散るだろう。

『『グギャギャ!!』』

 その青年が対峙するのはゴブリン七体。一体ではスライム以下であるこの魔物(モンスター)であるが、集団で行動をしだすと途端に討伐難易度が跳ね上がる。過去の歴史では百体のゴブリンが村を滅ぼした例もある。

 一回り大きいゴブリンは腕を高らかに上げ、残りのゴブリンがバラバラに攻撃することを制する。目配りした後、一回り大きいゴブリンは高らかに上げていた腕を勢いよく降り下ろす。

『『ぎャァァ!!!』』

 その瞬間ゴブリン七体は叫び声をあげながら青年を取り囲むように突っ込んできた。

「っ!なめるなよ!!!」

 彼はそれに咄嗟に反応して、一番小さいゴブリンの方に走りだし、ゴブリンを切り裂く。ゴブリンはなすすべなく倒れる。いくらゴブリンが弱いとは言え、ボロボロの剣で一撃で倒すということから、彼の剣の腕が既に達人の域に達していると言うことがわかる。

『グギォォ...』

 呻き声をあげながらゴブリンは倒れた。

「まだだ!!」

 彼はさらにすぐ近くにいたゴブリンを斬りつける。そしてもう一匹、一匹...次々とゴブリンを倒して、残ったのは一回り大きいゴブリンだけとなった。

「はぁはぁ...あと一体だ」

 彼は剣を構え直す。繰り返しになるが、ゴブリンは最弱の魔物である。ゴブリンにとって一体きりになると言うのはすなわち死を意味していた。しかしこのゴブリンは不思議なことに、ニヤニヤと笑うだけで怯えというのは感じられなかった。

「決めるぞ!!」

 彼は地面を蹴ってゴブリンに懐に飛び込んだ。

 その時であった。彼の利き腕である右肩に鋭い痛みが走る。

「ぐっ!?」

 彼は自身の肩を確認する。

 彼の肩には矢が刺さっていた。木陰に弓師(アーチャー)ゴブリンが隠れていたのだ。

『ゴォォォ!!』

 そう叫び声をあげると、その瞬間およそ四十体のゴブリンが現れる。そのなかには一流の魔物討伐者がかろうじで倒しきることができる、(キング)ゴブリンもいた。

「ははっ...これは、万事休すか...」

 彼はそう言いながら尻餅をついて空を扇ぐ。剣の腕ならこの世界でも十本の指に入るといわれる男の人生はここで終わる。

『グギァァァァ!!!!』

 その四十体のゴブリンは奥にいた(キング)ゴブリンの叫び声で一斉に飛びかかる。彼は思わず天を扇ぐ。

 彼を待つのは醜い魔物(モンスター)の打撃による痛みだけ


 のはずだった。

「おいおい。大丈夫か?兄ちゃん」

 青年は魔物では声が聞こえておそるおそる目を開ける。彼の目の前には軽装備(ライトアーマー)を着た三十五、六歳だろうという男が自分の剣より一回りも二回りも大きい剣を持ってそびえ立っていた。そして彼の回りには既にゴブリン十体が既に絶命して倒れていた。そのあまりに予想外な展開は青年だけでなくゴブリンたちも混乱させた。

『グッギャー!!』

 しかし(キング)ゴブリンの叫び声とともに冷静さを取り戻した、ゴブリンたちは男のテリトリーに入り込まないように退き、整然と男を取り囲む。

「兄ちゃんは、剣の腕がかなりいいんだろうな。だがそれだけで冒険者にはなれないぜ」

 男はそう言って青年に話しかける。

『グギャー!!!』

 その言っていると(キング)ゴブリンは鳴き声をあげ、一斉に飛びかかってきた。

 それを確認すると男はポケットから小さなサイズの玉のようなものを投げる。

「兄ちゃん、目を塞げ」

「え?」

「はやく」

 そう言っている間にその玉は爆発的な光を生み出す。

「っ痛っ!?」

 突然のことに目を塞ぐことができなかった青年は地面にのたうち回る。

「はははっ!!ほら、目を塞がないから、大丈夫。これは、閃光玉っていうんだ。しばらく目が使い物にならなくなるだけだよ。」

 そう言いながら男は剣を振り回す。ゴブリンは男の力と剣の重さで押し潰された。

「まだまだいくぜ」

 男はそう言って剣を振り回し、次々とゴブリンの顔面や心臓を潰す。彼の戦闘を成り立てているのは圧倒的な筋力と速さ、そしてなにより状況を事細かに分析して、それに対応する戦闘への慣れである。次々と数を減らしていき残ったのは五体のゴブリンだった。

