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求ム、姫君!

どういうジャンルかもわからないお話です。さらっと読んじゃって下さい。

昔々、とある世界のとある大陸のとある国に、ありがちなんですが王様とお妃様が住んでいました。

二人の間には四人の子供たちがいました。

一番上は皇太子(男)

二番目はゆくゆくは宰相に(男)

三番目は将来隣国に婿入り決定(男)

四番目は騎士となり鍛練の日々(男)

見事に男ばかり。跡継ぎには困りません。

国は安泰ですね、王様も大臣たちも国民も安心していました。

しかし、お妃様は不満でした。


「わたくしは、姫が、女の子が、欲しいのよーー!!」


御齢三十?歳のお妃様。四人の子供を産んだお妃様。

まだ産む気!?と皆思いました。


お妃さまにはささやかな夢がありました。

実はこのお妃さまのご家族、父(王)、母(王妃:早くに亡くなりました)、そして兄1、兄2、兄3……つまりこのこのお妃さまも男兄弟のみの中で育ったのです。

母は自分を生んですぐに亡くなってしまい、兄たちや父はもちろん可愛がってはくれましたが、女同士の何と言いますか、距離感とは違います。

淋しい思いもしたし、反対に唯一の女の子として構われすぎることもありました…ウザいほどに…。

豪快、勇猛…そんな言葉で表わされる兄たちはしかし妹との接し方がわかっていませんでした。つまりデリカシーに欠けていたんです。

せめて姉か妹かいれば…何度そう思ったことでしょう。

日常の些細な悩みを簡単に打ち明けることも、年頃になって恋について相談することも、お妃さまは出来ません。

だって父や兄に相談なんてしようものなら、小さなことでも大事にされかねません。まあそれだけ溺愛はされていたんですがね。

そこでお妃さまは決心しました。

結婚したら絶対女の子を産もう。何人でも。その娘たちとお洒落やお茶会、恋バナなんかを楽しむんだ!!

そう決心したのでした。

そして、最初に生まれたのは男の子。まあ最初ですから、そんなすぐに思い通りにはいかないよねー。でもどうせ余継は必要だし。次の子は女の子だといいな。

ところが次も男の子。その次もそのまた次も男の子。

気付けば男の子ばかり四人。

もちろん可愛いですよ?我が子ですもん。

でも…でも…ッ!

お妃さまはもやもやしていました。自分はただ娘と女同士の内緒の話をしたり、踊りや刺しゅうや歌を習ったり、可愛い服を着せてあーだこーだ言ったり、甘いお菓子とおいしいお茶を味わいながら恋バナしたり、したいだけなのに!!

なんでこんなに女の子に縁がないの!?

お妃さまのもやもやはマックスです。だって王子たちの身辺、つまんないんですもん。

王子4談:おしゃれ?なにそれ?(だってどうせ汗まみれだし、鎧の下とかおしゃれ無意味)

王子3談:刺しゅう?まあやってもいいど…(…それは、ミミズ?あ、お花ね。指指したのね、花が真っ赤に染まってるわ…)

王子2談:お茶会?そんな悠長にお茶飲んでる暇ありません(そう言って用意されていたお茶を立ったまま一気に飲み干し去って行った)

王子1談:恋バナ?相応しい身分の姫としかるべき時が来れば結婚しますよ(わあ、優等生…すぎて面白くない!!恋の一つくらいしなさいよ!枯れちゃうよ!?)


「四人もいれば十分ではないか…?」

「あなたは女の子欲しくないの?きっと男の子とはまた違った可愛さよ?娘がパパ―ってこけそうになりながらも走り寄って来て腕の中に飛び込み、にこって笑うの。ちょっとお転婆で木のぼりをして降りられなくなって泣いちゃったり、年頃になってきたら上目遣いでドレス欲しいなとかねだってきちゃたり、それで大きくなっってきたらパパみたいな人と結婚したいとか言っちゃたら…どうこれでも娘欲しくない?」


妄想、結構詳細ですね…。

王様は若干ひきつり笑いを浮かべながらも考えます。

確かに可愛いだろう。なにより、愛するお妃さまの子なら尚更可愛いことだろう。

お妃さまをそっと抱き締めた王様は、そのまま彼女と熱い夜を過ごしました。


翌日、朝食の席の席にお妃さまの姿はありませんでした。


「…またかよ…」

「いい年なんだから落ち着いたらいいのに」

「「「まったくだ」」」


朝食後、王子様たちは王様が去ったそのテーブルでため息をもらしました。

王子様たちは知っています。

王様がお妃さまをそりゃあもう溺愛と言っていいレベルまで愛していることを。

彼女の夢を叶えたいし、彼女に似た娘も欲しいが高齢出産でお妃さまに無理をさせないように夜の生活を自主規制していることを。


午後のお茶の時間、四人はお妃さまの部屋へ向かいます。お見舞いです。

侍女に通され近づいたお妃さまの部屋の中からはそれはそれは機嫌の良さそうな鼻歌が漏れ聞こえてきました。

少々音が外れているのも御愛嬌。

お妃さまはうれしそうに刺しゅうをしています。あのハンカチはきっと王様への贈り物でしょう。


「俺たちの分は無いのかな…?」


そんな少女のようなお妃さまを四人の王子は結構好きなのです。

一番初めに贈り物をもらえる王様に嫉妬してしますくらいには。


お妃さまの願いがかなうのは一年後のことでした。






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