第十八話 朝のひととき
前々話、前話とサブタイトルを変更しました。
魔力制御についてなかなか思うように筆が進みません(いや、この場合タイピング?が進まないと書くべきか……)
ドワーフ族のベッドはメイが日本で眠っていたベッドとはちょっと違う。むき出しの洞窟の土の上に木枠をおいて枯れ草をたっぷり積み上げてその上に被せるように大きな獣の毛皮を敷いて毛皮をかぶって寝るのが一般的だ。メイがお世話になっているゼノン夫妻の家は森の中の家ではあるが、同じように草と毛皮で柔らかなベッドを作っているのだった。
枯れ草を一定の間隔で取り替えないといけないという難点はあるが、その苦労を差し引いてもいつも気持ちよく眠れるこのベッドをメイはすっかり気に入っていた。テーノがいつも選ぶ草はとってもよい香りがして丁寧に手入れされたふわふわの毛の毛皮も本当に気持ちがいい。
メイは気持ちよいベッドの中でいつものようにテディに手を伸ばして起きようと思っていたら、ふと自分の鼻先に何かいることに気づいてうっすらと目を開けた。
(オハヨ)
「……」
スカーレットがじっと自分の顔を覗いている。
「スカーレット!」
一気に昨日の晩のことを思い出してメイは思わずテディを取り落としてスカーレットをぎゅっと抱きしめた。テディが抗議するような目をしている気がしたが今はスカーレットだ。
「おはよう、スカーレット」
メイは思わず抱きついたが、精霊というものにこれほど実体があるとはびっくりだ。テディみたいにやわらかくないが着せ替え人形ほど硬くもない。ちゃんと動いてしゃべって、抱きしめることもできて!まるでお人形さんみたいなのに!
乱暴にぎゅうっと抱きしめられてもスカーレットは抗議しない。
(オハヨウ、メイ)
昨晩寝る前に、ランプの明かりをつけてくれてから少しおしゃべりした。スカーレットは自我が生まれたばかりという意味ではまだまだ幼児のようなものといってよい精霊だ。思念波とはいえ言葉はまだまだ拙いがそれでも女の子のお友達ができてメイはとってもうれしかった。
「あ、今朝は寝坊しちゃったみたい。スカーレットありがとう」
窓の外を見るともう日が昇ってしばらくたっているようだ。メイは急いで服を着替えると、眠っている間にテーノが用意してくれていた洗顔用の桶で手早く身支度を整えて、柔らかな、ウサギに似た小型の動物のなめし皮で顔を拭いて軽やかな足取りで台所でまだ朝の準備をしているテーノのもとまで行った。テディはいつものように邪魔にならないよう背中でバックパックとしてぶら下がっており、スカーレットもふよふよとメイの周りを興味深そうに飛び回っている。彼女はテーノが火を使うときは大喜びで自分で火をつけて得意そうにしていた。おかげでいつも使う火打石も必要がなくてテーノも喜んでいた。どうやらテーノとも仲良くなったようでメイはうれしかった。
いつもどおり朝食はポリッジ。麦粥だ。はじめはメイは日本の朝御飯とは全然違うこの食事に少し戸惑ったが、体にもよくて蜂蜜とミルクをかけて食べるこの朝食はすっかり気に入っていた。このミルクは同じ森に住むヤルデさんのところで飼っている牛によく似た家畜の乳を毎朝ゼノンが散歩がてら分けてもらってくるのだ。
メイも何度かついていったが、メイの知っている地球の牛よりもずいぶん小さく半分ほどで赤茶色の毛並みでとっても可愛かった。牛までドワーフとあったサイズでメイは初めてみたときびっくりしたものだ。このトルという牛に似た動物ははあちらこちらの家で一般的に買われている。牛乳ならぬ、トル乳の為に飼っているのだ。
美味しい朝食を食べて、後片付けを手伝った後、ゼノンが魔力制御のことを教えてくれることになっていた。
少しこの世界の日常を書いてみたくてこんな感じです。できるだけ、できるだけ矛盾が出てこないよう書いてますが、気づいた点がございましたら連絡いただけるとうれしいです。今回も少し短いですが次話の魔力制御、がんばってかいてますのでご容赦を……