5話 冒険に出る前の説明はとても重要ですよ 後編
「わかりました。そろそろ本題に入らないといけませんね」
リラはそう言うと、二枚の写真を取り出しそれを空に渡した。
空はリラから渡された写真を見て眉をひそめた。
「これは?」
空は渡された2枚の写真を見しながら質問した。
2枚の写真には対照的な風景だった。一枚は普通の森のような風景が写っており、もう一つは漫画やアニメでよくあるような、木々が枯れ生物が暮らせそうも無いような風景だった。
「緑が生い茂っているほうの写真は3年前のものです。そして、もう一つの写真は今現在のものです」
「どうしてこうなったんだ」
俺はもう一度二つの写真を見返しながら質問した。
「理由は私の世界アウラルに魔王を名乗る者たちが現れたからです」
「なんか・・・・ゲームのような展開だな・・・」
空は苦笑いを浮かべながら言った。
「確かにそうですね。でも、この魔王を名乗る者にすでに複数の国を滅ぼされました」
「誰かこいつを倒そうとした奴はいなかったのか?」
「最初は複数の国の王が騎士団を魔王討伐に向かわせましたが、どの騎士団も魔王を倒すことはおろか、傷一つ負わせることはできませんでした」
「ふーん。ていうか、そんなに自分の作り出した人間や世界を救いたければお前が神様の力か何かを使って魔王を倒せばいいんじゃないのか?」
「それはできません。なぜなら、私が神の力を使うことは下手をすれば、その世界に住む他の生き物も巻き込んでしまう可能性があるからです」
「なるほどな。でも、他にも魔王を倒す方法はあるんじゃないのか?たとえばその神の力を使って何人かの人間に魔王を倒せるぐらいの力を与えるとか」
リラは俯きながら答えた。
「その方法は一回実践しましたが、駄目でした」
「どうして?」
空は首をかしげ訊いた。
「まず、人間がその力に耐えられるだけの基礎能力を持つ人がとても少ないことと、たとえ耐えることができたとしても、その能力を完全に使いこなすことができる人間はさらに少ないです」
「でも、使いこなせた奴はいるんだろ」
「1人だけいました。ですが、その人は今封印されています」
「なぜ?」
「彼は自分の仲間をかばって魔王に封印されたのです」
「ふーん。ま、とりあえず俺はそんな危なそうな魔王がたくさんいるようなところに放り込まれかけたってわけか」
空は顔に少しだけ黒い笑みを浮かべながらフィールとリラを交互に見ながら言った。
「もし、あなたが嫌だと言うのなら強制はしません」
「へえ~、断ってもいいのか」
「はい。構いません」
「う~ん」
空は顎に手を当て考え始めた。
それから、約5分後
「よし、決めた」
空は勢いよく立ち上がった。
「今回の問題引き受けるよ」
「よろしいのですか?」
「ああ、魔王討伐・・・・おもしろそうじゃん」
「ですが、下手をすればあなたの命にかかわる問題ですよ」
「うん、分かっているよ。今回の件に関しては俺とってデメリットの方が大きい。でも、暇よりは何倍もましだからな」
空はそう言うと楽しそうに笑った。
「それじゃあ、行こうか。魔王とやらを討伐しに」
「わかりました。私の世界をお願いします」
リラは空に頭を下げた。
「ああ、任しとけ」
空はリラを安心させるように口元に薄く笑みを浮かべながら言った。
「さて、話は終わったみたいだね」
フィールはそう言うと、一つの小さめなかばんを空に投げ渡した。
「これは?」
「これは僕からの餞別だよ。このかばんの中にはアウラルで使われているお金や地図あと僕からの手紙が入っているから着いたら確認してね」
「わかった」
「あと、そのかばんは特別なものでどんなものでも収納できるようになっているから」
「え・・・・(あの有名な漫画キャラクターが持っているポケットかよ)」
「あ、ついでにこのリストも渡しておくよ」
フィールは机から十枚くらいの紙の束を空に渡した。
「これは?」
「これはリラちゃんと作った君の仲間になってくれそうな人のリストだよ」
「へえ~」
空は興味深そうにそのリストにパラパラとめくりながら言った。
「何か困ったときはその人たちを頼ってみればいいと思うよ」
「分かった」
空はそう言うと紙の束をかばんの中に入れた。
「それじゃあ、あなたをアウラルに飛ばします」
リラはそう言うと両手を空に突きつけた。
すると、空の足元大きな魔方陣ができた。
「それじゃあ、行って来るわ、神様」
「うん。気をつけてね」
そして、空は魔方陣の光に飲み込まれた。
いや、まさか3話までこの話が続くとは思ってなかった作者の夜乃です。
そして、ようやく次の話から異世界に行きます。そして早速戦闘が入ります
(というか、このあとがきを書いている時にはもう次の話は完成してます)
さて、今回登場した神様たちは後々キャラ説明にいれていきます。