「お、おい!!大丈夫なのか!?」

 青年は男に訪ねる。そう言うと男は不思議そうな顔した。

「なにがだ?」

「いや残っているのは五体だけとは言え、残りのゴブリンは格が違う!!」

 その青年が言うとおり残りのゴブリンは討伐難易度が違う。二体は中級冒険者の最初の壁と言われている【弓師(アーチャー)ゴブリン】。二体は討伐難易度は低いが防御力とHPが高く、上級冒険者でさえ討伐を嫌がる【盾師(タンク)ゴブリン】。そしてなにより三年に一度しか出現しないと言われ、上級者でさえ死者が出ると言われている【(キング)ゴブリン】。

 幸い(キング)ゴブリンは戦闘に参加する気はないらしく、ゴブリン四体の後ろからニヤニヤと男を見つめている。

 しかし【弓師(アーチャー)ゴブリン】、【盾師(タンク)ゴブリン】がそれぞれ二体が一人の冒険者を襲う。それはたとえ上級冒険者でさえ敵に背を向け逃げ出す状況である。

「なーに大丈夫だ。なるようになる」

 そう言って男はゆっくり歩きだした。弓師(アーチャー)ゴブリンはその速度の速さに合わせて

 矢を放つ。

 がその矢は彼の体に刺さりはしなかった。彼の剣がそれを弾いたのだ。

「...なんてデタラメな反応速度なんだ」

「じゃあいくぞ。」

 そう言って男は一気に加速する。その勢いのまま、剣を振るい、盾師(タンク)ゴブリンの頭を切り落とした。

「首を切り取られたら大体の生物は死ぬんだ。HPや防御力が高い魔物に対してはこれを狙うといい。まぁ魔物も首を守ろうとしてなかなか難しいけどな」

 男は青年にレクチャーするように言う。

続けてもう一体の盾師(タンク)ゴブリンの首に向けて斬撃を放つ。

『ギォォ!!』

 それをそのゴブリンは大楯で守る。

「まぁ守るわな。だが弓師(アーチャー)ゴブリンへの道は空いた。」

 そう言って男は走って弓師(アーチャー)ゴブリンのもとに走った。弓師(アーチャー)ゴブリンは慌てて矢を放つ。

弓師(アーチャー)ゴブリンは慌てると矢の精度が悪くなる。だから接近するときはなるべく一気にがいい。」

 男はそう言って、無傷で弓師(アーチャー)ゴブリンの元にたどり着いて、ゴブリンの体を真っ二つにした。盾師ゴブリンは逃げ出しており、もう既に男の目の届く距離にいなかった。

『グッギャー!!』

 仲間が全員いなくなると(キング)ゴブリンは急いで巣へ逃げ帰った。

「...追わないのか?」

 青年は男に訪ねる。

「巣を特定してからな...ついてくるか?兄ちゃん。」

 男はそう青年に訪ねる。青年は彼の戦いかたを少しでも自分のものにしたい。そう思い、黙って頷いた。

「よし、決まりだ。いくぞ」

 そう言って男は(キング)ゴブリンがいる方へ走り出した。



 走り出して四分後、(キング)ゴブリンは岩と岩の隙間に入っていった。

「ここが巣か...」

 男はそう言って武器を構える。

「いいか。兄ちゃん。ここからは完全にゴブリンのテリトリーだ。しっかり後ろにいろよ。そうじゃないと、命の保証はできないからな。」

「わかった。」

「よし。じゃあ行くか。」

 そう言って男はゴブリンの巣へ入っていった。


「すごい...」

 青年はゴブリンの巣の大きさに驚愕した。ゴブリンの巣は人が三人並んで入れるような広さの道が切り開かれていたのた。

 そう驚いている間に剣と矢がぶつかる音が響く。注意してみると弓師(アーチャー)ゴブリンが四人ほど岩陰に隠れているのがわかった。

「さぁー来るぞ。兄ちゃん。」

 奇襲に失敗したことを悟ったゴブリンたちは大きな鐘を打ち鳴らした。

「さぁー走るぞ!!」

「わ、わかった!!!」

 そう言って男と青年は駆け出した。

『グググ...』

 駆け出したその先には集まりだしたゴブリンが密集しており道を塞いでいた。

「邪魔だぁ!!!」

 そう言って男はは力まかせに剣を振り回す。剣圧だけで青年は吹き飛ばされそうになる。

「めちゃくちゃだ...」

 青年は目をパチクチさせてため息をつく。そうしている間に男の前に道が切り開かれた。

 そしてふたたび男は走り出す。スピードはさっきよりも速くなっていた。

「なんだよ...この速さ...」

 青年は必死に息を切らしながら男についていく。

「おっと...」

 しばらくして、男は再び立ち止まる。

「ゴブリン騎士(ロード)か...」

 青年は生唾をのむ。【ゴブリン騎士(ロード)】。ゴブリン種の中で二番目の強さを誇る魔物である。他のゴブリンとは違って誇り高く、戦闘技術も高い。

「兄ちゃん、戦えるか?」

 そう言って男は道具箱(アイテムボックス)から剣を取りだし、青年に渡す。

「これは...刀か」

 青年は驚いた顔をする。刀はこの洋の国では主流ではない。この国では突き殺すための(つるぎ)が主流である。刀は切り殺すための剣であり、この青年の修行は主に刀を意識したものになっていた。そのため(つるぎ)を刀のように扱うしかなく、またその(つるぎ)もボロボロになっていたのだ。

「俺の友人が押し付けてきたんだよ。俺は物量で押し潰す感じで魔物を倒してきたから、どうも扱いづらくてな」

 そう言って男は肩をすくめる。

「刀ならいける。しかし本当にいい刀だな...」

 青年は刀の出来の良さを素直に称賛する。その刀は反りが美しく刃が薄く鋭い。彼は今まで見た刀で師匠が使っていた物の次にいい刀に思えた。

「じゃあいくぞ」

 男はそう言って走り出した。そして近くにいた方のゴブリン騎士(ロード)に切りかかる。

『グォォっ!!』

 ゴブリン騎士(ロード)はそれを危なげなく受け流す。それを期に青年ももう片方のゴブリン騎士(ロード)に駆け出した。

 二人の共闘が始まる。




「っらぁぁ!!」

 戦闘が始まって二分ほどたった。ついに青年はゴブリン騎士(ロード)が着ていた鎧の間を正確に切り裂いた。

『ググっ!?』

 ゴブリン騎士(ロード)は苦しそうにわめく。

「終わりだ」

 それで動きが鈍くなったところを青年は冷静に首を刈りとった。

「ふぅ...」

 戦闘が終わってふと男の方を見ると戦闘は既に終わっており大きな剣を地面に刺して、地面に座り込んでいた。

「おぉやっと終わったのか」

 男はよく見ると干肉をかじっていた。その表情は呑気なもので決してゴブリン騎士(ロード)と戦った後だとは思えなかった。

「あんた、そんなに余裕なら二体相手にしてもよかったんじゃないか?」

 青年がそう言うと男は鼻で笑った

「そんなの無理に決まってるだろ。あいつ二体相手は下手すりゃー、(キング)ゴブリンより厄介だ」

「そうなのか?」

「あいつの連携は他のゴブリンとは、っと!!」

 男は突然の弓矢は弾き、投石は叩き割った。

「また次のお客さんが来そうだ。最深部も近い。慎重にいくぞ」

 そう言って男と青年はゆっくり進んでいく。

「ここかゴブリンの巣の最奥...」

 そう青年が呟いたその時、矢が降り注いだ。しかし青年と男はそれを危なげなくかわす。

「俺は(キング)ゴブリンをやる。他は任せた。」

「お、おい!?無理だって!!」

 男は青年の言うことを聞かず(キング)ゴブリンに突っ込んでいった。そしてそこに青年のところに閃光玉を投げる。

「えっ??」

 青年は思わず気の抜けた声を出す。それがさっき男が投げた閃光玉だとわかると、光が始めた玉から目をそらし袖で目を隠す。そして程なくして爆発的な光が洞窟を一瞬真っ白に染め上げた。暗いところで突然明るいものを見たゴブリンたちは目が一時的に使い物にならなくなる。

『ググ!?』

「なるほど!!これで一時的に足止めをっ...て、え?」

 ゴブリンたちは混乱してその場にうずくまるのではなく、光った方向、青年(・・)のもとへ走ってきた。ようするに男は青年を囮に使ったのである。

「くそ!!そういうことかよ!!!」

 青年は刀を構える。その姿は様になっており美しい。青年は十二体のゴブリンと対峙する。

「よーしうまくいった」

 男はそう言って残っていた干肉を口に放り込む。

『グググ...』

 すべての状態異常に耐性のある(キング)ゴブリンは男を憎しみに満ちた表情で睨み付けてくる。

「いくぞ」

 男はそう言って剣を(キング)ゴブリンに向けて降り下ろす。

『グギャア!!!』

 その瞬間王ゴブリンは木をそのまま使ったような太く固い棍棒で受け止める。今まで物量と速さだけで敵を投げ倒してきた一撃を完全に受け止められたのだ。

「これはダメか...なら!!」

 男はそう言って煙玉を投げる。そして王ゴブリンの視界から消える。

『!?』

 王ゴブリンは突然いなくなった男を探そうと周りを見渡す。

「上だよ」

 そう言って男は王ゴブリンの真上から弓を放った。王ゴブリンに無数の矢が降り注ぐ。

『ゴォォァァァァ!!』

 王ゴブリンは悲鳴をあげる。しかし王ゴブリンの皮膚は厚く皮膚を貫通するまではいかなかった。

『ァァァァァァァァ!!』

 その声と同時に王ゴブリンは目の色が変わって、身体中から湯気が出てくる。

「...狂暴化か」

 男はそう呟く

【狂暴化】、それはある一定ランク以上の魔物が多数の傷をおったときに発動する。知性が下がる代わりに、全ステータスが二倍になる。

 破格のスキルである。しかし男はどこ吹く風といった表情で余裕そうに構える。

「お前はもう勝ち目はないぞ」

 そう言って男は煙玉をもう一回投げる。そして男は弓を連射する。

『ギャアァァ!!!』

 王ゴブリンは弓矢が飛んできた方に走り出した。

 走り出したその先には当然男が立っていた。王ゴブリンは嬉々とした表情で棍棒を降り下ろした。

「ほら、すぐひっかかる」

 そう言って男は片手に持っていたものを両手で構える。男の手には弓でも剣でもないものが構えられていた。

 銃である。

 男は間近に近づいていた王ゴブリンに引き金を引いた。

 バンッッ!!!

「知能のない魔物なんて雑魚同然だ。それがドラゴンだろうがな」

 そう言って男は銃を道具箱(アイテムボックス)にしまう。王ゴブリンは膝から崩れ落ちて倒れた。

『『ギャァァァア!!!』』

 他のゴブリン達は自分達の長が死んだことで統制がとれなくなり、我先と逃げていく。



 さっきまでゴブリンと戦っていた青年は突然のゴブリンの逃走に驚き、そして尻餅をついて、大きなため息をついた。

「はぁー死ぬかと思った」

「はははっ!!面白いこというな。兄ちゃん」

 そう言って男は青年にポーションを渡す。

「これって...いいのか?飲んでも」

「あーいいぜ。俺は怪我してないからな」

「でも金貨五枚もするんだろ?」

「いいんだよ。べつに金のために戦った訳じゃないし...おっ、あったあった。」

 そう言って男は王ゴブリンが死んだ奥の方から紙を拾い上げる。

「なんだよその紙...って日本語で書いてあるのか?」

「おっ、日本語読めるのか?」

「そりゃー俺は勇者世代の子供だから、ひらがな、カタカナ位は読めるように勉強したよ」

「ほぉーそうか。まぁ俺は漢字も読めるけどな」

「まじかよ!?すげぇーな。でその日本語で書かれたものはなんなんだよ。」

「勇者が残したサルベージが残した、日本の料理の作り方が書かれた紙、【レシピ】だよ」

 そう言って男はニヤリとわらった。







戦闘シーンは難しいです...ぜひ批評お願いします。

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